プリンタの詰め替えインク

 昨今のプリンタメーカーはどれだけインクを無駄に浪費させて新しいインクを買わせるかというところに命を賭けている、というようなことは度々言ってきたし、インクジェットプリンタを使用している方はよくわかっているのじゃないかと思う。使い方にもよるけど、普通の純正インクを言われるがままに使うと1枚50円以上のコストがかかっていると感じる。モノクロであればコンビニにPDFデータを持っていって印刷したほうが遥かに安い。
 今回はプリンタの詰め替えインクについて。一応、1年使った実績を元に書いておく。使用するプリンタはEPSON EP-806AB。はっきり言って糞である。アマゾンのレビューで星が3.7付いているのが不思議でならない。レビュアーは白痴ばかりなのだろうか。というか、それ以前に糞でないプリンタが現代の世の中に存在するのかが全くもって疑問である。
 詰め替えインクの方はサンワサプライINK-E70S30S6U。お値段は3600円と、純正のアマゾン価格3300円よりも少し高めだが、詰め替え4回分とのことなので、遥かに安いことになる。また、後述するように余計なインクの漏出を一部防ぐ事ができる。
 また、この商品にはインクのICチップをリセットして残量パラメーターを新品同様にするというリセッターが付いているため、値段が高くなっているのかと思ったのだが、サンワサプライのサイトを見るにリセッターの付いていない6色セットのものは販売していないようである。リセッターのないものは単品でなら売っているが、例えば黒(INK-E70BK30)だとアマゾン価格で1293円となっている。こちらは決して安くないのでリセッター付きの6色セットを買ったほうがお得である。一色だけ飛び抜けて使用量が多いとかなら単品を買うのもありかも知れないが、プリンタ自体が何かとインクを消費しようとするので、だいたい均等に使用していく。ちなみに、モノクロで印刷しても容赦なく黒以外の色も使用する。黒だけを使えばいいのに黒以外のインクを混ぜて黒を表現するとかアホじゃないかと思うのだが、インクを浪費させるための知恵である。

・詰替方法
 取説に書いてあるのだけど、一応詰め替え方法を説明する。
1.通常通り、プリンタからインクカートリッジを取り出す。
2.リセッターをUSBで繋いで、カートリッジのICチップをリセットする。
 リセッターにUSBを繋いで電源が供給されると、下の写真みたいにLEDが赤く光って点滅したりする。

 リセッターに生えている端子にカートリッジのICチップを写真の向きで押し付けると、LEDが赤から緑に変わる。
 これで、インク残量はリセットされる。


 カートリッジをリセッターに押し付けたままにしていると緑になったのが再び赤になったりするので、緑になった瞬間を狙って離す。再び赤くなったときにどうなるかとか試していないから、問題ないのかもしれない。
3.インクを詰める。
 一応、液が漏れたりしたときのために下にティシューを敷いておく。
 カートリッジのインクが染み込んでそうなところに液を垂らすとカートリッジ内に入っていく。この際、カートリッジの端っこにある穴にインクが付いたらいけないらしい。
 また、インクは欲張ってたくさん入れたところで最後まで無くなる前にプリンタ側がかってになくなったと判断するので必要以上に入れることに意味はない。寧ろ、溢れたり濡れたりで良くないことが起こる。写真カートリッジ左端のチップのすぐ右のあたりに窓があるので、この窓が低くなるようにカートリッジを傾けた状態でインクを注入して窓にインクが付くようになったら注入終了とするくらいで良い。


4.インクを注入した部分をティシューに押し付けてインクを拭う。

 多分、繊細な部分なので、擦ったりせずにそっと押し付ける。
 写真はインク注入で欲張ったせいか大量にインクが漏れてきた。
5.カートリッジをプリンタに戻す。

 通常のインク交換と同じで良い。
 この後、純正インクではないと文句を言ったり、ノズルが詰まっても知らねーよとか脅してくるけど、気にしなくて良い。
 後は普通に使うだけ。

