神我狩 NPC集

 最近、神我狩のマスターをする機会が度々ある。
 その際に、登場NPCについてイラストと紹介文を一緒に印刷してプレイヤーに配るようにしてる。オリジナルのNPCの場合はテキトーにネットで拾ってきたイラストを貼り付けるのだけど、公式NPCの場合はルールブックをスキャンしてそのまま貼り付けている。
 それはそうと、セッションのたびにルールブックをスキャンしてNPC一覧を作るのも面倒だし、スキャンした文字は解像度が悪くて潰れてしまっていることがあるし、色が薄くて読みにくいということもよくある。そんなんで、イラストだけはスキャンして、テキスト部分は自分で入力したものをデータベースとして作っておいたら色々楽じゃないかなと思って作ってみた。
 ここに置いておくと、データベースの更新に追従できないので、TRPGのページに置いておく。
 取り敢えず、今回は基本ルールブックだけ入力してみた。
 イラストは600dpiでスキャンして、gifで見栄えが悪くならない程度に圧縮した。結局平均して1枚あたり50KB弱となった。エクセルファイルの容量の殆どが画像データである。

・使い方
 現状、シートは3枚ある。①キャラ一覧、②データ表示シート、③基本ルールブックのデータベースである。
 書籍の名称とその中の掲載順の組み合わせでキャラを識別することにした。①キャラ一覧のシートにまとめておいた。
 使い方といっても、②に誰のデータを呼び出すかというだけである。簡潔にいってしまうと、B2:C5に使うルールブックとキャラの番号を入力するだけ。見ての通り、4名まで同時に表示出来るようになっている。そういや、ブランクを入れておくのを忘れてた。
 一応、4名のデータが1枚に収まるように印刷範囲を設定しているけど、テキトーに弄ったらいいと思う。
 ルールブックにあるものよりもちょっと横長の作りになっているので、列の幅を小さくして整えても良いかも知れない。その際、I1のセルに1行に収める標準の文字数を入力してあるので、この値を手頃な値に調整したら良い。

・エクセルについて
 今回、エクセルの機能をかなりふんだんに使った。その覚書程度にエクセルの入力内容について書いておこうと思う。
 環境によって動いたり動かなかったりするのは嫌なのだけど、Excel2007で作ったのでそれ以降なら使えるはず。xls形式で保存したところ、使えない機能が多くあるような感じで警告が出たので、多分Excel2000とかでは動かないんじゃないかと思う。
 実は、このファイルを作り始めた時点では自分の使ったことのない技術が必要だったため、上手く作れる確証が持てなかった。最悪、コピペで済ませられるような形になっちゃうかもとか思っていた。

・画像のリンク
 エクセルでは普通セルのアドレスを表記して参照するけど、参照先のセルに画像が乗っかっていても画像を呼び出すことはできない。しかし、是非とも画像を呼び出したい場合、セルに名前を付けてそのセルの表示を呼び出すという事ができる。検索すると、色々なページがヒットするけど、どれもこれも何をしているのかよく分からない。Office TANAKA(魚拓)というサイトが最も分かりやすく説明しているけど、やっぱりよくわからない。gifアニメで示してくれるので他のサイトと比較して手順だけは分かるので、不明瞭な儀式程度に思って手順を追ってみたら、なんとかなった。
 なんとかなったけど、印刷しようとすると画像がおかしなことになる。

 設定が悪いのかと色々弄ってみたけど、結局Excel側の不具合だということが判明した。Excel2007でリンク貼り付けをした図が印刷でずれる件InternetArchive, WEB魚拓)に答えが見つかった。このExcel2007という表計算ソフトは矢鱈と処理が重いことも含めて色々とクソなソフトである。

・画像について
 WORDとかPowerPointとか一太郎とかだと、画像を載せたいときはエクスプローラーからドラッグ&ドロップすることが多いと思うのだけど、どういうわけかエクセルではできない。でも、別のソフトを介してドラッグ&ドロップして表示することは出来る。例えば、WORDに貼っ付けてから持ってくるとか。
 それで、今回ブラウザに表示させて持ってくるというのを試してみた。
 このやり方は確かに楽なんだけど、エクセル内に保存されるファイルを確認したところ、勝手にpngファイルに書き換えられた上に、サイズを小さくされていた。通常のエクセルの画像を挿入する方法でやった場合はちゃんとできた。ただし、jpegファイルはjpegのままだけど、画像サイズを小さくされていた。エクセル余計なことしすぎ。

・ルビを振りたい
 名前と二つ名に振り仮名のあるキャラがいる。
 データベースの方に振り仮名があれば、そのまま反映されたりしないかなとか思っていたのだけど、そんなことは全くなく、データベースのルビの有る無しは完全に意味がなかった。
 仕方ないので、上のセルに振り仮名を乗せることにした。自動的に適切な位置にルビを配置させることは物凄く難しい。ルビを振らない文字の文字数からスペースの数を割り出したりして配分した。reptというコマンドは初めて使う。例えば、「=rept(" ",5)」と入力すると全角スペースを5回繰り返して表示するという意味。

・全角のダブルクォーテーションが勝手に半角に変えられる
 エクセルはMicrosoftの製品なので、開発者は多分アメリカ人なのでしょう。彼らが全角・半角の意義を理解しているとは言い難く、ダブルクォーテーションの全角と半角を使う意味は分からないのだと思う。そもそも、標準アルファベットのダブルクォーテーションに閉じる方向が存在しないし。それはそれでプログラムを書く上では便利なんだけど、日本語を扱う上ではこういったカッコ記号の類で開きと閉じの違いは重要である。なにせ、曖昧な構造であり、一つの意味を表現するのが難しい言語なので、正確な表現を求めると表記がより複雑になっていく。
 そんな事はいいとして、とにかく全角のダブルクォーテーションが勝手に半角に変えられてしまう。
 エクセルの仕様なので仕方がない。と言って受け入れるわけにもいかない。
 半角に変えられるのは、数式の中に含まれている場合なので、ただセルに「“”」と入力するだけなら出来る。なので、H1に「“”」と入力しておいて、必要になったら「=left(h1,1)」「=right(h1,1)」と入力して呼び出すことにした。
 あるいはchar(8520), char(8521)と入力しても表示させることが出来る。

