コロイド分散液の濃度と密度 追記

 1年くらい前にコロイド分散液の濃度と密度の関係について説明した。
コロイド分散液の濃度と密度
 分散液の密度をd、溶媒(分散媒)の密度をDL(g/cm3)、粒子の密度をDs(g/cm3)、粒子の濃度をC(wt%)とすると、
 { \displaystyle d = \frac{100 \cdot D_L \cdot D_s}{C ( D_L - D_s ) + 100 D_s} }
となる。というものである。
 今回は、温度によって溶媒の密度が変わるという点を式に組み込んでみることにした。ただ、前回ほど簡便なものではなくはっきり言って蛇足に近いし、DLに求めたい温度のときの密度を入れるだけで済む問題である。それでも、一応こういうのはちゃんと出しておかないといけないと思うので説明する。期待の状態方程式なんかを正確に表現しようとすると複雑化していくようなものだと思ってもらうといいかもしれない。

以下の条件を追加する。
・溶媒は仮に水とする
 説明本文を読んでもらえば水以外でも出来ることは理解いただけると思う。
・粒子の密度は温度で変化しない
 これも別に変化してもいいんだけど、その場合はDsの代わりに複雑な式が入ってくるだけなので。

 実際にやることはDLに温度と密度の関係式を嵌め込むだけなので、見た目が複雑になるだけで、難しいことはしない。
 ここでやらなければならないのは温度と密度の関係式を作ることである。そんな都合の良い式があるわけではないので、便覧とかからデータを引っ張ってこないといけない。
 とはいっても、ネットで探せばすぐに出てくる。流体工業株式会社の技術資料 液体編6.  水の密度 、粘度 、音速(魚拓)というのが見つかったので、これを使う。なお、この表だと4℃以下がないので、こちらの水の密度表(魚拓)を使った。
 これをグラフにプロットして、近似曲線を求める。これが温度と密度の式となる。

 ここから近似式を求める。最小二乗法の説明とかしても仕方ないので、エクセルが出力する近似曲線をそのまま使う。近似は4次方程式で行った。

 この近似式は書いてある通り。
y = -1.41270E-10x4 + 4.36996E-08x3 - 7.63960E-06x2 + 5.29364E-05x + 9.99898E-01
 こいつのせいで面倒くさいことになっている。
 そのまま式に組み込むのは邪魔すぎるので桁数を下げたい。そこで、桁数を下げたグラフを描いてどこまで精度を下げても使えるかを調べる。

 1本の線に見えるけど、小数点以下を1~5桁まで四捨五入して求めたグラフである。よく見ると完全には重なっていない。
 なんと、小数点以下一桁まで下げても問題なさそうである。
 そんな訳で、水の温度と密度の関係式は以下のものとして扱う。
y = -1.4E-10x4 + 4.4E-08x3 - 7.6E-06x2 + 5.3E-05x + 10.0E-01
 以上より、温度をT(℃)とすると、濃度、密度、温度の関係以下のように示すことができる。
{ \displaystyle d = \frac{100 \cdot D_L \cdot D_s}{C ( D_L - D_s ) + 100 D_s} }
ただし、{ D_L = -1.4 \times 10^{-10} x^4 +4.4 \times 10^{-9} x^3 - 7.6 \times 10^{-6} x^2 + 5.3 \times 10^{-5} x +1 }

 前回みたいに、チタニア粒子について3パラメーターを変動させたのを計算して立体グラフにしてやろうかと思ったのだけど、温度と密度の関係の変動が最大で5%弱の減少しかしない地味なものであり、視覚的に劇的な効果とか全く期待できないのでやらないでおく。

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 20170429 コロイド分散液の濃度と密度

チェルニー30番22 演奏解説

 チェルニー30番22はトリルの練習。昔からトリルは苦手なのだけど、最近は結構弾けるようになってきた。そう思ってたのだけど、これを弾いてみるとやっぱり苦手だわ、ってなる。
 いつも通り、楽譜は全音版を使う。音楽性とかいった曖昧で難しい部分は割と閑却して、メカニカルな部分を中心に低レベルな解説をする。

テンポについて
 4分音符で144bpmとなっている。いつものチェルニーらしく、結構速いけど、でもトリルといったらこれくらいの速度で弾かなきゃならんのだろうなと思う程度の速さ。例によってチェルニー30番学習者にとっては速すぎるので、普通に練習するなら多分テンポを落として弾くべきだと思う。
 僕の場合は調子に乗って指定速度より速く弾いて、そのせいで崩壊しているのに気付かずに、どうして弾けるようにならないのだろうと悩んだ。結局、メトロノームに合わせて弾いたところ、自分のテンポが速すぎるということに気付いてちゃんと弾けるようになったというわけ。

