スワップダイスの確率

 最近といっても1年近く前だが、サンサーラ・バラッドというルールが発売された。異世界転生して無双するという、流行のラノベに乗っかったような設定のシステムである。ここで懐かしのスワップダイスというルールが使われていた。
 スワップダイスというのは10面ダイスを2個振ってD100とする際に、10の位のダイスと1の位のダイスを入れ替えることが出来るというルールで、本来なら期待値が50%くらいになるところが34%くらいになる。アサルトエンジンとか真・女神転生RPGとかで使っており、一部に熱狂的なファンがいる。
 以前、アサルトエンジンの確率計算をしたことがあるが、読み返したところスワップダイスの部分で盛大に間違えており、今回改て計算してみることとした。

 面倒な計算は後回しにして、いきなり結果から。

 期待値は34.65%となる。
 なお、D100は00が出たとき100と読むか0と読むかはルールによって異なるが、サンサーラ・バラッドでは0なのでそれに倣う。
 これは頑張って計算するよりもエクセルですべて計算してしまった方が考えることがなくて楽である。計算方法としては、2つの10ダイスを振って高い方を1の位、低い方を10の位として、目標値以下となる組み合わせが何個あるかを数えただけである。期待値はすべて総計して100で割れば得られる。

数学的に
 結果は分かったけど、やっぱり数式で表したい欲求は如何ともし難い。
 色々考えた結果、結局スワップの有無で場合分けするしかないという結論に落ち着いたので、その方向で続ける。まあ、絶対値とかを使って無理矢理一つの式に落とし込めないこともないのだけど、無駄に長くなるので。
 スワップする前提で考えると2つのダイスAとダイスBの出目と判定値の関係は次の表の様になる。

 この表で目標値以下のマスを数えればそれが確率となる。
 マスを数えるのはPCには得意分野だけど人間がやるには面倒である。
 例えば、目標値を42と設定すると、次のよう黄色く塗った部分が成功となる。

 数えると64マスあるので、64%の確率で成功する。
 また、目標値を26と設定すると、次のように黄色く塗った部分が成功である。

 結構形が異なる。こちらは数えると45マスあるので、45%の確率で成功する。
 値を増減させて考えてみれば分かるが、1の位と10の位のどちらが大きいかで決まる。同じ場合はどちらでもよい。
 そんなわけで、目標値の10の位をP10、1の位をP1とする。
{ P_{10} \geqq P_1}のとき
 単純で計算しやすいこちらから。上のグラフで水平になっている部分である。
 全体から右下(44~99)の正方形を引いてやれば良い。
{ \displaystyle 100 - (10 - P_{10})^2 \\ = -{P_{10}}^2 + 20P_{10} }
{ P_{10} \lt P_1}のとき
 上の条件からもうちょっと引いたらこの形になる。
{ \displaystyle 100 - (9 - P_{10})^2 - 2(9 - P_1) }
 こちらは展開するとより複雑になりそうなのでこのままで。
 以上で、数学的にも解が得られた。

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 20120929 アサルトエンジン リロールの確率について

古安城聞書

 新美南吉は生前、都築弥厚の伝記を書こうとしたそうで、その際にリサーチしたメモ書きが残っている。古安城聞書というタイトルが付けられている。ちょっと探してみたがネット上で公開しているサイトが見つからないので、そんなに長い文というわけでもないのでここで上げておくことにする。
 オリジナルは岩滑(やなべ)公民館に保存されている。書かれたのは昭和16年頃。半紙に鉛筆で書いたメモで、岡田庄太郎(当時安城農業図書館長、昭和21年明治用水理事長、昭和40年2月没)と山口英信(仙台了雲院住職、昭和35年没)からの聞き書きである[2]
新美南吉全集 第9巻に収録されているらしい[1]。この本は持っていないがででむしの歌に掲載されていたのでそのまま写す。できるだけ元のまま写すため、みっともない交ぜ書きとかもそのままで読みづらいけど、こういのに敢えて手を加えると碌なことにならないのでそのままで良いと思う。

