物売りの声

 寺田寅彦随筆集5巻を読んだ。色々と思うところもあり、そのうち全体を通して感想文のようなものを書きたいなと思う。
 寺田寅彦というのは夏目漱石の弟子で東京帝国大理科大学教授をやってた人。
 この中に「物売りの声」と題する短文が載っていた。
 全文引用するにはちょっと長いので、青空文庫につなげておく。

 物売りの声(魚拓)

 簡単に内容を紹介すると、豆腐屋のラッパの音から始まり、各種の物売りの特有の旋律があるが、いつの間にか聞かなくなるものもある。それらについて以下のように結んでいる。

 売り声の滅びて行くのは何ゆえであるか、その理由は自分にはまだよくわからないが、しかし、滅びて行くのは確かな事実らしい。  普通教育を受けた人間には、もはやまっ昼間町中を大きな声を立てて歩くのが気恥ずかしくてできなくなるのか、売り声で自分の存在を知らせるだけで、おとなしく買い手の来るのを受動的に待っているだけでは商売にならない世の中になったのか、あるいはまた行商ということ自身がもう今の時代にふさわしくない経済機関になって来たのか、あるいはそれらの理由が共同作用をしているのか、これはそう簡単な問題ではなさそうである。それはいずれにしても、今のうちにこれらの滅び行く物売りの声を音譜にとるなり蓄音機のレコードにとるなりなんらかの方法で記録し保存しておいて百年後の民俗学者や好事家に聞かせてやるのは、天然物や史跡などの保存と同様にかなり有意義な仕事ではないかという気がする。国粋保存の気運の向いて来たらしい今の機会に、内務省だか文部省だか、どこか適当な政府の機関でそういうアルキーヴスを作ってはどうであろうか。ついそんな空想も思い浮かべられるのである。

 楽譜に取るくらいなら誰でもできるんだから、お前がやれよって思わないでもない。日本の歴史、文化の面から価値があるのかも知れないけど、政府が音頭を取るというよりも、民間や学者の仕事じゃないかなと思う。ともあれ、まとめとして書籍の1冊でも出版してしまえば数百年は伝えることはできるだろうから、一つの手ではある。
 ここで出てくる物売りの呼び声というのも、豆腐屋のラッパくらいしか聞き覚えがない。この手の物売りの声で知っているものというと、豆腐以外には焼き芋、竿竹、古新聞回収、わらび餅くらいのものだけど、地域によってあったりなかったりはすると思う。
 さて、岩波版の失われた時を求めて10巻には1900年頃パリでの物売りの楽譜が多数掲載されていた。

・古着屋

・研屋

・プレジー

・牡蠣

・樽屋

・ガラス屋

・莢隠元

フロマージュ

・白ブドウ


 これらはジョルジュ・カストネル「パリの声」(1857)、バルザックゴリオ爺さん」(1835)、ヴィクトル・フルネル「古きパリの街路」(1879)、シャルパンティエ「ルイーズ」(1900)などに描かれているらしく、寺田寅彦が「物売りの声」を書いた時点では既にパリではそういった記録がなされていたということになる。あるいは、寺田寅彦がフランスに行ったときにこのような文献を見たことがこの記事を書くきっかけになっているのかも知れない。

 それはそうと、現代では物売りの声というものはお魚天国とか日本ブレイク工業社歌とかいった楽曲もあるが、主流はテレビなどのCMであることは間違いない。寺田寅彦の時代よりもその量は格段に増えており、年間に何百も作られるCMをアーカイブするというのはなかなかできることではない。とはいえ、実際のところYouTubeを漁ると大概のものは出てきてしまうことから、それなりにアーカイブ出来ていると考えて間違いない。政府の機関がアーカイブするべきと言っていた寺田寅彦は、この一社依存の体制を良しとはしないかもしれないが。

アルベニス 入江のざわめき 演奏解説

 入江のざわめきを録音した。アルベニスの「旅の思い出」という曲集の6曲目。ヤマハの楽譜には作品番号が書かれていないが、他の楽譜ではOp.71とのこと。
 スペイン物は初めて。ちょっとカッコいいリズム感が特徴的。楽譜を見てもどういう感じのリズムで弾いたらいいのかイマイチ掴めないので、他人の演奏を聞いてマラゲーニャのリズム感を身につけると良いと思う。
 演奏は現代では標準版のような扱いを受けているアリシア・デ・ラローチャを念頭に置いた感じだけど、別に参考になってるというわけでもなく、マリサ・ロブレスでも問題ない程度にしか参考にしていない。全く別な演奏ではコルトーとか独特の曲に仕上がっていて面白いけど、到底真似できそうにない。
 楽譜はヤマハ版を使った。というか、この他には全音ピアノピースミュッセ、あとはピアノのための名曲楽譜シリーズ アルベニス vol.13というパブリックドメインの楽譜を綴じたものくらいしか国内版は存在しないのではないだろうか。
 ちなみに、このヤマハ版は非常に間違いが多い。今回は解説ついでにいくつか間違っている部分を紹介する。ってか、校訂報告とかするのはいいけど、先に間違いを潰せよなって思う。でも、出版してくれてありがとね。
 この曲のタイトルはよく「入江のざわめき(マラゲーニャ)」という書き方をしてある。マラゲーニャというのはスペインの踊りのことで、日本大百科全書(ニッポニカ)の解説(魚拓)では次のような説明がある。