 さて、インクの詰め替えは以上の通りだけど、このEP-806ABというプリンタはインクを交換する度に何かゴソゴソと作業をしてインクを消費する。多分、ノズルにインクを充填するとかそんなことをやっているのだと思う。それはいいんだけど、全くけしからん事に、交換したカートリッジ以外もインクを減らしているのである。どうあってもインクを浪費させなければ気がすまないらしい。
 次のスクリーンキャプチャはマゼンダがなくなったからとインクを詰め替えた後、2~3枚位印刷して今度はライトシアンがなくなったから交換しろと言ってきて交換し、それから1枚も印刷することなくブラックがなくなったので交換したところのもの。

 ブラックの減少量がカートリッジ設置時に消費する量であり、見ての通りライトシアンがその倍ほど減っている。つまり、使いもしないのに消費しているということ。そして、マゼンダが半分近くなくなっている。もはや何がなんだかわけがわからない。1nm2も印刷していないのにインクはなくなっていく。
 ①インクを交換する→②インク交換時の処理でインクを消費→③別のインクがなくなる→①に戻るというコンボが発生することになる。この減少量を見ると6連鎖からの無限地獄とか起きそうな気がしてくる。ホント、EPSONサイテーだ。
 この負の連鎖を断ち切るためには、一気に全部リセットして詰め替えてしまえば良い。
 実は上のキャプチャはブラックと一緒にライトマゼンダも詰替をしている。そして、この後、シアンがなくなったと言ってきたのでマゼンダ、シアン、イエローを一緒に詰め替えた。複数のカートリッジを同時に詰め替えることで、詰替時のインクの浪費を抑制することが出来る。ってことに今更気づいた次第である。これは通常のカートリッジ交換ではなかなかできない。
 そんなわけで、詰替えインクはお勧めである。是非ともプリンタメーカーの悪逆な仕打ちに一擲を食らわしてやりたいものである。

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 20160529 EPSON EP-806AB

チェルニー30番20 演奏解説

 チェルニー30番20を録音した。今回はいつも以上に時間がかかった。これを練習している間にショパンの練習曲25-9がほぼ完成してしまったくらいである。この曲が難しいからというわけではなく、曲に魅力がなくてモチベーションが上がらないというのと、僕の練習方法がいくらかまずかったというのもあったかもしれない。本エントリーはその反省を踏まえての演奏解説でもある。
 いつも通り、楽譜は全音版を使う。音楽性とかいった曖昧で難しい部分は割と閑却して、メカニカルな部分を中心に低レベルな解説をする。

テンポについて
 テンポは付点4分音符で60bpmと、19番と同じ速度の指定になっているため19番→20番と順に演奏する場合はとっつきやすいかもしれない。とはいっても、初めて練習するときはゆっくり弾くところから始めるので、19番と同じ速度であることによるお得感はあんまりない。
 僕の演奏はそれよりも少し早めのテンポになっている。テンポを早くして演奏がふらつくくらいならゆっくりにしたらいいのにと思うのだけど、演奏中に自分のテンポを認識できないのでメトロノームに合わせて弾くくらいしか対策がとれない。あるいは、さらに長大な時間をかけてテンポが安定するまで練習するか。ただでさえ時間をかけまくってるのに、チェルニー30番ごときにこれ以上時間を取られたくないというのが正直なところ。
 過去何度も書いてると思うけど、弾けていないと思ったら間違いなく弾ける速度までテンポを落とすという勇気は必要である。弾けてないのに徒に弾いても、練習した気になるだけで実際は練習になっていない。そうやって弾ける速度を少しずつ引き上げていく中で、引っかかる部分を分析して、何故引っ掛かるのか、どうやったら解決できるのかを考えるのが重要である。

曲全体について
 全体的に音域が高めなので真ん中よりも右に座ると良い。具体的にはGの辺りが体に中心に来るくらい。11~12小節が少し弾きにくくなるので、このときだけは上体を左に移動して弾きやすい姿勢を取る。11~12小節さえなければもっと右に座りたくなる。
 4指の弾きにくい箇所は腕・肘を低くして指をまっすぐに伸ばすようにすると弾きやすくなる。あるいは椅子を低くすると弾きやすくなるが、曲によって椅子の高さを変えるのは勧めない。
 右手のトリルみたいな、和声音から2度の隣接音で装飾して元の音に戻る音を刺繍音という。全音の解説文では1音1音丁寧に弾いてくださいと書いてある。それは当然のこととして、刺繍音は最初の1音と続く2音では最初の1音が圧倒的に重要であるので続く2音を意識するあまり続く1音目がないがしろになるくらいなら2,3音目を雑に弾いちゃった方がまだマシである。勿論、練習曲としての課題を考えるのならテンポを落として弾けということになる。
 ピアノ脱力奏法ガイドブック 2にある、全ての音をスタッカートにして弾くという練習方法は指を独立して動かす筋肉を鍛えることになって、より滑らかに弾けるようになるのでお勧めである。