安城聞書 岡田庄太郎 山口英信 南吉写
京都の安祥寺といふあまで野良らふそくの御料地であったと。 らふそくの樹が植わってゐた。
はせ、のの山、森、のむらなどはみならふをあつかった姓。
寺子屋、庄屋を了雲院の先代がしてゐた(六十年位前)
碧海郡安城町名の起こり
安祥、やすきなどといろいろいった。
知立神社に青海首という神がまつってある。この群の主といふ。
宮中へかやにふくよしを献納した。この辺一面よし原。
やはぎはてい坊なかった。安城からしほさしの宮(水源)まで船でゆき、それから鎌倉街道で名古屋へいった。船賃百文だったといふ。百々という地名そのあたり。
馬は三河はすぐれてゐた。このあたりは牧場であり牧内(安城)牧法堂(ムツミ)の地名今にあり。
﨑という名、三河に多し(桋﨑、山崎、ななさき、とっさき戸崎、せいさき根崎、萬五郎﨑、みぞ﨑など安城付近にあり)海だった。
かすめ神社(船頭がかすみのうちから見たので。)
最もよい戦場であったらしい(戦国時代)その前はこのあたりはよかったらしい。
長者のやしきが女学校寄宿舎あたりにあったといふ伝説。戦場であった時代のあとは荒地、狐や狸の話が多い。人々はひらけている ~ 狡猾であったらしい。
安城ヶ原といふは今より広かったらしい。野田神社あたりまで、上郷あたりまで。
観音堂といいふ大きな寺があった。その手水鉢が一つ了雲院にのこってゐる。
めしびつ、山崎先生宅の西、北は池浦、南はみのわ。大山田といひし。(多小山田上、―中、―下)
濱池、(あやめ)―南方、天草の池(鬼ばす)―古井の西(安城史話参照―﨑の話)
嫁をやるなら安城にやるな年がら年中野良仕事(百年ぐらい前)
安城地獄。ため池をつくって水をくみあげた。
?二百二十のあぜがあった低地。
安城のめしびつといはれた。その一つ一つの田にため池と井戸があった。
井戸水をくむのに早くいかぬと、他の井戸をくむためその同系統の井戸は水がさがった。
働く人種。安城の人間は何処へいっても働きでは負けぬ。
開さくの時一日中右ぐわばかりつかひ二日目は左くわのみをつかふといふやうな競争をしたりした。
みつぼいなだきといふ言葉(三粒の穂をいただいた。)
肥えた土をもって来てやせた土地に入れた(客土)東尾の川下や、畑の台土を。
一車はこべば一升ふえる。
がに又になるほどひいた。
安城若い衆は足を見りゃわかる。
安城若い衆のあしオショク。
どこの家でも庭さきに二間位の穴あり、肥土や堆肥を入れこね、一冬こし、これを他に入れた。
米や麥をくはずにそば粉汁をのんで仕事に出ると体が冷えた。
まはれひき臼はや出よこがし
やがて山から兄が来る。
山林へ兄は車ひきに仕事にいってゐる。
明治二十四年駅附近一里四方家は無かった。安城ヶ原の中心だから家のない所に駅を作った。
願書をだしても政府からうけつけない。羽根村につくって岡崎駅なら、安城につくっても西尾駅だといふので、西尾へ通ずる大きい道をつくったが、西尾の名をきらったので、知立駅といふ名でつくることにして材料はみな知立駅として来た。出来ると安城駅になった。豊田屋が早く出来た。(三十年位前)
それからぼつぼつ他町村から人が来て家をつくった。
明治という名は了雲院の先代がつけた。(北明治は以前新新田、右新田いはれてゐた。がそれでは新田(出郷)の出店のやうにきこえるので)―明治八年、
十六町の共通地へ出ることを希望する者には宅地九畝畑三畝余を提供した。(小松原)―開墾奨励(鉄道以前)
やうやく五、六軒出た。開墾は夜やった。昼は奉公人をして。
希望でシケン場は出来たが一向まにあわなかった。一向おしへてくれなかった。
今の駅前の一番いい通りになってゐる土地は水持ちがなく悪い土地で一段に酒一升をつけて、人にくれてやったのである。(鉄道前)
駅が出来て花火があがった 二十七年
試験場ができた。二十七年
農林学校(県に工業と農学林が出来るといふことをきいたので。町民の運動。工業は今の高工。) 三十四年 説教場ははやくできた。宗教心はつよい。
山崎先生をはじめ農林の先生は夜学をして夜会教育をした。町民の希望で。
町民の運動といふやうなことはそのころはなかった。そこへ安城が運動をしたので、シケン場も農林も安城にデキたのである。
二十八才で山崎さんは安城に来た。汽車中で○○が青年とあって話をした。しっかりした青年であった。あとからきくと大阪のさる学校にゐる山崎とわかったのでそれを読んでノウリンの校長にすへた。
拝木(ヲガムギ)をの木にのぼるとサナゲ山がをがめた。
岡田さんは鶴のとぶを見たことあり。
赤松にたのまれて別所のししまひが、途中のいなりでどんどんヒューヒューやっていた、狐にだまされて。
四本木(いなり神社のところ)
狐が庄屋へたのみに来て、四本の木をのこしてもらった。開墾中に。
