虚無

 スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってましたより虚無をアップした。
 原作者の森田季節は初期の頃はそこそこ良い小説を多く書いてたのだけど、近頃は粗製乱造が目立ち全然評価に値しないのだが、折角なのでアニメは見た。大量に作って消費されてくだけのアニメなので、誰にもオススメするものでもない。どうしてそんなに流行ってるのか理解に苦しむ。それにしてもブルーレイってお高いのな。
 虚無は第10話吟遊詩人のクク登場の話で、幽霊ロザリーの作詞で歌う短い曲。
 歌詞は以下の通り。

長く一つのところに留まってると
昼間でも真っ暗に感じる
暗い暗い暗い本当になにもない
笑い方も分からない
死にたくても死ねない
そんな夜でした

 短い曲なのでヤッツケ感があるけど、作中ではかなり好きな曲である。
 初音ミクに歌わせたものもあるのだけど、デキが悪いので上げるのはピアノソロだけにした。

ブルクミュラー25の練習曲 14.シュタイヤー舞曲

 そういえば、ブルクミュラーの25の練習曲を途中かけで放り出してたなあって思い出して、再開した。
 チェルニー30番の後だとかなり優しく感じる。1時間くらい練習するとそれなりに弾けるようになる。やはり手元を見ずに弾けると捗る。技術的に容易な反面、細かい表現への意識が向く。一つ一つの発想記号をしっかり意識するのが課題となる。特に気をつけたいのは保持音の長さ。スタッカート、ノンレガート、スラー、スラーの切れ目をちゃんと表現出来るようにするとよい。  1週間くらい練習したら録音して次の曲に進むことにした。25の練習曲はどれも名曲揃いなので、1週間で終わらしてしまうのは勿体ないのだけど、そんなこと言って延々練習してても上達するわけでもないので、さっさと終わらせてその後に好きなように弾いたらいいんじゃないかなと考えた。

 そんなわけで続きの14番シュタイヤー舞曲を録音アップして。ついでにこれまでの録音はmp3に変換しておいた。
 楽譜は全音を使った。
 この曲の原題は"La Styrienne"とあり日本語訳は「シュタイヤー舞曲(アルプス地方の踊り)」と書いてある。昔使っていた楽譜には「スティリアの女」ってなってたのだけど、タイトル変わったのか。
 "La"というのはフランス語の女性名詞につく定冠詞なので、「スティリアの女」というタイトルが付けられていた。これを練習する子供たちにとって、スティリアという地域がどこにあるのかってのはあまりどうでもよくって、それこそリファールでもルーフェリアでも異国の風景を想像できればよい。実際、スティリアの女を練習する子供が世界地図を開いてスティリアの位置を探すということはあまりないのではないかと思う。
 で、実際、Styrienneというのはシュタイヤー地方このことで現在ではシュタイエルマルクと呼ばれているらしい[1]

 この地域の民族舞踏であるレントラーを書いたと考えられる[1]。それで、女はやめて舞曲にしたのだと思う。
 この辺りはブルクミュラー25の不思議に詳しい説明がある。
 この曲以外にも出版社ごとのタイトルが次のように纏められている[2]


・曲の構造
 「前奏-AA-BB-CC-AA-BB」となっている。前奏以外全て繰り返しが入っており、25曲中最長となっている。繰り返しばかりなので実質は1ページちょっとと、それほど長くはない。

テンポについて
 レントラーなので、ワルツより遅いテンポになるかと思いきや、4分音符で148~160bpmとかなり速い速度指定となっている。なお、1851年ブノワ・エネ社から出版されたフランス初版では、176bpmと更に速い[3]。なお、25の練習曲は自筆譜が発見されていないため、このフランス初版が現在確認できる最古の楽譜である[4]

装飾音のタイミング
 装飾音が多くあるが、これを拍内に入れるか拍の前で打鍵するか悩むところである。大前提として、左手の伴奏は正しいリズムで弾くこと。
 全音の解説には打楽器の音を表しており、アクセントとなる音なので拍内に収めるようにと書いてある[1]

 一方、エッシェンバッハの録音では完全に拍の前に弾いている。
 全音の解説文の方が説得力があるが、エッシェンバッハの録音も良いので自信があるのなら拍の前に打鍵しても良いと思う。どちらを選ぶにしろ、全て統一して演奏すること。

ペダルについて
 普通の書店で手に入る殆どの楽譜でペダルの指示があると思うが、1851年フランス初版ではベダルの指示はなく[3]出版社によって書き加えられたものである。
 当然ながら、楽譜を編集する人も素人ではないので相当の確信を持ってペダルの指示を書き加えているはずである。しかし、どの程度ペダルを踏むかというのは譜面に表現するのは難しく、演奏者の解釈に依る部分が大きい。
 僕の演奏方針として、できるだけペダルを踏まずに指で音を保持したいというのがあるので、ペダルの指示はかなり無視する部分がある。