トリルについて
 パッセージはある程度速く弾くと少しくらい雑でも気付かれないとショパンは言っていた[1]けど、速いトリルも同様にごまかしが効く。直前に同じ音を出しているため、打鍵がその音に紛れてしまい正確なタイミングを認識しづらくなるんじゃないかと思う。しかし、極端にズレたタイミングだとやっぱり気付かれてしまうので、正確であるに越したことはない。
 指定の指使いは4指を酷使する場面が多く、すぐに指が疲れてしまう。4指が疲れてしまったら、指定の指使いから外れるが3指で代わりに弾くようにすると良い。
 また、指を交互に上げ下げするのに疲れてしまった場合は、コンパス弾き[2]で逃れることも出来る。コンパス弾きというのは根津栄子による名称だが、手首の回転により1指と5指で交互に打鍵する弾き方。別に1指と5指である必要はないのだけど、打鍵する指同士が離れていた方が回転角が小さくて有効であるというだけ。尺骨と橈骨の動きを理解しておくとなお良い[3]。なお、コンパスはこうやって動かして使うものではない。
 グランドピアノなら、キーが完全に上る前に再度打鍵できる機構(ダブルエスケープメントアクション)があるので、かなり力を節約して演奏することが出来る。逆に言ってしまうと、この曲はダブルエスケープメントを前提としている[5]ので、アップライトでちゃんと弾けるなんて思わないほうがよい。

1小節

 手元を見ずに弾くために:■4拍目右手。Dis-E-Fisを2-1-2で取る。2指が1指を跨いで左から右に移動するのだが、2指で押すキーは1指を挟んで対称な位置にないことに注意すること。FisとEはちょっと離れてる。

6~7小節

 手元を見ずに弾くために:左手6小節3拍目から7小節。FisH→Fisという流れだけど、2指でFisを取ってから1オクターブ下のFisを5指で取るところは2-5指で1オクターブの距離を測れるなら手元を見る必要がない。その際、1指でHを押さえたままだと2-5で8度は届かないので、Hは先に離鍵することになる。とはいっても、この曲集自体1オクターブの届かない小学生くらいの子供向けとして書かれており、そういう人には難しいかもしれない。

8小節

 ☆8小節右手。1拍目は指先を少し右の方に向け、4指とAisのキーが斜めに交差して接触するようなポジションを取る。2拍目に入ったところで指先が正面を向くポジションになるように手首と肘を回す。3指と4指は腱を共有しているために一緒に動いてしまうので、1拍目は3指と4指がすぐ側で一緒になって上下する。その位置に3指があると、2拍目のFisまで少し距離があるため移動に手間取る。この3指の移動を手助けするために手首と肘を回す。

9~14小節

 ✡両手のトリル。左右の打鍵タイミングが合わず逆位相になったりするとかなりみっともない。拍を意識して各拍頭で左右のタイミングが一致するように調整する。4音程度なら逆位相になるほどずれるということもないし。

9, 11小節
 ◎小節頭のfpによるアクセント。最初の音だけを少し長めの音価で取ることによってアクセントとするやり方もある[4]

12小節

 12小節前半右手。この部分はコンパス弾きをする。
 手元を見ずに弾くために:※左手3拍目。スタッカートで短く音を切った勢いで手を動かすことのないように。この次の音はHの隣のAなので離鍵後動かずにその場にとどまっていれば手元を見る必要がない。

16~21小節

 右手2声になっている部分。このあたりはずっとフォルテだが、4指の絡むトリルをずっとフォルテで弾き続けるのは辛い。1,2指で弾く下の声部だけを強く弾いてトリルは弱音で弾くとか、あるいは拍頭の音だけアクセントを付けてもよい。
 この部分は曲の流れが不自然になることがある。トリルの速度が不安定で、左手をトリルのリズムに合わせようとするとおかしな感じになる。トリルの速度を安定させるのが最もよいけど、主旋律である左手にスラーが付いていることを意識して、次の音と完全に繋げてしまい隙間をなくすことで不自然な印象を弱めることが出来る。
 手元を見ずに弾くために:16小節左手。1拍目と3拍目は同じH-Disの和音なので、離鍵した後手を移動しない。指だけ変更する。

22小節

 右手。始めのFis-Hを離鍵して続くトリルに入ったら、直ちにポジションを高音側に移動する。Fis-Hのポジションだと指を高音側に目一杯伸ばさなければならず、キーを押すための力が余計に必要となってしまう。遠くのキーに対してはより多くのトルクを掛けないと動かない。

30小節

 ※30小節右手1拍目最後のCis。この3指は離鍵した後キーの上に残しておくと、続く指くぐりの際に1指の移動の邪魔になる。脱力してキーが自然に持ち上がるのに任せるのではなく、積極的に指を上げて離鍵すること。手元を見て弾くと、3指は無意識に1指の邪魔にならないように避けるので、どうしても上手く弾けない場合は手元を見るとよい。

