演奏解説 ゴルトベルク変奏曲 第5変奏

 ゴルトベルク変奏曲では最初に登場する2段のチェンバロ用の曲。色々と難しい。注意点をいちいち楽譜に書いてったら、このように楽譜が書き込みだらけになってしまった。
 ピアノで弾く際、演奏者が勝手に左右の手に音を振り分けることが多いのだけど、そちらの方向で検討した。「複雑に手を交差させて奏でる音による快感」がどうのこうのと言ってた人もいた気がするけど、そういうドMな気質の人は楽譜に書いてあるとおりに弾いたらいいと思う。
 左右の手の振り分けに関しては、個別に書いていたらかなりの量になってしまうので、指番号と一緒にまとめて書いた楽譜をアップしたので、そちらを参考にしてもらいたい。ただし、この楽譜は僕の演奏を記したものであり、元々あった発想記号や装飾をかなり削っているため、参考にするだけに留めておいてこれとは別にちゃんとした楽譜を入手することをお薦めする。
 この楽譜を書くに当たって元とした楽譜はIMSLPから落としたものなので、そちらを参照してもらえばどこを削ったか分かると思う。基本的に、僕が普段使っているウィーン原典版ラルフ・カークパトリック版では発想記号の類は一切書いてないので、その辺りは全て削っている。また、スラーとスタッカートは必要に応じて残した。逆に、必要であってもスラーとスタッカートを追加するということはしていない。なので、楽譜としてはだいぶ不完全なものとなっている。

 まず、この曲全体を見渡して、いくつか。
・指が重くて自由に動かないような人はハノンでも練習して軽々と動くようにすること。
・正確なテンポ、リズム、音価を心がけ、端正な演奏を目指す。
・弱音で弾く方が離鍵が楽なので正しい音価にしやすく粒が揃うが、その一方で誤魔化しがきかない。また、こういった明るい曲は元気よく弾いた方が良いので弱音はあまりオススメ出来ない。
・8分音符の繋がりは16,27,32小節を除いて基本的にノンレガートとする。16分音符はレガートでもノンレガートでもいいけど、全体を通じて統一すること。
 手が交差する弾きづらさから身体を左右に大きく動かすことになる。その動きに対応するため、大きく右側を向いて演奏する。僕の場合だと、左足は正面を向けて右足は2時の方向を向けている。

4小節

 下段真ん中の矢印を付けているFis。こういった跳躍先の黒鍵は234指をくっつけてテキトーに叩くと、まず外さない。とはいえ、この曲はこういった跳躍先を正確に叩くことよりも遙かに難しい技巧が目白押しなので、これをやったところで特に楽になるわけではない。

8-9小節

 8-9小節に入る辺りは音が崩れやすい。
 本質的な問題は手が交差することではない。8小節の最後G-Fisを3-4で取ることと9小節頭でGを5で取るために4,5指間の指くぐりが発生すること。4指で黒鍵を取ろうとすると、黒鍵が出っ張ってることと4指が弱いことから気を抜くと正規のタイミングよりも早くキーを押してしまうことになる。4指を上げている状態に耐えられずに指がフライングして落ちてしまう、ということ。
 身体を右側に持ってくると少しは引きやすくなるが、それでもかなり難しい。どうしてもできないなら指使いを改めるべき。

11-12小節

 カークパトリック版はこのように色々と分かりやすく書き換えてくれている部分があるから使いやすい。ちなみに、この部分の装飾は両方とも切り捨てた。

16小節

 この小節の8分音符をレガートにする。

17小節



 上から、高見版、カークパトリック版、ブゾーニ版となっている。カークパトリック版では音が多すぎてやってられなかったので音を減らした。指定のテンポは126となっているけど、カークパトリック版で弾こうとするとアップライトピアノでは連打性能が追っつかないんじゃあないかと思う。

19小節

 ※左手のC音をしっかり離鍵しないと続く右手の同じ音を押すときにキーが下がった状態になり音が出ないことがある。
 ■右手の32分音符につられて左手が早くなってしまうことが多々ある。この点、気をつけて練習しないと気付かない。

20小節
 装飾音が入ってるけど無視。

21-22小節

 手を交差させた状態での速いトリル(これでも音を減らしてる)。難しい右手を少しでも楽にしてやるために身体を左に傾ける。

25小節

 ☆左右の手が交差しており、小指側が非常に近づいている。小指同士が接触することを恐れていると不必要に手を遠ざけようとしてしまう。別に手が触れたっていいじゃん、という気分で弾くといいかも。そんな風になるのは僕だけかな。

27小節

 8分音符を1小節まるまるレガートで弾く唯一の小節。版によっては全部スタッカートが付いてたりする。

28小節

 ◎右手、Fisを1指で取るのはかなり気持ち悪い動きになり、気を抜くとFis音が出ていないということにもなりかねない。このFisは確実に押す、という強靱な意志を持って集中すること。

31小節

 8分音符の跳躍は左手で行う。右手はポジション移動が殆どないので動きを完全に身体で覚え、視線は左手の跳躍に合わせる。

32小節

 16小節目と同様に8分音符をレガートで繋げる。
 最後のフェルマータは版によってあったりなかったりする。僕の場合は採用する。

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