羊は安らかに草を食み

 バッハのカンタータ208番より「羊は安らかに草を食み」を録音したので例によって演奏解説をしておく。
 編曲はエゴン・ペトリ。ブゾーニの高弟だそうな。名古屋のヤマハで売ってたのを何となく買ったまま本棚の肥やしになっていたのだけど、バッハを弾こうと思って手に取った。本当はゴルトベルク変奏曲の第11変奏を弾きたかったんだけど難しそうだったのでカンタータを選んだ。あと、編曲モノは希少性が高いので積極的に公開したいというのもあった。

 カンタータはどいつもこいつも大体そうなんだけど、同じようなフレーズを繰り返す。じゃなきゃ、毎週新曲をリリースするなんて無理。そのため、曲の覚える部分が比較的少なくて楽である。

 重複する部分を赤と青で色を付けると上のようになる。4ページある内の覚える部分は実質的に2ページと2段で済む。これは演奏する上ですごくありがたい。ただし、曲自体は単調になる。
 最近では以前と比べて暗譜せずに譜面を見ながら弾けるようになってきており、今回も暗譜せずに弾いた。この楽譜は譜めくりが必要な構造になっているのだけど、左右どちらかの手が暇になるというタイミングがないため譜めくりしている余裕がない。そういう場合は楽譜をコピーして譜面台に並べるのだけど、4ページを横に並べると結構場所をとるようではみ出てしまう。縮小コピーすればよいのだけど、この曲は同じ部分が沢山あるのでうまい具合に省略することが期待できる。1ページ目と4ページ目はどちらかがなくても同じ音が別のページに書かれているので、省略できる。この楽譜は2ページ目と3ページ目が表裏の位置関係になっているので譜めくりをしないとするのならこのどちらかをコピーする必要がある。結局、どちらでも良い。1,2ページ目を開くのなら3ページ目をコピーして、4ページ目は1,2ページ目を参照する。3,4ページ目を開くのなら2ページ目をコピーして、1ページ目は4ページ目を参照する。参考までに、僕は後者を選んだ。
 ちなみに原曲はもっと露骨で、4ページ目に当たる部分の代わりにダ・カーポが記してあるだけで、21小節冒頭にフェルマータを付けて終了という簡素な作りとなっている。

3小節

 ☆右手3音目DFを52で取るとき、鍵盤の奥のほうで取ろうとすると黒鍵がじゃまになってミスタッチするので、手前の白鍵だけの部分を押すこと。つまり、直前のCEsを奥のほうで41で取り、すぐに手前に手を引きDFを52で取ることになる。
 また、この2泊目は右手が32分遅れて入るのだけど、意識して遅らせないと左手の和音と同時に押してしまう。左手の音をしっかりと聴いてから右手を動かすこと。28小節も同様。

4小節

 *3度の和音進行。上の音と下の音が黒鍵と白鍵でキーの物理的な高さが異なるとき、同時にキーを押そうとして黒鍵を先に押し、白鍵を遅れて押してしまうことがある。これはそれぞれのキーを押す指を同じ高さにして準備するために起こる。和音を押す直前に2本の指をそれぞれのキーに接触するようにして準備することで取り敢えず最初の1音だけは同じタイミングで押すことが出来る。

9小節

 ※右手3音目のDBを押すとき、一つ前にFを押した5指が一緒に動いてしまい、その勢いでFを押してしまうので意識して5指を上げておくこと。

24小節

 左手2拍目。この2つの10度の和音はすごく外しやすいので必ず手元を注視して弾くこと。

29~30小節

 29小節左手の最後の音が何か気に入らなかったようで、少し変えている。弾き比べるとこちらの方が良いような気がする。
 30小節後半から新しいパートが始まるため、30小節目の真ん中で一旦切れる。ここのところは全体的に高音に寄っている感じがしたので手を加えた。真ん中のCを1オクターブ下げてベースを強調する形とした。右手は11度の距離となりどうあがいても手が届かない上、声部を分けて引く必要があるため、下降アルペジオとした。アルペジオの最初の音はここまでの流れに繋がる音、最後の音はここから始まる展開の最初の音なので少しくらい離れても曲として瑕疵にはならない。この曲のアレンジとしてはかなり上手くできていると自負する。
 ※この下降アルペジオについて、上の2音は正規のタイミングで押さえ、直ちに手首を回転させてGを取りに行くのだが、Gに向かってまっすぐに移動すると隣のAに指を引っ掛けてしまうので、少し弓なりになる軌道を描いて上からGを押さえに行く。ただし、椅子が高ければまっすぐ取りに行っても良いかもしれない。

35~36小節

 ☆右手前半4音目。1指でA音を保持したまま45指でACを押す。10度の距離は目測を謝りがちなので必ず目視確認する。

40小節

 後半左手を4拍目で半音下げている。続く4ページ目は再現部に当たるので、導音で繋げたかったのかもしれない。