1, 2, 4小節

 ☆右手。1→3指で6度の跳躍を行う。直前に1-5指で5度上の位置を確認しておいて、それより1つ上のキーに跳躍する。手が馴れてくると、確認なしでいきなり跳躍出来るようになる。なお、僕は95%以上の確率で成功するようになったけど、このパターンの跳躍の出現回数を考えると、この成功確率は低すぎて話にならない。

6-7小節

 手元を見ずに弾くために:※6小節後半左手。この3音のうちCは次も同じキーを押すので2指をキーの上から動かさないでおく。他の2音はそれぞれ次の音で半音上がる。結局どの音もこの3音の位置が重要な手がかりとなるため、離鍵後手を動かさずに次の音の準備をすること。
 ◎6小節1拍目、7小節5拍目右手。4-5-4のトリルで4指を自由に動かすのはとても難しい。解剖学的に4指は動きづらいように人体はできているのだ。脱力ができていないのだけど、自分の意志で脱力できるわけでもない。この拍の間だけ指を真っ直ぐにして、手を鍵盤の上に平ぺったく乗せるようにして弾くと取り敢えずクリアできる。

9小節

 手元を見ずに弾くために:✡9小節後半左手。1泊目で押したEの位置をある程度覚えておいて、そのあたりに2指を持っていく。テキトーにそのあたりに指を持っていけばEかFのどちらかの上なので、そこから指を左に移動させると黒鍵の側面に触れる。その下がEである。このEを起点として他のキーの位置を確定させる。

11-14小節

 ■11~14小節右手。基本的に1指が2指の下に潜り込んだ形で演奏しなければならず、弾いていてとても不快感が強い。それでも我慢して馴れなければならない。11~12小節ではコンパス弾きのような弾き方になる。
 コンパス弾きというのは多分根津栄子の造語で、1指あるいは5指で同じ音を叩く合間に残りの指で別の音を挟み込むときに手首の回転を使って弾く方法。根津栄子編のチェルニー30番(下)で説明がある。チェルニー30番の13番はコンパス弾きの練習である。13番を解説する機会があれば、コンパス弾きについて、尺骨と橈骨の動きと一緒に説明したい。
 弾きづらいポジション移動の中で4指の弱い力では最後までキーを押し下げる事ができず、音が出ないことがよくある。4指を最後まで押し下げるよう意識して弾くこと。
 1→2拍目はちゃんとポジション移動すること。ポジション移動を怠けて同じポジションで弾こうとすると、5指がCを押すときに一緒にHを引っ掛けてしまって、キーが下がった状態になり、次のHを打鍵できなくなってしまう。
 ▲12小節右手。G-Fis-Gは手の位置を高くした方が弾きやすく、C-H-Cは手の位置を低くした方が弾きやすい。これらが交互に訪れるため、拍ごとに手を上げ下げしなければならない。楽して手を動かさずにいようとすると離鍵に失敗して次の音が出なかったりする。
 ☆13小節4拍目右手。ここが弾きにくいと感じるのはHのせい。2つ前に2指でBを押しており、Bを離鍵した位置からHを押そうとするとBのキーが邪魔になる。また、BとHのキーの段差があるため打鍵のタイミングがずれる。3拍目のBは指を変えた2指で押すので外しやすい。このBを外して、間違ってHを押してしまうと、次の拍の2指で押すHをもっと上にあるはずだと脳が勘違いして変な位置を押そうとするせいでミスタッチにつながる。 そんな訳で、このBは外すと影響の大きい音なので特に注意すること。

16小節

 4拍目右手。この直前までHには♮がついていて、繰り返し押している内に手がHに馴れてしまっており、ここで突然♭になるので指が咄嗟に対応できなくなってしまっている。これまでとは違うということをよく意識して弾くこと。  5,6拍目右手。ABHを122と指使いを変更した。BHのところ、指くぐりを嫌って指を滑らせてズルをしている。