31小節

 ◎右手1拍目。4指が疲れ切って動きそうになかったらDisを3指で取ると良い。

参考文献
[1]ジャン=ジャック・エーゲルディンゲル, 弟子から見たショパン―そのピアノ教育法と演奏美学, 音楽之友社(2005)
[2]根津栄子, チェルニー30番 30の小さな物語・下巻, 東音企画(2013)
[3]トーマス・マーク, ピアニストなら誰でも知っておきたい「からだ」のこと, 春秋社(2006)
[4]小林仁, ピアノが上手になる人、ならない人, 春秋社(2012)
[5]岳本恭治, ピアノ脱力奏法ガイドブック 2, サーベル社(2015)

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シンフォニア15番 演奏解説

 シンフォニア15番の録音を行ったので、例によって演奏解説をする。例によって技術偏重な解説なので、小難しいことはバッハ インベンションとシンフォニーア 解釈と演奏法あたりを参考にしてもらうとよいと思う。
 チェルニーがあんまりにも詰まらなくて進捗がないので、潤いを求めてバッハに手を伸ばした。チェルニーみたいに極を褒めるために回りくどい説明などする必要はなく、良い曲だから良いのだと断じてしまえる。矢張りバッハさんは天才だなあと思う次第である。
 これまで我慢して地道にチェルニーを練習してきた成果が出ており、これまでよりも速く譜読みが進んだと思う。チェルニーのおかげというよりも、手元を見ずに練習する訓練の成果という面が強いのだけど、一応チェルニーでその様に練習したので、チェルニーの成果であると言っておく。
 この曲はある程度弾けるようになると、それ以上完成度は上がらなくなってくる。その日の練習によってクリアできるようになった部分も次の日には再び弾けなくなってしまう。それでも一応ちょっとずつ上達するのだが、毎日練習成果が殆ど消えてなくなってしまうというのはやりきれないものがある。なんとか練習成果を留めておこうと、こうすると良くなるというような類のことを楽譜にメモしておくのだけど、その日の訓練によって指が動くようになったとかだとどうしようもない。
 そんなわけで、テキトーなところで見切りをつけて録音してしまうことにした。
 楽譜は全音版を使った。

・テンポについて
 市田儀一郎によるとAllegretto付点8分音符で85bpm[1]というのと、Moderato[2]の2種類がある。後者が1971年で前者が1987年なので、この16年のうちに気が変わったのだろうか。Moderatoの方は「Moderatoが適当と思われる」とちょっと弱い表現をしているのに対して、Allegrettoの方は「テンポはAllegretto ±85」と断言している。この16年の間に何かしらの確信を得たのだろう。
 どちらが良いかというのは演奏者の好きにすればよいことなので、あんまり追求しても仕方がない。ただ、Allegrettoは相当速い。 グールドの演奏が大体これくらいかもうちょい速いくらい。感想に"that is an insane tempo"とまで書かれるくらいに速い。
 つべを見ていて感じるのはAllegrettoに近い速度で弾く人が多いということ。みんな速いのが好きだなあ。ちなみに僕も速い方のテンポで弾いてる。
 遅いテンポだとSally Christianがある。こちらは解説付きだけど、英語で喋ってるので何を言ってるのか分からない。

・強拍上のトリル
 2、5、18小節に括弧付きでトリルが付けられている。括弧付きなので弾いても弾かなくてもよいと解釈している。
 その前の音が必ず2度上の音だけど、強拍上で倚音的正確の箇所なので、上隣音から始める[3]とのこと。
 速いテンポで引く場合はトリルにしてる余裕がないので、みんなスルーしてる。一応、どれも4分音符分の音価があるのでやろうと思えばトリルにもできるとは思うけど、みんな揃ってトリルにしていない。実際に、トリルで弾いてみるとこれも悪くないと思う。32分音符の速さで無理なく弾けるので、採用するかどうかは別としてトリルにするとどう変わるかを確認する意味でも一度はやってみるとよいと思う。
 ちなみに、Gergely Szokolayはトリルにしている。

主題とか

 上の譜例に示したように主題aと対旋律b、分散和音の結句cがある。また、bを少し改変したb'がある。このbの改変はインベンション1番を想起させる。インベンション1番を説明する機会があればこのことも書いておきたいと思う。
 cの結句について。市田儀一郎によると、主題とその後続主題とのあいだにあって、先行主題の終わりと後続主題の冒頭を結ぶ極めて短い楽句がある。これはただ単に間句というよりは、後続主題の登場に際し、和声的な昨日とよりよい連結を目指し、そのうえ、間奏の材料として新たな展開要素を備えている、という特別な働きを持つものである。[2]とのことである。このエントリーでも結句と呼ぶことにする。
 この主題は16分音符3つの塊が3つで構成されている。3つごとの16分音符は始めの1音と続く同じ2音となっており、レガートにするかノンレガートにするか、はたまたスタッカートにするかと色々弾き方はある。3音の反復によってフレーズが作られているだけど、この3音の弾き方は特別な事情がない限りは曲全体を通して統一するべきである。