狐の通るみち(草のねたところ)をさぐり、それを辿ってヤコウは大体測量した。狐は高みをとほる、湿気のない。だから用水はいま高いところばかりを通ってゐる。
第二話
明治川神社のあたりにかめぐらの行けといふ四、五十丁の池。おにばすしげる
そこの鮒は腹中にきしめんのやうな虫がゐたといふ。
草の乱の時代土堤をきづいた池。古井にありき。天草の池といふ。
うけづきをする祭。あきやさんをまつる。うけをもって魚をすく。
○某、足の太さほどのうなぎを前日とったが、それは禁制ゆえ、かくしてゐた。
○東尾、西尾などに清水が湧いた。それをためてくわんがい。たいてい二、三段を作ったのみ。
○祖先の土地を売った人はたいてい亡びてゐる。売らなかった人は持ちこたへてゐる。
○おぶくさまのみ米のめし。麥八割位の飯をたべた。粟やきびやそばなどまぜた。ひえはこのあたりはとれず。
そばの葉もすてず、乾かし、粉にしてたべ、さといものいもがらもすてず。朝麥めし。夕はんはおじやをたべ。
○9ツになると寺子屋。はじめ酒一升、こわめし二重、にしめ一重箱(上等な家庭)習字が主。それで教育ができた。
筆子をいくたりも持ってゐたのは上流。
米や麥をそまつにするなといふ教育が主眼であった。
○名主(庄屋)にわりもと庄屋(一流)百戸以上のとだいだい庄屋百戸以下ねんばん庄屋と。
村民に選挙されてなる。
庄屋の下に組頭クミガシラ。庄屋は税、組頭が行政。
○庄屋はあまり品行よくなかった。しかし、庄屋は非常に才智あり、いろいろな問題を裁かされた。
○役。殿さまの荷物を藤川の問屋から岡崎までまた知立までもたされた。これがひんぱん。
○衣服。たびをはかず。わらぐつ。
下駄はかしのこまげた、のちにやきすぎ。半ももひき(俗にさるもヽひき)に木綿着。長いものは祭礼時のみ。
○足駄は武士のはきもの。
○よく働きに江戸へ出た。江戸では徳川との関係上、使用人として優先権があったらしい。貧乏でたべられなくなるとみな江戸に奉公に出て小金をためて帰って来た。
○赤土は上等。黒い土(くろぼこ)(灰のごとし)が多かった。これが仕様のない土であった。
焼土をよくつくった。瓦やくやうなかまどでやいた。
弥厚は因果思想を持った。
人間も土地も教育すればのちにはよくなる。その当時よかった尾張の土地なども祖先の苦心のたまものと考へるに到った。(はじめは人にも土地にも天は不公平であると思ったのだが)自分がよい境遇にめぐまれたのも、祖先の努力の結果であると考へた。―仏教思想―(仏教信者)
○元日は朝早く神社、手にまゐる。
もちは男のたべるもち(純すいの)と女のもち(まざりものあり)とあった。
○秋のひがんから春のひがんまで毎夜よなべ。なわなひ、俵つくり、あらぢ、女はわたくり。
○正月二日の朝ひきぞめ(土の)
○七日は七草のおかゆ
○十五日はもち。椿にもちの花をつけひきうすに飾る。
久永(ひさなが)内記のぶとよ。元禄年間はじめて領主となる。四千三百五十四石二斗四合
安城の分、2千三百四十九石七斗六升一合 あとは米津と西加茂の加納で。
○八月はまつり。天草池の提灯まつり。
○九月月見。だんご。あんころまるめた。むらくもだんご。
○八月うんか送り。
○内職木綿にしてうった。三河木綿。
どの家にもはたをり台あり。
綿は米や麥と同じにつかはれてゐた。綿買ひ。
了雲院の正門は土地の男女が、女は綿を、男は縄をつくってそれを売ってつくったと。
女は毎晩つもの木二本多く、男は二把多くして。
○夏ははねつるべで綿畑に水を入れた。
つばきの花の灰を綿の実にかむせてまくとよい。大豆を刈る前にそのうねまへまく。
安城の殿様ちん(わた)くりなさるしかも五つの役つきで。―殿様貧乏。
○火事でやけると組内の人々が米や麥をもってよりあつまって片付けた。
まるやけの場合は、めしびつや家財道具をもっていってやった。隣組の美風。
○第三夜(九月十日) (岡正さんのみ)
○水を大切にせよと教へられ、顔を洗った水は木や畑にかけよといはれた。
湯樽(ユダル)の残り茶はよその田でもよいからそれにあけよといはれた。
○第一回目に来た移住者は大抵かへってしまった。
地がやせてゐて何もできぬので。
尤最初二、三年は土地が多少肥えてゐるのでできる。
二回、三回の移住者がのこった。
○土を一車ひけば一升多くとれるといはれた。
○農民の反対した理由の一つ。百姓が貧乏な殿さまから苛れん誅求された上に賦役をおそれた。
○開墾したあとの田は竹の根などがあって、稲を植えるに、竹のへらや鎌の古刃を用いて。草はは生えぬので除草の代わりに竹の根などをひろって、畦に干かし、たきもんにした。
○開こんしたあとはやせてゐて草も生えなかった。だから草の生えるやうな土地は非常に喜ばれた。
(伊与田与八と岡本兵松については他の記録の如し)

