ブルクミュラー25の練習曲 20.タランテラ

 ブルクミュラー25の練習曲より、20番タランテラ。
 タランテラは毒蜘蛛に刺された人が毒を抜くために激しく踊り続けなければならないという、ワケの分からん発祥の舞曲。6/8拍子で、8分音符3つの塊が2つで1小節を構成する事が多い。2:1の音価を多用した独特のリズムとなる。

曲の構造
序奏 A B A' C A' コーダとなる[1]
 構造を知っておくと譜読みが捗る。

リズム
 タランテラのリズムといっても正しい音価の通りに弾けば良い。それが難しいのだけど、ゆっくり練習するタイミングでは拍を数えて弾けば苦労はない。速度を上げると拍を数えてる余裕はなくなるので、速度指定のところに書いてある通り付点四分音符で数える。この際に、8分音符3つの音価が正確であると好ましい。

不完全小節の部分

 ところどころ、区切りの部分で不完全小節があるせいで、リズムがどうなってるのか分かりづらくなっている。繋がっている短い小節同士を合わせると通常の小節と同じ長さになるので、あまり考えずに繫げて1小節というような認識で弾けばよいのだけど、繰り返した先と合わせて1小節分の長さになったりするので、慣れないと難しい。

3音の真ん中が休符

 主旋律で3音の真ん中の音が休符となっているところでは、3音目と4音目、6音目と次の1音目をスラーで繋ぐ。8分音符3音の塊でスラーを繋いでいる部分とは対照的である。
 タランテラによくある音形なのだと思うけど、僕自身あまりタランテラの引き出しがなくてよく知らない。チャイコフスキーは同じ形になっている。ショパンだと休符がなく2:1になってるのでこの少し違うが、スラーの繋ぎ方は同じなので、矢張りタランテラ特有の音形なのだろう。
チャイコフスキー くるみ割り人形Op.71よりタランテラ(プレトニョフ編)[2] 15小節

ショパン タランテラ Op.43[3] 611小節


装飾音

 装飾音の弾き方はA前打音にする方法と、B拍に合わせる2種類がある[4]。バッハとショパンはBが基本だが、大抵の場合どちらが適切かは状況次第で演奏者が選択することになる。この曲では両者が混在している。
23小節

 23の装飾音は拍に合わせる。というのは、1724の旋律から、25からの旋律へと繋ぎとなる部分であり、23で流れが途切れる。22-22のF-Aにスラーがなく、23の前半と後半でもスラーが分けて書かれていることから、この装飾音は23後半に属すると判断する。それで、この装飾音を前打音としてしまうと、前半部分に食い込んでしまうので、前後を画するためには拍に合わせることになる。
40小節

 40の装飾音は前打音とする。
 403340のフレーズに属しているため、41から始まる装飾音とは性格を異にしているが、41からの装飾音を暗示する立場にある。
 40の装飾音は3340は主旋律の右手を伴奏の左手のスタッカートの音にピッタリ合わせなければならない。そうすると、40の主要音であるHも伴奏に合わせることになり、装飾音は拍より前に押し出される形になる。
4144小節

 この部分の装飾音は前打音とする。ここはスラーが付いてないけど、スラーをつけるとタイになっちゃうから付けてないというだけ。
 4548が8分音符3つの3音目と次の1音目をスラーで繋いでいる部分へ展開していく装飾音なので、同じように前打音にしなければならない。4548では8分音符の長さの前打音と見做すこともでき、それに対して4144は少なくとも8分音符よりも短い前打音としなければならない。

14小節

 序奏の前半4小節はユニゾンとなっている。左右のタイミングがぴったり合ってないと汚く聞こえる。それに加えて、3音ごとのスラーと3音の均等な音価、更に強弱をちゃんと付けなければいけないので、かなり難しい。ここで失敗すると、聴衆は続きを聞いてくれなくなる。

1724小節

 譜読みのために。
 前半:1720と後半:2124に分けられる。後半は前半の変奏となっている。前2小節では右手の主旋律が同じで、左手伴奏は和音を分散させただけの形となっている。

3348小節
 Cの部分になる。8、4、4小節のまとまりとなっている。最初の8小節を続く8小節で複雑に展開していく。40頭で予告するように装飾音を入れて、4144に続く。更に4548で装飾音を8分音符の長さまで伸ばして前の拍に差し込んでタランテラのリズムを作り出している。

6266小節

 最後。
 "dimin. e poco riten."となってる。"dimin."はディミヌエンド、徐々に弱く。"poco"はちょっとだけ。"riten."はリテヌート、直ちに遅く。"e"はandなので、「直ちに少し遅くして、かつ徐々に弱く」となる。最後に向かって消え入るように音を弱くしていく。
 と思わせて、6566で元の速度に戻してフォルテで堂々終了となる。

参考文献
[1]ブルクミュラー(ブルグミュラー) :25の練習曲 タランテラ Op.100-20, PTNA
[2]P.Tchaikovsky-M.Pletnev The Sleeping Beauty. The Nutcracker Pianoo, MUZYKA
[3]ショパン ピアノ作品集, 全音
[4]ツェルニー30番練習曲, 全音

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