1小節

 左手最初のHから次のHまで8度の距離がある。この曲は付点8分音符の後に8度の跳躍がよく現れるので、このことを認識しておくと譜読みが楽になる。

2小節

 ◎右手の最初のCis。ここに限ったことではないんだけど、手の中心から離れた位置にある黒鍵を5指で取るときは指を真っ直ぐ伸ばす。指を曲げているとキーを押したときに指の黒鍵からはみ出た部分で隣の白鍵を押してしまう。

3小節

 ※右手。1~3拍目のDHDのポジションから手を移動させずに続く1オクターブ上のHを押そうとすると、白鍵の上で5指を伸ばしてHを取る形になる。手が十分に大きくないとHを斜め上から押す形になって隣のAのキーを一緒に押してしまう。これを避けるためには面倒でもちゃんと右の方にポジション移動してキーを真上、あるいは手前から押すようにする。

5小節

 手元を見ずに弾くために:✡左手。このCisの位置を離鍵後も覚えておく。次の6小節最初のDはこの半音上なので。

7~11小節

 h moll→E dur→A dur→D dur→G durと毎小節転調して5度ずつ下がっていく。左手の対旋律は8度の跳躍を繰り返して低い方向に移動していく。

8~9小節
 8小節から9小節に移るところの右手。EHHを534と指定の指使いで取ると凄く弾きづらくてミスタッチしまくったので、533とし、9小節最初の和音を52で取ることにした。指定の指使いだと、8小節から9小節に移行するときのH→Aを4→3で取る際、鍵盤の奥の方で押さなければならないので、Aisの黒鍵を跨いで4→3と取ることになる。しかも3指は黒鍵と黒鍵の隙間を押さなければならない。これは相当命中精度が下がるわけである。

11~13小節

 3拍ごとに和音が変わっていく。I→VI→II7→VII→V→I7→VI→II7→VIIという順。(I→VI→II→VII)という進行をVを挟んで繰り返す形になっている。
 (I→VI)-(II→VII→V)-(I→VI)-(II→VII)と表記してみる。括弧で囲んだ中は6度の上昇、カッコの間の-は5度の下降を表す。このように6度の上昇と5度の下降によるコード進行となっている。

16小節

 *最後の2拍。普段練習するときに、できるだけ楽譜を見て手元を見ずに弾けるようにする訓練の一環として、手元を見るポイントを楽譜に"*"を書いて示している。この部分は遠くに跳躍したり指使いが複雑だったりするわけではないのだけど、手元を見るようにしている。右手と左手がかなり近づくため、左右の手の接触を恐れて思い切った動きができないことに気付いたためである。また、接触すると異常なものを触ったと認識して一瞬戸惑って演奏が止まってしまう。
 手を見ていれば接触も予想できるし、仮にポジションが動いてしまっても次に押すキーがどこにあるのか分かるのである。しかし、実際に手元を見て弾いてみると全然接触しない。手の正確な位置が分かるので無意識のうちに巧妙に接触を避けているようである。

19小節

 *右手。H→Fisの跳躍。指くぐりしたポジションではFisの次のHを5指で押すのは難がある。Hを押している1指を跨いで2指でFisを取るために手を左側に向けることになるのだが、そうすると5指は次のHを押しづらい位置取りになるためである。
 Fisを押し始めると同時に手を正面に向ける自然なポジションに戻し、Hを押すときには5指を下ろすだけでHを押せるようにする。あるいは、この指跨ぎを完全にやめてしまって、Hを短く切って手全体を移動させるポジション奏法[4]で弾く。

20~26小節

 7小節~11小節と同様、ここでも毎小節5度ずつ下がっていく。一方左手の跳躍は1度、3度、8度と雑多である。

28小節

 旋律が交差するポイント。この曲では難所なんだと思う。上の譜例にある通り左右の手を適当に振り分けて弾くように書いてある。つべの動画を見ると、音を左右の手に振り分けたりせずに手を交差する人を多く見るので、おそらく原典版なんかだとこういった小細工は書かれていないんだと思う。
 この楽譜では左右の手を振り分けた上、音の重なる部分の片方をカッコで示すことで弾かなくてよい様に表記している。僕の場合は左右の手を振り分けはしたけど、カッコに示した音を抜くと音の流れがかなりいびつになってしまったので、同じキーを左右の指で同時に押すようにした。
 音を左右の手に振り分けると弾きやすくなるけど、デメリットとして旋律が見えづらくなることである。この点をどうにかクリアしなければならない。やることは旋律ごとの特徴を維持しながら受け持つ手を変えるということ。ここでは2つの旋律が同時に流れるのでそれぞれ別の特徴をもたせて弾く。例えば、音の強弱、レガート・ノンレガート、打鍵のタイミングを僅かにずらなどで表現して別の旋律であることをアピールしなければならない。これらの声部ごとの特徴の違いはこの28小節だけ表現すれば良いのではなく、11~13小節、26~27小節での応答でも一貫した表現としなければ整合性がとれない。