(1)スペインの民謡および民族舞踊ファンダンゴの一種で、マラガ地方特有のもの。音楽は一定の和声進行に基づく六つのフレーズからなり、5行(1行を反復)の詩がゆったりと歌われる。
(2)19世紀末ごろに大流行した「カンテ・フラメンコ」の一種。エル・メジーソ、ホアン・ブレーバ、アントニオ・チャコンなどの有名な歌い手(カンタオール)が、本来の民謡にロマ(かつてはジプシーとよばれた)独特の歌い方を加えてつくりだしたもの。スペインのアルベニスをはじめ、フランスのシャブリエ、ラベルに、この歌のリズムや旋律を取り入れた器楽曲がある。[関根敏子]


テンポについて
   テンポの指示はなくかなりテキトーに緩急を付ける。
 アルベニスについては全然詳しくないのでどうするべきかという指針とか示すことができない。あえて言うのなら、マラゲーニャって書いてあるんだからそれらしい演奏にするってくらいじゃないかな。上記の通り、「マラゲーニャ」ってのが何か知らずにググってくるレベルの人がエラソーに講釈垂れても恥ずかしいだけなので。
 テンポはともかくとして拍子をしっかりと取ることが大切である。

曲の構造について
 構成としては前奏-A-B-Aという単純な形。先のAと後のAは完全に同じとなっている。Aでは2小節目と同じ小節がフレーズの合間ごとに挟まって寄せては返す波の動きを表している。
 テキトーに構造をまとめると次のようになる。調性とかは面倒なので書かない。

A  
序奏 1 - 1
a1 2 - 14
a2 15 - 25
b1 26 - 31
a3 32 - 43
b1' 44 - 49
b2 50 - 52
b2' 53 - 57
a1 58 - 69
コーダ 70 - 71
   
B  
つなぎ 72 - 74
中間部 75 - 94
カデンツ 95 - 95
   
A  
a1 96 - 108
a2 109 - 119
b1 120 - 125
a3 126 - 137
b1' 138 - 143
b2 144 - 146
b2' 147 - 151
a1 152 - 163
コーダ 164 - 165

 Aの部分全体を通して同じようなフレーズをさんざん使い回すため、譜読みが結構楽である。でも、どこも同じようなフレーズばかりで、演奏中に自分が今どこを弾いているのか分からなくなってしまうということがある。フレーズごとに2小節目と同じ小節が登場するため、テキトーにつなげても全く問題ないので、人前で演奏するときはそれで切り抜けることができる。録音するときはちゃんと楽譜通りに弾きたいという人は、まあ頑張ってもらうしかないとして、上記のコルトーの演奏を聞いてもらえば分かる通り、全然楽譜通りに演奏していない。あんまり細かいことを気にしないほうがいいと思う。

暗譜せずに弾く場合
 ここ暫くの手元を見ないでピアノを引く練習の成果がいくらか出てきたようで、楽譜を見ながらそこそこ演奏できるようになってきた。その一方で、アンプの必要がなくなったためあんまり曲を覚えていない。
 暗譜せずに楽譜を見るということは譜めくりをしなければならないということ。編集者の腕に依る部分もあるのだけど、譜めくりしやすいタイミングとページを捲るべきタイミングというのはなかなか上手く合致するもんでもない。それで、どうしてもその合致しない部分だけは暗譜しなければならなくなる。
 この曲の分かりやすい譜めくりのタイミングは71~74小節と、95小節である。後者はページを捲ってすぐで、94小節だけ覚えてしまえばよく、実に楽だが、前者の方は見開きのど真ん中、右側のページに入ってすぐなので、譜めくりには最も不適な位置である。なお、曲としては区切りが良い位置でもある。さて、左側のページは45~71小節である。ところで、58~69小節というのは2~14小節と同じである。なので、結局暗譜しなければならないのは45~57小節と70~71小節の合計15小節だけということになる。最後のところなんてたったの11音だ。
 さて、44~57小節が一つの流れになっているので、45小節からなんてケチなことは言わずに44小節から覚えてしまおう。1小節くらい増えたって大して変わりゃしません。
 この部分は26~31小節で提示した流れを展開させて進行していくので、一種の変奏ということができる。44~46小節は完全に26~28小節と同じだし、47~49小節は49小節の左手の2音目が異なるだけで他はすべて同じである。そう考えると、覚えなければならない部分はかなり少ない。
 というわけで、かなり覚えやすい曲ではないかと思う。

A.271小節
 いつものように用のある小節だけ切り出して解説するつもりなのだけど、前半のAと後半のAは全く同じなので、前半のAだけ説明する。

2小節

 最初はリズムに戸惑うかも知れないけど、別に特に難しいわけでもない。これがそこら中に出てくるので色んな弾き方をするのもいいと思う。出てくる場所によってpだったりppだったりする。