17-18小節

 17小節後半~18小節前半左手。ヘクサコードが出てくる。左手の指は5本なのに音が6つあるので弾きにくいと感じるのだけど、ここでは中間の半音部分が黒鍵→白鍵となっているので指を滑らせてズルをする。
 17,18小節の左手の音型はこの曲の主旋律と対応している。こういった細かい芸はインベンションで学ぶことができる。

24小節

 ※右手。分散和音とかの跳躍時に指くぐりのところはちゃんと離鍵すること。しっかりと離鍵せずにキーを沈めたままでいると、指くぐりのポジション移動の際に指を引き摺る形になり、隣のキーの端に指をぶつけたり擦りつけたりで結構痛い。
 左手3拍目。F→Fのオクターブのところ。 スタッカートが付いているので素早く離鍵する必要があるが、離鍵した勢いに乗って手を動かさないこと。1オクターブ下の次のFの位置はこの離鍵したFを基準に測るので、手を動かしてしまうと次のキーがどこにあるのかわからなくなってしまう。

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OpticBook3800で綺麗にスキャンしたい

 以前、ブックスキャナーPlustek OpticBook3800の説明をしたのだけど、その際に微妙に焦点があっておらず使えねーというようなことを書いた。
 この件について、ピントが合わないのなら読み取り面とCCDの距離を前後させてスキャンしたらぴったり焦点の合うポイントがあるのではないかと思った。とはいえ、読み取り面を近付けるのは始めから付いているアクリル板をどうにかしないといけないのでちょっと難しい。そんなわけで、読み取り面を離して焦点の合うポイントがないかを探った。
 結論を言ってしまうと、より綺麗に読み取れるポイントはなかった。
 大したことではないが、調べた方法を書いておく。

 最終的には正確に距離を測るためには固くて撓りの少ない板状の素材を使ってスキャンするのがよいと考えた。それよりもまず、読み取り面とカメラの距離を近づけたら良いのか離したら良いのかという点を明らかにする必要があるので、テキトーに距離の近い部分と遠い部分が連続的に変わるような読み取り方をする。
 実際にやることは簡単で、下の写真のように本を伏せて押さえつけないようにしてスキャンする。ノドの部分はどうしても浮いてしまうので、自動的に読み取り面が離れることになる。
 Role&Roll154のコード:レイヤードの記事タイトル部分をスキャンした。コード:レイヤードは別に好きなルールというわけではないけど、イラストは結構好きである。孔明ちゃんかわいい。スキャンの解像度は300dpiとした。

 読み取った結果は次のような感じになるのだけど、フルサイズはファイルサイズが大きくなって邪魔くさいのでアップしない。

 カラーとグレースケールでそれぞれスキャンしたときに品質が変わる可能性を考えて、それぞれスキャンしてみたけど、下に示すように特に違いはなかった。
・グレー

・カラー

 この通り、ほとんど違いがわからない。カラーのほうが少し色が薄いなあという気がするけど、焦点が合わないという問題に対しては何の影響もなさそうである。
 そんなわけで、これ以降はグレースケールを使って記述することにする。
 スキャンしたページの一部を端からノドまで切り抜くと次のようになっている。

 右が端側で左がノド側となっている。普通のコピー機やスキャナと同様、ノドの方がピントがズレた上に黒くなっている。
 これを見て分かるように右のほうがピントが合っており、左に行くほどピントがズレている。途中でより綺麗に撮れている部分というのは存在しないことからこの試みは上手くいかないという判断ができる。

 これで結論は出たわけだけど、もうちょっと掘り進めてみようと思う。
 上の試みでは読み取り面を離すという方向で調査したが、それなら近付けると上手くいくかということだが、残念ながら上手くは行かないことが予想される。
 というのは、比較のためにEP-806ABで同様にスキャンしたところ、そういう結論に行き着いた。

 上と同様サイズの小さい画像を表示しているのだけど、OpticBook3800と比較してノド周辺のピントのズレがより激しくなっている。上と同じ部分を切り抜くと次のようになっている。

