チェルニー30番21 演奏解説

 チェルニー30番21を録音した。1月の半ば頃から何度か録音したのだけど、その度に気に入らなくてやり直した。うまくいかないときはテンポを落として練習するのは重要だなあと思うわけだが、気が急いてなかなか我慢が利かない。
 今ではチェルニー30番を始めた当初みたいに頑張って練習しておらず、ダラダラと練習しているとその内脱力できるようになってテンポも上げられるというスタイルでやっている。常に2曲を練習して、一方をメインに練習してもう一方は一度通すだけという練習の仕方である。1曲目が完成する頃にはもう1曲の方は脱力して弾けるようになっているといった様子である。進度は遅いけどダラダラ練習できて尚且つ微妙に上達してるような気がするので、このやり方は僕にはあってると思う。真剣にうまくなりたいと思っている方はまあ真面目に頑張ってくださいとしか言えない。それでも、一応この解説が演奏に関しての一助になればよいなとは思う。
 いつも通り、楽譜は全音版を使う。音楽性とかいった曖昧で難しい部分は割と閑却して、メカニカルな部分を中心に低レベルな解説をする。

テンポについて
 今回は事前のボツにした録音を反省して、安定したテンポは無理だと断じて、テンポに緩急をつけることで誤魔化した。誤魔化したという表現だと人聞きが悪いのだけど、一貫したテンポだと演奏自体に面白みがないので敢えて緩急を付けたという面もある。
 それはそうと、4分音符で138bpmで16分音符メインの曲なので、速いことは速いけど常識的な速度と言える。普通に、これくらいかなと思った速度で合っている。当然だけど、脱力せずにこの速度を出そうとすると相当無理があるとは思う。

曲全体について
 半音階の練習について、解説では以下のように書いてある。

 両手のための半音階練習です。半音階の指使いはいろいろありますが、普通は黒鍵に3指を用いる譜例Aの指使いが用いられます。しかしこの曲ではBが使われていますので、よく注意して弾いてください。

 僕の場合、このA、Bどちらの指使いも指くぐりが多くて気に入らなかったので、下に示すように出来る限り指くぐりを排した運指に変えた。チェルニーの言いつけなんて知ったこっちゃねえ。
 できるだけ鍵盤の手前側で打鍵する。半音階スケールがテーマなので黒鍵のある奥の方を弾いてしまいがちだが、鍵盤の奥の方は白鍵が狭くてミスタッチしやすい上に黒鍵と黒鍵の隙間となっているため、打鍵の際に取り得る手指の動きが非常に制限されるので弾きにくい。黒鍵と黒鍵の隙間を押す関係上、ある程度指を上げないと手を移動する際に指が黒鍵に引っかかってしまう。なお、指定の指使いだと黒鍵と黒鍵の隙間の白鍵を弾く必要のない運指となっているのでいらぬ悩みである。
 pの部分は力を抜いて離鍵を意識した軽いタッチで弾く。キーを鍵床まで押し込む必要はない。キーが投げ放ったハンマーが弦に当たりさえすれば良いというくらいに軽く弾く。
 半音階は移動が細かいのでミスタッチしやすい。手元をよく見ることで命中精度が上がりミスタッチを減らすことができる。できるだけ手元を見ずに練習しようというコンセプトでチェルニー30番を始めたのだけど、譜読みが済んで曲全体を通して弾けるようになってしまえば手元を見ないことに拘ることもないのかもしれない。

1,3,17,19小節の4音の半音階下降の繰り返し

 ◎4→3→2指と進む時、4指は白鍵の先端、3指は黒鍵の手前、2指は黒鍵の先端という順に打鍵位置が鍵盤の手前から奥へと移る。この際、手のポジションを手前から奥へと移動させることで、指は脱力してまっすぐ下ろすだけで正確に弾ける。最後の1指は2指の黒鍵を押した時のポジションが丁度よい打鍵位置になっているので2指の打鍵で手の移動は止まり、1指で打鍵したら手を手前に引く。各拍で手は手前→奥という動きを繰り返すことになる。