・イラストを避けて文字を書く
 一番自信がなかったのがこれ。WORDとか一太郎とかいったワープロソフトであれば普通に使うのだが、Excelにはそんな機能はない。
 いっそ、トーキョーN◎VAのパーソナリティみたいに横長にして左側3分の1くらいをイラストにしてしまおうかとも思った。
 色々と悩んだ末、1行ごとに表示する文字数を決めて、その数だけ順番に表示することにした。改行があると、そこで行は終了となるので、何文字目に改行コードである"char(10)"があるのかを調べながら条件を作らなければならない。
 ついでに、禁則処理と半角文字による隙間を埋めるための文字数追加も実装した。

・印刷しようとするとアスペクトが変わる
 印刷プレビューで印刷結果を確認すると横に伸びたようになる。

 左が通常の表示で、右側が印刷プレビューである。

 ちなみに、これがオリジナル。
 印刷しようとすると、四十七代目がぽっちゃりした感じになる。
 印刷設定とかに問題があるのかと、色々弄り倒してみたけどどうも直らない。
 それで、上のエクセルの画面と印刷プレビューを見比べてみると、横に伸びたというよりも縦に縮んだように見える。そんで、調べてみたところ、エクセルの表示と印刷結果でセルの幅や高さが異なってくるというのはエクセルの仕様であり、マイクロソフトは直すつもりがないということがわかった。

エクセルでの出力縦横比が変わる(魚拓)
Office2016 エクセルで配置した画像比率が変わってしまう(魚拓, InternetArchive)
異なる複数の Windows 環境で Excel ファイルを共有すると、印刷範囲、セルの幅、または高さが変更される場合がある

 仕様なのでどうにか頑張って設定をいじったところで望んだように正しく出力されるということは望むべくもない。エクセルとかにちょっと詳しい人に伺ったところ、Excel2007の問題ではなく、歴代エクセルの仕様であり、エクセルのバージョンごとにアスペクト比の変動具合が異なってくることさえあるとのこと。打つ手はなさそうである。
 ということで頑張るのはすっぱり諦めて、取るべき方向は2種類。エクセルの表示を合わせるか、印刷を合わせるか、となる。
 誰でも同じ表示になるエクセルの表示画面の方を正しい比率に合わせるほうが品質が安定するのだけど、このNPC集を作る動機というのがマスターをする際に印刷する資料を作りたいということで、エクセル画面の見た目は悪くなるが、印刷結果が正しくなるようにした。
 それぞれのサイズを調べてみると、縦横のドット数は印刷プレビューで575:340、エクセル画面で534:359だったので、縦の幅を(575/534)/(340/359) = 1.1368倍にすることで解決とした。
 これはExcel2007の設定なので、Sheet2の4つの画像を使用者ごとの環境にあった倍率で設定し直した方が良いかも知れない。
 これを調査するために印刷プレビューを表示するたびに、画像の表示がおかしくなって、基本シートで"改ページプレビュー"→"標準"→F9とコマンドを入力して表示を直さなければならないのが非常に煩雑で、結局マクロを組んで自動でもとに戻るようにしてしまった。公開するバージョンではマクロは邪魔なので、マクロの入っていない通常のファイルを上げた。

 そんなわけで、数々のハードルを越えたり避けたりして完成に至った。
 今後も折を見てデータベースを増やしていこうと思う。


20191017追記

 ストーリー&データ集 少女を焦がす熾火を入力したのだけど、このサプリメントはシナリオ集でありそのNPCについてのデータが掲載されていて、その中には「CPC①」とか書いてある。

 このシナリオ専用のNPCであるので、神我狩公式に存在するキャラとしては扱われない。そのため、収録を躊躇って後回しにしたのだけど、これで最後だしということで折角なので掲載した。
 ところで、CPC①とかいう表記よりも、キャラ名で書いたほうがいいかなと思って"一覧"シートのF2からF6にPC名を書いてセッションのときに使えるようにしてみたので、もし使用する機会があるなら利用してみると良いと思う。
 ちなみに、僕はまだこのシナリオを遊んだことはない。


20201213追記

 このシートは4人まで同時に載せられるようにしているけど、4人よりも少ない場合はキャラクターの番号を大きくして存在しないキャラを設定すれば取り敢えずエラー表示になって見えなくなるからいいかなと思っていたのだけど、あまり見てくれが良くないのでちゃんと何も表示しないように出来るようにした。
 BのSheet2のBの列に"blank"という項目を追加した。これで番号を1にすることでブランクのNPC紹介とすることができる。

関連エントリー
 20140726 神我狩データ集
 20140617 神我狩データ集

エチュード Op25-9 演奏解説

 ショパンの練習曲Op.25-9「蝶々」を録音したので、いつもの解説。
 短い曲だから、そんなに苦労しないだろうと安易な考えで手を付けたんだけどかなり難しい。実際、短いだけあって譜読みはすぐに終わったんだけど、全然うまく弾けるようにならなくて困った。
 作品25の中では6番で3度、8番で6度、9番で8度、10番で8度と掴む音の距離が広がっていく構造となっている。また、9番目のこの曲で気軽な曲は終了、続きは10番, 11番, 12番と重量級の曲が続くことになる。軽快な長調としては最後の曲として楽しみたい。
 「蝶々」というタイトルはもちろんショパンが付けたわけではない。しかし、蝶々から想像する軽快な動きと、蝶々のイメージと合致する対称性がそこかしこに登場する。また、手の動きが蝶々みたいだと言う人もいる。しかし、あくまで「蝶々」とは後付けのタイトルであり、そのイメージに引き摺られるのは良くない。後半25小節からのフォルテや、33小節からのフォルテシモ蝶々のイメージとは乖離する。あくまで蝶々のイメージを大切にして演奏したいというのなら良いが、そこのところは理解しておいたほうが良い。
 楽譜はナショナルエディションを使ったけど、付録の解説書にはこの曲についての演奏に関する解説はないので、別にナショナルエディションを勧める理由はない。原資料に関する解説はあるけど、研究者でもなきゃ用はない部分なので、あっても全然有り難みを感じない。寧ろ練習法などがふんだんに盛り込まれているコルトー版が良いかも知れない。

