シンフォニア15番 演奏解説

 インベンション15番を録音したので例によって解説文を上げる。
 先のインベンション5番では分かりやすい作りをしていたこともあって結構音楽的な内容に踏み込んで解説したけど、今回はメカニカルな部分を中心に解説する。
 楽譜は全音版、参考資料としてバッハ インベンションとシンフォニーア 解釈と演奏法ピアノ教師バッハ―教育目的からみた『インヴェンションととシンフォニア』の演奏法を使った。

速度
 今回は自分の中のイメージ通りにしようと試みた結果、124bpmくらいの無駄に速い演奏となった。この速度はあまりオススメしない。
 解釈と演奏法には次のように書いてある。

 主題については8分音符をスタッカートに奏することによって新鮮で軽やかな気分をあらわせるし、それとは別にいくぶん鈍重で落ち着いた、どちらかと言えば憂愁な雰囲気をも表出できる。

 こう書いている一方で、楽譜の解説文には「テンポはModerato 4分音符=±75」としている。
 楽譜の解説ではAllegro con brioについての言及がない。ちなみに手元のメトロノームの表示だとモデラートが108~120、アレグロが120~168となっている。モデラートと75と言い張るのはだいぶゆっくりなじゃないかという気がする。モデラートとアレグロの速度比は1.1~1.4倍くらいなので、モデラートを75とするとアレグロは82.5~105となる。グールドのテンポが105くらいなので、アレグロというとちょうどこんなくらいかなと感じる。
 なお、始めの2小節の左手ゲネラルバス(通奏低音)が8分音符、8分休符の連なりになっていることから4分音符のスタッカートとみなして、全体をスタッカートに奏するべきなんじゃないかと思い、全体を通して8分音符はスタッカートで演奏することにした。10、11小節の8分音符をスタッカートで弾くとか信じらんねえ[2]、みたいな意見があるけどスタッカートにしたかったのでそうした。

装飾音
 バッハのトリルは上隣接音から弾き始めるというのが基本なのだけど、この曲では随所に対声と思わしくない進行が生じるため、主要音から始める[2]とのこと。連続5度を例として上げているけど、1,3小節を始め連続5度にならない部分も多くあるため、多分別の理由があるのだろうけど、和声に詳しくないので何がいけないのかよく分からない。
 また、5,11,21小節については上隣接音から弾き始めるのが良い。



 いろいろと理由をつけて、ああした方が良い、こうした方が良いと書いたているけど、結局は演奏した時に自分で良いと思える弾き方をするのが良い。だから、僕もここで書いた通りに演奏するわけではない。

5小節

 ☆右手2拍目このトリルは基本通り上隣接音から始める種類のトリルだけど、主要音から初めて3音だけを演奏した。このひきはじめのGisはキーの左側を押さえたほうが良い。次のAが黒鍵と黒鍵の隙間なのでGisを右のほうで押してしまうとAを押すために指を差し込むスペースがなくなってしまう。あるいは(223)(213)など、A音を鍵盤の手前側で押せる指使いにする。
 本来のA-Gis-A-Gisという弾き方をするならこの心配はなくなる。ただし、黒鍵と黒鍵の隙間を押さえるかAを1で押さえるかという選択が生じる。
 ※右手3拍目。Fis-Eis-Fisは434が標準的な指使いだが、Eisを鍵盤奥の狭い部分で押さなければならず、隣のEを一緒に押してしまうことが多々ある。Eを避けようとすると、今度はFisが沈んだ状態でEisを押すので横からFisを押さえる形になってFisキーが戻らず次の音を押せなくなってしまう。(454)(443)という指使いでこれを回避することができる。

10小節

 右手5指。10小節に限ったことではないのだけど、右手5指が弱いと感じる部分が度々ある。パッセージの中で高音として強調するべき5指だけが弱いので目立つ。ここでは4→5という順でキーを押しており、4指と関連して音が弱くなっている。指の力が弱いというのも一因ではあるのだけど、4指を離鍵する反動(反作用)で5子を振り下ろすと強い音が出る。

13小節

 左手1~2拍目、GからEに跳躍するところ。右手を飛び越えて跳躍するため、ある程度高く手を上げないと右手とぶつかってしまう。思い切って高く上げてしまえば良い。跳躍先のEは黒鍵の横の狭い部分なのでよく見て打鍵すること。
 左手でEを打鍵した直後に右手で同じ音を押すので、特に短く切らないといけない。少し早いタイミングで押すのもあり。どうせなら曲全体を通して左手を僅かにずらして弾いても良いけど、多分凄く難しい。

16小節

 ☆右手3拍目E。このEは出来るだけ手前の方を押さえる。これを奥側で押さえてしまうと、3指か4指をCisに引っ掛けてCisのキーが少し沈んだ状態になってしまう。これは次に押さえるキーであり、沈んだ状態から弾くとちゃんと音が出ない。下手をするとまったく音が出ないということもある。
 左手3拍目。このH→Hは1→4のオクターブなので容易にクリアできそうなのだが、よく外す。直前の指くぐりのせいで手が右を向いた状態であり、それに加えてスタッカートで短く切ろうとするため、手のポジションが不安定になり、オクターブの距離が不確かになってしまうため。1指を離鍵した位置から動かさずに手の向きを正すか、いっそ手元を見るようにしたら良い。
 左手4拍目Gis。スタッカートでひこうとすると、離鍵の際に指がキーから離れるため距離感が掴めずに外しやすい。半音下の黒鍵であることを意識し、あまりポジションを移動せずに弾く。

18小節

 ※右手1拍目E。キーを押してるのに、この音が出ないことがある。原因は直前で気付かないうちに4指がこのキーを押してしまっているため。5、3指でキーを押さえることになっているがこれらのキーは4氏と腱を共有しているので4氏は釣られて動いてしまう。そうして動いた先にあったEを気付かないうちに押し下げている。4指がつられて落ちてこないように意識して上げておくこと。

20小節
 19小節の終わり部分から、気分が乗るのか妙に速くなるので、暴走しないように一定のリズムで16分音符を刻むように音階よりも打鍵を意識する。

21小節

 左手最初のH。隣のAisのキーが邪魔になって弾きづらいので、中途半端な打鍵にならないようにしっかりと奥まで押し込むこと。

参考文献
[1]市田儀一郎, インヴェンションとシンフォニア
[2]市田儀一郎, バッハ インベンションとシンフォニーア 解釈と演奏法
[3]グレン・グールド, インベンションとシンフォニア
[4]村上隆, ピアノ教師バッハ―教育目的からみた『インヴェンションととシンフォニア』の演奏法

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