キーボード買ったよ BUFFALO BSKBU510

 昨年末、キーボードが壊れて新調したのだけど、気に入らない点がいくらかあった。当時のエントリーにはそのうち慣れるだろうなんてことを書いたけど、やっぱり使いづらいし、キーの配置の違いは致命的に変な癖が付いてしまいそうだったので、買い替えた。
 前回のKB1430を使っていて、キーボードがアイソレート型である必要があるのかという疑問を覚えた。というのはLet's Noteのキーボードのキーの一つ一つを見ると、キートップの周囲が低くなっている。

この低くなった領域分だけ、ミスタッチし辛い構造になっていると言える。キーの中心から指が逸れても、少しくらいだったらキーの低くなった領域があるため、隣のキーを押すということはない。つまり、アイソレートと同じ機構を備えているということが出来る。
 この考えを更に広げると、キーが台形になっている普通のキーボードでも同じ効果を期待できるのではないかという結論に辿り着く。最早、アイソレートを選ぶ理由がなくなっている。
 そんなわけで、選定基準からアイソレート型という部分を外した。従って、以下の基準が残ることとなった。
パンタグラフ
②15cm×45cm以下
③有線
④フルサイズ
 実は、この基準でもそれほど多くはヒットしない。②以外の基準は今では選ばれることが少なくなっており、それらを組み合わせたこの基準はかなりレアな存在となる。それでも4件ほど見つかった。
 それで、選んだのがBUFFALO BSKBU510
 KB1430を使っていて、キーが浅いのが気に入らなかった点のひとつだったので、ディープストロークと謳い文句にしているこのキーボードを選んだ。


 使用感はというと、取り敢えず通常のキー配列であるというだけでKB1430よりは使いやすい。実に低いハードルだけど、この部分はもう仕方がない。そんでもって、このキーボードの売り文句である3.8mmディープストロークはどうかというと、僕の感覚からすると深すぎる。昔はこういう深いキーのキーボードが多くてノスタルジーを感じる人もいるのかも知れないけど、そういう昔のことはよく分からない。やっぱり、何事も中庸がいいよねという気分である。キーが深いため、打鍵に時間がかかり、結果として入力に時間がかかる。指ごとの打鍵速度の差が拡大されるため特定の指の打鍵が遅れることによるミスタッチも起こる。当然ながらグリッサンドはし辛い。
 あと、どうでもいいことだけど、キーボード自体の厚みが結構ある。使用前は気になったけど、実際に使ってみるとどうということもないかった。
 こんな感じなので、また別のキーボードに変えるかも知れない。どんどん使わないキーボードが増えていく。誰かキーボードほしいって人いないかな。
 なお、このキーボードは右上に専用ショートカットを設定できるホットキーが4つ搭載されているけど、全く使っていないのでその評価はできない。

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 20181028 キーボード買ったよ BFRIENDit1430

貴布祢神社行ってきたよ

 貴船神社というと京都の丑の刻参りで有名な神社。舞鶴市字溝尻に同じ音で字の違う神社があったので行ってみた。昔の人は漢字の当て字が結構いい加減だから同じものだと思う。そんなんだから、神社入口付近にある公園は「貴船公園」となっている。

 貴船神社はネームバリューの大きいこともあり、全国に450社あるらしい[1]。祭神は高龗神(たかおかみのかみ)。「船」の字があることから分かる通り、水に通じる神様を祀っている。高龗神については、以前明治川神社について書いたときにちょっと説明したので、その時の文章を抜き出しておく。

 高龗神というのはあんまり聞かない神だけど、日本書紀伊弉諾尊(いざなきのみこと)が軻遇突智(かぐつち)を3枚に下ろして切った時に各肉片が雷神(いかづちのかみ)、大山祇神(おおやまつみのかみ)、高龗となったとある[2]貴船神社に祀られているのが有名所である。「オカミ」は文字の形状が示すように水神を表す。

 ちなみに、「龗」という字はUnicode形式であり、普通にANSIテキストファイルとして保存すると消えてしまう。Windows搭載のメモ帳だと保存時に警告がでるけど、普段僕が使っているメモ帳αでは何も言わずに文字を消してしまうのでとても困る。この問題に気づいて以来、テキストファイルを作るときは最初からUTF-8で作成するようにした。