全体的に
 練習し始めの頃は当然ながら十分ゆっくり弾いて、手が馴れるに従って少しずつテンポを上げていくのだけど、それなりに弾けるようになっても最初にゆっくり弾いて手の練習とするのにはよい。曲自体短いし、かなり細かい動きもあるのでその日の練習が捗る気がする。
 オクターブを軽やかに弾く練習なので、手首を柔らかくして手首の上下で鍵盤を押さえる。腕を上下させると動きが大きいために余計な疲労を呼ぶことになるし、動きが大味のなるので音に繊細さが欠けることとなる。この動きが身についていないうちは、ぎこちない動きになるかもい知れないけど、練習していればやがて脱力して弾けるようになるので、練習初期から手首の動きを意識するようにすると良い。手首を柔らかくするのだが、同時に指も柔らかくする。ただし、打鍵の瞬間だけは指はしっかりと固める。でないと、打鍵に費やすべきエネルギーの殆どが指の弾性変形に費やされてしまい、打鍵に必要な力をキーに掛けることができなくなってしまう。
 拍前半で16部音符2つに分散させてオクターブを弾く形になっている。基本的に下→上の順番でオクターブを押さえるのだけど、後に押さえる上の音が疎かになりがち。上の音を弾き損ねてもオクターブ下の音が出ていれば音楽として不自然な感じにはならないのであまり気にせずにスルーしてしまうことも出来る。人前で弾く場合はそうやって弾き飛ばしてしまうのも仕方ないが、練習の際はちゃんと音を出せるように立ち止まって反復練習しなければならない。
 拍後半ではオクターブの移動が多い。黒鍵→白鍵の順でオクターブ弾く場合、上の音の指使いは4→5となることが多いが、5指で白鍵を押したときに直前に押した黒鍵を4指で押してしまうことがある。本来、4→5とレガートに繋がっていれば5指を押すまで4指は黒鍵を抑えたままなのでこのタイミングで鳴らすことはないはずである。だから、こうして4指の黒鍵を押してしまうというのはしっかりとレガートになっていないことを意味する。また、5指で白鍵を押すと同時に4指を上げなければならないけど、4指は動きが悪くてそう易易とは上がってくれない。この場合、椅子を低くするとか背中を曲げるとかして手・肘を低い位置に持ってきて手先を少し上向かせるという風にして4指を上げやすくすることが出来る。ショパンの弟子のザレスカ=ローゼンガルトも「手首を低く保つこと」と言っている[6]。曲によって椅子の高さを変えるのは良くないので、手の高さは姿勢で制御することになる。
 オクターブの多い曲なので、弾きやすいように黒鍵の多い変ト長調となっている。黒鍵のエチュードOp10-5もそうなんだけど、黒鍵は指先で打鍵するのではなく、キーと指が交差するようにするとミスタッチが少なくなる。狭い黒鍵の上を指先という点ではなく、指全体を線として指とキーを交わらせる。ただし、白鍵はちゃんと指先で押さえないといけない。
 4小節で一つの主題となっており、これを変装して繰り返す形になっているため、起伏の乏しい演奏だと単調に聞こえてしまう。特に前半はleggiero(軽く優美に)で始まり終始弱音となっているので顕著である。pであってもその中で強弱が指示されているので、これをちゃんと守るだけで単調な演奏は避けられるようになっている。

テンポについて
 テンポはAllegro assai[1][2][3], Assai allegro[4], Allegro vivace[5]などがあるがどれも4分音符で112bpmとなっている。コルトー版には標準の演奏時間が1:07と書いてあるが、手元にある録音の演奏時間を並べてみると次のように大体1:00前後に固まっている。

Wilhelm Backhaus 0:52
Boris Berezovsky 0:58
Maurizio Polini 0:58
Rebecca Penneys 0:58
Vladimir Ashkenazy 0:58
Georges Cziffra 0:59
Alfred Cortot 1:00
Andrei Gavrilov 1:00
Murray Perahia 1:00
Takami 1:00
河合優子 1:00
Adam Harasiewicz 1:03
Istvan Szekely 1:03
Martijn van dne Hoeck 1:05
momo 1:05
Samson Francois 1:09
藤原由紀乃 1:20

 藤原由紀乃は1分20秒とかなりゆっくりの演奏だが、この中でも群を抜いて美しい演奏である。コンクールで競うのでもなければこういうゆっくりな演奏も良いと思うけど、仮令このテンポにしてもこれほど美しく演奏するのは常人には不可能じゃないかなと思う。ここまで極端にゆっくりにしなくても、1分10秒くらいのスローテンポでも十分よく聞こえる。というよりも、寧ろこの曲は早く弾くほど魅力がなくなっていく気がする。

座る位置について
 体の中心が真ん中のドの辺りか、あるいはもう少し左に来るくらいが丁度よいと思う。
 手をまっすぐ前に向けると指先の位置が1指よりも5指のほうが前に来る。他の指はもっと前に出てくる。

 キーは出来るだけ手前側を押すのが好ましいので、手を丸くして各指が同じように手前に来るように配置する。しかし、オクターブを弾くために手を広げると指を丸めて位置を調整する余裕はなくなる。手を小指の方に曲げること(尺側偏位)によって1指と5指は大体同じ位置でキーを押さえることが出来る。

 しかし、慢性的な尺側偏位はストレス損傷を引き起こす原因となる[7]ので、あまり好ましくない。
 すこし左側に座ると、自然右側に手を伸ばすことになり尺側偏位に頼らずに1指と5指の位置を合わせることが出来るようになる。もちろん、あんまり左に寄りすぎると弾くにくくなるので、丁度よい位置というのがある。それが体の中心が真ん中のドの辺りか、あるいはもう少し左に来るくらいである。

