舛添報告書 その2の続き。
以下の内容があります。
7 絵画・版画等の美術品の購入
8 「書」の購入
9 書道用品や落款印等の購入
10 額縁等の購入
7 絵画・版画等の美術品の購入
(1)調査の対象
舛添氏は,新党改革比例区第四支部,グローバルネットワーク研究会及び泰山会の政治資金を用いて多数かつ多額の絵画・版画等を購入している。
それらの絵画・版画等を購入するために,政治資金を支出したことについて不適切との指摘がなされている。
(2)調査結果
新党改革比例区第四支部,グローバルネットワーク研究会及び泰山会が購入した絵画・版画等は,別表3の一覧表のとおりである。なお,絵画・版画等の金額は,送料込みのものもあれば,送料抜きのものもあり,統一されていないことから,それらを単純に合計することに意味はないと判断し,合計金額を記載していない。
これらの絵画・版画等を購入した理由について,舛添氏は,①海外では,政治家の素養の一つとして,絵画等の芸術に関する知識・理解を有することが挙げられており,絵画等に関する知識や理解を深めることによつて,海外の政治家との人的関係を緊密にすることができること(実際にも,絵画を通じた縁により,舛添氏が,外国の要人から夕食会に招待されたりしている。),②世界の都市の分野別ランキングによれば,東京は,文化・歴史・伝統への接触機会で,先進国の主要都市に比べて低いランクになっているところ,美術への知識や理解を深めていることを生かして,多摩芸術家村構想などの施策を打ち出していること,③美術館などを訪れたことにより,資金の少ない公立美術館や小規模美術館が,展覧会の美術品の保険料が高すぎるために,展覧会を断念したりするケースがあることを知つて,政府が一定額を補償できる制度の導入を開僚や官僚などに訴え,それが結実して,「展覧会における美術品損害の補償に関する法律」の制定に至つたこと,④購入した絵画・版画等の一部を東京都庁の知事執務室,応接室やそれに接続する廊下などに展示しており,それらの絵画・版画等を海外の要人等との話題作りに活用している(その状況を撮影した写真もある。)ことなどを挙げて,絵画等に関する知識や理解を深めることの必要性及び購入した絵画等を政治活動に活用していることを述べている。
舛添氏の説明には首肯できるものがあり,絵画・版画等を購入することが政治活動と関わりがないとは言えない。
しかし,舛添氏が,政治団体の資金で購入した絵画・版画等の点数はあまりにも多すぎるし,比較的安価な作品が多いとはいうものの,合計金額も多すぎる。
この点につき,舛添氏も,インターネットオークシヨンを利用すると安く購入できることから,つい買いすぎてしまった面があることを認めている。
舛添氏の説明を十分に考慮しても,芸術を理解するためには必ずしも芸術作品そのものを購入しなければならないわけではなく,舛添氏の絵画・版画等の購入は趣味的色彩が強く,過去に舛添氏が美術品による財テクに言及したことも踏まえると,政治団体の資金を用いて,別表3のような多数・多額の絵画・版画等を購入したことは,政治資金の使途に法律上の制限がないことから違法ではないものの,政治資金の支出としては不適切であったというほかない。
なお,別表3には,平成27年以降に舛添氏が関係する政治団体が購入した絵画・版画等を記載していないが,上記のように,それらの絵画を購入するために政治資金を用いたことは,違法ではないものの,不適切であったというほかない。
(3)残された問題
新党改革支部及びグローバルネットワーク研究会は既に解散しており,それらの各政治団体が所有していた絵画・版画等の所有権が,舛添氏個人に帰属しているのではないか,すなわち,それらの絵画・版画等が私物化されたのではないかとの疑間がある。
この点につき,舛添氏は,新党改革支部とグローバルネットワーク研究会が所有していた絵画・版画等は,各政治団体が解散した現在,すべて泰山会が所有しているというのが自分の認識であり,それらが個人の所有になっているという認識はないと述べている。
舛添氏が,それらの絵画・版画等の一部を東京都庁に搬入して,執務室,応接室や廊下などに展示していることに照らせば,それらの絵画を秘密裡に私物化したという批判は当たらないように思われる。
しかし,それらの絵画・版画等の譲渡契約書等も存在しないことから,所有関係が不明陳になつていることは否定できず,今後,それらの所有関係を明確にするとともに,政治資金を用いて購入した絵画・版画等を私物化したとの批判を招かないような措置を講じていく必要がある。
この点について,舛添氏も,そのような批判を招かないように適切な措置を講じていきたいと述べている。
8 「書」の購入
(1)調査の対象
各政治団体は「書」を購入しているが,それらの購入に政治資金を用いたのは不適切ではないかとの指摘がある。
(2)調査結果
各政治団体は,下表のとおり,「書」を購入している。代金額には,代金のみが記載されている場合もあれば,送料込みで記載されている場合もあるので,代金額の集計はしていない。なお,表装代金の支出についても,念のために一覧表に記載した。
ア 新党改革比例区第四支部