 参道に繋がる道は変な形をしており、貴船公園と道路との間を縫って、社務所の前で曲がって鳥居の前に辿り着くようになっている。神社の中に封じ込めた神様が勝手に外に出てしまわないように参道を曲げるというのオカルト好きの間では有名な話だが、この場合は鳥居の向こう側の参道はまっすぐ本殿に続いているので、公園を設置したことで神社に繋がる道を確保できなくなったというだけのことだろう。
 社務所の前に何か立て札がある。

お願い
 神社の境内では次のことを厳守して下さい。
一、遊びで自転車やバイク等を乗り入れないこと。
一、自動車の乗り入れ及び駐車は禁止します。
一、野球、ソフト、ゴルフ等の練習やその他神社や周辺の人々に迷惑がかゝる遊びは一切禁止します。
貴布祢神社総代
溝尻町内会長


正面から鳥居を見る

 ちょい上で、参道はまっすぐ続いているみたいなことを書いてるけど、この写真を見ると一幅分横にずれている。しかし、これは参道が曲がっているのではなく、ただのバリアフリーだろう。
 ところで、鳥居に掲げてある「貴布祢神社」。「袮」が新字体である。割と最近建てたものなのだろうか。でも、表の信号のある大通りの石碑にはちゃんと旧字体で「貴布禰神社」って書いてある。

手水舎

 情緒もへったくれもなく、ただの水道である。
 手水舎の裏には小川が流れてる。

鳥居二つ目



 裏には狛犬が二人控えてる。どっちも口を閉じてるように見えるけど、多分左の方は口を開けてる。

二つ目の鳥居の奥
 右側に祠が並んでいて、左側にはなにか立て札がある。階段の上に見えるのは本殿ではなく拝殿。本殿は拝殿の奥に見える。

 祠が並んでる足元に「貴布禰神社」の掲示がある。昔の鳥居に付けてたとかなのかな。

 祠が並んでて、それぞれお賽銭を投げ込めるようになってる。結局何だったんだろと思って調べたらこちら(魚拓)に説明があった。

 立て札。

 貴布祢神社由来
古来 コノ地 稲荷山ニテ 稲荷ヲ祭ル
境内ニ不凅(カレズ)ノ清水アリ 永禄年中
洛北貴船ヨリ 水神雨司ノ高龗神(タカオカミノカミ)ヲ
勧請シテ 貴布祢神社トス
ナホ 山頂 法起菩薩堂ノ北ニ
但馬ヨリ勘定ノ妙見社ヲ祭ル
五穀成就ノ神ナリ
(丹後国社寺録)

 水が湧くから水の神である高龗神を貴船神社から勘定したらしい。
 わざわざカタカナで読みづらくしてる意味がわからない。中二病かな。

階段下から見上げたところ

 正面に拝殿、その前にこちらにも狛犬がいる。左右にも何かある。

 左側の狛犬。こちらは口を開けてるので阿。その奥にはなんか祠がある。
 写真右に「←納札所」とあるけど、この角度からは祠の右側に一部見えるだけ。

 右側の狛犬と稲荷神社。こちらは口を閉じてるので吽。そういや、狛犬はオスメスがあったりするらしい[3]
 奥の三本鳥居は氏子とか、近所の住人とか、近隣企業とかから奉納される奴。高牟神社でもこういうのがあった。そんで、奥の稲荷神社にもやっぱりお賽銭を投げ込むようになってると。

納札

 期限切れの御札を捨てる場所。御札は普通のゴミとして捨てちゃ駄目っていうわけではないけど、宗教的な呪物である以上は捨てるのに躊躇いを覚える人はそれなりにおり、それ故にお焚き上げとかするわけなので、こうやって回収する神社もあるってこと。
 「お札以外のもの入れないで下さい 氏子総代」と書いてある。

拝殿


 階段を登ってしまうとサイズ的にカメラのフレームに収まらないので、こうなってしまうのは已む無し。
 壁がないので向こう側の本殿が見える。
 上には何かの額縁が色々と掲げてある。

