チェルニー30番9 演奏解説

 チェルニー30番の9番を録音・公開した。例によって指定のテンポで弾いたので、解説を書こうと思う。
 6番の解説で書いてなかったのだけど、僕はスケールがあんまり好きじゃなくって、それゆえにこれまであんまり真面目に練習してこなかった。そのツケが回ってきて、8番では相当な苦労をした、というかしている。8番はまだ録音しておらず、練習中である。次のGW中に録音できたらいいなと思っている。
 スケールの練習ということでどうしても8番との比較が多くなる。8番との大きな違い、左手のスケールの練習、テンポが少し遅いという2点。先に練習を始めた8番よりも先に録音を済ませたということからもわかると思うが、8番よりはいくらか簡単である。それは、テンポが遅いということと、フラットが1つ付いているため指くぐりがし易いためである。
 この曲も例によって相当速いテンポを指定してあるが、恐ろしいことに8番は更に早いテンポを指定してあるうえに、調号がついていないため白鍵ばかりで非常に弾きづらい。おそらくチェルニーは左手は運動性で右手に劣るからということで少しテンポを緩めたのだと思う。
 結構苦労したということもあり、今回は少し分量が多くなった。

 いつも通り、楽譜は全音版を使う。例によって、演奏する上で特に注意するべきことは楽譜の解説に書いてあるので、その部分は割愛し、もっと瑣末なメカニカルな部分を始め低レベルな解説をする。
 チェルニー30番は解説に「多少の困難はあっても、指使いは指示されているとおりに弾くこと。」と書いてあるのだけど、今回に限っては指使いが不条理極まりなく、独自の運指に変更した。作曲者の指示など知ったことか!
 この曲は全体的に高音側の音をよく使う。左手のスケールの練習なので勢い左手の音が多くなるのだけど、バスの領域をこの密度で打鍵しまくると音楽として劣悪になってしまうので、左手にしては比較的高い音を使うことで音楽性を保つことにしてある。そういうわけで、全体的に高音側にシフトした配置となっている。それで、高音を弾くには右の方に座ったほうが弾きやすくなる。大体FかGが正面に来るくらい少し右側に座るといいと思う。あるいは、もっと右でも良いかもしれない。

和音にスラーが付いている部分は次のように弾く。



 グランドピアノの場合は音を切らずに同じ音を打鍵するというテクニックがあるけど、そうそうできるものではないので、このようにして同音になる部分を僅かに切って、そうでない音でスラーを表現する。この場合は、Fが次の音を打鍵した少し後まで残っても良い。
 同音でなくても、同じ指を使う場合も同様に切らなければならない。こちらの場合はグランドピアノの機能で切らずにというわけにはいかない。

3小節左手最後

 ☆ここだけではないが、下降スケールから上昇スケールに変わるときに4指が抜けることが多い。4指自体が弱いことと、直後に同じ音を4指で押さえなければならないことでキーを押し下げるのに十分な力が入っていないため。指を立てるようにして弾くと、5指より4指のほうが長いので5指に先んじて4指で打鍵できる。この時、指の動きだけでなくての動きも使って打鍵する。

4小節左手後半、22小節


 *8番では右手の上昇スケールが難しかったが、同じ理屈で左手は下降スケールが弾きづらい。ただし、上で書いたようにこの曲自体フラットが付いている上にテンポが僅かに遅いため8番よりも弾きやすい。
 肘を左に向けて、くぐった先のキーに1指をできるだけ近づける。1指でキーを押したらすみやかに手の向きをまっすぐに戻し、続く音を弾きやすくする。指をよく上げるようにするといくらか弾きやすくなる。

7小節左手最初

 ※Eを2指で押すのだけど、この2音前でFを2指で押しており、しっかりと離鍵していないとEのキーの側面に指が引っかかって弾けなくなる。ちゃんと指を上げること。

9~12小節左手

 *左手各所スケールの後の跳躍で早く入り過ぎて前の音と重なってしまうことがある。スケールを弾き終えた次の正確なタイミングを意識すること。

15小節右手前半

 ※手を寝かせるようにして弾き始め、打鍵の反動で一音ずつ指を立てるように手の位置を少しずつ上げていくとどういうわけか上手く弾ける。

16小節右手

 ◎5454のトレモロは4の動きが悪くて崩れやすい。4指は力が弱いため遅れがちだが、離鍵を速くすることで準備時間を短縮し、速度を上げることができる。また、指を少し伸ばし気味にすると弾きやすくなる。

23小節右手

 下降スケールにおいて、4指が1指を跨ぐ際に肘を右側に突き出すと4指の移動距離が短く、また関節に掛かる負荷が小さくなるため弾きやすくなる。

24小節右手最後

 ●4-1でオクターブを跳躍する。外しやすいのでちゃんと跳躍先を目視確認すること。
 また、隣のGに触れやすいのでしっかり上から押さえること。

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