Windows10 スクリーンセイバー

 先日、WindowsUpdateでスクリーンセーバーの設定が変わったらしく、僕が普段使っているフォトギャラリーがオシャレな感じになった。具体的に説明するのは面倒なので、「オシャレ」とだけ表現しておく。
 それは結構なことだけど、スクリーンセーバーが起動するとマウスに触ったり、キーボードを叩いたりしてもスクリーンセーバーから復帰しなくなった。

 この症状について調べてもロック画面からの復帰なんかと一緒くたの話は大量にヒットするのだけど、スクリーンセーバーだけに関しては殆ど見られず、自分だけがこの症状に陥っているのかなと思う次第である。
 1件だけ見つかったのが「windows10 スクリーンセーバー フォトギャラリー 復帰しない(archive.today)」というマイクロソフト公式と思われるQ&Aである。

windows10 スクリーンセーバー フォトギャラリー 復帰しない

ノートPCでのWindows10環境です。

「設定」→「個人設定」→「ロック画面」から、
スクリーンセーバーの「フォトギャラリー」を選び、適用しました。

待ち時間「1分」に設定。

しばらくして1分後、写真がランダムに流れてきましたが、

復帰しようと、マウスを動かしても、キーボードキーを押しても

反応なし、復帰せずです。

仕方がなく、電源ボタンを2回ほど押して、

スリープ状態が解除されたときと同じ画面で、元の画面が表示されました。

スクリーンセーバーの「リボン」または「ラインアート」を選んだ際は、

マウスを動かしたり、キーボードのキーを押すことで、復帰します。

スクリーンセーバー「フォトギャラリー」で、マウスなど動かしての

復帰方法は、何か設定が必要なのでしょうか?
Windows10では、この選択は不向きなのでしょうか?

宜しくお願い致します。

 結局、全く役に立つ回答はなく、「[フォト ギャラリー] は利用せず、他のスクリーン セーバーを使用することをお勧めします。」で締めている。
 実際のところ、僕の環境では[Alt+F4]か、[Alt+Tab]で復帰できる。
 [Alt+F4]というのはウィンドウを閉じるコマンド、[Alt+Tab]というのは別のウィンドウをアクティブにするコマンドである。このコマンドで復帰できるということを考えるに、今回アップデートで変更されたフォトギャラリーというのは、Windowsに組み込まれた機能ではなく、スクリーンセーバーのトリガーが入ったときにフォトギャラリープログラムを走らせることにしてたというだけであり、またフォトギャラリーの終了コマンドにマウスやキーボードを触るというアクションが組み込まれていないのではないかと思われる。
 スクリーンセーバーの復帰が面倒になったというのと、復帰に際してプログラムを閉じなければならないので時間が掛かるというのが気に入らない。でも、他にこの症状になってる人を見ないので改善は望めないのかなって思う。

ダブルクロス The 3rd Edition キャラクターシート

 ダブルクロスキャラクターシートをエクセルで作ったのでアップした。ダウンロードはTRPGのページから。
 過去に、カオスフレアビーストバインドキャラクターシートを作ったことがあるが、あれは人に頼まれて仕方なく作ったものであり、キャラクターシートの意匠もエクセルでは再現が難しいのでその部分は目をつぶって作った。
 ダブルクロスキャラクターシートは枠の角に十字をモチーフにした意匠があり、大変ではあるけど再現不可能というほどではなく、時間さえかければ作れるという確信があったため、自分の技術を確認する意味も込めて作ってみた。
 僕が使っているエクセル2007では都合よく3種類の太さの罫線を描くことができたので、それっぽく枠線の太さに対応することができた。十字の意匠についてはそれぞれセルの幅を調整して罫線をはみ出したり消したりした。この処理を行ったため、かなり多くの行数を使うことになった。
 ダブルクロスの公式キャラクターシートは曲線のない作りなので、あまり不自然ではない出来であり、CFやBBTに比べてかなり再現性の高いものとなったと思う。
 これまで、キャラクターを事前に作ってセッションに持っていくというとき、公式サイトからダウンロードしたPDFファイルにAdobe Acrobatで直接入力していたけど、これが意外に手間で、枠の中の正しい位置に入力するのにも骨が折れる作業であり、文字の入力に物凄い処理落ちが起こるという代物であり、さらにフォントによっては入力できなかったりする。畢竟普通に印刷したものに手で入力したほうが楽ではないかと思えるほどであった。そうなるとエクセルで入力できる形式というのは実に良いものではないかと思う。