 建築当時の写真とか。

 左側から奥に回り込む。
 拝殿の屋根の下に木札を沢山まとめた形で掲げてある。これは昭和5年に拝殿を建築したときに寄付した人の名録で寄付額がいっしょに書いてある。墨書のようで結構消えてる

本殿

 最後は本殿。
 ここだけはお賽銭箱がない。拝殿でお賽銭入れろってこと。

おまけ

 神社に向かう交差点の角に、イスの偉大な種族みたいなキモい植物が生えてた。

参考文献
[1] 貴船神社, Wikipedia
[2] 日本書紀(一), 岩波書店(1994)
[3] 田中ユキ, 神社のススメ(1), 講談社(2004)

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 20160620 明治川神社行ってきたよ

神我狩 NPC集

 最近、神我狩のマスターをする機会が度々ある。
 その際に、登場NPCについてイラストと紹介文を一緒に印刷してプレイヤーに配るようにしてる。オリジナルのNPCの場合はテキトーにネットで拾ってきたイラストを貼り付けるのだけど、公式NPCの場合はルールブックをスキャンしてそのまま貼り付けている。
 それはそうと、セッションのたびにルールブックをスキャンしてNPC一覧を作るのも面倒だし、スキャンした文字は解像度が悪くて潰れてしまっていることがあるし、色が薄くて読みにくいということもよくある。そんなんで、イラストだけはスキャンして、テキスト部分は自分で入力したものをデータベースとして作っておいたら色々楽じゃないかなと思って作ってみた。
 ここに置いておくと、データベースの更新に追従できないので、TRPGのページに置いておく。
 取り敢えず、今回は基本ルールブックだけ入力してみた。
 イラストは600dpiでスキャンして、gifで見栄えが悪くならない程度に圧縮した。結局平均して1枚あたり50KB弱となった。エクセルファイルの容量の殆どが画像データである。

・使い方
 現状、シートは3枚ある。①キャラ一覧、②データ表示シート、③基本ルールブックのデータベースである。
 書籍の名称とその中の掲載順の組み合わせでキャラを識別することにした。①キャラ一覧のシートにまとめておいた。
 使い方といっても、②に誰のデータを呼び出すかというだけである。簡潔にいってしまうと、B2:C5に使うルールブックとキャラの番号を入力するだけ。見ての通り、4名まで同時に表示出来るようになっている。そういや、ブランクを入れておくのを忘れてた。
 一応、4名のデータが1枚に収まるように印刷範囲を設定しているけど、テキトーに弄ったらいいと思う。
 ルールブックにあるものよりもちょっと横長の作りになっているので、列の幅を小さくして整えても良いかも知れない。その際、I1のセルに1行に収める標準の文字数を入力してあるので、この値を手頃な値に調整したら良い。

・エクセルについて
 今回、エクセルの機能をかなりふんだんに使った。その覚書程度にエクセルの入力内容について書いておこうと思う。
 環境によって動いたり動かなかったりするのは嫌なのだけど、Excel2007で作ったのでそれ以降なら使えるはず。xls形式で保存したところ、使えない機能が多くあるような感じで警告が出たので、多分Excel2000とかでは動かないんじゃないかと思う。
 実は、このファイルを作り始めた時点では自分の使ったことのない技術が必要だったため、上手く作れる確証が持てなかった。最悪、コピペで済ませられるような形になっちゃうかもとか思っていた。

・画像のリンク
 エクセルでは普通セルのアドレスを表記して参照するけど、参照先のセルに画像が乗っかっていても画像を呼び出すことはできない。しかし、是非とも画像を呼び出したい場合、セルに名前を付けてそのセルの表示を呼び出すという事ができる。検索すると、色々なページがヒットするけど、どれもこれも何をしているのかよく分からない。Office TANAKA(魚拓)というサイトが最も分かりやすく説明しているけど、やっぱりよくわからない。gifアニメで示してくれるので他のサイトと比較して手順だけは分かるので、不明瞭な儀式程度に思って手順を追ってみたら、なんとかなった。
 なんとかなったけど、印刷しようとすると画像がおかしなことになる。