5小節

 間違い発見。右手の16分音符と16分休符の位置が入れ替わっている。3小節の形が正しい。

7小節

 右手と左手が近くて混み合ってる上、次の小節の最初の音と距離が遠いので、左手3拍目を右手で取ってみたらどうかなと思ってやってみたが、あまり上手いやり方ではない。別に弾けないこともないけど、右手の2音のタイミングに自由が効かなくなる。しかも、よくよく録音を聞いてみると3拍目のDが抜けている事が多い。指が完全に独立していれば苦もなくできるのだろうけど、普通に楽譜通りに弾いたほうが無難。どんだけ指くぐりしたくねーんだよって言われる。

1113小節

 これも7小節同様、右手で取ってみたけど、その必要はない。どんだけ指くぐりしたくねーの。

26小節

 Meno Tempoとテンポを落とすよう指示がある。A後半はここから先6955小節まで前半よりもテンポを落としたものとなる。
 cantandoCantabileと同じ「歌うように」という意味。

5155小節

 楽譜にはペダルの指示があるが、ペダルを踏まなくても左手はベースを保持したまま2,3拍目を押さえられるのでペダルは踏まないことにした。これでペダルに悩まずにスタッカートが表現できる。

7071小節

 これがAのコーダとなる。
 71小節左手一番上のCisは位置的に右手で取るのが楽。右手一番上のAと同時に2指で取ると良い。

B.7294小節
 Aとは雰囲気がガラッと変わる。
 ベースと主旋律と中声部の3声で進行する。中声部は裏拍となってリズムを刻む構造となっている。
 7274小節でレントで繋いだ後、75小節にはTempo I゜と、最初のテンポに戻すよう指示がある。最初のテンポとはいっても、B全体としてかなり激しくテンポが揺らぐ。楽譜にもテンポの揺らぎを指示してあるが、実際の演奏に比べてかなり抑制的な表記となっている。楽譜に記述されているよりも誇大に表現しても問題ないと思う。また、音が細かく難しく感じる部分には大抵テンポを落とす指示がある。思い切ってテンポを落としても問題ないようになっている。
 75小節がsempre pで、85小節mfと音量の変化が示されているが、85小節でいきなり音を強くするよりも徐々にmfに向かって行ったほうが良いと思う。

7879小節

 右手主旋律、79小節に入ったところでDを5指で取るように書いてあるが、Esを押さえた3指をそのまま横に滑らせてDを取っても問題ない。そうした方が楽に弾ける。

7881小節

 中声部3拍目のBF和音は楽譜の間違い。中声部は裏拍で叩かなければならないので、ここは半拍後ろに16分音符とする。

7882小節

 右手2拍目のEBを41指で取るようになっているが、その通りにすると黒鍵のBを1指で取ることになりこの部分全体を鍵盤の奥の方で弾くことになる。続く音はすべて白鍵なので、黒鍵と黒鍵の隙間を押さえなければならなくなる。黒鍵が邪魔になって非常に弾きにくい。なので、このEBは41ではなく42で取ることで、続く音は全て鍵盤の手前で伸び伸び弾けるようになる。

7895小節

 BからAへの繋ぎのカデンツァ。カデンツァは本来協奏曲などの最後の方で演奏者が即興演奏で技巧を見せつけるものであるが、19世紀以降は作曲者が書くのが殆どとなった。だからといって、楽譜に書いてあるとおりに弾かなければならないわけではなく、カデンツァと行っている以上はそこに書いてあるものは演奏法の一例程度に考えたほうが良い。例えば、有名なショパンノクターンOp.9-2の最後のカデンツァでも好きにアレンジして弾く人もいたりするし、ショパン本人もそうしていた。そういうわけで、ここに書いてある譜面が絶対に正しいというわけではなく。その上、ご丁寧にad lib.とまで書いてくれている。

最後に
 今回は小節番号を四角で囲うというのを試みてみた。以前、どこかでやろうとしたことがあった気がするけど、止めてしまった。なぜ止めたのか覚えていない。面倒だという程度の理由だったら、別にやってもよいのだけど。
 具合が良いようであれば、今後も四角で囲うということをしていきたい。

関連エントリー
 20151206 ショパン ノクターン2番 Op.9-2a 演奏解説

直鎖アルコール 融点沸点一覧

 以前、戦艦の生没表一覧を作った。エクセルで遊ぶついでに作ったのだけど、別に横軸が時間である必要はないので、色々と応用は利く。
 そんなわけで、物質の沸点、融点一覧を作ろうと思った。以前作った周期表に元素ごとの融点沸点を載せてあるのでその情報を元に作るのもいいかと思ったけど、温度が-273℃から6000℃くらいまで範囲が広いことと、100近くあるのとで、あまり見やすいものにはならないだろうなと予想されるので、もう少し狭い範囲の物質を選ぶことにした。そこでもっと狭い領域を考えたところ、有機物→アルコール→直鎖アルコールと数を減らすことになった。
 アルコールも長くなってくるとデータが見つからないので炭素数が20個までとした。Wikipediaに全部載っていたら良かったのだけど、C12のドデカノールまでしかちゃんとした値は見つけられなかったので、The Good Scents Company Information Systemというサイトに頼った。このサイトはいろんなところからソースを持ってきているため、各データの正しさというか信頼性がまちまちなので頭から信用してよいかという点に疑問を覚える。とはいえ、これ以上にデータの揃っているデータベースが見つからないため、このサイトを頼ることにした。なお、トリデカノールは上記サイトに沸点が載っていなかったので、ILOからデータを引いた。
 結局、それぞれの融点、沸点は以下のようになった。