18小節

 この曲は基本的に同じような動きの繰り返しなので殆どの部分で共通の注意事項がある。それを18小節を代表して説明する。
 14小節
で主題を提示して、続く58小節
で主題の繰り返しという形を取っている。繰り返しとはいっても、各拍の1音目と2音目を入れ替えてちょっと違う風にしている。124小節目までの前半は同様の作りになっており、そのため8小節ごとのまとまりで見ると対象性の高い構造が多くよく見られる。
 右手は各拍1~3音目までスラーがかかっている。1指の動きを見ると例えば1小節前半はB→Cesと黒鍵から隣り合った白鍵への移動なので指を滑らせてレガートに繋げることは出来るが、1小節後半はDes→Esと黒鍵→黒鍵となっており、どうしてもレガートに繋げることは不可能である。こういう場合は1音目のDesは出来るだけ引っ張って3音目の直前で指を離して、Esに移る。その一方で、2音目のAs, Desをレガートに繋ぐ。1音目を切ってしまっても2音目が鳴っているので、音を切ってしまったことにあまり気づかれない。しかも、鳴っている音は切った音の倍音である。これでレガートでないと思うほうがおかしい。

 続くスタッカートだが、拍前半ほどは主張しない軽さで打鍵する。18小節では拍頭の音にアクセントが付いているが、9小節以降ではアクセントを付けるほどではないにしろ、拍頭の音は他の音よりも主張があるべき。拍頭の音が16部音符2つ分の音価を持っていることから、この音の重要性が示唆されている。
 左手は殆どの音にスタッカートが付いている。メゾスカッタートではないし、スタッカーティシモでもない、適切な長さのスタッカートで揃える。
 左手裏拍が和音となっているが、この和音は一番高い音をちょっと強調する。一番上の音が別の旋律のようなものを描いているためである[8]
 右手の内声は大抵左手の和音に含まれていることを知っていると、譜読みがちょっとだけ捗る。

13小節
 ☆譜読みのために:左手のベース音が1音ずつ下がっていく。各小節では和音が基本形→第1回転形となる。

12小節

 ●右手2音目。CBは25で取るにはかなり距離があり、ギリギリまで指を開いてDesを避けるようにして取らないと余計なキーに触れてしまう。難しそうなら諦めて15で取るべき。
 ※右手2拍目。2回出てくるDesは2指で取る。これを3指で取ってしまうと、最後のDes-Fの和音を3-5で取ったときに間の4指がこの動きに引きずられて下がってしまいEsのキーを押してしまう。
 *左手2音目。4和音で音が多い上に5指で黒鍵を押すので非常に弾きにくい。Cを押さえる1指以外を真っ直ぐに伸ばして平ぺったい板状にする。この形にした2~4指で該当する辺りのキーをテキトーに叩くとEs, Ges, Asに上手く当てることが出来る。

14小節

 ✡右手1音目。このGは黒鍵と黒鍵の間を押さえねばならず、普通に上から押さえるのは至難の業である。1つ前、13小節最後のCのオクターブのときに、2指をGの位置にスタンバイしておき、14小節はじめでDesに4指を伸ばす動きに合わせて2指を鍵盤奥に押し込み、24指で同時にキーを押し下げる。
 ◎左手最後。ここを135ではなく124で取るのは、135だと黒鍵に対して指が真っ直ぐになって外しやすく、124だと指と黒鍵が斜めに交わるので打鍵が正確になるため。

21小節

 ▲右手がかなり高い音であり、普通に手を伸ばしてオクターブをつかもうとすると手が鍵盤に対して斜めになってしまい、手を開く広さや跳躍感覚が曖昧になってしまう。座る位置を右に移動しても良いのだけど、ここの4小節だけなので上体を右に移動させて弾く。左手が降りてくるに従い、元の姿勢に戻るようにしたら良い。

2324小節

 左手、裏拍の3和音。下から順に半音ずつ下がり、最後は下がった先のFが変ト長調の導音となって、続く25小節で主題が再現するようになっている。このギミックを入れるために23小節は右手内声のEsを左手の和音に含めることができなくなっている。
 この次の25小節からフォルテになる。いきなりフォルテにしちゃ駄目ということはないが、24後半でEsesにアクセントが付いており、フォルテの準備となるようにはなっている。2324小節は続く25小節へ期待を持たせるような進行になっているので、これに合わせてちょっとずつ音量を上げても良いと思う。あるいは、この4小節でペダルを強く踏んでいって音量を上げるという手もある[8]

36小節

 ritenutoの後にa tempoの指示がない。元のテンポに戻さないと明らかに不自然であり、こういう場合はa tempoがなくても元の速度に戻す[9]。なお、コルトー版ではちゃんと"a Tempo"と書いてある。

3738小節

 ☆37小節前半までffで、Desを押した直後にペダルをオフにするのでDes以外の音は消える。Desは指で保持するため、ペダルをオフにしても残る。このDesはffのときに押した音なので38小節の前半まで残ることになる。37小節後半からはpなので、このDesはかなり目立つ。
 コルトーはこのDesを41小節まで保持しても良いとしている。

3844小節
 譜読みのために:この間、左手は全て同じ音になっている。

4551小節

 ◎右手。各拍同じ音型が続く。和音部分は上声部を主張したいが、3音目のCesだけは白鍵であり他のキーよりも1.2cmほど低い位置にあって押しにくい。そのことを意識してしっかりとキーを押し下げる。前2音と後2音では手のポジションが異なる。ポジション移動を怠らないこと。手首が円を描くようにポジション移動をする。

51小節
 右手、最後のひとかたまりはスラーで繋がっているので、ちゃんと音をつなげること。
 また、最後のB-Gesはスタッカートが付いている。スタッカートであって、スタッカーティシモではないので、短く切りすぎないこと。