 設定が悪いのかと色々弄ってみたけど、結局Excel側の不具合だということが判明した。Excel2007でリンク貼り付けをした図が印刷でずれる件InternetArchive, WEB魚拓)に答えが見つかった。このExcel2007という表計算ソフトは矢鱈と処理が重いことも含めて色々とクソなソフトである。

・画像について
 WORDとかPowerPointとか一太郎とかだと、画像を載せたいときはエクスプローラーからドラッグ&ドロップすることが多いと思うのだけど、どういうわけかエクセルではできない。でも、別のソフトを介してドラッグ&ドロップして表示することは出来る。例えば、WORDに貼っ付けてから持ってくるとか。
 それで、今回ブラウザに表示させて持ってくるというのを試してみた。
 このやり方は確かに楽なんだけど、エクセル内に保存されるファイルを確認したところ、勝手にpngファイルに書き換えられた上に、サイズを小さくされていた。通常のエクセルの画像を挿入する方法でやった場合はちゃんとできた。ただし、jpegファイルはjpegのままだけど、画像サイズを小さくされていた。エクセル余計なことしすぎ。

・ルビを振りたい
 名前と二つ名に振り仮名のあるキャラがいる。
 データベースの方に振り仮名があれば、そのまま反映されたりしないかなとか思っていたのだけど、そんなことは全くなく、データベースのルビの有る無しは完全に意味がなかった。
 仕方ないので、上のセルに振り仮名を乗せることにした。自動的に適切な位置にルビを配置させることは物凄く難しい。ルビを振らない文字の文字数からスペースの数を割り出したりして配分した。reptというコマンドは初めて使う。例えば、「=rept(" ",5)」と入力すると全角スペースを5回繰り返して表示するという意味。

・全角のダブルクォーテーションが勝手に半角に変えられる
 エクセルはMicrosoftの製品なので、開発者は多分アメリカ人なのでしょう。彼らが全角・半角の意義を理解しているとは言い難く、ダブルクォーテーションの全角と半角を使う意味は分からないのだと思う。そもそも、標準アルファベットのダブルクォーテーションに閉じる方向が存在しないし。それはそれでプログラムを書く上では便利なんだけど、日本語を扱う上ではこういったカッコ記号の類で開きと閉じの違いは重要である。なにせ、曖昧な構造であり、一つの意味を表現するのが難しい言語なので、正確な表現を求めると表記がより複雑になっていく。
 そんな事はいいとして、とにかく全角のダブルクォーテーションが勝手に半角に変えられてしまう。
 エクセルの仕様なので仕方がない。と言って受け入れるわけにもいかない。
 半角に変えられるのは、数式の中に含まれている場合なので、ただセルに「“”」と入力するだけなら出来る。なので、H1に「“”」と入力しておいて、必要になったら「=left(h1,1)」「=right(h1,1)」と入力して呼び出すことにした。
 あるいはchar(8520), char(8521)と入力しても表示させることが出来る。

・イラストを避けて文字を書く
 一番自信がなかったのがこれ。WORDとか一太郎とかいったワープロソフトであれば普通に使うのだが、Excelにはそんな機能はない。
 いっそ、トーキョーN◎VAのパーソナリティみたいに横長にして左側3分の1くらいをイラストにしてしまおうかとも思った。
 色々と悩んだ末、1行ごとに表示する文字数を決めて、その数だけ順番に表示することにした。改行があると、そこで行は終了となるので、何文字目に改行コードである"char(10)"があるのかを調べながら条件を作らなければならない。
 ついでに、禁則処理と半角文字による隙間を埋めるための文字数追加も実装した。

・印刷しようとするとアスペクトが変わる
 印刷プレビューで印刷結果を確認すると横に伸びたようになる。

 左が通常の表示で、右側が印刷プレビューである。

 ちなみに、これがオリジナル。
 印刷しようとすると、四十七代目がぽっちゃりした感じになる。
 印刷設定とかに問題があるのかと、色々弄り倒してみたけどどうも直らない。
 それで、上のエクセルの画面と印刷プレビューを見比べてみると、横に伸びたというよりも縦に縮んだように見える。そんで、調べてみたところ、エクセルの表示と印刷結果でセルの幅や高さが異なってくるというのはエクセルの仕様であり、マイクロソフトは直すつもりがないということがわかった。