 一応、今回の作業について手順というか問題点などを紹介しておきたい。とはいっても、エクセルのシートにダウンロードしたキャラクターシートの画像を拡大して貼り付けて、そこに罫線を合わせていくというだけなんだが、エクセルは表計算ソフトであって画像の処理はかなり苦手である。神我狩のNPC集を作ったときにエクセルで画像を扱うのは色々と妥協が必要になってくることは存分に身に沁みているので、ある程度は最初から諦めて作業に臨んだ。
 シートに画像を貼り付けるのだけど、よく知られているようにエクスプローラーから画像ファイルをドロップしても貼り付けることはできない。ちゃんと"挿入→図"という正規の手順を踏まなければならない。別のファイルで開いた画像をドロップすれば貼り付けられるのだけど、この方法を取るとエクセル側の独断で画像ファイルが書き換えられるので大抵はファイルサイズが大きくなるためオススメしない。
 シートに貼り付けた画像を拡大して入力するセルよりも背後に表示して作業を行おうと思っていたのだけど、これがうまく行かない。エクセルに貼り付けた画像には前面、背面という概念があるのだけど、これは画像間における相対位置であって、シートのメインコンテンツであるセル及びその中の表示は常に最背面である。つまり、セルの境界は貼り付けたキャラクターシートの奥にあるので見えない。この時点で、以前作ったCFやBBTも同じ問題にぶち当たったのを思い出した。あの時は画像を貼り付けるのではなく、背景をキャラクターシートの画像に設定して作業を行った。"ページレイアウト→背景"というコマンドになる。同様にしてみたところ、背景に設定することはできるのだが、シートを拡大縮小しても背景画像はそれに追従しない。したがって、細かい部分を描こうと拡大しても背景は小さいままだからそのためのガイドを参照できないということになり全く役に立たないことが分かった。
 結局、元の画像貼り付けで作業を行うことにした。しかし、セルが見えないのでは全く作業にならない。せめて画像の透明度を上げてセルが透けて見えるようにできれば作業性はグンと上がる。現行のエクセルには画像の透明度をいじる(魚拓)機能があるようだが、2007にはない。ところが、エクセルでは表示している画像を見えなくするということができたような気がして、調べてみると確かに"Excelのオプション→詳細設定→オブジェクトの表示"で消すことが出来る。これで最背面であるセルを可視化することが出来る。しかし、このコマンドは当然ながら頻繁に行うのは想像に難くない。軽く見積もって数千回は行わなければならないだろう。ただでさえマウスを使うのは動きが遅く不正確で好まないのにこんなことを延々行ってはいられない。そこで、この動きはマクロで登録してしまおうと思った。試しに"表示→マクロ→マクロの記録"でこの動きと、解除する動きを登録して見たのだが、このマクロは全く働かないことが分かった。マクロ作戦失敗である。何かショートカットキーはないのかと探したところ"Ctrl + 6"で行けることが分かった。これを連打することで画像とセルを交互に表示させてあたかも画像が半透明になっているように見せることが出来る。実際は連打なんてせずにキーを押しっぱにして連続入力状態にすることでその状況を作った。これはあんまりやっていると目がチカチカして気持ち悪くなってくる。人によっては癲癇の発作とか起こしかねないから、その辺りは注意がいるかも知れない。それと、画像を非表示にした状態で行や列を挿入しようとすると「オブジェクトがシートからはみだします。その操作はできません。」といって拒否されるので、セルを挿入する時は画像を表示している状態、つまり、セルが見えない状態でなければならない。セルを挿入したら当然ながら枠の大きさを調整する視界を半分妨げられた状態で行わなければならないので結構やりづらい。
 これで大体の問題は解決し、完成への筋道ができ、あとは地道な作業を延々続けるだけとなった。
 進捗が目に見える作業というのは実に良いもので、例えばピアノの練習なんて弾けるようになるまで確信が持てない辛い作業と比べて実に気が楽である。勿論、エクセルのことだから随所でトラブルが起こる。セルの幅とか表示している画像のサイズとかが意図せずに変わっていたりするというのがよく起こる。すぐ気付けばよいのだけど、暫く作業を続けている内に何かおかしいとなってから気付くので何が変わってるのか分からないということになる。勢い、修正も雑になってくる。そんなわけで、成果物としてできたキャラクターシートもイマイチ整っていない部分も多くなる。一通り入力が済んだら最初に貼り付けた画像を消す。
 あとは一応自分の持ちキャラを入力してみて細かい部分を調整する。本来手書きで書き込む部分はそれっぽい風にしようと行書体を使った。本当ならもっとマニアックな書体を使いたかったのだけど、誰も持っていないようなフォントを設定してもダウンロードした人が困惑するだけでいいことないよねと言って無難なAR Pペン行書体とした。
 印刷設定は一応B5の2ページで、見開きにすればB4になる設定とした。
 こんな感じ。