 底本としたででむしの歌だが、画像を検索しても書影が見つからないので、ここで上げておく。



参考文献
 [1]『校定 新美南吉全集 第9巻』(大日本図書), 新・なにを読むべきか.com
 [2]狐牛会, ででむしの歌―新美南吉と安城, 愛知県安城市立泉小学校(1971)

プリンタ買ったよ EPSON PX-S5010

 去年の7月にプリンタが使えなくなったので変えるというようなことを書いたのだけど、実はあれから1ヶ月しない内にEPSONPX-S5010を買っていた。買ったのはいいんだけど、全く同じ症状で印刷できなかったのでEPSONにどうにかしてもらえないかと問い合わせたり、寝てたり、ピアノ弾いていたり、TRPGしていたりしたらいつの間にか1年以上経っており、今更だけど書いておく。症状としては前のと全く同じなので、前回書いたものをそのまま転載しておく。

 印刷できないのである。
 プリンタを買う人のほぼ全てが求める機能である印刷ができないのだ。
 色々と頑張ったけど、結果として、別のPC(Windwos7)からWi-Fiで印刷したり、VMwareで動かしたWindows XPからは印刷することは出来るのだが、Windows8.1のメインマシンからは印刷を受け付けない。一瞬だけ印刷ジョブに表示されるが、すぐに消えて何もなかったことにされてしまう。因みに、ノズルチェックパターンの印刷は問題なく出来る。

 もちろん、USBでも無線LANでも駄目である。
 端的に言うとPCとプリンタの間で通信ができていないというもの。VMwareWindowsXPを使うと印刷できるので仕方なしにこれを使うこととした。
 エプソンのサポートはTS8230のときよりは丁寧に対応してもらったけど、最終的には「お前のPCが悪いからどうにもできん」と言って投げ捨てられた。そんな事はわかってる。
 PX-S5010にはネットを介したリモートプリントという機能があり、これならプリンタと直接つながっていなくても印刷できるのでCanon TS8230よりは使い勝手がいいかなとは思う。ただし、リモートプリントは印刷設定が限定されているので、B4サイズで印刷できなかったり、冊子を作れなかったりする。
 それはそうと、プリンタとしての機能を一応紹介しておく。

 プリンタとしての売りはなんと言ってもB4で印刷できるということである。演奏家はある程度大きなサイズで印刷できるととても便利である[1]。これまでA4に縮小して見開きにしていたのだけど、ちょっと小さくて見にくいので、B4で印刷できるととても便利である。また、キャラクターシートもB4が圧倒的に使いやすいので、自宅でセッションする際に咄嗟に印刷できるというのは強みである。
 背面に給紙トレイがあるのも大きい。現代のプリンタメーカーはどうやら裏紙を使わせたくないらしくて、背面に給紙トレイのない機種が多い。このため、背面給紙トレイがあるものだとほとんど選択肢がなくなる。
 印刷品質は普通。というか現代のプリンタで印刷品質の良し悪しは既にわからなくなっているので、まあどうでもいいかなと。
 CDのレーベル印刷は機能はソフトがイマイチ使いにくくて、印刷範囲をはみ出したりするのである程度訓練しないと上手く使えない。
 プリンタとの接続は上に書いたとおり、USB、無線LAN、リモートプリントの3種類。USBと無線LANは同じ設定で印刷できるが、リモートプリントは機能が制限されている。
 印刷画面はWindows8.1とWindowsXPでは見た目が違うのだが、Windows8.1の方はドライバのインストールに失敗しているようで、上手く機能していないだけかも知れない。実際のところ、XPの方が分かりやすい。8.1だと冊子の作り方がよくわからない。マニュアルを見ると調べると、EPSON プリンターウィンドウ!3なるソフトを起動して設定するようなことが書いてあるけど、そんなものはない。XPなら印刷画面で設定できるのに。多分、印刷UIが退化したんだろう。