31~32小節

 32小節右手最初のFisを左手で取ることで、(Ais-Fis)から(Fis-Ais)の移行をレガートに見せることができる。始めのFisを少し長めに取ることでAisを離鍵したことによる音の消失を目立たないようにすることでレガートに見せかける。そのために、31小節で左手のEは5指に置き換えなければならない。また、このEを押している5指は33小節最初のDを取るために4指に再度置き換える。
 32小節のフェルマータはぴったり2倍の音価で弾くことにしている。多分それで正しいんだと思う。フェルマータは2倍の長さだって音楽の授業で習った。

36~38小節

 手元を見ずに弾くために:☆36小節左手。最初のFisを押さえているときに1指で次のEの位置を探り当てておく。その辺りをテキトーに弄ると黒鍵と黒鍵の隙間のEとFのある辺りに触れるので、簡単にEの位置を特定できる。
 *36小節右手。できれば手元を見ずに弾きたいところだけど、重音で指の位置が入れ替わるので、慣れないと指とキーの位置関係を即時に認識できずにタイミングがずれてしまったりする。頑張ってこの重音の動きに体を馴致させるのもいいけど、そんなにコストをかけていられないというのなら手元を見てしまえば問題は回避できる。

37小節
 右手のトリル。いろんな弾き方がある。
 市田儀一郎は次の弾き方を紹介している[2]

 一方、村上隆は奏法例として、上とは違うものを挙げている。

 これについては、以下のように説明している。

 また、ウィーン原典版などに示されるスラーをタイに見立てた解釈には、あまり意味を感じません。その理由は、次のとおりです。
(1)装飾音表にもある前打音付きトリルの前打音の部分を実音化したスタイルをとる。そこでは、前打音とトリルの頭がタイで結ばれていない。
(2)ラモー『クラヴサン曲集』1724年(1731年再版)に示されたスラー付きトリルにも、同様の譜例が示されている。
(3)もちろん、ダングルベールやパーセルなど、同様のものをタイで結んだ譜例も残されているが、必ずタイで結ぶような習慣があったわけでは決してない。
(4)タイで結んでしまうと、ドミナント3拍目ソプラノが更に弱い扱いになってしまい、機能が弱められる。

 これらを総合し、スラーの後拍頭から主要音より始める支持であると解釈しています。

だそうである。難しくてよく分からん。
 ちなみに僕は次のような感じで弾く。

 38小節のフェルマータをトリルのところまで勝手に広げてゆっくりにした。ロマン派以降の割と普通な感じのトリルの扱いなんじゃないかと思う。何か拘りがあったりするわけではないのだけど、正しい弾き方を全く調べずにテキトーにこんなんでどうだろうとと思ってこうしたにすぎない。

38小節
 ここで終わりなんだけど。終止線の下にFinisと書いてある。ここまでインベンションも含めて29曲にはこんな表記はない。それどころかインベンションの15番には「この後15の三声シンフォニアが続く」とまで書いてある。つまり、バッハはインベンション15曲に続いてシンフォニア15曲を配置したのである。グールドみたいに再配列[5]することの良し悪しはよくわからない。

参考文献
[1]市田儀一郎, インヴェンションとシンフォニア, 全音楽譜出版社(1987)
[2]市田儀一郎, バッハ インベンションとシンフォニーア 解釈と演奏法, 音楽之友社(1971)
[3]]村上隆, ピアノ教師バッハ―教育目的からみた『インヴェンションととシンフォニア』の演奏法, 音楽之友社(2004)
[4]岳本恭治, ピアノ脱力奏法ガイドブック 2, サーベル社(2015)
[5]Glenn Gould, インベンションとシンフォニア, SONY(1964)

ピアノの練習時間

 ショパンはピアノの練習を1日に3時間以上してはいけない、何時間も練習したって集中できなくなるので、長時間練習してないで本を読んだりアニメを見たりして精神修養に心がけよ、というようなことを言っている[1]