  融点(℃) 沸点(℃) CAS. No.
メタノール -93 65 67-56-1
エタノール -114 79 64-17-5
プロパノール -126 98 71-23-8
ブタノール -88 119 71-36-3
ペンタノール -78 138 71-41-0
ヘキサノール -51 157 111-27-3
ヘプタノール -34 176 111-70-6
オクタノール -15 196 111-87-5
ノナノール -6 215 143-08-8
デカノール 9.6 231.1 112-30-1
ウンデカノール 14 243 112-42-5
ドデカノール 26 262 112-53-8
トリデカノール 32 274 112-70-9
テトラデカノール 40 389 112-72-1
ペンタデカノール 46 299 629-76-5
ヘキサデカノール 55 344 36653-82-4
ヘプタデカノール 55 309 1454-85-9
オクタデカノール 60 335 112-92-5
ノナデカノール 64 346 1454-84-8
イコサノール 67 373 629-96-9

 これを書き直すと次のようになる。

 分子量のエタノールメタノールの融点がプロパノール以降のものと傾向から外れているのは水素結合と分子量のせいかなとか思うけど、よく知らない。
 例によって、頭を作るのに使ったエクセルファイルをアップしておく。
直鎖アルコール融点沸点一覧

関連エントリー
 20180529 日本の戦艦生没一覧

ダブルクロス 判定の期待値

 最近、交友関係の広がりの都合でダブルクロスを遊ぶ機会が増えている。
 世界観とかルールはいいとして、他に見ない判定方法であり、こういうのを見るとちょっと計算したくなってくる。判定方法は以下の通り。

1. 複数個の10面ダイスを振る。
2. クリティカル値以上の出目のダイスがなかった場合は最も高い値を達成値として採用。クリティカル値以上のダイスは達成値を10として再度振り足す。
3. 2で振り足したダイスがクリティカル値以上の場合は達成地にさらに10を足して振り足す。すべてクリティカル値未満だった場合は最も高い値を達成値として採用。
4. クリティカル値以上の目がでなくなるまで繰り返す。

 説明が分かりにくいかもしれないけど、ダブルクロスを遊んだことのない人がこんなエントリーを読みに来るとも思えないので、テキトーなままにしておく。説明が理解できないけど、どうしても知りたいという方はルールブックを読むとかセッションに参加するとかしてもらうとよいと思う。
 それはそうと、手始めに期待値を計算してみる。

・判定ダイス1個、クリティカル値10の場合
 まず、最も単純な例を抜き出して計算してみる。
 期待値の計算は、達成値にその達成値となる確率を掛けたものの総和である。
 例えば、2D6の場合、確率と出目は以下の表の通りになる。

確率 出目
1/36 2
2/36 3
3/36 4
4/36 5
5/36 6
6/36 7
5/36 8
4/36 9
3/36 10
2/36 11
1/36 12

 これらの積の総和が期待値となるので、 { \displaystyle \frac{1}{36} \cdot 2 + \frac{2}{36} \cdot 3 + \frac{3}{36} \cdot 4 + \frac{4}{36} \cdot 5 + \frac{5}{36} \cdot 6 + \frac{6}{36} \cdot 7 + \frac{5}{36} \cdot 8 + \frac{4}{36} \cdot 9 + \frac{3}{36} \cdot 10 + \frac{2}{36} \cdot 11 + \frac{1}{36} \cdot 12 \\ \displaystyle = \left( 1 \cdot 2 + 2 \cdot 3 + 3 \cdot 4 + 4 \cdot 5 + 5 \cdot 6 + 6 \cdot 7 + 5 \cdot 8 + 4 \cdot 9 + 3 \cdot 10 + 2 \cdot 11 + 1 \cdot 12 \right) \cdot \frac{1}{36} \\ \displaystyle = \left(2 + 6 +12 + 20 + 30 +42 +40 + 36 + 30 + 22 + 12 \right) \frac{1}{36} \\ = 252 / 36 \\ = 7 }
というわけで、2D6の期待値は7と求めることができる。
 同様にダブルクロスでも確率と達成値の積を書き出していくのだが、クリティカルがあるため無限級数となるのでちょっと頭を使わなければならない。
 面倒なので、何の説明もなく式を書き出して行きたくなるところなのだけど、それではあまりにも不親切なので、確率と事象を書き出しいく。
・ダイスロール1回目(1~9)