 端の方はよりはっきりとピントが合っており、ノドはピントがより外れている。つまり、EP-806ABではOpticBook3800よりも綺麗にスキャンできる代わりに、距離がずれると途端に読めなくなってしまうという設定になっている。読み取れる距離をシビアにすることで綺麗に読めるようにしているのである。一方OpticBook3800では少しくらい距離がズレていてもそれなりのものが撮れるが全体的にぼやけたものになるという性質がある事がわかる。
 つまり、OpticBook3800は読み取り面と焦点距離があっていないのではなく、そもそもそれほど綺麗にスキャンできる機械ではないということである。結局、小細工を弄してきれいに撮れないかと頑張っても無駄ということ。スキャナとしての本質的な性質が明らかに劣っているので、どうしようもない。なんか色々と残念なスキャナである。

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矢作神社行ってきたよ

 矢作神社に行ってきた。
 岡崎の矢作川右岸にある神社で、矢作川に縁があるっぽい。
 矢作川については20140629に色々書いたので特に書くことはない。転記しようかと思ったのだけど、分量が多かったのでやめた。

まずは入り口から。

 道の右側には「郷社矢作神社」の石碑がある。
 道の先には木に隠れてるけど、灯籠の向こうに鳥居がある。
 道の左側には矢作神社の説明の立て札。

矢作神社YAHAGIJINJA――岡崎観光文化百選
伝説では、「東征の折通りかかった、日本武尊に住民が、この地に住む賊に苦しめられていることを訴えた。大和武尊に命ぜられた矢作部たちは矢を作ろうとするが、竹の生えている川の中州まで行けない。突然一匹の蝶が人の姿となり竹を切り取ってきてくれた。矢作部たちは1万本の矢を作り、武尊は神社に祈って賊を滅ぼした。それ以来、神社は矢作神社と呼ばれた」とされます。ほかに、新田義貞ゆかりの「うなり石」があります。
Yahagi literally means to make arrows and this name came from the legend of Yamato Takeru in which he ordered the local people to make arrows. The shrine grounds contain arrow bamboo plants, and a sacred stone relevant to the battle between Ashikaga Takauji and Nitta Yoshisada in 1335.

 この他、中国語とスペイン語らしき言語で同様の内容が書いてあるけど、書き写すの大変なのでやめ。
 大和武尊というと、駿河の沖で海に転落死した大和武尊の衣服が師崎に漂着したことからその内海を衣浦と呼ぶようになった[1]という話を思い出す。大和武尊に因んだ説話ってのは日本中にありそうだし、矢作神社とは関係がなさそう。

鳥居

 どういうわけか鳥居は舞台の上に建てられている。何か意味があるのかな。
 鳥居の左奥には手水舎が見える。
 鳥居の前には注意書きがある。

あぶない
灯籠や石碑の上に登らないでください
万一事故が発生してもその責任は一切負いません。矢作神社

 下のほうが潰れて読めないけど、当たり前のことが書いてある。


 灯籠の左側には掟が掲示されている。


神社の尊厳を冒す一切の行為を禁止する
矢作神社


 鳥居の下には不細工な猫がいた。

鳥居の左手前側

 庭園っぽいのと「明治廿三年八月」の石碑。明治23年というと1890年、何かあったかなと思って調べてみても、特にイベントらしきものは見当たらない。この庭園を作った紀念碑だろうな。

表忠記念碑

 写真だと写りが悪くて横に書いてあるのが読めなくなってるけど、「陸軍中将従三位勲一等功二級男爵土屋光春書」と書いてある。

旧驛矢作郷惣鎮守

 光の加減で写りが悪すぎて何が書いてあるのか読むのが大変なので、コントラストをいじって読みやすくするとこんなふうになる。
 「旧驛」ってことは、ここに宿場とかバス停とかがあったってことかな。

鳥居の奥左側

 山車格納庫、手水舎、社務所っぽい何か。
 当然だけど、普段は山車を見ることはできない。こんな感じらしい。
 山車格納庫の横には説明文の掲示がある。

 岡崎市指定文化財
  矢作町二区
有形民俗文化財 祭礼山車 一台

 この山車は、江戸時代末期の作品である。正面屋根は上げ下げが自由に出来るようになっている。牛若丸と天狗の彫刻を始めとして、彫刻は全て金箔、極彩色が施してあり、豪華な幕類とあいまって華麗荘厳、見事な作である。
 矢作町には過去四台の山車があったが、現在はこの東中の切と西中の切の二台が保存されている。
 山車の高さ 山を上げたとき 7.09メートル
         山を下げたとき 6.00メートル