 全部作り終えてから気付いたのだけど、ダブルクロス3rdのキャラクターシートって新しいバージョンが出てるんだってね。以前セッション中にそういった話を聞いたことがあったのだけど、すっかり失念しておりテキトーにダウンロードしたキャラクターシートを元に作ってしまった。気が向いたら最新版とかに作り替えたい。

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屈折率の測定方法について

 先日、ポリエチレングリコール400(InternetArchive)(PEG)にコロイダルシリカを分散させたのだが、100℃から温度を下げていくにしたがって色が変わっていった。
 基本的に構造色を持つ液なのだが、温度の低下に伴って少しくすんだ色→無色透明→透き通った構造色と変化した。
 これはPEGの屈折率が温度によって大きく変化しており、無色透明のタイミングでシリカと屈折率が一致したとことを示している。
 屈折率というのは物理の教科書に載っているように、入射角θi、屈折角θtから、sinθi/sinθtで求められる。
[1]
 光が入射する様子を真横から撮影して分度器を当ててやればすぐに求めることができる。勿論、ちゃんと測るならアッベ計(InternetArchive)を使うべきである。しかし、対象物質が小さかったり、歪な形をしている場合は測定するのがなかなか難しい。そういう物質の屈折率を測定するのに液浸法(InternetArchive)が使われる。
 液浸法を行うためには屈折率の異なる接触液を準備しなければならない。例えば島津製作所ではd線(587.56nm)の屈折率で1.48~1.78まで0.01刻みで31種類を用意している[2]。測定したい屈折率の辺りの接触液を揃えておかなければならないのである。
 PEGの屈折率の温度依存性を利用して接触液の代わりとすることができるのではないかと思ったわけである。
 シリカ分散液の様子から屈折率が多く変化しているけど、具体的にどの程度の変化があるのかちょっと分からない。
 屈折率は密度と緊密な関係にある。PEGは密度の温度依存性が大きく、20℃で1.125g/cm3、95℃で1.07g/cm3程の差があるので(ただしこの例はPEG600)[3]、相応の屈折率差が見込まれる。

 屈折率と密度の関係は次の式で表される[4]

 \displaystyle R = \frac{n^2 - 1}{n^2 + 2} \cdot \frac{M}{\rho}
n:屈折率
M:分子量
ρ:密度
R:分子屈折
 分子屈折は原子屈折の和で与えられ、原子屈折は各原子に特有な定数である。

これを式変形すると、
 \displaystyle n = \sqrt{\frac{M + 2 \rho R}{M - \rho R}}
となる。
 密度以外は全て定数なので、この式から密度が大きくなれば屈折率が高くなるということが分かる。
 一応計算してみる。