確率 出目
1/10 1
1/10 2
1/10 3
1/10 4
1/10 5
1/10 6
1/10 7
1/10 8
1/10 9

・ダイスロール2回目(11~19)
 1回目のダイスロールで10が出たときはクリティカルなので、10に2回目の出目を足すことになる。

確率 出目
1/100 11
1/100 12
1/100 13
1/100 14
1/100 15
1/100 16
1/100 17
1/100 18
1/100 19

・ダイスロール3回目(21~29)

確率 出目
1/1000 21
1/1000 22
1/1000 23
1/1000 24
1/1000 25
1/1000 26
1/1000 27
1/1000 28
1/1000 29

・ダイスロール4回目(31~39)

確率 出目
1/10000 31
1/10000 32
1/10000 33
1/10000 34
1/10000 35
1/10000 36
1/10000 37
1/10000 38
1/10000 39

以下同様
 これを数式に書き出すと期待値Eは以下のように表現できる。
{ \displaystyle E = \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{9} n + \frac{1}{10^2} \sum_{n=1}^{9} (10 + n) + \frac{1}{10^3} \sum_{n=1}^{9} (20 + n) + \frac{1}{10^4} \sum_{n=1}^{9} (30 + n) + \cdots }
 各数値をいちいち書き出すのは面倒なだけなので、Σでまとめた。式はこうやってどこまでも続くけど、分子が10ずつ上がっていくのに対して分母は10倍ずつ増えていくので収束する形になる。このまま式を解いていく。
{ \displaystyle E = \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{9} n + \frac{1}{10} \left( \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{9} (10 + n) + \frac{1}{10^2} \sum_{n=1}^{9} (20 + n) + \frac{1}{10^3} \sum_{n=1}^{9} (30 + n) + \cdots \right) }
{ \displaystyle \quad = \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{9} n + \frac{1}{10} \left( \frac{1}{10} \left( 90 + \sum_{n=1}^{9} n \right) + \frac{1}{10^2} \left( 90 + \sum_{n=1}^{9} (10 + n) \right) + \frac{1}{10^3} \left( 90 + \sum_{n=1}^{9} (20 + n) \right) + \cdots \right) }
{ \displaystyle \quad = \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{9} n + \frac{1}{10} \left( 90 \sum_{n=1}^{ \infty } \frac{1}{10^n} + \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{9} n + \frac{1}{10^2} \sum_{n=1}^{9} (10 + n) + \frac{1}{10^3} \sum_{n=1}^{9} (20 + n) \cdots \right) }
 ここで、大きい括弧の中の2項目以降を見てもらいたい。これは一番上の式と一致する。つまり、この式は入れ子構造になっている。この部分をEと置いてしまい方程式を作ることができる。
{ \displaystyle E = \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{9} n + \frac{1}{10} \left( 90 \sum_{n=1}^{ \infty } \frac{1}{10^n} + E \right) }
{ \displaystyle E = \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{9} n + 9 \sum_{n=1}^{ \infty } \frac{1}{10^n} + \frac{E}{10} }
{ \displaystyle \frac{9}{10} E = \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{9} n + 9 \sum_{n=1}^{ \infty } \frac{1}{10^n} }
{ \displaystyle E = \frac{1}{9} \sum_{n=1}^{9} n + 10 \sum_{n=1}^{ \infty } \frac{1}{10^n} }
{ \displaystyle \quad = \frac{1}{9} \cdot \frac{1}{2} \cdot 9 \cdot (1+9) + 10 \sum_{n=1}^{ \infty } \frac{1}{10^n} }
{ \displaystyle \quad = 5 + 10 \sum_{n=1}^{ \infty } \frac{1}{10^n} }
 あとちょっと。この{ \sum \frac{1}{10^n} }は次のようにして解くことができる。

{ \displaystyle A = \sum_{n=1}^{k} \frac{1}{10^n} }を解くには、 { \displaystyle A - \frac{A}{10} } という形を作ってやれば、最初と最後の項以外を消すことができる。
{ \begin{array}{cc} \hspace{ 15pt } A = \frac{1}{10} + \frac{1}{10^2} + \frac{1}{10^3} + \frac{1}{10^4} + \cdots + \frac{1}{10^k} \quad \quad \\ - \quad \quad \frac{A}{10} = \hspace{ 20pt } \frac{1}{10^2} + \frac{1}{10^3} + \frac{1}{10^4} + \cdots + \frac{1}{10^k} + \frac{1}{10^{k+1}} \\ \hline \quad \quad \frac{9}{10} A = \frac{1}{10} \quad \quad \quad \quad \quad \quad \quad \quad \quad \quad \quad \quad \quad - \frac{1}{10^{k+1}} \end{array} }

{ \displaystyle \frac{9}{10} A = \frac{1}{10} - \frac{1}{10^{k+1}} \\ \displaystyle A = \frac{10}{9} \left( \frac{1}{10} - \frac{1}{10^{k+1}} \right) \\ \displaystyle k \to \infty のとき、\frac{1}{10^{k+1}} \to 0 }
{ \displaystyle A = \frac{10}{9} \left( \frac{1}{10} - 0 \right) = \frac{1}{9} \\ \displaystyle \therefore \sum_{n=1}^{ \infty } \frac{1}{10^n} = \frac{1}{9} }