 昭和四十八年三月二十三日指定

 岡崎市教育委員会


鳥居の奥

 右側の大和武尊陶像が一際目立つ。

 矢作神社においては大和武尊は重要キャラなのでこうやって像を建てて祀られている。

  大和武尊陶像
 大和武尊は、その生涯を東奔西走し、日本の国を平定開拓された英雄であります。
日本書紀」によりますと、景行四十年(四世紀頃)東夷が反乱を起こしたので、大和武尊を東方に派遣しました。この地(三河国蓬里【現矢作町】)で東夷と対戦した時、川の中州にあった良質の矢竹でたくさんの矢を作り突破したという伝承があります。のちこの川を矢作川と、また里の名を矢作と改称しました。
 この陶像は、皇紀2600年(昭和15年)を記念して建立されたものです。

 建立 昭和十八年十月(1943年)
 奉納者 陶像 高橋信一(名古屋市)
      建設費 高橋信一(名古屋市)
           鋤柄護夫(矢作町)
 製作者      杉浦庄之助(高浜市)

 以前調べたときは、この地域で矢を作っていたことで矢作と呼ぶようになったとのことだったけど、ちょっと違うことが書いてある。大和朝廷がこの地域を取り込むときにこういう話を作ったんじゃないかな。

秋葉神社

 大和武尊の向かいにある建物。
 額とか灯籠に秋葉神社っぽい文字が書いてある。
 神社の中にちっこい神社があるのはよく見かけるけど、どういう意味があるのかなとか思ったりする。それぞれに神様がいるんだと思うけど、複数の神様を一緒に祀ってたりもするし、神道はよく分からん。矢作神社にはこれ以外に八幡宮が入り口の横にある。
 前面に貼ってある札みたいなのは「日の丸を高く掲げて国づくり」と書いてある。

大和武尊の奥にある石碑

  矢作神社
 鎮座地 愛知県岡崎市矢作町字宝珠庵壱番地
 祭神 素盞嗚命 豊受大神 保食神
 例祭 十月二日
  由緒
第十二代景行天皇の御代に大和武尊が東夷御征伐の時軍神として素盞嗚命をお祀りし広前で矢を矧ぎ給いしため社号を矢作神社と称えた。社前の矢竹はそのいわれの跡といわれている。永保三年(1083)源義家陸奥守として奥州へ征伐に行く途中大和武尊の故事にならって参拝されたと伝えられている。その後建武二年(1335)新田義貞足利尊氏との戦いで戦勝を神前に祈願した折社畔の石が鳴動した。これは神のご加護があると信じて大いに戦いついに勝ちを収めたといわれている。伝えて「うなり石」として拝殿の西南に在る。天文年中(1532-54)岡崎城主松平廣忠は祀田ニ十石を置いたが当社は中古より矢作橋改築ごとに城主及び普請奉行から奉幣寄進するのが例であったという。第一次世界大戦後帝国軍艦矢矧の艦長以下船員一同の崇敬篤く艦内に矢作神社の分霊を奉斎して大祭を執行しまた兵員一同正式参拝も行われ軍艦矢矧の模型を奉納されている。中古牛頭天王と称したが維新後旧名の矢作神社に復した。明治五年九月十七日郷社となり明治四十年十月には神饌幣帛料供進神社に指定せられた。
秋葉神社には加具土命を奉仕す。

