名古屋港から無水酢酸を密輸しようとして捕まった人がいるとか。(魚拓)
わざわざ値段の高い日本から輸出しなくてもいいのに、と思う。純度が高いとか、信頼性が高いとかいうリスクをさっ引いても中国とかからの方が安いんじゃないかな。
無水酢酸からすぐに麻薬につなげるのはどうだろうか、とも思ったんだけど、ヘロインの原料として普通に規制されてるらしい。
さて、ヘロインを作る過程でどのようにして無水酢酸が使われるのか気になるところ。一度復習しておきましょう。
上図がヘロインの構造式。ヘロインはモルヒネから作ります。モルヒネの構造式は、
となります。モルヒネの左側に付いている2つの水酸基(-OHのこと)が無水酢酸によってアセチル化されるとヘロインになるということ。モルヒネから作る、ということは、阿片、芥子が原料となる。
今回は、ケシボウズから搾り取った生アヘンを原料とすることにしよう。
①アヘンの精製
生アヘン10~15kgを210kgのお湯に入れて沸騰。溶ける部分と溶けない部分に分かれる。アヘンの主成分となるアルカロイドは熱水に溶けるらしい。一度、コイツを熱時濾過して不要物を除去します。
②モルヒネ抽出
濾過したモノを沸騰させて、水酸化カルシウム(Ca(OH)2:これ自体はあんまり水には溶けない)40kgを加えます。すると、モルヒネは冷水にも溶解するカルシウムモルフェネートに変わるそうな。そんなわけで、液を冷やしていくと不純物が次々と析出・沈殿する。ただし、含有毒物であるコデインが僅かに溶けている。コイツを濾過して、濾液に塩化アンモニウム2~3kgを加える。沸騰させずに加熱し、pH8~9になったら加熱を止め、放冷する。2時間もするとモルヒネとコデインは沈殿するので、濾過して回収する。コデインは健康に悪いのでw、エーテルを加えてコデインだけ抽出、除去。これを再度濾過してモルヒネだけになったところ、乾燥させるとコーヒー色の粉末になります。色が付いているということは不純物が含まれているということ。精製するには、希塩酸に溶かして活性炭を加えて加熱、濾過すること数回。蒸発乾固してモルヒネ塩酸塩の白色粉末が得られる。
③モルヒネからヘロインへ
ここで漸く今回の目玉、無水酢酸が登場する。
モルヒネ塩酸塩341gに無水酢酸306gを加える。突然、実験室スケールに変わったけど気にしないように。これを沸騰させないように85度で加熱(一応、冷却管を付けておくこと)。5時間後、水、酢酸、ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)が生成しているはず。室温まで冷えたら、水162g、クロロホルム少々を加える。20分後、クロロホルムに不純物が溶けた赤色のオイルが底に沈む(と書いてあったけど、20分も待たなくても、分液漏斗に入れて振ってやればすぐに抽出できるんじゃあないかな)。とにかく、これを分液して、水相を取り出す。活性炭を加えて濾過。活性炭を加えて濾過。活性炭を加えて濾過。を繰り返す。クロロホルムで取り切れなかった不純物とか、クロロホルムとか酢酸が活性炭に吸着されて除去される。液が(無色?)透明になったら合格。
炭酸ナトリウム750gを熱水に入れたモノをゆっくり加え、弱アルカリ性にする(泡立ちが止まって、ヘロインが沈殿したら止めてよい)。濾過、乾燥、白色粉末Get!。まだ着色があるなら、クエン酸に溶かして活性炭行程からやり直し。
さらに、このヘロインを2倍の量の沸騰エタノールに加えて熱時濾過。不溶な炭酸ナトリウムとかを除去する。濾液を氷冷すると、クリーム状になる。アルコールを揮発させて数時間後に吸引濾過。
④ヘロインを塩酸塩に変換
略。もうつかれたぽ
というわけで、結構手間暇かけて作られるみたい。
自分で実験できるくらい調べてしまった。こんな下らんことに費やしている暇はないんだけどなぁ。
一応。出来ないと思うけど、実践しないように。捕まるよ。
参考文献
薬師寺美津秀, 乱用薬物密造の科学, データハウス(2002)
http://www.nmps.k12.mi.us/webpages/staff/johnson/powerpoints/morphine.mht!morphine_files/frame.htm(リンク切れ)
20190101追記
参考文献に挙げた薬師寺美津秀(本名:藤山三秀)が麻薬取締法違反容疑(魚拓)で逮捕されたらしい。小遣い稼ぎをしようとしたとか。アホすぎ、実践したら捕まるって言ったのに。