構造色と位相の話

 通常、色というのは物質が吸収する以外の波長成分が反射されて見える光だが、構造色というのは光の波長近辺の周期構造から特定の波長の光だけを反射することで色を示している。構造由来であり、見る角度によって周期が変わるので、独特な輝きを持っている。

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 構造色は同じ波長の光を強め合うのだけど、光の干渉作用と同じで位相の合っている光でなければ強め合うことはできない。逆位相の光は打ち消し合ってしまう。
 レーザー光はその特徴として波長と位相が揃っているのだが、逆に言うと自然光は位相はバラバラだということになる。しかし、自然光の中にあらゆる位相が均一に存在しているとすれば、当然逆位相の光もあるわけで、お互いに打ち消し合って世界は暗黒に覆われてしまう。そうなっていないということは、やはり位相の偏りがあるということになる。
 どういう事になってるのだろうと考えてたのだけど、調べてみたら割とわかりやすい説明があった。数式はよくわからない、というか読む気にならないけど、結論は書いてあるのでだいたい理解できるようになってる。1原子から発せられる蛍光はそれなりに位相の揃った光となるということである。
 それで気になるのは、多数の原子がランダムに配置されている場合である。イメージしやすいように状況を仮定すると、蛍光灯の中に水銀蒸気が飛び回っていてそこに電子が衝突することで励起され蛍光を発するとする。水銀原子の位置も電子が衝突するタイミングもバラバラである。にもかかわらず、蛍光灯の下でもモルフォ蝶は青く光ってるし、シャボン玉やオイルは虹色に滲んでるし、オパールは相変わらず変な色に光ってる。ってことは、ランダムに思われる自然光もそれなりに位相が揃っていなければならない。これは1つの原子から光が発信しているという条件で考察した上のリンクでは説明しきれない。
 で、ここからは思いつきなのだけど、2案ほど考えてみた。
・光というのは目に見えるところから思うほど密に飛び交っているわけではなく、同じ原子から出てきた位相の揃った光が極めて短いの間に細切れになって飛び交っている。密度は低いけど、高速で飛んでいるのでそれなりの量が目に入ってくる。互いに干渉しあうほどには密ではないが、一塊の光自体は位相が揃っているので構造色を示すことができる。
・多くの光が干渉し合いながら飛び交っているけど、位相が平準化するほどの光量はなく、重ね合わせの結果として強度の強い光の位相が残ることになる。  こんな感じに考えてみた。ただし、光量を上げ続けるとやはりどこかで打ち消し合うことになってしまうので、正しいかどうかってのはちょっと自信がない。

参考文献
[1]田所利康, イラストレイテッド光の科学, 朝倉書店(2014)