 写真がちょっとぶれている。毎回きれいに取れたか確認してないからなあ。撮影が下手なのはどうにもならない。

もうちょっと奥

 だいぶ本殿に近づいてきた。
 掲示板に貼ってあるものはちょっと読めない。
 右側の柵の手前に何か立て札がある。

文化財を大切にしましょう
  岡崎市指定有形民俗文化財
 「矢作神社絵馬群」十二点 矢作神社
 矢作神社は大和武尊伝説を残す古社で、矢作橋や土場が近くにあったことから、水運業者などの奉納が多い。
矢作橋杭打図 (延宝二年(1674)奉納)
 図中、矢作橋では杭を打ち込み、二隻の船上では儀式が行われている。江戸時代二度目の架換えの無事完成を祈願したもので、裏に「天和二年(1682)正徳二年(1714)]と墨書きされているのは後の改造工事安全祈願であろう。
矢作橋設計図 (延享三年(1746)奉納)
 延享2~3年(1755~6)矢作橋四度目の架換えが行われた時の設計図額であ■(岡崎城出展中)
義経弓流し図 (宝暦十二年(1762)奉納)
 屋島合戦で源義経が弓を海に落とし、敵中その弓を拾った故事。画面下方に流される弓が描かれている。
・桜花奔馬図 (正徳五年(1715)奉納)
 加納風の端麗な筆で、桜と喜遊する馬二頭を描いている。正徳五年は、矢作橋三度目の架換えの年。
・白馬に仕丁図 (天明元年(1781)奉納)
 当地方の画家によると推定される。天明元年は、矢作橋六度目の架換えの年。
このほかに、源頼義図・黒馬に仕丁図・恋飛脚大和往来図・馬図・七福神図・六歌仙図・狩衣武者乗馬図 以上各一点
  平成三年2月六日指定
    岡崎市教育委員会


本殿

 ちょっと遠いけど本殿。
 本殿前になんか掲示がある。

 矢作神社のご祭神
矢作神社のご祭神は素盞鳴尊です。
この神様はよく御存知の通り伊勢神宮にお鎮まります天照皇大神の弟御に当たられます。祗園祭で有名な京都の八坂神社、大宮市の氷川神社(関東地方)又中部、東海地方では津島市津島神社も同じご祭神です。この神様は大変粗暴な神様として多くの話が伝えられていますが、尊の名を呼びまた尊を祈るものには喜んで救いの手を述べると言い伝えられている様に、この神様は邪気を払い、悪事、災難、悪魔をも払い除けてくださる神様として全国的に篤い信仰が広がっているのです。尚、農耕守護の神としても有名な、お方です。
  矢作神社

 神道に「悪魔」って概念があったっけ?

 以上、矢作神社でした。


おまけ
矢作神社の入り口脇にある八幡宮

 なんか鳥居が小さい。その昔、小説ダンジョンマスターで見た「神に仕えるように進むのだ」っていう記述を思い出す。ひれ伏して進みなさいっていうことか。


 「御大典記念樹」「敬宮愛子内親王殿下御誕」と書いてあるので、愛子さまが生まれたときに植えたのかな。



 こちらにも掟が書いてある。
 文面は矢作神社と同じ。


神社の尊厳を冒す一切の行為を禁止する
八幡社



 本殿。表に張り出してある紙には秋葉神社に貼ってあったのと同じ「日の丸を高く掲げて国づくり」。


おまけその2
 折角なので、矢作川周辺を歩いてきた。


 堤防の方から見下ろしたところ。
 リア充どもがでかい音で音楽鳴らしてBBQして遊んでる。爆発しろ。


 河川敷に侵入するルートが整備されている。
 以前は好き放題繁った草をかき分けないと河川敷に入れなかったのに随分と変わったものである。

 矢作橋から上流を臨む。


参考文献
 [1]村瀬正章, 碧海の歴史, 松籟社(1985)

関連エントリー
 20140629 矢作川

IRスペクトルを描きたい

 前回、Gaussianをネタにしたので、ついでにこれを書いておきたくなった。
 GaussianではIRとかVis-UVとかNMRとかいったスペクトルをシミュレートする機能がある。そこで得られたスペクトルというのは実測するのとは大分違った形で表記される。今回はIRを例にとって話を進める。
 Gausianプログラムで学ぶ情報化学・計算化学実験には、アセトアルデヒドのIRスペクトルの計算値と実測値との比較と称して次の表が載っている。

 折角なのでこれを使う。表のB3LYP/6-31G(D)にある振動子強度とscaledが必要な値なので、他の部分には目をつぶる。これを書き出すと以下のとおりとなる。

scaled 振動子強度
148.7 0.002806
487.5 0.128902
749.8 0.006655
859 0.082468
1093.1 0.246019
1100.4 0.014986
1348.9 0.185796
1390.5 0.123765
1432.3 0.169904
1441.5 0.093053
1771.6 1.56687
2784.6 1.3846
2926 0.025906
2980 0.093043
3042.1 0.104524

