シューマン 劇場の思い出

 子供のためのアルバムOp.68より25番劇場の思い出を録音した。
 シューマンを録音するのは多分初めて。以前、子供の情景の鬼ごっこを録音しようとした事があったけど、なんか有耶無耶になってしまった。気が向いたらまた試みたい。
 子供のためのアルバムは全部で43曲ある。昔練習したバイエルに「楽しき農夫」が収録されていたけど、あんな感じで簡単な曲なんだろうから1週間で弾けるようになるだろうとナメプした上にあんまり練習しなかったため、1週間じゃ全然弾けるようになっていなかった。続く1週間でちゃんと練習して録音した。
 実は、子供のためのアルバムは1~18番が「小さい子のために」、19~43番が「もっと大きくなった者のために」と書かれている。つまり、18番と19番を境に難易度が変わる。だから舐めてかかっちゃ駄目だよってことなんだけど、そもそもどんな曲だろうと舐めてかかるなよって話である。
 折角なので、あんまり書くこともないけど、いつものように演奏解説をしてみる。
 使用楽譜はピアノ・コンサート Vol.4 ランゲ作品集 シューマン作品集(1)という1978年TBS発行のもの。近所に住んでいるリタイアしたピアノの先生がもういらないからといってくれた。指番号の表記が小さくて見づらい。レコードとセットで出版したらしいけど、レコードは付いてない。というか付いていてもレコードを聴ける環境がないので聞けない。この楽譜が何者なのかちょびっと検索してみたけど全く出てこないから、あんまり出回っていないんだろうなと思う。こういうデザインの表紙。

タイトルについて
 「劇場の思い出」というのは楽譜に書いてあるタイトルだけど、手元にあるJörg DemusのCDには「劇場からのひびき」となっている。原題は"Nachklänge aus dem Theater"、Theaterは劇場という意味でいいのだけど、問題となるのは"Nachklänge"。手元にある拾い物の辞書には"Nach・klang m-[e]s/..kkänge 反響,残響:余韻,余情:追憶.[1}"となっている。ドイツ語じゃ両方の意味を持たせているようで、どちらでも正しそうなので、何とも言えない。ドイツ語のネイティブの人なら正確に認識できるのかもいしれない。曲自体の雰囲気から判断するというのもありだけど、ショパン流にタイトルでイメージを固定しないよう深く追求しないでおくことにする。

テンポについて
 "Etwas agitiert"となっている。"agitiert"は「激動した、興奮した、引っ掻き回した[2]」。なんで過去形なんだろ。それはそうと、英語で言うところのagitation、擾乱するとか扇動するとかをイメージしてしまう。
 "Etwas"の方はというと、「何か」とかいう意味で英語のsomethingに当たる。よく分からない。googleさんに聞くと「何か激しい」と出てくる。なにがなにやら。ここは日本語の曖昧さを最大限に発揮して「激しいっぽい?」とでもしておこうと思った。

 これまでチェルニー30番をできるだけ手元を見ないように練習してきた甲斐もあって、大体楽譜を見ながら弾けるようになっていた。しかし、やっぱりどうしても手元を見ないといけない部分はあるもんで、そういう部分は手元を見るという意味で楽譜に*印を付けた。ペダルオフと同じ記号だけど、書く位置が異なるので間違えることはない。
 また、楽譜ばかりを見るようになった弊害か、覚えるということをあんまりしなくなった。そのせいでどの指でキーを押すかとか、ペダルを踏むタイミングとかが全く記憶に残らなくて最初の1週間はそのばその場でペダルや指使いを考えながら演奏しており、非常に不安定ですぐに止まってしまっていた。そこで、指番号とペダルの支持を楽譜に書き込んだところ、劇的に弾きやすくなった。

2小節

 手元を見ずに弾くために:☆右手、Fisのキー黒鍵左側に3指を当ててFの位置を合わせる。

4小節

 ※4, 27小節右手。最初のADの和音。Aを1指で取るには直前のGisの2指の下をくぐらなければならない。そうすると5指のDとタイミングがずれやすいので意識して同じタイミングになるように心がけること。

16~19小節

 この辺りのさり気なく声部を増やしてくるあたりはとてもシューマンらしい。

22~24小節

 Eのオクターブの連打について。ディミヌエンドに加えてペダルの指示のあるように音色を変えて演奏する。22小節前半は小節頭のEメジャーの響きを引っ張ったまま弾き、22小節後半に入ったEの打鍵と同時にペダルを踏み変えてEの音だけを残して他を消す。23小節目に入ったところでペダルを離す。そして、23小節最後で再現部となる主題をpで弾き始める。

参考文献
 [1]R.シチンゲル、山本明、南原実, 新現代独和辞典, 三修社(1997)
 [2]遠藤三郎, 独仏伊英による音楽用語辞典[改訂版], シンコーミュージック(1991)