 ショパンが何よりも恐れていたのは、弟子の練習がマンネリになって感覚が鈍くなりはしないか、ということでした。私が、1日に6時間練習しているといいますと、ショパンはひどく怒って、3時間以上はしてはいけない、とわたしに言い渡したのです。
  デュポワ/ニークス
 長時間かけて練習しないで練習の合間には読書をしたり、傑作をじっくり調べたり、気分転換に散歩でもしなさい、と彼は口癖のように弟子に言うのでした。
  グレッチ/グレヴィンク
 ただ機械的に練習を繰り返せばよいというものではい、練習には全身全霊をあげて集中しなければならない。と彼は口癖のように言っていた。だから気が乗らないのに同じことを20回も40回も繰り返せ、などとは言わなかったし、それよりももっと嫌がったのは、カルクブレンナーが進めるような、ピアノを弾きながら読書もできるような練習の仕方だった。
  ミクリ
 ショパンは精神の集中を第一に考えて独自の技法を編み出したのであり、単なるメカニズムの練習を何時間も繰り返したわけではない。ニコラ・ショパンは、息子が3年間カルクブレンナーについてみるかどうか、まだ迷っているとき、「知っての通り、お前は演奏のメカニズムにはほとんど時間を書けず、指のことよりも精神の集中に余念がなかったのだよ」と、書いてきている。
 この点については(他の点についても同じだが)ショパンは当時のピアノ流派のほとんどに、そしてリストにも背を向けていると言える。リストはこの頃には「技法は精神の働きから生まれる」ことに気が付かず、単なるメカニズムの練習を尊んでいた。「・・・私は、4,5時間も練習している(3度、6度、オクターヴトレモロ、反復音、カデンツァなど).ああ! もう気が狂いそうだ――私がどれほどの芸術家か、君にそのうち分かるよ」と、リストはパガニーニを聞いた後に、ピエール・ウォルフに宛てて書いている。同じ頃、彼は弟子にも同じような要求をしている:「アルペッジョとオクターヴをあらゆる調子で弾くこと、使わない指は鍵盤を押さえたまま、順番にすべての指で音を弾いていくこと、音階を速く強く弾くこと、要するに手の練習になることなら何でも、1日に少なくとも2時間やるように彼は進めてくれた」。
 だから、ショパンが3時間以上は練習(指の訓練、エチュード、曲を含む)しないよう人に言っていたのに対し、同じ頃リストが自分でも実行し、人に勧めていた指の訓練は、場合にもよるが、そのくらいではとても足りないものであった。フンメルは「既に上達したピアニストの多くが、目標に達するには1日少なくとも6,7時間は弾かねばならないと、頭から思い込んでいる。それは間違いなのだ。毎日規則的に3時間集中すれば十分だと、私はそういう人たちに断言できる。それより長く練習しても精神が麻痺してしまって、演奏は魂の抜けた機械的なものになるし、いくら練習に熱を上げても、しばらく中断しなければならなくなってしまうようなことがあると、もう指は思うように動かないという破目になるのがほとんどだ。そういうときに演奏の依頼があったりしたら、調子を取り戻すには何日もかかるのだから、本当に困ったことになる」と説いている。

 ショパンは1日3時間以上練習してはいけないと言っているのに対して、同時代のリストは1日14時間練習していた。この2人はどちらも天才なのだけど、この練習時間の比較だけを見てもリストは努力の人という感じがする。ただし、リストの晩年の作風には若い頃の派手派手しさが鳴りを潜めた感じがあることから、もしかしたら考えが変わった可能性もある。リストに関してはあまり文献を読み込んできていないので、あまり確かなことは言えないのだけど、今後そういう文献に当たったら書き改めたい。
 それで、実際にはどれくらい練習するのが適当なのかということだけど、僕の考えでは人それぞれとしか言いようがない。
 ショパンほどの天才ならば短い時間の練習で十分なのだけど、凡百のピアニストが真似してやっていけるとはとても思えない。あまり練習しないピアニストと言うとグレン・グールドが有名[2]だけど、話を聞くに彼の場合はメカニカル部分の練習を全く必要としないとても羨ましい体質であるらしく、それなら常人が多くの時間を費やす練習を劇的に減らすことができるのだろう。ショパンも非常に体が柔らかくウンヌンカンヌンという話はよく聞くところである。