参考文献
[1]Jan Ekier, CHOPIN 2 ETIUDY, Wydano w Akademickim Centrum Graficzno-Marketingowym LODART S.A.(2000)
[2]小坂裕子, フレデリック・ショパン全仕事, 株式会社アルテスパブリッシング(2010)
[3]下田幸二, 聴くために弾くためにショパン全曲解説, ショパン(1999)
[4]ショパン・ピアノ作品便覧, ドレミ楽譜出版社(1993)
[5]アルフレッド・コルトー, ショパン 12のエチュード Op.25, 全音(1997)
[6]ジャン=ジャック・エーゲルディンゲル, 弟子から見たショパン―そのピアノ教育法と演奏美学, 音楽之友社(2005)
[7]トーマス・マーク, ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと, 春秋社(2006)
[8]横山幸雄教授のレッスン映像公開第21回 エチュード 作品25-9 変ト長調
[9]小林仁, ピアノが上手になる人、ならない人, 春秋社(2012)

関連エントリー
 20180309 ショパン エチュードOp.25-2 演奏解説

魔界塔士Sa・Ga レクイエム

 魔界塔士Sa・Gaより、レクイエムを録音した。
 全滅したときとか、19階とかで流れる曲。
 1年くらい前に家でmp3のランダム再生で流れたんだと思うんだけど、別れの曲っぽくしたらどうかなと手を加えてみた。
 Sa・Gaの曲は誰かが作ったMIDIデータで持っていたので、それをちょっと弄ったら出来た。
 それが、先日譜面台の下の方から出てきて、邪魔だし片付けてやろうと思って録音した。
 左手にテノール域を一声追加しただけで、別に難しい部分もないので解説はしない。
 ついでに楽譜も上げておいた。

書籍の値段

 最近、というわけではないけど、書籍の値段が上昇しているように感じる。
 そもそもインフレ率2%をを目標として金融政策を決定している[1]し、消費税も上がっているので価格は上昇して当然である。消費税が5%→8%に上がった場合、書籍を作る際の原価も当然上がるので3%程度の上昇では済まない。
 以前、ルーンの杖秘録新版旧版を並べて20年で物価が10倍になったとかしょうもない揚げ足取りをしたことがあるが[2]、今回はもうちょい真面目に調べてみた。

 時代ごとに書籍を並べてその値段の変遷を見ることを考えた。
 同じレーベルで装丁に変化なく長期間に渡って出版しているものが好ましい。漫画は装丁の変化が結構多いのとページ数が分かりづらいということで排除した。岩波文庫みたいな保守的で旧態依然とした出版社が好ましいのだけど、岩波文庫の場合は著作権の切れているものと続いているものが混在しているため、著作権のあるなしでそれなりにお値段が異なると考えると文学系のレーベルは好ましくない。したがって、岩波、角川、新潮、講談社集英社、文春あたりの文学主流を排除せざるを得なくなる。岩波新書もいいのだけど、いかんせん手持ちの数が少なくデータ収集には適さない。
 すると、結局ラノベレーベルばかりが選択肢に入ってくる。長く出版し続けてる、装丁に変化のないレーベルって何だろうと考えると、コバルト文庫がちょうどいいかなと思う。のだけど、どういうわけか手持ちのコバルト文庫はわずかしかない。藤本ひとみは売っぱらっちゃったし、ざ・ちぇんじ!は入手しようと思っていたけど、見つからないまま時が経っていた。今調べたら新版で出てるって。やったね。
 それで手元にあるコバルト文庫というと龍と魔法使い伯爵と妖精わが青春のアルカディアしかない。というわけで、コバルト文庫は全く当てにできない。
 それで、次に来るのが富士見ファンタジア文庫角川スニーカー文庫だけど、このどちらも結構装丁が変わっている。角川スニーカー文庫に至っては紙自体も変わった感じがする。
 上の2レーベルよりちょっと遅れて登場したのが電撃文庫電撃文庫は装丁に殆ど変化はない。出版社が変わったり奥付の形式が変わったりといった細々とした変化はあるけど、その程度。1993年の小説ダンジョンマスターと先日発売したばかりのソードアート・オンライン21の比較写真を見て分かる通り、ほぼ変化なし。



 そんなわけで、電撃文庫で比較することにした。なお、全作業を終えた後に、富士見ドラゴンブックでも比較できたということに気付いたのは秘密だ。

 まず、ベースとなる手元にある電撃文庫一覧だけど、これは日常の書籍管理をエクセルで行っているため、そこから電撃文庫だけを抜き出せばよい。少なくともタイトル、作者、値段、出版日は書いてあるのでページ数を書き加えれば事足りる。全部で310冊ある電撃文庫のページ数を全て調べて回るのは中々骨の折れる作業である。
 ページ数を調べる過程で一つわかったことがある。電撃文庫において、殆どは8+16nページで構成されているということだ。「殆ど」と書いたのは、そうじゃないのがあるから。時雨沢恵一御影瑛路はどういうわけかこのページ数でないものが複数ある。印刷所が特殊だということもない。どういうことだろう。
 8+16nについてだけど、基本的にカラー口絵が8ページあるというのが最初の8の意味である。16というのはA3の紙に印刷したのを3回折り曲げると16ページになるということ。最初に口絵の8ページ、ついで16ページの塊を沢山束ねて、外装となる厚紙でまとめ背を糊付け、天、地、小口をカットすることで本が完成する。稀に小口が一部くっついている書籍があるのはカットに失敗したためである。

 それはそうと、ページ数をカウントした時点で、ページ数と値段の相関グラフを描くことが出来る。

 当然だけど、ページ数と値段に正の相関が認められる。ただし、それなりに幅がある。奥行きを時間としてグラフを描きなおしたら何か分かりそうな感じがしないでもないけど、3Dでグラフを描くのは結構面倒なうえ、当てが外れたときのガッカリ具合は相当なものでちょっと躊躇われる。そこで、別の方法を先に試すことにした。
 単純に、1ページあたりの値段を算出してみた。
 このグラフは時系列に順番に並べただけなので、横軸は単純に時間が経過したという程度に見てもらいたい。
 すごい散らばりようで、これだと値段が上がっているようには見えない。
 では、このデータの元となるページ数と値段をそれぞれ見てみよう。