{ \displaystyle E = 5 + 10 \sum_{n=1}^{ \infty } \frac{1}{10^n} \\ \displaystyle \quad = 5+ 10 \cdot \frac{1}{9} = \frac{55}{9} = 6.111 }
 以上より、ダイス1個のときの期待値は6.111(有効数字4桁)ということが示された。

・判定ダイス1個、クリティカル値Cの場合
 クリティカル値10の場合を求めたのだから、自然と他のクリティカル値も求めたくなるものである。そんなわけで、上の計算を拡張してクリティカル値Cが2~10のときの期待値の一般解Eを求めてみようと思う。
 今度は上のようにまどろっこしい表などは作らずにいきなり数式に書き起こす。基本的に手順は同じで、無限に続く部分をどうにか初期のEと同じになるよう式変形して整理して、等比数列の総和の形にしてクリアするというもの。計算ミスさえなければ難しいことはない。
{ \displaystyle E = \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{C-1} n + \frac{11-C}{10} \cdot \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{C-1} (10+n) + \left( \frac{11-C}{10} \right)^2 \cdot \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{C-1} (20+n) + \left( \frac{11-C}{10} \right)^3 \cdot \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{C-1} (30+n) + \cdots }
{ \displaystyle \quad = \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{C-1} n + \frac{11-C}{10} \left( \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{C-1} (10+n) + \frac{11-C}{10} \cdot \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{C-1} (20+n) + \left( \frac{11-C}{10} \right)^2 \cdot \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{C-1} (30+n) + \cdots \right) }
{ \displaystyle \quad = \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{C-1} n + \frac{11-C}{10} \left( \frac{1}{10} \left( 10(C-1) + \sum_{n=1}^{C-1} n \right) + \frac{11-C}{10} \cdot \frac{1}{10} \left( 10(C-1) + \sum_{n=1}^{C-1} (10+n) \right) + \left( \frac{11-C}{10} \right)^2 \cdot \frac{1}{10} \left( 10(C-1) + \sum_{n=1}^{C-1} (20+n) \right) + \cdots \right) }
{ \displaystyle \quad = \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{C-1} n + \frac{11-C}{10} \left( (C-1) \sum_{n=0}^{ \infty } \left( \frac{11-C}{10} \right)^n + \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{C-1} n + \frac{11-C}{10} \cdot \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{C-1} (10+n) + \left( \frac{11-C}{10} \right)^2 \cdot \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{C-1} (20+n) + \cdots \right) }
 ここで大きい括弧の中にEが現れるので先程と同様にEと置く。
{ \displaystyle E = \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{C-1} n + \frac{11-C}{10} \left( (C-1) \sum_{n=0}^{ \infty } \left( \frac{11-C}{10} \right)^n + E \right) }
{ \displaystyle E - \frac{11-C}{10} E = \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{C-1} n + \frac{11-C}{10} (C-1) \sum_{n=0}^{ \infty } \left( \frac{11-C}{10} \right)^n }
{ \displaystyle \frac{C-1}{10} E = \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{C-1} n + \frac{11-C}{10} (C-1) \sum_{n=0}^{ \infty } \left( \frac{11-C}{10} \right)^n }
{ \displaystyle E = \frac{10}{C-1} \left( \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{C-1} n + \frac{11-C}{10} (C-1) \sum_{n=0}^{ \infty } \left( \frac{11-C}{10} \right)^n \right) }
{ \displaystyle \quad = \frac{1}{C-1} \sum_{n=1}^{C-1} n + \frac{11-C}{C-1} (C-1) \sum_{n=0}^{ \infty } \left( \frac{11-C}{10} \right)^n }
{ \displaystyle \quad = \frac{1}{C-1} \sum_{n=1}^{C-1} n + (11-C) \sum_{n=0}^{ \infty } \left( \frac{11-C}{10} \right)^n }
{ \displaystyle \quad = \frac{1}{C-1} \cdot \frac{1}{2} (C-1)(1+C-1) + (11-C) \sum_{n=0}^{ \infty } \left( \frac{11-C}{10} \right)^n }

{ \displaystyle \sum_{n=0}^{ \infty } \left( \frac{11-C}{10} \right)^n = \frac{10}{C-1} }
この部分の展開は省略する。

{ \displaystyle E = \frac{1}{2} C + (11-C) \frac{10}{C-1} \\ \displaystyle \quad = \frac{1}{2} C + 10 \frac{11-C}{C-1} }
 以上より、クリティカル値2~10に於いての期待値の一般式を求めることができた。
 一応、各クリティカル値と期待値の対応を表にしておく。

クリティカル値 期待値
2 91
3 41.5
4 25.33
5 17.5
6 13
7 10.17
8 8.286
9 7
10 6.111

 このようにして求めることができたが、これはダイス1個の場合という極めて限られた条件である。今回はここで止めておくけど、気が向いたらダイスを増やしたときの期待値や標準偏差、成功確率について議論してみたい。
 なお、この計算方法によってソード・ワールドRPGのレーティング表の期待値も求めることができる。