・インクについて
 現代のプリンタメーカーはどれだけインクを浪費させて儲けるかということが至上命令となっており、ユーザーにどれだけインクを浪費させるかで勝負している部分がある。インクの消費量を何ピコリットルだとか宣伝しているが頻繁にヘッダクリーニングを行って大量に消費させている。また、ヘッダクリーニングも必要な色だけ行えば良いところを、すべてのヘッダで同時に行うのですごい勢いで減っていく。各メーカーにはヘッダクリーニング何回でインクが枯渇するかも表記してほしいところである。
 折角なので、これまで使ってきたプリンタとインクのお値段を並べてみる。

メーカー 機種 純正値段 社外品値段
Canon iP7400 6303* 934
Canon PIXUS iP7230 7766 1230
EPSON Colorio EP-806AB 3971 850
Canon TS8230 6878 1999
EPSON PX-5010 7030 1560

*全色揃っていない

 純正の値段は公式の定価であるのに対して社外品はアマゾンの最安値なのでちょいと不公平な感じがないでもないが、アマゾン調べだと純正であっても中古で変な値付けがされてたりするので、仕方なしに定価で表示した。別に、価格差を強調しようとしたわけじゃないんだから!
 圧倒的な価格差。大体3~5倍程度といったところか。社外品は熾烈に価格競争をしている感がある。メーカーも価格競争しろとは言わんけど、せめて半額くらいまでには下げられんものなのかな。本体の1/3がインクの値段がっておかしくないか?
 露骨な値段の上昇は感じられないが、インクの1滴は血の1滴よりも高い。
 なにげにEP-806ABが優秀である。あのプリンタはスキャナの性能も良かったし、インクは社外の詰め替え式だったためかなり派手に使えていた。背面に給紙トレイがありさえすれば完璧だったんだがな。

 純正のインクを使い切った先は、当然のように社外品のインクを使うわけだけど、早速Yellowのノズルが詰まった。まさか、社外品のインクを使うとかすれるように設定してあるなんてことはないとは思うけど、いきなりこれは酷い。
 ノズルチェックを行うとこんな感じになる。

 これは10回くらいノズルクリーニングを行った後である。右側の黄色がほとんど印刷されていないが、それだけにとどまらず、他の色も結構かすれている。Kingjetはちょっと質が悪すぎるな。
 ちなみに、ノズルが詰まっている以上はインクは減らないはずだが、インク残量の表示ではすごい勢いで減少しているのが分かる。せめてノズルクリーニングする色を選択させて貰いたいものだけど、プリンタメーカーとしてはユーザーにインクを浪費させることで収入を賄っている以上は望むべくもない。
 当然ながら社外品のインクを使ったプリンタは保証外になるので修理は有償となるらしい[2]。有償で直して貰えるとはいえ、いくらくらいだろ。本体の購入価格が22,608円であり、修理にはいくら掛かるかわからないが1万円くらい掛かりそうで、また純正インクが7000円ということを考えると、プリンタを買い替えた方が良さそうな感じである。
 ノズル分解して自分で洗浄してみようかなとも思うが、他のノズルも詰まりがちなところを見るにKingjetのインクを使っている限りは同様のことが起こりそうである。

参考文献
 [1]不破友芝, 演奏家にはA3対応プリンター, 楽譜の風景(2014)
 [2]修理サービス, EPSON

関連エントリー
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 20160529 EPSON EP-806AB
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チェルニー30番8 演奏解説

 チェルニー30番8を録音したので解説。
 8番は右手のスケールの練習。続く9番は左手のスケールの練習であり、8番と9番は対になっているので一緒に練習するといいんじゃないかと思う。そして、1曲置いて11番が再びスケールの練習となるが、こちらは速度が速いので8番、9番を終わらせてから練習したらよいと思う。
 楽譜はいつもどおり全音を使う。