45小節

 各場面の切り替わりの部分は1.5拍の不完全小節となっていて、続く出だしの部分をアウフタクトにしている。小節番号の付け方だが、この前奏最後とA最初の1.5小節を合わせて3拍を1小節と読む。したがって、この譜例は4~5小節を示していることになる。小節番号が書いてある楽譜だとこの点が分かりやすくてとても良い。
 graziosoというのは優美にという意味。
 4小節目。A出だし、スタッカートの付いてDEFisはワルツが始まる前の助走というイメージで少しゆっくり目に弾くと良い。繰り返し以降は普通に弾いたら良い。
 ☆5~11小節左手ベース音。1拍目は8分音符+ペダルとなっているが、ペダルは踏まずに変わりに部分的にベース音を保持することにした。右手がスタッカートになっている部分で保持してしまうと、スタッカートの切れが悪くなるのでそういう部分では保持せず、右手がスラーに鳴っている部分に限って音を保持することにした。

2934小節

 ☆左手ベース。3134は保持しているが、29, 30は4分音符だけになっている。指が届かず保持できないためと考える。30は1オクターブなので普通に届くから保持するとして、29は1拍目だけペダルを使う。また、29とバランスを取るために31, 33も1拍目でペダルを踏む。
 25の練習曲は子供向けに1オクターブが届かなくても弾けるように作られているので、29では保持してないのかと思う。

参考文献
[1]ブルクミュラー25の練習曲, 全音楽譜出版社
[2]飯田有抄、前島美保, ブルクミュラー25の不思議, 音楽之友社(2014)
[3]Fred. Burgmuller, 25 Etudes faciles et progressives, Op.100, Benoit aine(1951)
[4]牛頭真也, ブルクミュラー『25 の練習曲作品100』の楽譜表記の研究(2): 1852年ドイツ初版『ショット版』とプレート番号が同じ『シャーマー版』の比較, 洗足学園音楽大学紀要, 51p.87-101発行日2023-03-27

カルドセプト ブックマーク

 カルドセプト2よりブックマークを録音した。
 カルドセプトというゲームはTCGみたいなことをするコンシューマゲームで、スゴロクみたいにサイコロを振ってマップを歩いて敵と戦う感じの対戦ゲームなんだけど、僕は遊んだことがない。面倒くさそうだったので。周りで流行ってたので、曲はよく聞いた。
 それで、Bookmarkという曲は、ゲームをセーブしたリロードしたりする画面で流れる曲じゃないかなって思う。なにせ遊んでなかったのでよく知らない。
 曲自体はとても気に入っているので、随分前からそれこそ流行っていた当時から弾きたいなって思ってた。なんとなく気が乗ったので、音を取って弾いた。
 B5サイズの五線紙1枚に収まる短い曲で、原曲を意識して、1ループ目はオルゴール風にスタカートで、2ループ目はピアノ風にレガートに、コーダを適当に繋いで短く纏めた。音を増やして複雑にするとすとオルゴールっぽくないので鳴っている音だけ取ってシンプルに気楽に作った。

インベンション12番 演奏解説

 インベンション12番を録音したので、例によって解説文を上げる。
 楽譜は全音版を使った。
 本来であれば、2声をちゃんと認識して正しいタイミングと強弱で応答する必要があるのだけど、僕の場合は同時に2つの旋律を正しく認識して制御する事がどうしてもできなかったので、タイミングだけどうにか合わせて取り敢えず形にした。
 そんな訳で、和声とかの難しい話はバッハ インベンションとシンフォニーア 解釈と演奏法に譲る。

速度  テンポはAllegro、付点四分音符で65bpm前後が良いとのこと[1]メトロノームに合わせて弾いてみるとちょっとモッサリした感じがするので、少し速めて弾いた。こういうことをしてるから、あらが目立つ演奏になるんだと思うけど、自分で納得行くテンポで弾かなければ意味がないので。
 なお、拍の数え方だが、この曲は8分の12拍子となっているけど、8分音符ではなく付点四分音符を1拍と数える。でないと、65bpmだと大変なことになる。

装飾音
 大抵のバッハの楽譜には下のようなトリルの凡例的な解説[1]が載ってるのでその通りに弾いたらいい。

 ただし、絶対にこの弾き方でなければならないというわけでもなく、難しいと感じる人は適当に音を間引いたりあるいはバッサリ切り捨てることも可能である。勿論、全くなくなってしまうと寂しいので出来る範囲で少し背伸びして試みてみるべきではある。例えば1小節だと、次のような演奏例が挙げられる[2]
 僕の場合だと、トリルの弾き方を全然覚えられないので、下のように楽譜に書くようにしてる。

