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チェルニー30番16 演奏解説

 チェルニー30番16を録音したので解説する。
 いつも通り、楽譜は全音版を使う。例によって、演奏する上で特に注意するべきことは楽譜の解説に書いてあるので、その部分は割愛し、もっと瑣末なメカニカルな部分を始め低レベルな解説をする。まともな解説はピティナが行っているのでそちらを参照されたし。
 チェルニー30番を始めたきっかけが出来るだけ手元を見ずに楽譜を見ながらピアノを弾けるようになろうという試みだったのだけど、この16番にいたては跳躍が多すぎて手元を見ずに弾ける気がしなかったので、最初から暗譜するつもりで割り切って練習したので、とりわけ苦労もなく譜読みというか暗譜終了。
 暗譜してしまえばそんな難しい部分のある曲でもないのですぐに録音して終われるだろうと思っていたのだけど、指定のテンポで合わせてみたら結構速くて結局それなりに難儀した。

 この曲は5音からなるスケールとスタッカートの和音が特徴である。ゆっくり弾く分には全く問題は生じないのだけど、速度を出すとこの2点のどちらも演奏上の障害となる。次にそれぞれ説明を試みる。

・スケール
 この速度でffで弾こうとするとかなり力を込めないと弱い指ではキーを最後まで押し込めずに音を出しそびれてしまう。指先で手前に引っ掻くようにすると理想的な音が出せるが難しい。人間の手は均質な指の付き方をしていないためである。
 すると、普通にキーを押し下げて打鍵し、指を上げて離鍵するとか、手をローリングして弾くとかすることになる。本来、脱力と指の独立で解決するべき問題だけど、そんな技術は一朝一夕で身につくものではない。どうやって、ない技術をごまかしつつ工夫に工夫を重ねて弾くかを考える。ちなみに、ピアノ脱力奏法ガイドブック 2 <実践編/チェルニー30番を使って>にある「すべての音をノン・レガートで練習しましょう」というのは問題を正面から捉えた良い提言である。
 この5音のまとまりで音が出ないのは決まって4音目である。体の使い方が悪いと言ってしまったらそれまでで分析もへったくれもあったものではない。何がどう悪くてどのように弾いたら良くなるかを分析しなければ、ひたすら練習したところで時間の浪費にしかならない。
 まず、脱力できていない点に注目する。先に打鍵した指がキーの上に残っていて、これがつっかえ棒のようになって次の打鍵のための手の動きを妨げている。手を鍵盤に近づけようとしても、先に打鍵した指が鍵盤と手の距離を近づけさせまいとするため打鍵出来ないのである。これが脱力できないことによる障害である。一つの解決案として、手のポジションを鍵盤の上でなく鍵盤の横に持ってくることである。かなり低い位置に手が来るようになるので、椅子を低くするか猫背になるかしなければならない。僕としては普段から椅子を一番低い位置に合わせているのであんまり気にならない。とにかく、肘が鍵盤よりも下に来る、グールドの如きピアノの先生に怒られる演奏スタイルになる。脱力が出来ない苦肉の策としてやっているのだから褒められたものではない。それはそうと、手を鍵盤の上から鍵盤の横に移動させることで、つっかえ棒による抵抗がなくなる。抵抗はキーの移動する方向に対する動きに対して起こるのだが、このポジションでは指と鍵盤が90度近い角度となって抵抗となるような力を発揮できないのである。モーメントにcos 90°をかけるのと同じ原理である。
 これで解決かと思いきや、そうは問屋がおろさない。やっぱり脱力しなきゃなんないよね、なんて今更当たり前のことを言うつもりはない。ある程度は良くなったが、不完全である。これは演奏をビデオで撮影して漸く分かることである。独学ではなくレッスンを受けているのであれば先生から指摘をしてもらえるんじゃないかなと思う。打鍵の際に指が鍵盤の上に乗るのだけど、鍵盤がほとんど動かないのである。ピアノのキーが重いというのもあるのだけど、それにしてもほとんど動かないってのはないでしょう。これは脱力ではなく指の独立の問題である。一つ前の指が打鍵したタイミングで指の力を抜くのだが、一緒に隣の指の力も抜いてしまいキーを押すのに必要な力が失われてしまうのである。独立した指を獲得するための訓練をしても良いのだけど、当然ながら苦難の道程であり即効性はない。一つの解決策として、力を抜かずに指を振り抜こうという強い意志を保つことである。速い速度で演奏すると、一音一音に込めるられる打鍵のための意志は時間に比例して弱くなってしまうので、短い時間に細切れにされても消えないような強い意志を持って打鍵することである。もう一つの解決策は手元を見ることである。手元を見ることによってこの指を動かさなければならないという意志を忘れずに貫徹することができるようになる。そんなことを言っても演奏中の視線は必要に迫られて見る場所を固定しなければならなず、そんな風に好きな場所を眺めているような自由度はないのでこれもなかなか難しい。