2小節

 ☆2、4小節右手。3拍目までは下りの半音階下降なので手の先端が少し左を向く形になるが、そのままだと4拍目はすごく弾きにくいので、2小節目は少し右向きに、4小節目は正面に手が向くように肘を動かす。18-20小節も同様。また、同時に手首をロールして指の動きが少なくて済むように動きを助ける。
 ■2拍目右手。Des-Cを2-1で取るときに1指と2指が交差して戻る動きになる。このとき、1指が完全に離鍵できていないとDのキーが沈んだ形になっており、Cのキーとの間が段差になっていて1指をCの上に移動するときに段差に引っ掛けて指の移動に失敗する。しっかり離鍵しておかなければならないが、1指の動きが忙しくて余裕が無いときは手全体を持ち上げることで離鍵を助けてやる。どうしても上手くいかないなら、手の動きを見て弾くと成功率が上がる。手の動きを見て弾くと成功率が上がるというのは、視覚情報を元に手の動きを無意識の内に補正するためである。逆に、このために上手く弾けない原因を求めるのが難しくなる。駄目な部分を見出そうと観察すると上手く弾けてしまうから。不確定性原理ではないが、観察によって結果が変わってくる。
 手元を見ずに弾くために:左手、次の音はDの半音上なので離鍵した後に手を動かさずにその場でじっとしておくこと。半音上のEに1指を置いて、このキーを基準にF、Aの位置を決める。

5小節右手

 半音階の上昇のときは手の先端側を左に向けると指くぐりをしやすくなる。
 2指を離鍵した後、しっかり上げて1指がくぐれる空間を作ること。

7小節

 ▲右手3拍目E。このEをちゃんと離鍵しないと4拍目最初のEを押すときにキーが下がった状態のままでキーを押せなくなってしまう。
 左手1拍目。この和音を離鍵したら、このBの右側の黒鍵と黒鍵の隙間(H,Cの上)にテキトーに5指を滑り込ませる。この5指を右に移動させると黒鍵(Des)の側面に触れる。この位置がCである。このCを起点としてたのキーの位置を確定させる。

8小節右手

 ※打鍵しない指型の指の動きにつられて降りてこないよう注意する。スタッカートで練習するのは効果的。

9小節左手

 ここから12小節までは左手を注視する。この長さは手元を見ていないとどこを弾いているのかわからなくなってしまう。
 ●最初の部分。5-4で弾き始めると4指の打鍵タイミングがかなり早くなってしまうことがある。急いで弾くとそれが特に顕著になる。4指と5指は腱を一部共有しており、5指の動きに4指がつられてしまうため、本来4指を動かし始めるタイミングで既に4指はキーを半ばまで押しているせいである。意識して4指の動きを抑えるとか、いっそゆっくりと弾き始めるとかするとよい。18番の出だしのところを参考にするのも良い。

10小節左手

 ✡上昇スケールは手の先端を右に向けると弾きやすくなるのだが、このGは黒鍵と黒鍵の隙間なので手を傾けたままだと左右の黒鍵に阻まれて高い確率でミスタッチする。だから、こういう部分では手を真っ直ぐにするとよい。

13小節右手

 *このタイミングで手元を確認するときに次に押すべきGの位置だけでなく、周りの鍵盤の配置を一緒に見て、そのイメージを記憶する。この記憶に頼って3拍目のDや14小節最初のHの位置を定める。

15小節右手

 ☆Desは5指で弾くには遠い位置にあって弾きづらい。A-B-H-Cを通常の手が正面を向くポジションで弾き、4指でCを押した直後に4指を中心に手をひねって、手の先端を左に向けるようにして5指が鍵盤の奥に近くなるポジションにして5指でDesを押す。Desを押したらすぐに手の向きを元に戻して続きを弾く。

16小節右手

 4拍目。Cis-D-Dis-Eのところを2-2-3-3と、黒鍵から隣接する白鍵に同じ指で滑りおろして取ることで指くぐりを避けることができる。

23小節

 ■22→23小節に移るところ。半音階から分散和音に移り変わるところでついつい急いでしまうけど、早く入りすぎないこと。22小節の最後の方で僅かにテンポを遅らせて、一呼吸入れるような気持ちで23小節に入るくらいで良い。急いでも分散和音が崩れるばかりで良いことがない。
 ◎23小節1拍目右手Fisの2指は離鍵した後しっかりと指を上げないと4→1のポジション移動の際に1指の通り道を2指が塞いでしまう。ここは指くぐりせずに手の形そのままにポジション移動する方が良い。このポジション移動奏法はピアノ脱力奏法ガイドブック 2で好んで勧めているけど、何故かこの21番では書かれていない。不思議だ。
 ✡3拍目左手。この子ょ右折は右手を注視しなければならないので、この部分は目視確認できない。23小節に入って右手に視線を向ける直前に一瞬だけ真ん中のCのあたりを見て、だいたいの位置を把握しておく。左手最初のFBを話したら2指をその位置に持っていく。BとDesの間、HCの上に2指を置いたら手を右に移動させる。するとDesの側面に接触するので其一がCであると分かる。このCを基準にして残りのFとEsの位置を確定させる。

24小節

 どうせ指定の指使いを守るつもりがないので、左手取りでズルする。

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