 はてなブログに移行してこちら、数式は基本的にMathJaxを使って入力しているのだけど、はてなブログはMathJaxに完全対応しているわけではなく、上手く出力できないものがある。
 今回、計算そのものは30分くらいで終わったのだけど、入力に難儀した。主要部分は2時間くらいで入力を終了したのだけど、MathJaxのはてなブログ仕様固有のエラーを大量に吐き出してその処理のために4時間くらいかかった。大カッコと中カッコは中の文字列のサイズに対する対応が一切できずに通常のサイズでしか表示できずに、結局すべて小カッコで済ませることにした。見た目は悪いがどうにもならないから仕方がない。


20181204追記

 クリティカル値10の場合について、別の解法で解けたので、そちらについても紹介しておく。やってることはそれほど違わない。スタートはおんなじだけど、途中経過が少し異なる。というか、シグマの計算については公式をいくつかひねり出した方が後々楽かもしれない。今度、作っておこう。
{ \displaystyle E = \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{9} n + \frac{1}{10^2} \sum_{n=1}^{9} (10 + n) + \frac{1}{10^3} \sum_{n=1}^{9} (20 + n) + \frac{1}{10^4} \sum_{n=1}^{9} (30 + n) + \cdots }
 出発のこの式は同じ。
{ \displaystyle E = \frac{1}{10} \sum_{n=1}^{9} (0+n) + \frac{1}{10^2} \sum_{n=1}^{9} (10+n) + \frac{1}{10^3} \sum_{n=1}^{9} (20+n) + \frac{1}{10^4} \sum_{n=1}^{9} (30+n)+ \cdots \\ \displaystyle \quad = \frac{1}{9} \left( 0 \cdot 9 + \sum_{n=1}^{9} n \right) + \frac{1}{10^2} \left( 10 \cdot 9 + \sum_{n=1}^{9} n \right) + \frac{1}{10^3} \left( 20 \cdot 9 + \sum_{n=1}^{9} n \right) + \cdots \\ \displaystyle \quad = 9 \left( \frac{1}{10} \cdot 0 + \frac{1}{10^2} \cdot 10 + \frac{1}{10^3} \cdot 20 + \frac{1}{10^3} \cdot 40 + \cdots \right) + \sum_{n=1}^{9} n \left( \frac{1}{10} + \frac{1}{10^2} + \frac{1}{10^3} + \frac{1}{10^4} + \cdots \right) \\ \displaystyle \quad = 9 \sum_{n=1}^{\infty} \left( \frac{10}{10^n} \cdot (n-1) \right) + \sum_{n=1}^{9} n \cdot \sum_{n=1}^{9} \frac{1}{10^n} \\ \displaystyle \quad = 9 \sum_{n=1}^{\infty} \left( \frac{n-1}{10^{n-1}} + \frac{5}{10^n} \right) \\ \displaystyle \quad = 9 \sum_{n=1}^{\infty} \left( \frac{10(n-1)}{10^n} + \frac{5}{10^n} \right) \\ \displaystyle \quad = 9 \sum_{n=1}^{\infty} \frac{10n-5}{10^n} \\ \displaystyle \quad = 45 \sum_{n=1}^{\infty} \frac{2n-1}{10^n} \\ \displaystyle \quad = 90 \sum_{n=1}^{\infty} \frac{n}{10^n} - 45 \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{10^n} }
 ここで、上で行ったのと同じ、ずらして引くを2回繰り返す。
 汎用性を高めるために公式を導いておく。上で{ \displaystyle \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{10^k} }については上で出しているので省略、{ \displaystyle \sum_{k=1}^{n} \frac{k}{10^k} }について導出する。

{ \begin{array}{cc} \hspace{ 15pt } \sum_{k=1}^{n} \frac{k}{10^k} = \frac{1}{10} + \frac{2}{10^2} + \frac{3}{10^3} + \frac{4}{10^4} + \cdots + \frac{n}{10^n} \quad \quad \\ - \hspace{ 10pt } \frac{1}{10} \sum_{k=1}^{n} \frac{k}{10^k} = \hspace{ 20pt } \frac{1}{10^2} + \frac{2}{10^3} + \frac{3}{10^4} + \cdots + \frac{n}{10^n} + \frac{n+1}{10^{n+1}} \\ \hline \quad \quad \frac{9}{10} \sum_{k=1}^{n} \frac{k}{10^k} = \frac{1}{10} + \frac{1}{10^2} + \frac{1}{10^3} + \frac{1}{10^4} + \cdots + \frac{1}{10^n} - \frac{n+1}{10^{n+1}} \end{array} }
{ \displaystyle \frac{9}{10} \sum_{k=1}^{n} \frac{k}{10^k} = \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{10^k} - \frac{n+1}{10^{n+1}} }
ここで、 { \displaystyle \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{10^k} = \frac{1}{9} - \frac{1}{9 \cdot 10^n} } ということが分かっているので、
{ \displaystyle \frac{9}{10} \sum_{k=1}^{n} \frac{k}{10^k} = \frac{1}{9} - \frac{1}{9 \cdot 10^n} - \frac{n+1}{10^{n+1}} }