 何となく、ページ数は増えてる感じがする。一方値段の方は200から先で上昇していく傾向があるように思える。この、ページ数のグラフと値段のグラフにはそれぞれ310の点があってお互い対応する点があるのだけど、どういう対応になるのかはこれを見ただけでは分からない。この分からないところが値段/頁のグラフのバラツキとなって現れている。
 とにかく、事実として値段が上昇しているようだが、同時に1冊のページ数も増えているから、物価の上昇という原因ではないということが分かった。

 さて、もう少し細かく見ることにする。
 今度はページ数を揃えて時系列に見ていく。同じページ数の本ばかりの値段を時系列に比較する。
 同じページ数の書籍が最も多いのは328ページであることが調べたらすぐに分かった。合計で48冊あった。内訳は次の通り。

本体価格 税込価格 出版 19930610からの日にち 作者 タイトル
563 580 1993/8/10 61 榊涼介 偽書幕末伝 秋葉原龍馬がゆく<一>~江戸風雲編~
563 580 1993/12/10 183 榊涼介 偽書幕末伝 秋葉原龍馬がゆく<二>~江戸風雲編~
563 580 1996/8/25 1172 谷登志雄 邪鬼が来る!
570 599 2000/1/30 2425 上遠野浩平 ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王
570 599 2000/2/25 2451 高畑京一郎 ダブル・キャスト
590 620 2002/4/25 3241 水落晴美 夢界異邦人 眠り姫の卵
590 620 2003/12/30 3855 ハセガワケイスケ しにがみのバラッド。
590 620 2004/5/25 4002 渡瀬草一郎 空ノ鐘の響く惑星で3
570 599 2004/12/10 4201 渡瀬草一郎 空ノ鐘の響く惑星で2
570 599 2005/4/25 4337 上遠野浩平 ブギーポップバウンディング
570 599 2005/8/20 4454 壁井ユカコ キーリIV 長い夜は深遠のほとりで
570 599 2005/8/25 4459 壁井ユカコ キーリVII 幽谷の風は吠きながら
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630 680 2014/7/10 7700 物草純平 ミス・ファーブルの蟲ノ荒園3


 90年代と2014年以降が少ない。90年代が少ないのは、古い本は割と手放す機会が多いため。X-MEN(魚拓)とかプレミア付いてるし。2014年以降が少ないのは、新しいのはあまり中古市場で安くなっていないためである。
 本体価格についてだけど、消費税が3%だった1997年4月1日より前は書籍の値段が税込表示で、それ以降は税別表示ということもあって、端数の合わせ方が異なっている。
 出版日は初版ではなく印刷した版の出版日を示している。"19930610からの日にち"というのは時間経過を日数で示した。1993年6月10日というのは最も古かったダーク・ウィザードの出版日を基準とした。
 とにかく、同じページ数の書籍だけを抜き出したのでこれでページ数を気にせずに値段と時間を比較できる。

 この通り。
 上で示したのとはちょっと違う結果が出てきて、以外である。
 消費税3%の頃の3冊は全て563円だが、これは5%になってからの570円に相当するものだと思う。それよりも、時間の経過とともに値段の幅が広がっている。2002年590円、2007年610円、2010年640円、2011年650円と最大値が時を追って急激に上昇している。
 この結果を広げると、初期の頃は今ほど値段のバラツキはないはずである。ということは、328ページが特殊なのかな。

 そんなわけで、10冊以上あるページ数帯について全て調べてみた。
 ページ数と冊数は次の通り。

232 13
248 10
264 13
280 21
296 36
312 44
328 48
344 42
360 27
392 10

232p
248p
264p
280p
296p
312p
328p
344p
360p
392p

 これをまとめて眺めて気付いたことがある。初期の頃に極端に値段の高いものがいくつかある。
 何が原因なのか、見てみたらすぐにわかった。竜剣物語ある日どこかのダンジョンでの2シリーズである。どちらも翻訳モノであり、権利料金が余分にかかっているということである。
 この翻訳2シリーズを除くと2001年頃まであまりバラツキはないことが分かる。結局、2001年頃から同じページ数でも値段に違いを設けるようになったということになる。
 初期の頃の値段のブレのなさとこの最初の方に出した円/ページのグラフのバラツキが腑に落ちないが、ページの上昇と値段の上昇が正比例の関係にならないということだろう。もしかしたら切片のある1次方程式を上手く当てはめるときれいに描けるのかも知れない。

 ところで、電撃文庫の値段とページ数の関係について、ページ毎に標準価格があり、人気作は標準価格となり、そうでないものは20円ずつ高くなるとの話がある[3]。つまり、不人気作ばかりを好む僕は高い本を掴まされるという結果になるわけだ。
 結論として、値段が上がってるのはページ数が増えていることと、不人気作は値段が高いということが原因らしい。これは電撃文庫の特殊事情とも言えるので、気が向いたら富士見ドラゴンブックでも調べてみるのもいいかも知れない。
 これ書いてたら、久しぶりにレジンキャストミルク読みたくなってきた。プリン王国が大好きなんだ、標準より40円増しなほどに人気ないけど。
 いつものように今回作ったエクセルを上げておく。
20190224電撃文庫

参考文献
[1]日銀政策は「小出しで後手」、インフレ目標明示を-伊藤隆敏東大教授(リンク切れ InternetArchive, WebpageArchive)
[2]20年で物価が2倍になった件について
[3]電撃文庫の価格魚拓