エクセルでの出力縦横比が変わる(魚拓)
Office2016 エクセルで配置した画像比率が変わってしまう(魚拓, InternetArchive)
異なる複数の Windows 環境で Excel ファイルを共有すると、印刷範囲、セルの幅、または高さが変更される場合がある

 仕様なのでどうにか頑張って設定をいじったところで望んだように正しく出力されるということは望むべくもない。エクセルとかにちょっと詳しい人に伺ったところ、Excel2007の問題ではなく、歴代エクセルの仕様であり、エクセルのバージョンごとにアスペクト比の変動具合が異なってくることさえあるとのこと。打つ手はなさそうである。
 ということで頑張るのはすっぱり諦めて、取るべき方向は2種類。エクセルの表示を合わせるか、印刷を合わせるか、となる。
 誰でも同じ表示になるエクセルの表示画面の方を正しい比率に合わせるほうが品質が安定するのだけど、このNPC集を作る動機というのがマスターをする際に印刷する資料を作りたいということで、エクセル画面の見た目は悪くなるが、印刷結果が正しくなるようにした。
 それぞれのサイズを調べてみると、縦横のドット数は印刷プレビューで575:340、エクセル画面で534:359だったので、縦の幅を(575/534)/(340/359) = 1.1368倍にすることで解決とした。
 これはExcel2007の設定なので、Sheet2の4つの画像を使用者ごとの環境にあった倍率で設定し直した方が良いかも知れない。
 これを調査するために印刷プレビューを表示するたびに、画像の表示がおかしくなって、基本シートで"改ページプレビュー"→"標準"→F9とコマンドを入力して表示を直さなければならないのが非常に煩雑で、結局マクロを組んで自動でもとに戻るようにしてしまった。公開するバージョンではマクロは邪魔なので、マクロの入っていない通常のファイルを上げた。

 そんなわけで、数々のハードルを越えたり避けたりして完成に至った。
 今後も折を見てデータベースを増やしていこうと思う。

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エチュード Op25-9 演奏解説

 ショパンの練習曲Op.25-9「蝶々」を録音したので、いつもの解説。
 短い曲だから、そんなに苦労しないだろうと安易な考えで手を付けたんだけどかなり難しい。実際、短いだけあって譜読みはすぐに終わったんだけど、全然うまく弾けるようにならなくて困った。
 作品25の中では6番で3度、8番で6度、9番で8度、10番で8度と掴む音の距離が広がっていく構造となっている。また、9番目のこの曲で気軽な曲は終了、続きは10番, 11番, 12番と重量級の曲が続くことになる。軽快な長調としては最後の曲として楽しみたい。
 「蝶々」というタイトルはもちろんショパンが付けたわけではない。しかし、蝶々から想像する軽快な動きと、蝶々のイメージと合致する対称性がそこかしこに登場する。また、手の動きが蝶々みたいだと言う人もいる。しかし、あくまで「蝶々」とは後付けのタイトルであり、そのイメージに引き摺られるのは良くない。後半25小節からのフォルテや、33小節からのフォルテシモ蝶々のイメージとは乖離する。あくまで蝶々のイメージを大切にして演奏したいというのなら良いが、そこのところは理解しておいたほうが良い。
 楽譜はナショナルエディションを使ったけど、付録の解説書にはこの曲についての演奏に関する解説はないので、別にナショナルエディションを勧める理由はない。原資料に関する解説はあるけど、研究者でもなきゃ用はない部分なので、あっても全然有り難みを感じない。寧ろ練習法などがふんだんに盛り込まれているコルトー版が良いかも知れない。