 PEG400は平均分子量400なので、M=400。
 PEGはHO-(CH2CH2O)n-Hという構造をしているので、この構造で分子量400だとn=8.68くらいになる。分子として考えるならnは整数でなければいけないけど、平均分子量400という集合体として考えるので、n=8.68として計算してみる。
 原子屈折の一覧表から、原子屈折総計を求める。
C:2.42×2×8.68 = 42.01
H:1.10×(2 + 4×8.68) = 40.39
-O-H:1.53×2 = 3.06
-O-:1.64×(8.68 - 1) = 12.60
総計:98.06
 \displaystyle n = \sqrt{\frac{400 + 2 \rho 98.06}{400 - \rho 98.06}}
ρの幅は1.07~1.125g/cm3なので、それぞれのρを代入したときの値を求めると、
・ρ=1.07g/cm3(95℃)のとき
 \displaystyle n = \sqrt{\frac{400 + 2×1.07×98.06}{400 - 1.07×98.06}} \\  = 1.4376
・ρ=1.125g/cm3(20℃)のとき
 \displaystyle n = \sqrt{\frac{400 + 2×1.125×98.06}{400 - 1.125×98.06}} \\  = 1.4637

 温度が高いときと低いときで屈折率は1.4376から1.4637の変化があると求めることが出来た。0.0261の差ということで見た目ほど劇的な違いはないようで、ここから分析法を立ち上げようとするにはちょいと役者不足である。
 では、どのくらいの屈折率差があれば良いかというと、液浸法では上記の通り1.48~1.78の液を準備している。上の計算式から読み取るに密度変化と分子屈折が高い方が温度による屈折率差も大きくなることが分かるが、分子屈折が大きくなると必然的に分子量も大きくなるためその効果が相殺される傾向にある。しかし、原子屈折の大きな元素を多く含む物質で密度変化の大きいものを用意すれば良さそうに見える。上の原子屈折一覧を見るとハロゲンの原子量が大きくなるほど原子屈折も大きくなるようで、例えばヨウ素の多く含まれる四ヨウ化炭素なんかはどうかと思ったりもするが、これは固体である上に色が付いていて適当ではない。
 そもそも、原子量の大きいハロゲンは当然分子量も大きくなるので、原子屈折を大きくするためにハロゲンを選ぶのは適切ではない。
 それでは分子量を小さくして原子屈折を大きくするには、二重結合や三重結合の多い物質を使ったらよいとなる。
 アレンなんかどうかと思ったが、調べたら沸点が-34℃[5]で使いようがない。

もっと長鎖の共役系をと考えると、やっぱりポリアセチレンかなあとなる。ポリアセチレンだと固体になってしまうので、沸点が93℃となっている[6]トリアセチレンあたりが良さそうである。しかし、分子量に対して分子屈折が大きそうなのは良いとして、密度が0.9±0.1g/cm3となっている。あんまり密度の差が大きくなさそうである。さらに、この物質の構造を見るにどう考えても疎水性なので使える物質に制限がありそうである。

 なかなか安易に適当なものは見つからないもので、頑張って探して論文を書いてもいいんだけど、面倒くさいからやらない。誰かこのネタを携えて博士課程にでも挑む人は出てこないものかな。

参考文献
 [1]田所利康 石川謙, イラストレイテッド光の科学, 朝倉書店(2014)
 [2]接触液(屈折液)(InternetArchive), 島津製作所
 [3]Y. Hatakeyama, T. Morita, S. Takahashi, K. Onishi, K. Nishikawa, Synthesis of Gold Nanoparticles in Liquid Polyethylene Glycol by Sputter Deposition and Temperature Effects on their Size and Shape, J. Phys. Chem. C 2011, 115, 8, 3279-3285
 [4]鈴木長寿 他, 物理化学の計算法p35, 東京電機大学出版局(1997)
 [5]アレン(InternetArchive), Chemical Book
 [6]Triacetylene(InternetArchive), ChemSpider

チェルニー30番2 演奏解説

 チュルにー30番2を録音したので、いつものように演奏解説。
 例によって、指定速度で弾く前提での技術面に偏重した説明を行う。音楽的にためになる解説はPTNAの記事(魚拓)があるのでそちらを読むといいと思う。
 楽譜はいつもどおり全音を使う。