チェルニー30番25 演奏解説

 チェルニー30番の25番を録音・公開した。
 テンポの早いタイプで、かつ分散和音の練習ということもあり、指定のテンポで弾くのはかなり大変。分散和音は隣の音まで距離があるので、その場で指を下ろすだけでよいスケールとは違い、ポジション移動を同時にしなければならないのでテンポを上げると、よりキツイ。
 いつも通り、楽譜は全音版を使う。例によって、演奏する上で特に注意するべきことは楽譜の解説に書いてあるので、その部分は割愛し、もっと瑣末なメカニカルな部分を始め低レベルな解説をする。
 手元を見ずに弾く練習も兼ねていたのだけど、速度を挙げると打鍵が不正確になってミスタッチが頻発するようになるため、最終的には殆ど手元を見て、ポジション移動のないごく僅かな部分だけ楽譜を見ながら弾くというスタイルになった。それでも、譜読みから曲が手に馴染むまでの間はしっかり手元を見ない練習は出来たと思う。
 この曲を練習しているときに気付いたことがある。右手の2指の指を上げる動きが極端に悪い。道理でスケールが上手く弾けないとか指くぐりが苦手だとか思うわけである。気づくの遅すぎである。今更になって右手2指がちゃんと動くように訓練しないといけないなと思う次第である。今まで何をやってたんだろう。でも、こういうのってピアノの先生でもあんまり気付かないんじゃないかな。結局、何故弾けないのか、何が悪いのかって、自分で分析する内に見えてくるものであって、人が指摘するのは難しい。というわけで、ピアノを練習する人は自分の動きをよく観察しましょう。
 このシリーズも回を重ねるごとに長大になっており、書く側としても面倒なことこの上ないのだが、経験と視野が広がっている賜物だと思っておきたい。

テンポ
 Allegro en galop.で、指定テンポは4分音符で138bpmとなっている。"Allegro"は速く、"galop"は馬を全速力で走らせること。なので、合わせて「馬を全速力は知らせるように速く」という意味になる。とにかく早い。
 練習を始めたばかりの頃は当然ゆっくり弾くのだけど、「チェルニーらしい面白みのない曲だなあ、ツマンネ(゚⊿゚)」って思ったのだけど、テンポを上げると派手で輝かしく聞こえるようになる。こういうのをブリリアントとか言うのかと思うようになる。ただし、かなり指定速度に近い速度まで上げないとそう感じられないので、普通はツマンネ曲という印象のままで終わるんじゃないかな。
 ある程度弾けるようになるとテンポを上げていくのだけど、毎日練習する際、最初にゆっくり弾いて徐々にテンポを上げて最終的に指定のテンポで練習するやりかたをした。結局、ゆっくり練習することなしにいきなり指定のテンポは無理だった。この際に、最初は、120bpmから4bpmずつ上げていくとしたのだけど、初期のテンポが速すぎたようで上手く行かなかったので、100bpmから10bpmずつ上げていって最後は138bpmとすると割と上手く行ったので、このように練習した。
 138bpmで弾くには脱力は不可欠である。脱力というのは、必要な筋力をつけることと、曲を手に馴染ませ必要な動きを体に覚え込ませることによって必要ない動きを削ぎ落とすことによって実現できる。なお、この脱力法は速く弾くための脱力であり、ピアノ演奏一般の脱力を目指すピアノ・脱力奏法ガイドブックvol.2の内容とは異なる。

手首の動き
 指定のテンポで弾く際には、疲労の蓄積もあって指の動きだけでは対応するの難しい。そこで、手首の動きを利用してキーを動かすエネルギーを指だけでなく手首にまで分散する。これがチェルニー30番ではなく、ショパンの練習曲なんかになると手首に限らず、肘や肩あるいは体全体にまで拡張しなければならない曲が多いけど、取り敢えずここでは手首までとしておく。
コンパス弾き
 コンパス弾きというのはチェルニー30番ではよく出てくる言葉。これは根津栄子による造語[1]だが、手首の回転により1指と5指で交互に打鍵する弾き方。1指と5指である必要はなく、打鍵する指同士が離れていた方が回転角が小さくて有効であるというだけ。尺骨と橈骨の動きを理解しておくとなお良い[2]
 コンパス弾き自体を練習課題としている13番ほどではないが、この曲でもコンパス弾きが要求される場面が2 4 11 13 15 21 24 25小節といたるところにある。
ローリング
 ローリングという言葉はブルクミュラー25の練習曲の解説で初めて見たのだけど、手首を回転させることによりより速く打鍵する技術である。打鍵のタイミングや強さといった音の粒を揃えるのが難しくなるが、速く弾くためには必要な技術であり、スケールの部分と上に示したコンパス弾きの部分以外の殆どの部分でこの技術を使うことになる。
 アクセントを強く弾く場合、指の力だけで弾くとすぐに疲れてしまう。手をロールさせてその勢いでアクセントを付けるとよい。この曲では割とそのようにしてアクセントをつけやすくなるように書かれている。
 ローリングと言うと、小学校の頃に先生から「転がらない」と散々言われたことを思い出す。当時は、「転がる」という言葉の意味が分からなかったのだけど、ローリングを意味してるんだなあと今では思っている。

アクセント
 拍の頭の音にアクセントの付いていることが多い。その音だけ強く弾けば良いのだけど、アクセントというのは強く弾くというよりもその音を強調するという意味の方が正確である。その位置手段として強く弾くという方法があるというだけである。ということは、アクセントを表現するためには音価を長く取ることによってその音を主張するという方法もある[3]ということは知っておいたほうが良い。
手元を見ずに弾くために
 左手の和音は前後の和音と同じキーを含んでいることが多いので、共有するキーを手がかりに手元を見ずに抑えるキーを特定することが出来る。

1小節

 1 3 20 22 24小節右手後半。5指のアクセント部分。腕の重みを使って打鍵強調する際にMP関節[4]がこの勢いを受け止めきれないと手が下がってしまう。すると想定よりも低い位置に手が来て、続く音が弾きづらくなる。打鍵の瞬間、MP関節をしっかりと固めること。