 グールドの天才の証明の一つとして、先程の「ピアノに問題がない」と関連して、「全く練習しなくても弾ける」ということがあげられる。
 「あまり練習していない」というのは、ステージ演奏家にせよ音大性にせよ、一種の慣用句のようなものである。実際には朝から晩までピアノの前に座っていても、それほど練習しなければ上手く弾けないことを悟られたくないという心理が働く。とくにコンクール前などは、ライヴァルたちを牽制する意味でも「さらってない」と言う。
 しかし、グールドは本当に練習しなかったようだ。『グレン・グールド 神秘の探訪』の著者、ケヴィン・バザーナがグールドの残したメモを見たところによると、1970年以来、もし練習するとしても半時間、大抵は1時間で、2時間以上のことはけっしてなかったという。
 レパートリーをつくっていて、新しい曲をたくさん準備していた13歳の頃でさえ、1日に3時間程度しか練習しなかった、とグールドは言う。それですら彼の演奏人生では厳しい練習スケジュールが組まれていた唯一の期間だった。
 プロになってからは、必要に応じて「楽譜の構想を強化する」目的から練習することはあっても、楽器との接触それ自体のために練習することはなかった。
 この習慣はニューヨーク・デビュー前に既に確立されていたらしい。ジョナサン・コットとの対話をまとめた『グレン・グールドは語る』で彼は、19歳の頃、初めてベートーベンの《ピアノ・ソナタ作品109》を弾いた時のエピソードを明かしている。
 デビュー前だったが、「当時でさえ、楽器の奴隷になりようがなかった」。完璧に暗記してからピアノに向かう習慣がついていたので、初演の2,3週間前に譜読みを始め、1週間前に練習をスタートさせた。自殺行為に聞こえるかもしれないが、それがいつものやり方だったのだ。

 凡夫が地道にメカニカルの練習をしているあいだ、音楽に没頭できるのだからそりゃ物凄く有効に時間を使えることだろう。こんな天才に並ぶためにはリストレベルの才を持った上、毎日14時間もの練習をしなければならないというわけである。

 ここまで、3時間の練習時間が短いという話をしてきたけど、実際のところプロの演奏家でもなければ目指しているわけでもない普通の人にとっては、学生であれ社会人であれ1日3時間の練習量というのは凄く多い。金子一朗の言う通り[3]とにかく時間がないのだ。プライベートの時間とか勉強時間とか読書とかアニメとかを相当量犠牲にしなければ続けることはできない。音大生でもないのに1日3時間も勉強時間をピアノの練習に費やしていたらとても学業を成就するなてできないわけである。そういう意味でならショパンの言う1日に3時間以上練習するなんてとんでもないというのは正しい。
 そんなわけで、プロでもない人が3時間が多い少ないと論じる事自体にあんまり意味がなくって、現実的に毎日3時間も時間をとることができないのである。

参考文献
 [1]ジャン=ジャック・エーゲルディンゲル, 弟子から見たショパン そのピアノ教育法と演奏美学【増補・改訂版】, (2005)
 [2]青柳いづみこ, グレン・グールド 未来のピアニスト, (2014)
 [3]金子一朗, 挑戦するピアニスト, (2009)

平成28年 福山哲郎 政治資金報告書

 政治資金報告書というものがある。日本では政治の透明性を確保するために政治家のお金の使い方について細かく公開することが義務付けられていて、総務省とか自治体とかのページからダウンロードして読むことができる。
 試しに福山哲郎こと陳哲郎さんの政治資金報告書を読んでみた。ついでにテキストに書き出してアップしてみた。
平成28年陳さんの政治資金報告書
エクセルファイル
 一応、ソースにもリンクしておく。
フォーラム共生社会21(コピー)
民進党京都府参議院選挙区第2総支部(コピー)
福山哲郎後援会(コピー)
 陳さんが帰化人であるというのは政治に興味のある人達の間では常識になってるわけだけど、一部の人たちは認めたくないようで必死に工作をしている。Wikipediaから陳さんの帰化情報を削除できたのは最も大きな成果だと思う。Wikipediaの議論を見るに、その手の人からすると官報の情報は当てにならないらしい。平気で虚偽報道する新聞やテレビ、週刊誌はもとより胡散臭いウェブサイトとかとっくに消えたページなんかをソースに記事を書いているWikipediaで何を言ってるんだろうと不思議に思うわけ。それほど周知されては都合の悪い情報なのかと思うと日本全国に伝えて回りたくなる。

 陳さんの帰化の件についてはこれくらいにしておいて、政治資金報告書の内容を見て思ったことをテキトーに書いていこうと思う。

 報告書は陳さんが代表を務める政治団体「フォーラム共生社会21」、民進京都府参議院選挙区第2総支部福山哲郎後援会の3報を書き出した。
 フォーラム共生社会21の寄付の内訳には5件の団体が連なっている。福山哲郎後援会、民主党京都府参議院選挙区第2総支部民進京都府参議院選挙区第2総支部TKC全国政経研究会、民進京都府支部連合会である。民主党民進党に衣替えした時期なので民主党民進党が入り混じっている。別の政治団体として分けて出すべきなのかどうかは知らないけど、どうせ同じものなのだから纏めてもらったほうが分かりやすくて良い。
 TKC全国政経研究会の収支報告書総務省のページからダウンロードできるが、ここからはいろんな政治家に献金しており、陳さんはその中のひとりにすぎず、真面目に読み込もうっていう気にならない。民進党京都府総支部連合会の報告書民進京都府参議院選挙区第2総支部と同様京都府のページからダウンロードでき、こちらも多くの民進党メンバーに対して出資してたりするので書き出す気にはならない。