 "scaled"が横軸波数(cm-1)で、"振動子強度"が縦軸となる。振動子強度は縦軸をモル吸光係数としたときのピーク面積に比例する値[2]なのだが、ピークがシャープなのかブロードなのかで見た目がだいぶ変わるため、振動子強度にあまり多くの意味を込めることは出来ない。
 15個数値があるのは、アセトアルデヒドは原子の数が7個あり、分子の基準振動の数は(3n-6)で与えられるため。
 これをグラフにすると次のような棒グラフができる。

 このグラフの描き方はいつものようにアップしたエクセルのシートを見てもらえれば分かるのだけど、Aの列に横軸をテキトーに並べて、BにAの値が"scaled"の値を跨いだかを判別して、跨いでいたらCに振動子強度の値を入力する、跨いでいなければテキトーなマイナスの値を入力するとしている。
 この描き方はXRDで既知のチャートを一緒に表示するときなんかにも使える。
 論文とかの硬派なメディアで開陳するならこのきっちりと理想の数値をひとつだけ表す棒グラフがよいのだけど、ブログとかの軟派な場ではもっとキャッチーな表現をしたくなる。具体的には普通に測定したIRスペクトルのようなものを描きたい。
 Gauss Viewなんかを使えばそれらしいものを見せてくれるのだけど、マニュアルを見るとピークの幅なんかはテキトーに合わせているらしい。それなら自分でもエクセルで作れるんじゃないかと思ってやってみた。
 とはいっても、それぞれのピークについて正規分布のグラフを作って、最後に全部足し合わせるだけなので特に苦労はない。
 正規分布は、
{ \displaystyle f(x) = \frac{1}{\sqrt{2 \pi \sigma^2}} \exp\lbrace- \frac{(x- \mu )^2}{2 \sigma^2} \rbrace }
で示される。
 x=μのときにexpの中は0となるので、e0=1であり、この関数は最大値、つまり(2πσ2-0.5となる。ここから、μとσ2を求めることができる。
 強度をI、ピークの波数をνとすると、
{ \displaystyle \frac{1}{\sqrt{2 \pi \sigma^2}} = I \\ \displaystyle \frac{1}{2 \pi \sigma^2} = I^2 \\ \displaystyle \sigma^2 = \frac{1}{2 \pi I^2} }
μ=ν
となる。
 これでそれっぽいグラフになるのだけど、普通IRは縦軸を透過率で表すので、そういう形にしたい。
 縦軸の値を100から引くだけでは強度が弱すぎてスペクトルが見えてこないので、最も吸収の大きい波数のところが15%くらいになるように強度を補正する。さらに、ベースラインが100%のところにあるのはあまりにも不自然だから98%がベースラインとなるように全体を縮めてみると次のようにIRのスペクトルを描くことができる。

 あとついでに、強度が変化しないようにσ2に手を加えるとピークをシャープにしたりダルくしたりできる。

 なお、アセトアルデヒドのIRスペクトルの実測データは下の通り[1]

 何をどう帰属して表4-1のようになったのかよくわからんけど、取り敢えず強度はそのままのスケールじゃなくて対数に取ったほうがいいのかなという気はする。Lambert-Beerの法則では対数が出てくるので、強度を対数表記したほうがそれっぽいのかもしれない。でも1以下の数値を対数に入れると何か良くないことが起こりそう。そこら辺はなんとかするとして、それと、振動強度が面積を示すんならルートを付けた値としたほうがいい気がする。

 そんなわけで、取り敢えず対数とルートを取り込んで吸収強度の格差の解消を試みてみた。

 ついでに、実測のグラフに合わせて縦線を追加してみた。
 少しは格差は減った感じはするのだが、見ての通り全然である。
 縦線を追加したせいで実測との数値の違いが明確になっている。
 まあ、現時点(とはいっても、参考資料は10年以上前の書籍だが)での計算性能はこんなもんということである。本エントリーはピークの数値からIRのチャートを描くことだから、計算性能はあんまり考慮に入れる必要はないので、そこは深く追求するところではない。

 いつものようにエクセルファイルを上げておく。
 IR 20171107.zip

参考文献
 [1]NIST Chemistry WebBook(魚拓)
 [2]富士通

関連エントリー
 20200512 IRスペクトルの帰属