年月日 | 購入金額 | 品名 | 備考 |
平22.10.26 | 180.000円 | 「鈴木信太郎 掛軸」 | |
平22.10.26 | 158,000円 | 「柳原白蓮 書」 | |
平22.10.27 | 100,000円 | 「火野葦平 書」 | |
平22.12.22 | 126,000円 | 「犬養毅 書簡」 | |
平23.7.1 | 220,000円 | 「明治元勲 書」 | |
平23.7.15 | 122,520円 | 「中村不折 書」 | |
平23.12.6 | 85000円 | 「中村不折 書」 | |
平23.12.9 | 183,000円 | 「犬養毅 東郷平八郎 書」 | |
平23.12.9 | 156,000円 | 「乃木希典 書」 | 絵画も一括購入 |
平23.12.3 | 235,000円 | 「伊藤博文 犬養毅 書」 | |
平23.12.3 | 282,500円 | 「吉田茂 火野葦平 書」 | |
平23.12.28 | 62,000円 | 「末永節 書」 | |
平24.1.31 | 180,000円 | 「木戸孝允 井上馨 書」都庁に保管 | |
平24.2.27 | 170,000円 | 「東郷平人郎 犬養毅 書」 | 都庁に保管 |
平24.3.8 | 130,000円 | 「中村不折 書」 | 都庁に保管 |
平24.3.14 | 346,500円 | 明治元勲 書 表装代金 |
イ グローバルネットワーク研究会
年月日 | 購入金額 | 品名 | 備考 |
平24.6.25 | 201,000円 | 「榎本武揚 火野葦平他 書」 | |
平24.8.14 | 36,650円 | 「渡辺崋山 書」「佐藤一斎 三行書」 | |
平24.8.24 | 273,000円 | 明治元勲 書 表装代金 | |
平24.9.28 | 33,500円 | 「掛軸後藤新平真筆書画」 | 都庁に保管 |
平24.10.26 | 11,079円 | 「掛軸 頭山満 一行書」 | 都庁に保管 |
平24.11.15 | 16,500円 | 「掛軸 小林立堂」 | |
平25.2.4 | 11,500円 | 「蒋介石 肉筆紙本 二行書 掛軸 唐画 中国書画」 | 都庁に保管 |
平25.2.20 | 8,860円 | 「掛軸 孫文」 | |
平25.2.26 | 10,610円 | 「掛軸 林則徐 中国書」 | 都庁に保管 |
平26,3.9 | 12,221円 | 「掛軸 孫文 中国書」 | 都庁に保管 |
平25.3.11 | 15,500円 | 「掛軸 李鴻章 一行書」 | 都庁に保管 |
平25.4.17 | 20,610円 | 「掛軸 孫文 中国書」「掛軸 林則徐 中国書」 | 都庁に保管 |
平25.5.21 | 3,500円 | 「末永節 直筆」 | |
平25.6.26 | 23,100円 | 「井上馨 書幅」 | 都庁に保管 |
平25.6.26 | 3,390円 | 「掛軸 井上馨」 | |
平25.7.8 | 9,300円 | 「白隠 書」 | |
平25.7.29 | 6,990円 | 「掛軸 大養毅」 | |
平成25.8.19 | 5,500円 | 「孫文 書」 | |
平25.10.29 | 18,950円 | 「犬養毅 たて二行書」 | 都庁に保管 |
平26.1.6 | 3,699円 | 「掛軸 末永節」 |
ウ 泰山会
年月日 | 購入金額 | 品名 | 備考 |
平26.4.7 | 19,600円 | 「掛軸 孫文『博愛』」 | |
平26.6.4 | 21,650円 | 「掛軸 末永節 二行書」 | |
平26.7.4 | 3,100円 | 「末永節 書」 | |
平26.12.16 | 51,000円 | 「緒方竹虎 四行書」 | |
平26.12.23 | 1,000円 | 「末永節 書」 |
(3)調査検討結果
舛添氏は,書道を趣味としているが,他方において,それを政治活動にも生かしており,舛添氏の書道は,趣味と政治家としての実利・実益を兼ね備えている。
そして,明治時代の政治家,書家,中国の政治家らの「書」を購入しているのは,点数及び金額ともに多すぎる感は否めないものの, 自己の書道の参考とする意味をも有しているのであるから,そのような「書」の購入は政治活動と関わりがあると言える。
よって, これらの「書」の購入のために政治資金を使用したことは不適切とまでは言えないし,政治資金の使途が制限されていない以上,もとより違法でもない。
なお,泰山会は,平成27年にも「書」を購入しているが,それらも政治家や書家らの書であり,上記の検討結果が当てはまる。
(4)残された問題
絵画・版画等についても指摘したように,新党改革支部及びグローバルネットワーク研究会は既に解散しており,各政治団体が所有していた「書」の所有権が,舛添氏個人に帰属しているのではないか,すなわち,それらの「書」が私物化されたのではないかとの疑問があるが,これについては絵画・版画等について述べたことがそのまま当てはまる。
9 書道用品や落款印等の購入
(1)調査の対象