・スタッカートの和音
 パッセージの間に入るスタッカートの和音なんだけど、打鍵に要さない指が打鍵の衝撃で勝手に降りてきてキーを押してしまう。これはどういうわけか右手ばかりに起こった。脱力しているせいでこのようなことになるので、頑張って指を上げていなければならない。そもそも人間の手ってのは手を開く方の力はかなり弱い、というかピアニストでもなければそんな力を鍛える機会がない。でもピアニストであればこの力は鍛えなければならない。昔から言われるように、手をグッパッする運動をするといいんじゃないかな。根津栄子編のチェルニー30番に具体的なやり方が描いてあるけど、グッパッするだけなのでやり方とか割とどうでもいい。
 YouTubeなどでピアニストの演奏動画を見てると巨匠と呼ばれる方々はみんな打鍵に要さない指はあんまり動かない。というかそもそも余計な動き自体少ない。そして、使わない指がキーに触れないように凄く気をつけて演奏しているのが見える。一つの指を動かすと他の指も一緒に動いてしまうとか言ってるレベルでは実現できないのは間違いないのだけど、無理だと言って諦めずにそういった努力はしましょうね。ホロビッツの英雄ポロネーズを見てそう思った。

 暗譜する際に、和音とパッセージの音の位置関係について微妙な関連があるので、こんな感じで関連する音符を○で囲んで記憶の助けにした。
 ついでに、調性を調べたり和音にコード名を付けてみた。

12小節

 ☆後半右手、G→Gの1オクターブの距離を手で覚えておき、ポジション移動の必要な左手を注視する。

13~14小節

 ✡9番の演奏解説でも描いたが、右手の下降スケールは肘を外側に向け、手を内側に向けると弾きやすい。3,4指が1指を跨ぐときの移動距離が短くなるためである。
 ※右手の下降スケールをこの速度で弾こうとすると手元を見ていないと精度が下がって外してしまう。その為、右手を注視することになるのだけど、従って左手を見ることが出来ない。13小節では左手がポジション移動するので手元を見たくなるが、それは叶わない。ここでは小節最初の音を押す前後に左手周辺の様子位置関係を記憶し、その記憶をもとに左手の次の位置を正確に定めて打鍵する。
 この鍵盤上の位置関係を記憶するというのは手元を見ずに弾く上で重要なポイントなので、必要に駆られずともする癖をつけておくと手元を見ずに弾くこと、つまり速い譜読みや初見奏へ繋がるテクニックである。

20、29~30小節


 これらの下降スケールは全て白鍵なので、グリッサンドでクリアすることができる。その際は速度に注意すること。当然ながらピアノの先生の前でこういうことをすると凄く怒られそうなので、やるにしてもチェルニーってつまらないの?にあるようにあくまで余興としておくこと。

25~28小節

 和音が小節毎に切り替わり、C: IV→I→IV→Iという並びになっている。勿論、演奏している最中にそんなことを認識している余裕はない。

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