リズムとフレーズについて
 左手は基本的に4分音符ごとに打鍵するようになっている。メトロノームに合わせて左手でリズムを取り、その上に右手を乗せる形になる。
 右手は32分音符8音を連桁して一つのフレーズを作っており、これが1拍となる。右手は多少速くてもフレーズごとに纏まっていて、リズムが取れていればそれほど悪くはならない。このことを考えると、ユニゾンのスケールで左右の手のズレを許さない30番よりもかなり弾きやすい曲だとも言える。右手のフレーズを速く弾きすぎると次の拍まで少し隙間が空いてしまうが、この隙間を埋めて急いで次の拍に進んでしまうよりも、いっそ隙間を開けてしまって正しいリズムで弾く方が曲としてよく聞こえる。

テンポについて
 4分音符で84bpmとなっている。結構速いけど、チェルニー30番全体を見渡すと、それほど無茶な速度というわけでもない。少し後の11番のスケールは、8番の1.2倍の速度を要求されるので、84bpmくらいは弾けないと話にならないのである。とは言ってもかなり速いことに変わりはないので、スケールを速く演奏するために小細工を要求されるわけである。

スケールについて
 スケールはチェルニーでは嫌になるくらい練習させられるわけだけど、その割になかなか上手くならない。
 基本は脱力して、不要な力を使わず、必要最小限の力だけで指を動かすということだけど、別にそれだけで速いスケールを弾けるようになるわけではない。
 上昇時の指くぐりも、下降時の指跨ぎも基本は肘を外側に向けることで予めポジション移動した先のキーに指が近くなるような手の形を作っておくことである。
上昇スケール
 例えば1小節目最初のフレーズのようにCDEFGAHCを12312345の指使いで取るとすると、

Eを3指で押した後、1指で2,3指の下をくぐってFを押すことになる。こんなに手間をかけていては時間がかかるのは自明であり、滑らかで粒の揃ったスケールになるわけがない。
 ではどうするかというと、打鍵直前のタイミングで既に1指がFキーの上にあればよいのである。スケール最初に1指でCを打鍵し、ついで2指でDを打鍵している時点で1指を離鍵し、Fに向かわせるのである。勿論、なかなか上手くはいかない。この指くぐりのタイミングに合わせて肘を右側に向け指先が左側を向くようにして、少しでも1指がFに近づけるようにするのである。Eを押している3指を軸に腕全体を回転させるような動きになる。
 あるいは、CDEと打鍵した直後に、急いで手全体のポジションを移動させて1指をFの上まで持ってくるポジション奏法という方法もある[1]。しかし、ポジション奏法は手全体を移動しなければならないため、一定以上の速度ではポジション移動の際に音が途切れてしまうので、この曲を速く弾く際にはお勧めできない。
 この2つの奏法は互いに対立する方法ではないので使用状況によって峻別する必要はなく、両者を組み合わせた方法で弾いても何ら問題はない。指くぐりに際して移動する1指などを妨げない手の形を作るという部分が本質となるのである。従って離鍵は速ければ速いほうが良い。
 指くぐりした後は、1から5指に向って順に打鍵する。これは手首の回転を使うと速くなる。
 これらの弾き方を意識しながらリズム変装を行うと弾けるようになってくる。リズム変装はパッセージを細かく分割することで上手く行っていない部分を明らかにしてくれるので、リズム変装で上手く行かない部分を集中的に練習することで効率よく演奏を身につけることが出来る。
 チェルニーは手首や腕を静かにあまり動かさずに弾くことを求めたそうで[2]、今でも手の甲に10円玉を乗せて演奏するとかいう曲芸を披露する人がいるそうだが、当時でさえ時代遅れだったのはリストやショパンの曲を見れば分かる通りである。チェルニーの練習曲なので、チェルニーの言葉に耳を傾けるのもアリなのかも知れないが、ただでさえテンポが早くて非現実的だとか言われているのに、そこから更に制限を加えてどうするつもりなのかと意見せざるを得ない。
下降スケール
 例えば9小節目最初のフレーズ。FEDCHAGFを54321321の指使いで取る。