各政治団体は,その政治資金を用いて書適用品や印鑑(落款印)等を購入しているが,それらは政治資金の支出として不適切ではないかとの指摘がある。
(2)調査検討結果
政治団体の資金を用いて購入した書道用品や落款印などは,下表のとおりである。
ア 新党改革比例区第四支部
購入年月日 | 購入した商業店舗 | 購入金額 | 購入した品物 |
平22.9.17 | 書道用品販売店(都内) | 28,612円 | 書道用品 |
平22.9.29 | 同上 | 21,000円 | 同上 |
平成22.12.28 | 同上 | 11,287円 | 事務用品 |
平23.10.17 | 印鑑彫刻販売店(台北) | 38,100円 | 落款印 |
平23.10.19 | 書道用品販売店(台北) | 38,100円 | 書道用品 |
平23.11.22 | 書道用品販売店(都内) | 14,175円 | 事務用品 |
平23.12.26 | 印鑑彫刻販売店(台北) | 56,000円 | 落款印 |
平24.5.2 | 同上 | 23,000円 | 落款用の印材 |
平25.10.30 | 書道用品販売店(都内) | 15,700円 | 消耗品 |
イ グローバルネットワーク研究会
購入年月日 | 購入した商業店舗 | 購入金額 | 購入した品物 |
平26.2.19 | 書道用品販売店(都内) | 25,000円 | 筆記用具 |
これらの書道用品や落款印等の購入について検討するに,舛添氏は,書道を趣味にし,舛添雙光(そうこう)の雅号を用いて書をしたためるなどしており,それを政治活動にも生かしている。
例えば,太田記念館(主として中国人留学生のための寮)の25周年記念行事の際には,中国の要人とともに色紙に「東京北京博愛之家」などの文字をしたためて落款印を押しており,その後,その色紙が額装されて同記念館に掲げられた。また,それ以外にも,訪日した中国の要人や学生らに,孫文などの書を見せながら,歓談したりしている。これらの状況は,写真撮影されている。
また,舛添氏は,東京消防庁救急機動部隊が発足した際にはその文字を自ら揮毫し,築地大橋の親柱の「つきじおおはし」の文字も揮毫している。
その他にも,舛添氏は,カレンダー色紙に,干支の絵や文字をしたため,落款印を押して,外国の要人・友人・知人らに贈呈するなどしている。
したがって,上記ア及びイの購入品は,一面においては趣味のために使用されるものであつても,一面においては政治活動に役立っているものであるから,それらの書道用品や落款印等を購入するために政治資金を使用したことは不適切とは言えず,政治資金の使途に関する制限がない以上,違法な支出でもない。
10 額縁等の購入
(1)調査の対象
舛添氏の関係する各政治団体は,絵画用品販売店から多数の額縁を購入しているが,それらは政治資金の支出として不適切ではないかとの指摘がある。
(2)調査検討結果
各政治団体は,下表のとおり額縁等を購入している。購入代金については収支報告書に記載されている代金の合計金額を記載した。品名及び点数については領収証等により確定できたものは記載したが,特定できないものについてはその旨記載した。
ア 新党改革比例区第四支部
年 | 合計購入金額 | 品名及び点数など |
平成22年 | 44,937円 | 和額9点及びマット1点 |
平成23年 | 188,290円 | 和額6点、デッサン額10点、マット14点など |
平成24年 | 589,920円 | 額縁3点、和額1点、デッサン額7点、マット12点などを購入しているが、領収証の大半に品名が記載されていない。 |
平成25年 | 728,753円 | 領収証の内容から額縁等であることはわかるが、点数等は記載されていない。 |
平成26年 | 37,590円 | 領収証には品名及び数量は記載されていない。 |
イ グローバルネットワーク研究会
年 | 合計購入金額 | 品名及び点数など |
平成24年 | 36,771円 | 領収証内容から和額などであることはわかるが、点数等は記載されていない。 |
ウ 泰山会
年 | 合計購入金額 | 品名及び点数など |
平成26年 | 391,120円領収証には品名及び数量は記載されていない。 |
各政治団体は,多数の絵画・版画等のほか,「書」なども購入しており,上記の額縁やマットなどはそれらの美術品を額装するために購入されたものと認められる。
これらについては絵画・版画等と一体的に考察すべきではないかと考え,その観点からも検討したが,絵画・版画等の購入が不適切であるとしても,額縁の購入が直ちに不適切になるわけではないとの見方もあり得る。
いかなる考え方に立つとしても,政治資金を用いて上記の一覧表のような多数・多額の額縁等を購入することが必要であったかは疑問であり,額縁の購入のための政治資金の支出が直ちに不適切とは言えないものの,妥当性は相当に低いと言わざるを得ない。
もっとも,政治資金の使途について法律上制限されていない以上,違法とは言えない。
つづく
舛添報告書 その4
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