2小節

 ②右手1,2拍目。このスタッカートが旋律を作っていることを意識する。一方、合間に挟まるAは静かに弾く。コンパス弾きの際に、1指とそれ以外の指でこのように強弱を付けるには、1指を軸にしてあまり鍵盤から離さず、他の指を比較的大きく上下させるようにする。4 11 21 23 25小節も同様。
 ■3拍目4音目のD。この2指は構造上、黒鍵と黒鍵の隙間を打鍵することになる。そのまま離鍵してポジション移動しようとすると隣の黒鍵にヒットしてしまう。この2子は手前に引っ掻くようにして、離鍵と同時に黒鍵の隙間から脱出する。21 25小節も同様。
 ※4拍目最初のFisを押すときに、4指と一緒に3指が降りてくると隣のDisを押してしまう。3指を動かさずにいるか、降りてきても黒鍵のない位置にずらすかしなければならない。3指と4指は腱を共有しているため一緒に動きたがるのだけど、訓練によってある程度は自由に動かせるようになる。これを指の独立と呼んでいる。こういう細かい部分を丁寧にクリアしていくことで、そのうち指の独立にたどり着くのである。

5小節

 ◎右手。各拍最初の音にアクセントの付いている小節はフォルテであってもアクセントの音だけ十分に強く打鍵すれば他の3音は弱くてもフォルテに聞こえる。特に、5 6小節はアクセントの音以外をフォルテで弾いている余裕はないので拍頭だけは力いっぱい押してほかは力を抜いてキーを下げるだけにする。

7小節

 手元を見ずに弾くために:☆左手。6小節のEの位置を覚えていても良いのだけど、6小節でGisを押していた1指をDisとFisの隙間にテキトーに置いて、その空間の左端、Disの右側面に接触する位置がEとなるので手探りで位置を合わせることが出来る。

12小節

 ▲後半右手。2指が1指をもぐるところ以外はできるだけ指を動かさずに手首の回転を使って指先をキーに押し付けるようにする。というのは、指くぐり前の1指と5指前の4指はどちらも離鍵しづらいのに直後にもう一度打鍵しなければならないので普通に指を上げていては間に合わない。14 16小節も同様。

13小節

 右手の運指は3414となっているが、15小節では同じ音を2313で取るようになっている。何故ここで指使いを変えているのかは不明。なお、チェルニーってつまらないの?では13小節は2313で取るようになっており、次のような解説文が付けられている。

 アルペッジョは和音の分散だって判ったね。で、弾くときも和音のポジションを手で準備して(つまり掌を広げた形)それを分けて弾いていくでしょ。13小節目のポジションはまとまったポジション。だからそこは2の指をキーポイントにして掌をまとめて使えば楽なのだ[譜例2]。このポジションを自由に変えるためには、手に力を入れたりしては駄目。それが手を固くして弾いては駄目という理由なんだよ。

 譜例に間違いがあったので修正の書き込みがしてあるけど、異なった指使いを前提に書くのはどうなんだろうって思う。まあ、2指が3指になったところで内容は特に変わらないから別にいいのかも知れないけど。

17小節

 ✡1拍目。このEの2指は弾き終えたら急いで離鍵しないと続く指くぐりの邪魔になってしまう。あるいは、必要な速度で指を上げられないのならE-Fisを弾いている間に手をねじって2指に邪魔されないようにDの位置に1指を持っていき、Dを押したらすぐに元の向きに戻す。23小節3拍目も同様。

19小節

 ◎右手。これまでに出てこなかった音の並びになっており、手が慣れていないと、この動きに対応できずに止まってしまう。手が動くようになるまでしっかりと部分練習をする。1拍目+E、1拍目+EA、1拍目+EACis、1~2拍目、1~2拍目+Fis・・・というように練習し、少しずつ弾ける領域を増やしていき、最後には1小節丸々問題なく弾けるようにするのもよい。

21小節

 ☆左手1拍目。スラーが切れているので、次の音につなげるために指を置き換える必要はない。ただし、手元を見ずに弾くために次の音を確認するのに5指の自由を確保したいということで別の指に置き換えるというのはアリ。23小節も同様。

26小節

 ■3拍目右手。このFisの4指が離鍵できていないことがある。すると、次の4拍目のFisが打鍵できなくなってしまう。この部分はFisだけ黒鍵で、他は白鍵なので手の高さを白鍵に合わせている。そのため少し高い位置にあるFisの4指は他の指より高く上げないと離鍵出来ない。動きの悪い4指を、である。更に、次の音は4指と腱を共有する5指の打鍵である。この三重苦によって非常に離鍵しづらい構造になっている。ここは特に離鍵を意識することに加えて、指先を高い位置に来るような離鍵しやすいポジションを取るとよい。

27小節

 ▲右手最初の2音、Cis-Dを2-2と指を滑らせて引く場合、Cisはキーをまっすぐ下に押すのではなく、右手前に滑らせながら弾き、キーが鍵床に当たって止まるより先にDに移動する。真っ直ぐキーを下ろしてしまうと指先が滑っていないため静止摩擦となり、また鍵床まで押し付けてしまうと垂直抗力が大きくなり摩擦抵抗が増えて滑りづらくなってしまう。
 △右手最高音のD。かなり右の方にあるので手を伸ばして弾こうとすると横から手を伸ばすことになり、真上から押すか、指を曲げて弾くしかない。すると、隣のキーを一緒に押してしまうことが多くなる。状態を右の方に移動して、手が真っ直ぐ前を向くポジションで弾くと誤って隣のキーを押してしまうことは減る。また、このように弾くために高音側にポジションを取っていると、最後の1オクターブで下のDを斜め上から抑えることになる。すると、隣のEを一緒に押してしまうので、そうならないように真っ直ぐ上から打鍵しなければならない。手を少し上げて高い位置から指先をキーに落とすようにしたら良い。

参考文献
 [1]根津栄子, チェルニー30番 30の小さな物語・下巻, 東音企画(2013)
 [2]トーマス・マーク, ピアニストなら誰でも知っておきたい「からだ」のこと, 春秋社(2006)
 [3]小林仁, ピアノが上手になる人、ならない人, 春秋社(2012)
 [4]岳本 恭治, ピアノ脱力奏法ガイドブック 1 <理論と練習方法>, サーベル社(2015)

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