チェルニー30番19 演奏解説

 チェルニー30番19を録音したので例によって解説を書く。
 いつも通り、楽譜は全音版を使う。例によって、演奏する上で特に注意するべきことは楽譜の解説に書いてあるので、その部分は割愛し、もっと瑣末なメカニカルな部分を始め低レベルな解説をする。まともな解説はピティナが行っているのでそちらを参照されたし。

テンポについて
 この曲の三拍子は11番と同じ形をしている。テンポも11番が付点4分音符で66bpmであるのに対して、19番は60bpmで似たようなものである。しかし、11番は32分音符のスケールをメインにしているのに対して、16分音符の装飾音なので演奏速度としてはかなり弾きやすい。
 この19番と次の20番は付点4分音符で60bpmという比較的ゆっくりの曲なので、演奏速度を上げるための努力というものは畢竟要らない。チェルニー30番の序盤はやたらと速度の速い曲ばかりだったので、指定のテンポなんてアスリートのやることだとか思ったけど、このあたりでは速度以外に求めたいものがあるらしい。
 それほどテンポが速くないため、練習課題が一つ減るとはいっても曲自体は簡単ではないのでちゃんと取り組まないといけない。

リズムについて
 左手は17~23小節のユニゾン部分以外は難しい部分もなく、殆どが3拍子を刻むだけなのだけど、右手が忙しい場所では左手の動きに気が回らなくて2,3拍目の1指がキーを底まで押し込めておらずに音が出ていないということがあった。これは一人で練習していてもまずもって気づけない。ピアノの先生について指導を受けるか、録音・録画するかで客観的に演奏を見ないと分からない。忙しくなってくると自分の出す音に耳を傾ける余裕もなくなってくるから。
 右手各拍の(32分音符2つ→16分休符)という特徴的なリズムは最終的に前の音を装飾音とする形で演奏することになるけど、最初はゆっくり正確な音価で練習しなければならない。正しいタイミングで打鍵して正しいタイミングで離鍵する。それができるようになってから速度を上げること。ある程度速度を上げると正確なタイミングを認識できなくなってくるのでそうなると装飾音として弾いているように聴こえるようになる。

8小節

 ※右手1拍目。2-1-2という指使い。2-1で指くぐりをした後に1-2で3度の跳躍となるため、かなり急がないと遅れてしまう。それに加えて、2音目から1-2-3-4指と全て3度の音程で進行した後、3-1指が2度の距離となるため、相当に指を柔軟にしておかなければならない。
 ☆右手5音目のEs。ここに限ったことではないが、黒鍵を押すときはできるだけ指を伸ばしたほうが良い。伸ばした指と黒鍵が交差するように押すことで命中精度が良くなる。

11~12小節

 手元を見ずに弾くために:11から12小節に移る部分の左手。左手のベース音は両小節ともBだけど、4→5と指を変える。音符の下に指番号を書くだけだと、段を移動した際の視線の移動に忙殺されて見落とすので、11小節を演奏中に5指に移動することが分かるように書き込んでおく。

17~23小節

 32分音符で表記されてるけど、これは装飾音。装飾音のユニゾンをぴったり合わせるとか尋常ではない。バッハなんかのテンポの遅い曲の装飾音であれば正確に合わせると言われても頷けるが、これは頭おかしいテンポ指定で知られたチェルニーである。
 演奏するとなると当然左右の手がバラバラになるのだけど、17~19小節がB:V、21~23小節がB:Iの和音で一貫しているのでタイミングがズレてもそれほど違和感はない。この速度ではペダルなんか踏まなくっても残響で十分音が混淆する。だから休符さえちゃんとしてれば雑に弾いても酷くはならない。

24~29小節

 ※24~28小節右手、分散和音の途中、4指で白鍵を押すときにできるだけ4指だけを動かして他の指が4指につられて動いたり手が下がってきたりしないようにする。ポジションが安定するため、続く指くぐりで失敗しづらくなる。
 全て124124という指使いとなっている。白鍵だけの27小節を除いて3指を上げておかなければならない。3指が下りてくると黒鍵に触れてしまう。指定の速度で演奏する動きで3指が落ちて来て黒鍵に触れると必ずキーを押し下げてミスタッチになってしまう。
 ☆25~29小節右手。開始音はA→B→C→Dという順番。分散和音はV→I→V→Iとなっていることが分かると覚える量が少なくて済む。
 一方、左手。24~29小節の間、Fをベースの音として、上の2音は3度の和音で1音ずつ上下する。

44小節

 ※右手2拍目。鍵盤の右の方なので弾きにくい。体を右の方に持っていって手先を左に向けて指をキーに近付ける。あるいは、指を真っ直ぐに伸ばすかしなければ指が届かなかったりして外してしまう。
 4指は動きが悪いため離鍵が遅れがちで2回めのBのときに準備ができていないことがある。離鍵の際に手を上に反らすことで手全体を使って離鍵の動きを助ける。Cを5指の根本で押すことになるけど問題ない。
 当然だが、変な動きをするためピアノの先生はいい顔をしないと思う。

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