全体的に
 練習し始めの頃は当然ながら十分ゆっくり弾いて、手が馴れるに従って少しずつテンポを上げていくのだけど、それなりに弾けるようになっても最初にゆっくり弾いて手の練習とするのにはよい。曲自体短いし、かなり細かい動きもあるのでその日の練習が捗る気がする。
 オクターブを軽やかに弾く練習なので、手首を柔らかくして手首の上下で鍵盤を押さえる。腕を上下させると動きが大きいために余計な疲労を呼ぶことになるし、動きが大味のなるので音に繊細さが欠けることとなる。この動きが身についていないうちは、ぎこちない動きになるかもい知れないけど、練習していればやがて脱力して弾けるようになるので、練習初期から手首の動きを意識するようにすると良い。手首を柔らかくするのだが、同時に指も柔らかくする。ただし、打鍵の瞬間だけは指はしっかりと固める。でないと、打鍵に費やすべきエネルギーの殆どが指の弾性変形に費やされてしまい、打鍵に必要な力をキーに掛けることができなくなってしまう。
 拍前半で16部音符2つに分散させてオクターブを弾く形になっている。基本的に下→上の順番でオクターブを押さえるのだけど、後に押さえる上の音が疎かになりがち。上の音を弾き損ねてもオクターブ下の音が出ていれば音楽として不自然な感じにはならないのであまり気にせずにスルーしてしまうことも出来る。人前で弾く場合はそうやって弾き飛ばしてしまうのも仕方ないが、練習の際はちゃんと音を出せるように立ち止まって反復練習しなければならない。
 拍後半ではオクターブの移動が多い。黒鍵→白鍵の順でオクターブ弾く場合、上の音の指使いは4→5となることが多いが、5指で白鍵を押したときに直前に押した黒鍵を4指で押してしまうことがある。本来、4→5とレガートに繋がっていれば5指を押すまで4指は黒鍵を抑えたままなのでこのタイミングで鳴らすことはないはずである。だから、こうして4指の黒鍵を押してしまうというのはしっかりとレガートになっていないことを意味する。また、5指で白鍵を押すと同時に4指を上げなければならないけど、4指は動きが悪くてそう易易とは上がってくれない。この場合、椅子を低くするとか背中を曲げるとかして手・肘を低い位置に持ってきて手先を少し上向かせるという風にして4指を上げやすくすることが出来る。ショパンの弟子のザレスカ=ローゼンガルトも「手首を低く保つこと」と言っている[6]。曲によって椅子の高さを変えるのは良くないので、手の高さは姿勢で制御することになる。
 オクターブの多い曲なので、弾きやすいように黒鍵の多い変ト長調となっている。黒鍵のエチュードOp10-5もそうなんだけど、黒鍵は指先で打鍵するのではなく、キーと指が交差するようにするとミスタッチが少なくなる。狭い黒鍵の上を指先という点ではなく、指全体を線として指とキーを交わらせる。ただし、白鍵はちゃんと指先で押さえないといけない。
 4小節で一つの主題となっており、これを変装して繰り返す形になっているため、起伏の乏しい演奏だと単調に聞こえてしまう。特に前半はleggiero(軽く優美に)で始まり終始弱音となっているので顕著である。pであってもその中で強弱が指示されているので、これをちゃんと守るだけで単調な演奏は避けられるようになっている。

テンポについて
 テンポはAllegro assai[1][2][3], Assai allegro[4], Allegro vivace[5]などがあるがどれも4分音符で112bpmとなっている。コルトー版には標準の演奏時間が1:07と書いてあるが、手元にある録音の演奏時間を並べてみると次のように大体1:00前後に固まっている。

Wilhelm Backhaus 0:52
Boris Berezovsky 0:58
Maurizio Polini 0:58
Rebecca Penneys 0:58
Vladimir Ashkenazy 0:58
Georges Cziffra 0:59
Alfred Cortot 1:00
Andrei Gavrilov 1:00
Murray Perahia 1:00
Takami 1:00
河合優子 1:00
Adam Harasiewicz 1:03
Istvan Szekely 1:03
Martijn van dne Hoeck 1:05
momo 1:05
Samson Francois 1:09
藤原由紀乃 1:20

 藤原由紀乃は1分20秒とかなりゆっくりの演奏だが、この中でも群を抜いて美しい演奏である。コンクールで競うのでもなければこういうゆっくりな演奏も良いと思うけど、仮令このテンポにしてもこれほど美しく演奏するのは常人には不可能じゃないかなと思う。ここまで極端にゆっくりにしなくても、1分10秒くらいのスローテンポでも十分よく聞こえる。というよりも、寧ろこの曲は早く弾くほど魅力がなくなっていく気がする。

