ショパン エチュードOp.25-2 演奏解説

 20100203の再掲。ショパンエチュードOp.25-2を録音した時の解説文です。多分、これが一番最初に書いた演奏解説。


   Mittwoch 3. Februar 2010.
 たまには演奏の解説でもしようと思う。
 技術的な点などを踏まえて説明してみる。曲目はショパンエチュード25-2、昨年の暮れ頃に録音した。

 玉を転がすような細かい動きが要求される。一部フォルテの箇所もあるが、曲全体にわたって殆どがピアノで演奏することになる。弱音の細かなパッセージは粒の揃っていない箇所があると非常に目立つ。全体に均一な音を出せるよう練習しなければならない。が、そういった鬱陶しい練習方法についてはここでは語らない。コルトー版の解説でも読んで練習すれば身につくと思う。
 楽して弾けるようになりたいとは誰もが思うことだが、ショパンエチュードはどれも必要な筋力がなければちゃんと音を出せるようにはならない。脱力するから筋力はいらないというのは脱力を知らない者の言葉である。キーを押すだけの力がないのに脱力をしても意味がないということは理解しなければならない。ショパンエチュードを弾くだけの筋力が備わっていない場合はいくら楽をしようとしても結局は筋力を付けるために練習量が必要になる。そして、筋力を付けた先で脱力が有効となる。
 音は違うが似た動きをする部分は指使いを同じにしたほうがよい。指使いを1パターンに限定するという前提がある。自分の中で複数の指使いを共存させるとどれがよいかその時になって迷う可能性があるから。そして、似た部分で異なる指使いをすると、同じようにどっちだったか混乱するためだ。そういった演奏中の事故になりうる要素というものは極力排除したほうがよい。
 同じ音型が繰り返し使われているため、譜読みが非常に楽だ。例えば、1~2小節と同じ小節は9~10小節、20~21小節、28~29小節、51~52小節、59~60小節と合計6回同じ2小節を使う。また、1~17小節は20~36小節と同じだし、1~8小節は20~27小節、51~58小節とほぼ同じ。こういった構造が複数あるので、譜読みは一気に最後まで弾こうとはせずフレーズ毎に弾けるようにしていった方が効率がよい。譜読みに関して非常に参考になるサイトがあったのだが、今少し探してみたところ全く見つからなかった。英雄ポロネーズを例に譜読みの仕方を解説していたのだが。。。
 この曲はエチュードの中では簡単な部類に入り、基本が筋トレなので、あまり演奏の参考になるアドバイスのようなものはない。筋トレ以外で解決する点について説明する。

 では、最初から。

 コルトー版では終止ウナコルダで演奏することになっている。ウナコルダにするかしないかは奏者の好きにしたらよい。それから、ペダルの指示だが、小節の前半をペダルオンにしている。実はこの曲、僕の個人的な見解がある。練習曲の裏メニューとしてペダルを殆ど使わず、左手のベース音を保持して演奏する。左手の1小節の広がりは大抵10度になっている。平均的なピアノ弾きの手のサイズとして、鍵盤の横から10度が届く程度というのがあるような気がする。多くの作曲家は横からでもとにかく10度が届くことを前提として曲を作っていることが多い。左手のベース音と5指で保持しながら10度を弾くという奏法は例えば、ショパンのコンチェルトなどでは多用されている。ショパンエチュードがコンチェルトのための練習曲と考えたとき、左手はベース音を保持しておくという方向性は自然なものではないかと思うのだ。同じ意見に出逢ったことはないけど。そんなわけで、ペダルについては基本的にベース音を保持できない程の範囲で左手が広がるときと小節の継ぎ目において音が切れてしまうときを除いて使わない。小節の継ぎ目は例えば、4-5小節目の継ぎ目の部分みたいなポイントになる。ペダルを踏むのは4分音符1つ分だけとなる。
 これをやると、ペダルによる誤魔化しがきかなくなるため、技術的なハードルは高くなる。音の粒を揃えるために音の強さ、次の音までの時間に加えて、離鍵のタイミングも揃える必要がある。

 コルトー版ではベース音を保持するポイントが書いてあるが、僕のやり方とは多分違う目的で書いている。よく分からない。


7小節

 ナショナルエディションでは最高音の指使いをカッコ書きで(453)と付している。できるだけ1,5指で黒鍵を取りたくないので、僕はこちらを採用している。
 4指の下を5指がくぐる形になるのだが、このDesは4指をまっすぐに伸ばして弾く。そして、次のCは5指を曲げて弾くことになる。4指を伸ばした状態で5指を曲げるのは人間の身体の構造上楽な行為ではない。そのため、4,5指が独立して自由に動かないと音を外しやすい。エチュード10-2でしっかり鍛えたらいいかも。

 さて、特に説明することもないので、いきなりコーダ付近まで飛ぶ。

 57小節目は7小節目と殆ど同じ形だが、最後の4音にスタッカートが付いている。しかも、その上にスラーが入っているので、メゾスタッカート。4分の3の長さだけキーを押さえる。速度指定がプレストの曲でスタッカートとメゾスタッカートの違いを表現できる人間が世の中に存在するのか、という疑問が生じる。この曲の中ではかなり重要なポイントであり、色んなCDの演奏を聴いても三者三様にこの部分をパスしている。中には全く無視して演奏する人もいるが、大抵の人はここで速度を落とす。指定の速さでスタッカートを表現するのは極めて難しいから、ということと、この速さでスタッカートにしても聞いている人は気付かない可能性が高いからだと思われる。僕の場合だと、この曲自体を少しゆっくり目のテンポで弾くが、それでもこの部分をスタッカートにするのは難しいため、56小節の後半くらいから僅かに速度を落とし、スタッカートのポイントをクリアしたらすぐに元の速度に戻るようにしている。

62小節

 62小節目のあたりからコーダに突入するっぽい。画像ではペダルの指示があるが、ペダルは踏まない。通常の少し早い下降スケール。普通にピアノを習っている人などはこういったところは難なく弾いてしまうのかも知れない。僕みたいに基礎訓練を疎かにしているとこういうところでボロが出やすい。66、67小節にも共通するのだが、右手の肘を開き気味にして弾くと音が揃いやすい、多分指くぐりをしやすいポジションになるから。ちなみに、この小節、ナショナルエディションではオシアが準備されているけど、特に右手の忙しいポイントなので無視した。

63小節

 この部分、譜例のように指使いをい変えている。この弾き方だとF-Desを4-3で取ることになり、4-3で取るにしては極端に遠くなってしまうため、あまりお勧めできない。元の通り53215321でいいと思う。あるいは54321321もありかもしれない。

65小節

 65小節目。元から書いてある運指だと気に入らなかったので思いっきり無視している。この運指だと3指だけ白鍵で他は黒鍵となる。3指だけキーまでの距離が長いため、音が崩れやすい。そこで、指とキーの距離をできるだけ均等にするため、手を寝かせて指の腹で打鍵する。あるいは、コーダにかこつけて思いっきり減速してごまかす。
 この部分は脱力して弾こうとすると指がうまく動かないので、力ずくで指を動かす。あまりよくないことだけど、指が動かないのだから仕方がない。この指の配置自体がポジション移動を少なくするというだけの目的であり、ショパンの演奏理念に反しており、非常に弾きにくい。そのため、この指使いは非推奨とする。敢えて茨の道を行くこともない。

67小節

 ここはオシアを弾く。というか、このオシアを弾くためにこの曲を弾いた。この部分と最後の2小節はペダルを踏む。最後の装飾はCDでも聞いて好きな奏者の真似をすればよい。ちなみに、コルトー版では次のようになっている。