リズムについて
 右手が主旋律で歌って、左手は伴奏という役割分担になっている。拍子は4/4と書いてあるけど、1728小節の左手は2/2となる。右手と左手で拍子が違うが、左右の手で正確にタイミングを合っているに越したことはないけど、無理して正確に合わせる必要はなく、そこにこだわるよりは寧ろ音楽として自然な流れになっていることを重視したほうが良い。右手と左手がちょっとくらいずれていてもあまり気にする必要はない。

テンポについて
 2分音符で108bpm。2分音符を打つ間に6回打鍵するので、108×6 = 648回/min = 10.8回/sの速度で打鍵することになる。すごく速い。
 現実的に普通に弾ける速度にテンポを落とした場合と、指定のテンポで弾ききる場合とで要求される技術が全く異なる。たまに、手の甲に10円玉を乗せても落ちないように弾けと頓狂な曲芸を求めるピアノの先生がいると聞くが、ゆっくり弾くなら兎も角、速く弾こうとするのであればそれは不可能だと思ったほうが良い。
 速く弾くということは、ダブルエスケープメントの性能を引き出すことに他ならない。だから、チェルニー30番を指定の店舗で弾こうとするには基本的にダブルエスケープメントを備えたピアノ、つまりグランドピアノが必要である。ただでさえ現実的ではない速度を指定されているものにアップライトで挑むのは大分無茶であり、時間の無駄でしかないので、もっと有意義に時間を使うべきである。そういうわけで、この解説もグランドピアノで演奏する前提で書く。
 速さが問題になるのは当然左手だが、左手は三連符の部分と1728小節の6連符の部分がある。どちらもベースとなる1音目を保持する。この1音目の保持さえなければもうちょい弾きやすくなるけど、楽に弾かせないというのがチェルニーの狙いなのでそこは仕方ない。このベース音を保持している間、その指には余計な力を入れないこと。力を入れないと保持できないのなら最低限の力で済むところまでテンポを落とす。
三連符の部分

 よく指導されるような手を水平にして指を動かしてキーを押さえるとう弾き方ではなく、手首を回す動きで弾くのだが、三連符の1音目は保持したままなので、通常のローリングでは対応できない。
 5指を中心にした手首の回転を使う。5指を下にした状態で手を少し傾けておいて、そのまま下におろして5指で打鍵、5指でキーを押さえたまま手首を回転させて3指→1指と回転に合わせて順次打鍵していく。1指よりも3指が先に打鍵出来るように3指を少し突き出し1指を少し引っ込めておく必要がある。また、打鍵に使わない2指と4指は完全に引っ込めておく。この際、橈骨の動きを意識できればなお良い。
 離鍵は手首を逆方向に回転させながら手を持ち上げる。次の打鍵の準備が出来るだけ持ち上げれば良いので、キーが完全に戻るほどに上げる必要はない。
六連符の部分

 5指の保持がなければ普通にローリングでクリアできるのだけど、そうはいかない。
 分散和音の上下に合わせて肘を左右に振って打鍵しやすい位置へ手と指を移動させる。このときに5指は保持したままになるので、手や指が柔軟でなければならない。脱力できている必要がある。
 頂点まで登ったらすぐに一つ前の音に戻らなければならない。離鍵は完全にキーが戻るまで指を上げるような余裕はなく、再度打鍵できる程度にしか指は上げない。ここでダブルエスケープメントが必要になってくる。
トレモロ部分

 20222628小節は6連符が保持するベース音を除いてトレモロとなっている。これが、この曲で最も難しい部分である。
 トレモロということは、2音ごとに同じ音を打鍵しなければならない。普通に弾いていたは離鍵が間に合わない。1秒間に10.8回の打鍵をするのだから、トレモロの際に同じ音を打つ間隔は1s/(10.8回/2) = 0.185秒である。0.185秒間で離鍵-打鍵のサイクルをこなさねばならない。キーの沈む深さをノギスで測ったりして指先の加速度が133mm/s2とか計算してみたけど、全然数値として実感がないので止めにする。とにかく、トレモロは短時間で同じ指を上下しなければならないので大変だということ。
 さて、この部分の演奏法だが、最初の3音は上に書いた三連符と同じ弾き方をする。3音目は多少遅れてもとにかく急いで音を出す。最後の2音は5指の保持を離してしまう。すると、ローリングで素早く終えることが出来る。保持が離れるので指示通りではないが、ある程度の時間は保持しているので視聴者も許してくれると思う。
 この弾き方だと各音が均質ではなくなるが、この部分は六連符で連桁しており2/2として描かれているので[1]、リズムがちゃんと取れるならば問題ない。ただし、21小節は右手が4/4拍子で主旋律を刻むので、この右手だけは正確に打鍵できるよう注意しなければならない。

