演奏解説 キリエ

 先日、再録したので今度こそ演奏解説を書く。
 Klindworthの読み方がクリンドワースと英語読みするのかクリントヴォルトとドイツ語っぽく読むのか分からなかったので、録音、楽譜のページではクリンドワースと書いた。だったら、Mozartもモザートと書くべきかなとか思ったり思わなかったり。
 モザートのレクイエムのピアノ編曲版が存在すること自体は昔から知っていたのだけど、楽譜の入手が覚束なくていざとなれば自分で書こうかとも思っていたところ、IMSLPで発見したため余計な労力を割かれずに済んだ。ただ、思うところがあっていくらか変更した事もあり、結局楽譜自体新規に書き直すことにした。

 まず、この曲はパイプオルガンが置いてあるような広いホールで演奏することから、全体的に残響の強い印象を受ける。ピアノでこれを表現しようとするとダンパーを少し上げた状態、つまり少しだけペダルを踏んだ状態で演奏することになる。練習を始めた当初はペダルを殆ど踏まずに弾こうと考えていたのだけど、その点に気付いてからはそれなりにペダルを踏むようにしている。ただし、原曲の雰囲気をあまり重視しないというのなら関係のないことと思う。
 素人ではよくあることだけど、気付かないうちにテンポが段々速くなってしまう。コレばかりはどうやったら良いのか分からない。CDを流しながら演奏すれば取り敢えずテンポは保てるのだけど、それではメトロノームに拍を数えて貰うのと大差ない。人前で演奏するときにメトロノームがピコピコ言っていてはカッコが付かない。拍を数えながら演奏すると少しは改善するけど、満足いく安定感にはほど遠い。もしかしたら才能の領域なのかも知れない。
 テンポの表記はAllegroと書いてある。気分はアレグロなんだけど、実際はあんまり速くない。アンダンテかせいぜいモデラートの領域に収まる。144BPMとかで演奏しようとうするとだいぶ酷いことになると思う。一応バーンスタインを参考音源とした。
 オリジナルの楽譜を確認すると強弱記号はフォルテばかりなのだけど、勝手に強弱つけた。フォルテばかりだとホント疲れるし。

6~7小節

 6小節目最後の部分、右手6度の進行外しやすいので注意。直前のEを3指で取るためE→Aを3→4で取らなければならない。はっきり離鍵しないと届かない。どうしても届かない場合はEをスタッカートにする。A→Hでは4,5指を伸ばし気味にするとヒット率が上がる。
 7小節2拍目、中声部が左手に移ったところ。CHAを121で取る。Cはスタッカート気味で離鍵し、すぐに1指はAを押さえる準備をする。
 7小節3拍目、低音部。左手E→Fisの指の動きが悪い。1指でHを押すタイミングでEの5指を離してしまい、次のFisの準備をしておく。スラーが付いているがペダルで誤魔化す。

13小節

 右手1指の連打がムズイ。とにかく気合いを入れて連打するしかない。

18小節

 音を変更した。譜例左がクリンドワースの編曲。オリジナルのフルスコアを見るとクリンドワース編に示したCの音が存在しない。クリンドワース編の通りに弾くと、このCが鳴るのが気持ち悪くて仕方がない。そんなわけでばっさり消した。

19小節

 右手の3度の進行は指が自由に動かなくて苦労する。左手の正確な動きに合わせて正しいタイミングで打鍵するよう意識することでクリアした。

24小節


 1オクターブ上げた。この部分、オリジナルの通りに弾いたところしっくり来なくて1オクターブ上じゃあないのかな、とか思ったのだけど、CDやフルスコアを確認しても別にそんなことはなかったのだけど、何か気に入らなかったので1オクターブ上げた。

25小節

 24小節で1オクターブ上げた所為でもあるが、24小節終わりから25小節頭に移るところで右手がかなり忙しい。24小節最後のD,Gは短く切って25小節頭のEsオクターブに備える。

27小節

 右手が少し高い位置へ跳躍するが視線はそれを追う必要はない。1オクターブ下のFに親指を置き、1オクターブの広さに手を広げると5指が正しい位置に来る。幸い次の音は既に親指が置いてあるFになっている。

28小節

 右手EsとGを分散して取る。Gに5指を持って行く際にEsからまっすぐに向かうのではなく、真上からGを叩くイメージで弾く。この弾き方は金子一朗挑戦するピアニストで語られている。

31小節

 右手B音の保持は諦める。保持できるならそれでいいんだけど、僕には無理なんで。3拍目の頭でまで保持して後はペダルに任せる。
 あと、この小節左手の音を勝手に増やした。何か寂しかったもんで。

34小節

 左手の16分音符はできるだけ4指を避ける指使いにする。
 左手後半8分音符のG音連打は16分音符がある所為で弾きづらい。16分音符に合わせるように短く離鍵するとタイミングが合う。
 ここからクレッシェンドにしたいのだけど、フォルテからクレッシェンドしていくと、後半ずっと音量アップしていくところが表現しきれなくなるので、ここで一旦ピアノにして徐々に音量を上げていく方向にした。

46小節

 右手4指を多用するため、気を抜くとすぐに崩れる。基本的に1,2指でコードを押さえているため、指使いの工夫で解決することはできない。ショパンのOp.10-2よりはマシと思って練習するしかない。

48小節

 46小節と同様右手4子を多用するが、こちらはコーダに向けて減速することが許されるため誤魔化しがきく。
 右手2拍目の最後と3拍目の最初の音は共に124指で取るため、同じ指で連打することになる。意識して連打しないと音が抜けていることがある。

49小節~最後

 最後のところのテンポの変動は、Allegro→poco rit.→フェルマータ→Adagioとなる。アレグロからアダージョは速度が半分になる。また、フェルマータは2倍の時間を掛けてその音符を保持すると考えると分かりやすい。
 最後の音は装飾音を直前に弾いて全音符を全て揃えて弾く。フェルマータとか付いていないので正確なタイミングで終わるのべきなのだけど、いきなり音を着るべきではなく、最後は消え入るように音を消す。52小節は当然ペダルを踏むのだけど、指を離して完全にペダル任せにし、ペダルをゆっくり離すことで音を消す。

[注釈の注釈]
 13小節目について。たった3音の連打でムズイとか言うなよ、とか書きながら思った。この部分のメモを取ったときは3拍目の第2音EGを51指で取るように書いてある。そうすると右手中声部の音の殆どを1指で取ることになるので連打がきついと感じるに至ったようである。しかし、浄書した楽譜を見ると譜例の通り52指で取るようになっている。色々と書き込みのあるオリジナルの楽譜と見比べて、指使いが違うじゃんか楽譜書き直さなきゃ、とか思ったのだけど試しに演奏したところ浄書した楽譜の通りの指使いの方が正しいらしかった。となると、この13小節目の注釈自体、変なことを書いているとも思えてくる。