 上昇スケールの逆の動きと言いたいところだけど、そうとは限らない。
 弾き初めの部分、54321の指使いで下降するのは手首の回転を利用する。これは上昇スケールと逆の動きとなる。続く指跨ぎが問題で、上昇スケールと何が異なるかというと、上昇スケールでは1指が2,3指の下をくぐるに際して2,3指を素早く離鍵して1指の通る空間を作るために指を上げる必要があった。一方、下降スケールでは3指が1指をまたぐ。上昇のときと同じように3指の動きを1指が妨げないようにしなければならない。
 ポジション奏法なら上昇スケールと全く逆の動きで弾けば良いのだが、上記の通り速度が出ない。
 そこで、1指の離鍵について、キーから指を上げるのではなく、指を手前に滑らせてキーの上からどかして離鍵すると、移動する3指を妨げていた1指がなくなるのでスムーズに指跨ぎが出来るわけである。よく「手前に引っ掻く動き」と表記している方法である。
  チェルニー先生はスケールの際の指くぐり、指跨ぎについて、親指と四本の指との交差は、どんなに速いパッセージでも、決して聞いている人に音の途切れや不揃いがわからないように、ごく自然に滑らかに、そして、何気なく行われなければなりません[3]と、無茶を言うでねえと反発せざるを得ないようなことをおっしゃってる。一方でショパン先生はというと、テンポを変えずに非常に速く音階を弾けば、誰も不揃いな音色に気づかないだろう[4]と大分違ったことを言っている。実際の所、チェルニーの言う通りにやっていてはいつまで経っても終わらないから常識的に考えたら適当な所で妥協するしかない。

譜読みについて
 この曲を指定のテンポで弾くなら、結局暗譜して手元を見て弾くことになるのだが、ゆっくり弾くなら楽譜を見ながら弾けばいい。その際、フレーズの変わり目で跳躍することが多い。跳躍の距離を楽譜に書いておくと、どれだけ手を開けばよいか分かるので早く進行できる。勿論、跳躍距離と手の開度は体で覚えておかなければならない。
 スケールの開始の音は基本的に左手の和音と関係があるので、譜読みの助けになると思う。

56小節

 *右手。345指の打鍵がぎこちなくなる。指の形というか長さが不均一なのが原因だけど、人類相手にそんな事を言っても始まらない。なぜかよく分からないが、345指で弾くときに指を伸ばすと上手くいくようになった。
 実際の所、この部分は指くぐりなどポジション移動がないので、十分に脱力して手首を回転させれば問題なく指定の速度に達することが出来る。すると、腕引用したショパン先生の言葉の通り、特に気になることもなく弾ける。

8, 20小節

 ※右手。4指は動きが鈍いため連打の速度が出ないことがある。グランドピアノならダブルエスケープメントを実装しているので打鍵後ハンマーが戻り切る前に再度キーを押しても音を出せるため4指の動きが十分でなくても引くことも可能だが、アップライトでは無理。グランドピアノであっても、4指を鍛えるのを厭うなら3指で弾いたって誰も気づいたりはしない。
 なお、3, 24小節は2,3指なのでただのトリルと変わらず、特に工夫もいらないと思う。

17小節

 ☆3-4指という順で弾くと3指は離鍵が遅れがちになる。というのは4指は隣りの指と腱、筋肉を共有している(腱間結合)ため逆の動きをしづらい構造になっているため、この形のスケールでは3指が離鍵で来ていないと指くぐりが難しく、だいたい指がもつれることになる。しかし、4指が動きづらいのは腱間結合のためだけではなく、筋肉を動かすように脳が発する信号が割と粗雑なため、正確に目標の指だけを動かすようになっていないかったりする。ピアニストは膨大な量の修練により脳から発せられる信号をより正確にし、また腱間結合を柔軟にしていくため独立した指を手に入れるのである[5]。なので、3指の離鍵を意識して練習すると、そのうち脳がその動きに馴致して思うように指を動かせるようになるんじゃないかな。