座る位置について
 体の中心が真ん中のドの辺りか、あるいはもう少し左に来るくらいが丁度よいと思う。
 手をまっすぐ前に向けると指先の位置が1指よりも5指のほうが前に来る。他の指はもっと前に出てくる。

 キーは出来るだけ手前側を押すのが好ましいので、手を丸くして各指が同じように手前に来るように配置する。しかし、オクターブを弾くために手を広げると指を丸めて位置を調整する余裕はなくなる。手を小指の方に曲げること(尺側偏位)によって1指と5指は大体同じ位置でキーを押さえることが出来る。

 しかし、慢性的な尺側偏位はストレス損傷を引き起こす原因となる[7]ので、あまり好ましくない。
 すこし左側に座ると、自然右側に手を伸ばすことになり尺側偏位に頼らずに1指と5指の位置を合わせることが出来るようになる。もちろん、あんまり左に寄りすぎると弾くにくくなるので、丁度よい位置というのがある。それが体の中心が真ん中のドの辺りか、あるいはもう少し左に来るくらいである。

18小節

 この曲は基本的に同じような動きの繰り返しなので殆どの部分で共通の注意事項がある。それを18小節を代表して説明する。
 14小節
で主題を提示して、続く58小節
で主題の繰り返しという形を取っている。繰り返しとはいっても、各拍の1音目と2音目を入れ替えてちょっと違う風にしている。124小節目までの前半は同様の作りになっており、そのため8小節ごとのまとまりで見ると対象性の高い構造が多くよく見られる。
 右手は各拍1~3音目までスラーがかかっている。1指の動きを見ると例えば1小節前半はB→Cesと黒鍵から隣り合った白鍵への移動なので指を滑らせてレガートに繋げることは出来るが、1小節後半はDes→Esと黒鍵→黒鍵となっており、どうしてもレガートに繋げることは不可能である。こういう場合は1音目のDesは出来るだけ引っ張って3音目の直前で指を離して、Esに移る。その一方で、2音目のAs, Desをレガートに繋ぐ。1音目を切ってしまっても2音目が鳴っているので、音を切ってしまったことにあまり気づかれない。しかも、鳴っている音は切った音の倍音である。これでレガートでないと思うほうがおかしい。

 続くスタッカートだが、拍前半ほどは主張しない軽さで打鍵する。18小節では拍頭の音にアクセントが付いているが、9小節以降ではアクセントを付けるほどではないにしろ、拍頭の音は他の音よりも主張があるべき。拍頭の音が16部音符2つ分の音価を持っていることから、この音の重要性が示唆されている。
 左手は殆どの音にスタッカートが付いている。メゾスカッタートではないし、スタッカーティシモでもない、適切な長さのスタッカートで揃える。
 左手裏拍が和音となっているが、この和音は一番高い音をちょっと強調する。一番上の音が別の旋律のようなものを描いているためである[8]
 右手の内声は大抵左手の和音に含まれていることを知っていると、譜読みがちょっとだけ捗る。

13小節
 ☆譜読みのために:左手のベース音が1音ずつ下がっていく。各小節では和音が基本形→第1回転形となる。

12小節

 ●右手2音目。CBは25で取るにはかなり距離があり、ギリギリまで指を開いてDesを避けるようにして取らないと余計なキーに触れてしまう。難しそうなら諦めて15で取るべき。
 ※右手2拍目。2回出てくるDesは2指で取る。これを3指で取ってしまうと、最後のDes-Fの和音を3-5で取ったときに間の4指がこの動きに引きずられて下がってしまいEsのキーを押してしまう。
 *左手2音目。4和音で音が多い上に5指で黒鍵を押すので非常に弾きにくい。Cを押さえる1指以外を真っ直ぐに伸ばして平ぺったい板状にする。この形にした2~4指で該当する辺りのキーをテキトーに叩くとEs, Ges, Asに上手く当てることが出来る。

14小節

 ✡右手1音目。このGは黒鍵と黒鍵の間を押さえねばならず、普通に上から押さえるのは至難の業である。1つ前、13小節最後のCのオクターブのときに、2指をGの位置にスタンバイしておき、14小節はじめでDesに4指を伸ばす動きに合わせて2指を鍵盤奥に押し込み、24指で同時にキーを押し下げる。
 ◎左手最後。ここを135ではなく124で取るのは、135だと黒鍵に対して指が真っ直ぐになって外しやすく、124だと指と黒鍵が斜めに交わるので打鍵が正確になるため。