 こういうときに五線テープがあるとすごく便利。

4小節

 ✡2拍目は左右で一番高い音を同じタイミングで弾くが、3拍目はタイミングがずれる。右手と左手で音形が異なることを意識する必要がある。2つの旋律を正しいリズムで同時に識別できていればタイミングを合わせることは造作もないのかもしれないが、僕みたいな凡人だと拍頭の打鍵タイミングを何とか合わせて左手は4拍目の頭がCisであることを確認して弾く。3拍目の左手はGis-E-Gisの流れになっていることをちゃんと聴くこと。上手く弾けていると4拍目で右手がドミナントのEで解決するタイミングで左手の結句Gis-E-Gis-が聞こえる。

781617小節

 1拍ごとに右手から左手、左手から右手にと手を交差して受け渡す形になる。この際、毎回3度ずつ下がっていことを覚えてると間違えにくくなる。
 各拍の低い音から高い音に向かってクレッシェンドしていき、拍頭でアクセントとなるように弾く。それから別の手に受け渡してまた弱→強としていく。この際、左手より右手の方が全体的に強い音となるように弾く。

8小節
 ※後半、左手が休符から入るため左右でタイミングが崩れやすい。4拍目の頭で左右をぴったり合わせるよう意識すると整う。

1011小節

 ☆10小節最後から11小節頭の左手Fisの2指をしっかりと離鍵しておくこと。2指でFisを押したままになっていると、次のCisに3指が届かなくなる。
 ✡11小説右手最初のE。直後あるいは手前のFisをを5指で取る都合上、奥の方で弾くポジションとなる。手の高さが黒鍵ベースの高い位置となり白鍵であるEには少し距離がある。指とキーが離れていることを意識せずに弾こうとすると指がキーに届かなかったり、届いても音が弱かったりする。PIP関節をしっかりと曲げて確実に打鍵できるようにすること。

1920小節

 ②右手、このスラーは1音目だけ伸ばして2,3音目は短く切る。

21小節

 3拍目右手Fis。この小説で最も強く主張しなければならない音だが、これを5指で弾こうとすると頻繁にミスタッチする。押しにくい位置にキーがある。肘を外側に向け5指をまっすぐ伸ばしてFisキーと交差するように裏剣して命中率を上げる。

参考文献
[1]市田儀一郎, インヴェンションとシンフォニア
[1]市田儀一郎, バッハ インベンションとシンフォニーア 解釈と演奏法

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構造色と位相の話

 通常、色というのは物質が吸収する以外の波長成分が反射されて見える光だが、構造色というのは光の波長近辺の周期構造から特定の波長の光だけを反射することで色を示している。構造由来であり、見る角度によって周期が変わるので、独特な輝きを持っている。

[1]
 構造色は同じ波長の光を強め合うのだけど、光の干渉作用と同じで位相の合っている光でなければ強め合うことはできない。逆位相の光は打ち消し合ってしまう。
 レーザー光はその特徴として波長と位相が揃っているのだが、逆に言うと自然光は位相はバラバラだということになる。しかし、自然光の中にあらゆる位相が均一に存在しているとすれば、当然逆位相の光もあるわけで、お互いに打ち消し合って世界は暗黒に覆われてしまう。そうなっていないということは、やはり位相の偏りがあるということになる。
 どういう事になってるのだろうと考えてたのだけど、調べてみたら割とわかりやすい説明があった。数式はよくわからない、というか読む気にならないけど、結論は書いてあるのでだいたい理解できるようになってる。1原子から発せられる蛍光はそれなりに位相の揃った光となるということである。
 それで気になるのは、多数の原子がランダムに配置されている場合である。イメージしやすいように状況を仮定すると、蛍光灯の中に水銀蒸気が飛び回っていてそこに電子が衝突することで励起され蛍光を発するとする。水銀原子の位置も電子が衝突するタイミングもバラバラである。にもかかわらず、蛍光灯の下でもモルフォ蝶は青く光ってるし、シャボン玉やオイルは虹色に滲んでるし、オパールは相変わらず変な色に光ってる。ってことは、ランダムに思われる自然光もそれなりに位相が揃っていなければならない。これは1つの原子から光が発信しているという条件で考察した上のリンクでは説明しきれない。
 で、ここからは思いつきなのだけど、2案ほど考えてみた。
・光というのは目に見えるところから思うほど密に飛び交っているわけではなく、同じ原子から出てきた位相の揃った光が極めて短いの間に細切れになって飛び交っている。密度は低いけど、高速で飛んでいるのでそれなりの量が目に入ってくる。互いに干渉しあうほどには密ではないが、一塊の光自体は位相が揃っているので構造色を示すことができる。
・多くの光が干渉し合いながら飛び交っているけど、位相が平準化するほどの光量はなく、重ね合わせの結果として強度の強い光の位相が残ることになる。  こんな感じに考えてみた。ただし、光量を上げ続けるとやはりどこかで打ち消し合うことになってしまうので、正しいかどうかってのはちょっと自信がない。

参考文献
[1]田所利康, イラストレイテッド光の科学, 朝倉書店(2014)