収入について
 寄付者の住所とか職業とかについてデータを纏めてみたところ、次のようになった。

職業 人数
会社役員 40
無職 28
会社社長 22
団体役員 17
自営業 16
医師 13
会社員 10
税理士 7
団体職員 6
僧侶 6
大学教授 4
弁護士 4
飲食業 4
歯科医師 2
建築家 2
芸術家 2
社労士 2
美容師 2
行政書士 1
宗教法人役員 1
神官 1
府議会議員 1
医療法人理事長 1
公認会計士 1
学校法人職員 1
大学職員 1
衆議院議員 1
珠算講師 1
農業 1
書道家 1
学校経営 1
道家 1
司法書士 1
舞踏家 1
団体代表 1
介護ヘルパー 1
参議院議員 1

 一応、多い順に並べたのだけど、この報告書では寄付を受けた日付順に書かれているため、別の日に同じ人物が寄付していたとすると重複して数えてしまう。そんなわけで、重複がないとは言い切れない。面倒なので確認してまわろうとも思わないし。
 取り敢えず、会社役員、無職、会社社長、団体役員、自営業、医師、会社社長の順で多い。これまで見た政治資金報告書にはないのが宗教関係者。僧侶、神官、宗教法人役員とあわせて8名が確認できる。
 ところで、仙谷由人ってどっかで見た人の名前があるけど、職業が元衆議院議員となっている。何だよ「元」って。ただの無職やん。
 他に名前だけでも聞いたことのある人物はというと、マルハンの創業者である韓昌祐。韓国人が政治献金してたら駄目じゃん、って思ったけど帰化してたんだね。
 それと、遠山大輔。どっかで聞いた名前だなあと思って調べてみたら舞鶴高1女子殺害事件で被告の中勝美を無罪にした弁護士だった。なお、中勝美は放免されたあと、殺人未遂事件で捕まっている。
 あとは、450万円の献金をしている橘民義あたりは一部で有名だったりする。この人、辻元清美に150万円献金(コピー)してたりする。金あるなあ。
 大学教授についても突っついておこうかと思ったけど、どうでもいいので止め。
 登場人物について相関図とか作ってみると面白いかもしれない。こういうのが作れるかもしれない。超絶大変そうだからやらないけど。夏休みの自由研究とか卒業研究とかで取り上げてみるのはどうかな。

 企業献金についても軽く見ておく。聞いたことのある会社名が結構あったりする。
イオン株式会社
・株式会社堀場製作所
・株式会社ワコールホールディングス
・京セラ株式会社
月桂冠株式会社
・株式会社井筒八ツ橋本店
 イオンについては民主党の人だしごく自然なことだとは思うけど、他の5社については新しい感じがする。
 企業献金については一緒に個人で献金している人もいる。あと、献金の項目で見た会社が支出の項目にも多く見られる。支援してくれる企業を使おうというのは自然なことだから別によいと思う。

 労組が出張ってくるのはこの人たちの特徴。労働者の待遇改善よりも政治活動をしている印象の強い労組の皆様である。
・日本私鉄労働組合連合会
・全日本たばこ産業労働組合
日本郵政グループ労働組合近畿地方本部
・全日本森林林業木材関連産業労働組合連合会

 ついでに、職業と絡んだ政治団体。
・近畿税理士政治連盟
京都府歯科医師連盟
・税理士による福山哲郎後援会
京都府医師連盟
・日本商工連盟
全国社会保険労務士政治連盟
京都府社会保険労務士政治連盟
・日本弁護士政治連盟
・全日本不動産政治連盟京都府本部
・日本医療法人連盟
福山哲郎後援会

支出について
 流石にガソリンプリカによるマネーロンダリング的な迂闊なことはしていないようである。
 供花がある。総務省によると、特定の場合を除いて一切禁止されているとなっている。特定の場合を除いたら一切じゃないやんと突っ込みたくなる。政治家本人が自ら出席してその場で行う場合は罰則が適用されない場合があるとのこと。朝日新聞がグレーと言ってるのは本人が直接出席したかどうか不明瞭だっていう部分を指してのことかな。
 それから、寄付者と支出先に宗教関係が結構ある。靖国参拝は信教の自由に反するとか主張(魚拓)しておきながら、自分はガッツリ宗教関係と金銭授受してるわけだ。これってどうなの?

 取り敢えず、こんな感じで。
 頑張って書き出した割にはあんまり面白いネタもなかった。予想通りの連中が割と並んでいる感じで、上に書いた供花以外には問題のありそうな項目もないし。見る人が見たらなにか見つけることができるのかな。

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