21小節

 ▲右手がかなり高い音であり、普通に手を伸ばしてオクターブをつかもうとすると手が鍵盤に対して斜めになってしまい、手を開く広さや跳躍感覚が曖昧になってしまう。座る位置を右に移動しても良いのだけど、ここの4小節だけなので上体を右に移動させて弾く。左手が降りてくるに従い、元の姿勢に戻るようにしたら良い。

2324小節

 左手、裏拍の3和音。下から順に半音ずつ下がり、最後は下がった先のFが変ト長調の導音となって、続く25小節で主題が再現するようになっている。このギミックを入れるために23小節は右手内声のEsを左手の和音に含めることができなくなっている。
 この次の25小節からフォルテになる。いきなりフォルテにしちゃ駄目ということはないが、24後半でEsesにアクセントが付いており、フォルテの準備となるようにはなっている。2324小節は続く25小節へ期待を持たせるような進行になっているので、これに合わせてちょっとずつ音量を上げても良いと思う。あるいは、この4小節でペダルを強く踏んでいって音量を上げるという手もある[8]

36小節

 ritenutoの後にa tempoの指示がない。元のテンポに戻さないと明らかに不自然であり、こういう場合はa tempoがなくても元の速度に戻す[9]。なお、コルトー版ではちゃんと"a Tempo"と書いてある。

3738小節

 ☆37小節前半までffで、Desを押した直後にペダルをオフにするのでDes以外の音は消える。Desは指で保持するため、ペダルをオフにしても残る。このDesはffのときに押した音なので38小節の前半まで残ることになる。37小節後半からはpなので、このDesはかなり目立つ。
 コルトーはこのDesを41小節まで保持しても良いとしている。

3844小節
 譜読みのために:この間、左手は全て同じ音になっている。

4551小節

 ◎右手。各拍同じ音型が続く。和音部分は上声部を主張したいが、3音目のCesだけは白鍵であり他のキーよりも1.2cmほど低い位置にあって押しにくい。そのことを意識してしっかりとキーを押し下げる。前2音と後2音では手のポジションが異なる。ポジション移動を怠らないこと。手首が円を描くようにポジション移動をする。

51小節
 最後はスタッカートが付いている。スタッカートであって、スタッカーティシモではないので、短く切りすぎないこと。

参考文献
[1]Jan Ekier, CHOPIN 2 ETIUDY, Wydano w Akademickim Centrum Graficzno-Marketingowym LODART S.A.(2000)
[2]小坂裕子, フレデリック・ショパン全仕事, 株式会社アルテスパブリッシング(2010)
[3]下田幸二, 聴くために弾くためにショパン全曲解説, ショパン(1999)
[4]ショパン・ピアノ作品便覧, ドレミ楽譜出版社(1993)
[5]アルフレッド・コルトー, ショパン 12のエチュード Op.25, 全音(1997)
[6]ジャン=ジャック・エーゲルディンゲル, 弟子から見たショパン―そのピアノ教育法と演奏美学, 音楽之友社(2005)
[7]トーマス・マーク, ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと, 春秋社(2006)
[8]横山幸雄教授のレッスン映像公開第21回 エチュード 作品25-9 変ト長調
[9]小林仁, ピアノが上手になる人、ならない人, 春秋社(2012)

関連エントリー
 20180309 ショパン エチュードOp.25-2 演奏解説

魔界塔士Sa・Ga レクイエム

 魔界塔士Sa・Gaより、レクイエムを録音した。
 全滅したときとか、19階とかで流れる曲。
 1年くらい前に家でmp3のランダム再生で流れたんだと思うんだけど、別れの曲っぽくしたらどうかなと手を加えてみた。
 Sa・Gaの曲は誰かが作ったMIDIデータで持っていたので、それをちょっと弄ったら出来た。
 それが、先日譜面台の下の方から出てきて、邪魔だし片付けてやろうと思って録音した。
 左手にテノール域を一声追加しただけで、別に難しい部分もないので解説はしない。
 ついでに楽譜も上げておいた。