2小節

 ②右手16分音符。左手の三連符の間に正確に挟むべき[2]という人もいれば、テキトーでいい[3]という人もいる。これはテキトーでいいと思う。だいたい、左手の三連符は0.0926秒毎に打鍵するわけで、この隙間に差し込むとか狙ってもなかなか出来ることではない。

4小節

 ☆右手。2指を斜めにしてCisの黒鍵と交差するように配置するとミスタッチが減る。

10小節

 左手前半の指使いが5-4-2と指定されている。すごく弾きづらい指使いを敢えて指定している。全音の解説文には多少の困難はあっても、指使いは支持されているとおりにひくこと。(カッコ内の指使いは比較的引きやすい指使いで云々)[2]とあるように、チェルニーの指定した指使いは弾きやすいものとは限らない。この小節では動きづらい4指を鍛えるという目的で敢えてこの指使いを指定しているものと思う。僕自身、指定された指使いはあんまり守るつもりはないので5-3-2で弾いても全然いいと思う。
 この指使いが演奏不可能という人も確認できるが[4]、頑張ってこの指使いを試してみたら意外と行けるもんで何となく弾けてしまった。低いポジションに手を持っていったのが良かったのかもしれない。実際のところ、2022小節のトレモロに比べたらこの程度は全然障害にはならない。

3236小節

 これまでスタッカート中心だったのが32小節からレガート中心に変わり曲の雰囲気が変わるのだが、34小節では弱拍にスタッカートが付いているのでちゃんと表現すること。

参考文献
 [1]菊池有恒, 楽典 音楽家を志す人のためのp114, 音楽之友社(1988)
 [2]チェルニー30番練習曲, 全音楽譜出版社
 [3]末吉保雄 上杉春雄, チェルニー30番 New Edition 解説付p8、音楽之友社(2007)
 [4]iwatsukishinya(魚拓), twitter

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発電床

 発電床というものがある。上を歩くことで発電する仕組みの床である。PZTのような圧電素子を並べて、その上を歩くことで歩行に要するエネルギーの一部を電力に変換するという装置である。
 PZTは鉛を使っており、人体に有害との指摘から代替品を求められており、RoHSにより鉛フリーがの義務化が成功されたのが2006年だが、代替品開発の進捗が思わしくないため未だにPZTについては適用免除対象となっている[1]
 圧電体の発電原理についての説明は割愛する。圧電体による発電については以前紹介したことがあるが、JR東日本が自動改札の床でテストしていた[2]。このテストを行ったNEDOJR東日本東日本とは異なるが、スイッチサイエンス音力発電から発電床という名称で製品化されていた。

 スイッチサイエンス:発電床
 音力発電:発電床?ユニット EVBS-01

 どちらも実に胡散臭い商品である。スペックが書いてあるが、どちらも全く同じである。既存の圧電素子を持ってきて並べたんだと思う。値段も1万円くらい。ついでにNEDOのJR東京駅での実験結果[6}も並べてみる。

音力発電[3][5]
・発電量:約2mW(注)
・0.1 ~ 0.3W((注)の条件における、1m 秒程度の瞬間最大値)
(注 体重約60kgの人により、1秒間に2歩ずつ歩行する実験を30秒間行った平均
・外形300mm×300mm×10mm
・動作温度範囲約-25~+80℃

スイッチサイエンス[4]
・発電量 : 平均 2 mW(体重60 kgの人により、1秒間に2歩ずつ足踏みをする際の平均の発電量)
・信頼性 : 100万回以上
・外形 : 300 mm × 300 mm × 10 mm
・概算動作温度範囲 : 約-25~85°C

