世界樹の迷宮II Secret Sound

 初回限定版オマケCDに入ってたゲーム未収録曲、トラック06 Secret Soundをアップした。
 これを持ちましてシリーズ全曲録音となった。曲集を全て弾ききるというのは小学校のときのバイエル以来となる。ちゃんとペースを守っていればショパンの歌曲集をとっくに終わらせているのだけど、曲数が多いと容易に失速して力尽きてしまうので仕方がない。別にやる気を失ったわけではないのであちらもその内に録音しようと思ってはいる。
 折角なので例によって演奏解説をしておこうと思う。

リズムとかについて
 以前、音楽とは全く関係のない知り合いから、五線譜に書ききれない情報はどうやって表現したら良いのかと聞かれたことがある。そのときは、MIDIデータみたいに五線上に無理矢理書き出すことも出来るけど、見づらいし美しくないから、作曲者の表現したいことを直接楽譜に文章で書けばよい、というように答えた。下手に気取って音楽記号だけで表現しようとしても正確な表現は出来ないし、かえって拙い感じにさえなったりする。だから、作曲者の得意な言語で好きなように書いたらよい。
 "Allegro ma non troppo."とかいった風に曲の始めのところで速度の指定をして、そのすぐ後に曲の雰囲気を書いたりすることが多いけど、この部分でもっと詳細に書いても良いし、曲調が変わるところで改めて指示を出すこともある。
 ムソルグスキー展覧会の絵のプロムナードで"Allegro giusto, nel modo russico, senza allegrezza, ma poco sostenuto"とかなり鬱陶しい指示をしている。バッハはそういった指示を余り書かなかったが、ブゾーニ編の無伴奏バイオリンのためのパルティータ2番シャコンヌではここで書き出すには躊躇われるほど多くの指示がある。更に、ヴィヴァルディに至っては楽譜の中にソネットが書いてあったりする。
 さて、世界樹の迷宮古代祐三はどうだろうか。この曲集の7曲を見渡してみると次のようになっていた。括弧の中は4分音符による指定速度。

01 新たなる冒険の舞台へ。Merlancoric(94)
02 生死を分かつ激闘の響き。Agressive(164)
03 其は紅き迷路の果て。Moderato(88)
04 空で見える神の仔ら。(92)
05 雪と氷の哀しみの先へ。Andante(65)
06 *** Secret Sound ***Dark(120)
07 冒険者たちの安らぎの場。Gently(89)

 全ての曲で速度の指定がある。04に至っては速度の指定しかない。
 それはいいとして、Merlancoric, Agressive, Dark, Gentlyと結構好き勝手な指示になっているけど、これらは速度の指示ではなく雰囲気の指示。しかもイタリア語じゃあなくって英語。どうせなら日本語で書けばいいのにと思うのだけど、それでは格好が付かないのだろう。
 今回解説するトラック06は"Dark"となっている。暗い感じの曲だよ、っていう程度の意味と捉えている。

 この速度指定の部分には速度よりももっと重要な情報が書かれている。8分音符2つが連桁している場合、3連符の始め2音と後1音の長さに分けて弾けという指示がある。当初これに気づかずに書いてあるとおりに弾いたところ、随分と弾きづらい曲だなあと思った。CDに収録してあるものを聴いたら全然違うやんと、楽譜を読み直してそういう意味かと納得した次第である。

 この曲は全体として和音を多く使っており、ちゃんと弾こうとすると結構力がいる。特にアップライトでは和音の連打で音が出ないことが結構ある。なので、尚更力を込めて弾かなければならない。多分この手の和音の多い曲はシューベルトの魔王以来。
 力いっぱい和音を連打することもあり、音量がかなり高めになっている。通常、録音した生の状態では音量が小さいため、+5db音量を上げることにしているのだけど、今回は録音した状態で既に音量を上げられる余地がほとんどなかった。だからといって、そのままにしてしまうと他の録音との音量バランスが取れなくなって都合が悪い。仕方なしにコンプレッサーを通して音量を上げた。普段やらないことだからちょっと自信がない。ちなみに、当初SONAR X2 Essentialでコンプレッサーを掛けようと思ったのだけど、コンプレッサーが内蔵されていないことが分かった。何のためのDAWだよ、と憤るわけだけど、調べてみるともっと上のグレードには内蔵されているらしい。Music Makerには内蔵されているのだけど、こちらはファイルを出力する際に音量まで変えられてしまうので使う訳にはいかない。結局SoundEngineを使った。フリーソフトが一番マシっていうのがちょっとアレなんだけど、こちらは元に戻す(Ctrl+Z)が効かないのでそれなりに扱いづらい。
 跳躍先のことばかりが気になって5小節の右手最後の音みたいに跳躍する直前の音がないがしろにされることが多い。そうなると、しっかりとキーを押していなくて音が出ないということになる。これは録音して改めて自分で聞いてみるまで気づかない。
 1拍が四分音符なのだが、全体に亘ってこれを3連符で3分割している。そのため、はっきりとリズムを刻まないとすぐにボロが出る。

 古代祐三の特徴なのか、調性がよく分からない部分が多い。とはいえ、僕みたいに楽譜に直接書いてあること以外は気にしないという人には関係ない。よく分からない感覚なのだけど、音楽をちゃんと勉強して音楽的に曲を認識している人には難解に感じるのではないかと思う。
 また、この人の特徴なのか半音階の移動をよく見る。例えば13~16小節17~20小節21~22小節23~24小節25~26小節46小節後半。25~26小節なんかは英雄ポロネーズの出だしよりも難しい。

35~40小節

35~36小節→37~38小節→39小節と進む際、短3度ずつ上がる。と認識できると譜読みが早くなるような気がするけど、実際のところ暗譜した後はそんなことはさっぱり頭から消えており、この分析に効果があったのかわからない。
 40小節の左手は最初の音を叩いたら後はペダルを踏んでおいて次の小節の準備をしようと考えるのだが、右手から目が離せず左手を準備している余裕がない。なんとか頑張って前半だけ右手を見ずに弾けるようにして、その間に左手を準備することにした。

41~44小節

 ここの部分、暗譜をしておらず楽譜を見ながら手元を見ずに弾いている。左手の押す音が分からないので楽譜を見るのだが、どういう訳か左手は外さずに弾くことができる。体で覚えたというには、音自体を覚えていないのに不思議だ。

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