1820小節

 ※各小節最初の音は2音前に3指で押した音であり、3指が離鍵していなければ打鍵できない。確実に3指を離鍵しておくこと。

2122小節

 これまで1オクターブ程度のスケールだったのが、ここで2オクターブ以上に広がる。スケールの範囲が広がるということは、手首の回転による速度ボーナスが制限されるということ。つまり、ズルせずにちゃんとスケールを演奏しなければならない。
 速く弾くためにはどのような練習をしたらよいかということになる。しかし、闇雲に鍵盤に向かって速く指を動かしたり筋トレしたりする前に、どのような体の動かし方をしたら速く弾けるのかということをよく考えて、実際に鍵盤に指を乗せて考えた動きを追跡してみて可能かどうかを検証してからでなければ、頑張って練習したけど結局弾けなかったということになってしまう。
 スケールを速く弾くということについて、8番はこの2割増しの速度を要求される11番の後塵を拝していることを考えればあまり深刻に考えることはない。しかし、速いことに変わりはないので相応の工夫がいる。
 手のポジションは少し高い位置に置いて、2~5指は打鍵の際にはキーを真っ直ぐ押すのではなく指の付け根MP関節で指を曲げるようにして打鍵し、打鍵後は可能な限り速く離鍵する。指くぐり、指跨ぎは、右手の先の方を左側に少し傾けてやりやすいようにする。また、ポジション移動については、指くぐりのときにポジション移動するのでは静動が小刻みになりすぎていちいち対応しきれないので、一定の速度で左右に動くことになる。このポジション移動の速度はスケールの速度と同じでなければミスタッチになるので、最新の注意を払わなければならない。これができれば11番のスケールにも対応できるので、11番も指定の速度で弾きたいという変態的な趣味の方は是非とも身につける必要のある技術である。

25小節

 ☆右手。これまでスケールだったのが、ここだけ分散和音になっている。そのためミスタッチをしやすいのだが、打鍵する位置が不正確でミスタッチする場合と、使わない指が下がっていたせいで打鍵の際に余計なキーを押してしまう場合と2通りある。どうやってミスタッチしているかを分析してから、その部分を改めるべく練習しないと無駄な時間になってしまう。

参考文献
 [1]岳本恭治, ピアノ脱力奏法ガイドブック②《実践編/チェルニー30版を使って》p24, サーベル社(2015)
 [2]G・ヴェーマイヤー, カルル・チェルニーp228, 音楽之友社(1986)
 [3]カール・ツェルニー, 若き娘への手紙p12, 全音楽譜出版社(1984)
 [4]ジャン=ジャック・エーゲルディンゲル, 弟子から見たショパン―そのピアノ教育法と演奏美学p54, 音楽之友社(2005)
 [5]古屋晋一, ピアニストの脳を科学する: 超絶技巧のメカニズムp187-189, 春秋社(2012)

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御嶽神社行ったよ

 御嶽神社というのはWikipediaによると蔵王権現を祭った神社。金峰神社金峯神社(きんぶ、きんぷ、きんぽう、みたけ)ともいう。総本社は吉野金峰山寺蔵王権現らしいけど、木曽御嶽信仰に基づく神社は、上記と区別して「おんたけじんじゃ」と呼ばれる。起源は蔵王権現信仰であるが別の信仰として分化しているらしい。
 今回行ったのは岐阜県中津川市の星ケ見公園にある御嶽神社。神社の謂れとかに関する掲示が一切ないのでどの御嶽なのか判断できない。普通はどこから分霊したのかってどっかに書くもんだけど、この神社は本当に何も見つからなかった。地理的に御嶽山から近いので木曽御嶽信仰に基づく方なんじゃないかなと個人的には思う。

星が見公園案内板

 駐車場にある案内板。御嶽神社については何も書かれていない。宗教施設は公園の管理の外だということなのだろうか。書いといてくれたっていいじゃんとは思う。
 御嶽神社は公園内をテキトーに歩き回っていると見つけることが出来る。

鳥居

 ちなみに、鳥居の手前にある「奉納」と書かれた石の裏側には平成12年10月吉日神谷徹建と書いてある。星が見公園の池に「神谷池」と名前が付いていたり、近所に神や農園という茶畑があるけど、近所の有力者による奉納ということだろうか。

本殿





 公園を歩き回っていると突然現れる「奉納」の石碑。この先に神社がありそうな雰囲気がする。ちなみにこの石碑の裏には平成8年3月吉日林光建之と書いてある。
 更に踏み込むと「御嶽神社」の表示が現れる。
 その奥の岩場の天辺についに御嶽神社発見。ちっちゃい。神社というより祠じゃん。しかも壊れかけてるし。祠の扉みたいな部分が片方落ちて割れている。この場所、嵐の日とか風凄そうだもんな。
 祠をよく見ると、何か書いてあって頑張って読むと「大巳貴命 少彦名命」と浅く彫ってあるのが確認できた。

祠から見る景色



 絶景。まさに山の天気という感じで、場所によって天気が全然違う。晴れている場所もあれば、あからさまに豪雨っぽい場所もある。
 ここ以外も、星ケ見公園には景色の良いポイントはたくさんある。
 ちなみにこの後帰り道でしっかりと豪雨に見舞われた。