NEDO
・4.3Ws(改札通過一人当たり)
・改札口1通路(1m3)
・5週間(通過人数約300万人)経過後、発電能力95%

 NEDOの実験については後から評価するとして、先の2つについて。
 30cm×30cmの面積で1秒間に2歩ということだから、立ち止まって足踏み運動をするという状況を想定する。つまり、1秒間に2回60kgの圧力をかけることになる。これで2mWの発電ということになるので、1回の足踏みでは1mWs=1mJということになる。
 60kgの重量を1m持ち上げるのに必要なエネルギーは60kg×9.8m/s2=588J。そのうちの1mJを回収することになる。1m持ち上げるのは極端だけど、エネルギーから比較すると1m×1mJ/588J=1.70μmとなる。1.7ミクロン沈み込んでそのエネルギーを回収するというシステムである。勿論、少なからずエネルギーロスはあるので、1.7μmよりはたくさん沈み込み筈である。
 とにかく、1回の足踏みにつき1mJである。それで、この装置の信頼性は100万回とあるので、1mJ×100万回=1kJの発電能力が保証されている。
 それで、どの程度の電気代を回収できるかというと、東京電力-従量電灯B-電力量料金だと300kWh以上で30.57円/kWhとなっている[7]。1kJ = 1000Ws = 1000/3600Wh = 0.278Whであるので、値段にして、0.278Wh×30.57円/kWh = 0.00849円である。
 10000円払って回収できる電力が0.00849円分! 少しでも環境に負荷の掛からないエネルギーが得られるのだから良いと言うなかれ。これを製造するためにそれ以上の電力を使っていては意味がないのだ。これを0.00849円の電力で作れるかどうかを考えたら良い。

 さて、上記2品目は購入する価値がないと分かったと思う。一方NEDOの方はというと、この実験に使った圧電体のお値段が書いておらず評価が難しいので、それ以外のところを見てみようと思う。
 改札を通過するのに要する時間が書いていないのでちょっとやりづらいのだけど、一人当たり4.3Ws=J、5週間で300万人という辺りで計算してみようと思う。
 4.3J×300万人 = 12.9MJ = 12.9MWs / 3600 = 3.58kWh ということになる。
 3.58kWh×30.57円/kWh = 109.9円
 なんと110円ほどの効果が見込めることになる。ただし、1m3と広い範囲に圧電素子を置いているので、上記2品目と面積と比較するには、10000cm3÷900cm3 = 11.1倍の差があるものとして評価しなければならない。すると、109.9円/11.1 = 9.9円となる。大分良くなるけどまだまだな感じである。
 取り敢えず、自動改札1機に付き110円ほどの電気代の節約になることが分かったが、コストの比較が出来ないので、どうもイマイチな感じである。
 ちなみに、理論的にはこの発電床を無数に積層させることによってより大きな発電が可能となる。100枚並べたら10,100円だ。これくらいでは発電時の沈み込みを感じる事もないだろうから歩行者も抵抗を感じ事すらないのではないかと。勿論、発電によって製造原価が還元できるとしての皮算用である。結局、この装置の寿命次第だと思う。5週間・300万人で能力は5%減少ということなので、1年も使えば60%くらいまで能力は落ちる計算となる。矢張り、まだ実用には遠いのではないかと思える。あるいは、NEDOのこの実験以降に劇的な改善があるのかもしれない。とにかく、コストを還元できるかどうかは耐久力次第である。

 Coinhive事件を見ていたら、発電床みたいに歩行者の歩行エネルギーを横領するシステムも同様に検挙されるのかなあって思って、本エントリーを書いてみた。

参考文献
 [1]チタン酸ジルコン酸鉛, Wikipedia
 [2]「床発電システム」の実証実験について(InternetArchive), JR東日本研究開発センター フロンティアサービス研究所
 [3]エネルギーハーベスティング-振動力発電(魚拓), 音力発電
 [4]発電床(魚拓), スイッチサイエンス
 [5]発電床?ユニット  EVBS-01, amazon
 [6]成果報告書詳細(InternetArchive), NEDO
 [7]1kWh(キロワットアワー)あたりの電気料金はいくら?(InternetArchive), Selectra

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