{ n \rightarrow \infty }なので、{ \frac{1}{9 \cdot 10^n} \rightarrow 0} , { \frac{n+1}{10^{n+1}} \rightarrow 0 }となる。
{ \displaystyle \frac{9}{10} \sum_{k=1}^{\infty} \frac{k}{10^k} = \frac{1}{9} \\ \displaystyle \sum_{k=1}^{\infty} \frac{k}{10^k} = \frac{10}{9^2} }
これを代入する。
{ \displaystyle E = 90 \sum_{n=1}^{\infty} \frac{n}{10^n} - 45 \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{10^n} \\ \displaystyle \quad = 90 \frac{10}{9^2} - 45 \frac{1}{9} \\ \displaystyle \quad = \frac{100}{9} - 5 \\ \displaystyle \quad = \frac{55}{9} \\ \displaystyle \quad = 6.111 }
となる。


20181215追記

 先日、シグマの中が指数関数になっているものについて、公式を作っておこうと書いたけど、調べたら普通にあった。シグマの項目じゃなくて数列のところに文字の説明もなく載っていたので見落としてた。数列の総和をSnと表記している。

{ \displaystyle \cdot a_n = ar^{n-1} (r:定数、公比) \\ \displaystyle \cdot r \neq 1のとき S_n = \frac{a(1-r^n)}{1-r} = \frac{a(r^n -1)}{r-1} \\ \displaystyle   r=1のとき S_n = na }

とのこと。

スパム

 ポッキーの日、というのは置いといて。
 先程、香ばしいスパムが来たので晒しておく。

こんにちは!

私のニックネームはjone69です。
私は半年以上前にこのメールボックスをハッキングしました。
私が作成したウイルス(トロイの木馬)をあなたのオペレーティングシステムに感染させ、あなたを長い間監視してきました。

その後もパスワードを変更したとしても、それは問題ではありません。私のウイルスはあなたのコンピュータ上のすべてのキャッシングデータを傍受しました 私のために自動的にアクセスを保存しました。

私はすべてのあなたのアカウント、ソーシャルネットワーク、電子メール、ブラウジング履歴にアクセスできます。 したがって、私はすべてのあなたの連絡先、あなたのコンピュータからのファイル、写真、ビデオのデータを持っています。

私はあなたが時折訪れる親密なコンテンツサイトに最も襲われました。 あなたは非常に野生の想像力を持っている、私はあなたに言う!

あなたの喜びと娯楽の間、私はあなたのデバイスのカメラを通して、あなたが見ているものと同期してスクリーンショットを撮りました。 何てことだ! あなたはとても面白くて揺らめいています!

私はあなたの連絡先のすべてがこれらのスクリーンショットを取得するのを望まないと思いますよね? もしあなたが同じ意見を持っていれば、私は500ドルが私が作った汚れを破壊するのにかなり公正な価格だと思います。

指定された金額を私のBTCウォレット(Bitcoin)に送ってください: 1D1dYQYMP5toHtCZjJ466X1ENUAzVirQ5V
上記の金額を受け取るとすぐに、私はデータが削除されることを保証します、私はそれを必要としません。

そうしないと、これらのファイルとサイト訪問の履歴があなたのデバイスからすべての連絡先に送信されます。 私はすべてのあなたの電子メールの対応を保存しました! これはあなたの連絡先にも送信されます!

あなたがそれを読むとすぐに - 私はそれについて知るでしょう!
あなたは50時間持っています!

私はあなたのことを覗き込む多くの仕事をしてきました! あなたはセキュリティを見ない!
実績のあるリソースだけに行き、どこにでもパスワードを入力しないでください!
さようなら!

 ずいぶん陽気な詐欺師だ。
 和訳の精度はだいぶ上がっていて、内容はちゃんと理解できるようになっているのは好感が持てる。まあ、英語を日本語に訳したような表現から脱出できないのは仕方ないか。そこまで自然な訳文ってのは機械翻訳には求められてないしね。
 さて、日本語を読めないやつが僕のメールを漁って頑張って機械翻訳するのか。まあ、これだけの日本語訳を作れるのなら同様に英訳もできるのかもしれない。
 それにしても、僕のメールを読んでるんなら僕の本名くらい分かるもんでしょう。最初の1通に全力を挙げなければならない詐欺メールにそんな駆け引きじみたことをするはずもないから、まあハッキングしてるってのは嘘だってのはすぐ分かる。ついでに言えば、せめてHNくらいはハッキングしなくてもマトモなITリテラシーがあれば分かるものなのに、それをしないってのはどれだけやる気が無いのか。
 日本語を勉強して出直せとは言わないが、僕ごときに見破られるんじゃ全然ダメです。
 とりあえず、迷惑メール相談センターに送っとく。

関連エントリー
 20110829 スパム
 20100815 スパム