発電床

 発電床というものがある。上を歩くことで発電する仕組みの床である。PZTのような圧電素子を並べて、その上を歩くことで歩行に要するエネルギーの一部を電力に変換するという装置である。
 PZTは鉛を使っており、人体に有害との指摘から代替品を求められており、RoHSにより鉛フリーがの義務化が成功されたのが2006年だが、代替品開発の進捗が思わしくないため未だにPZTについては適用免除対象となっている[1]
 圧電体の発電原理についての説明は割愛する。圧電体による発電については以前紹介したことがあるが、JR東日本が自動改札の床でテストしていた[2]。このテストを行ったNEDOJR東日本東日本とは異なるが、スイッチサイエンス音力発電から発電床という名称で製品化されていた。

 スイッチサイエンス:発電床
 音力発電:発電床?ユニット EVBS-01

 どちらも実に胡散臭い商品である。スペックが書いてあるが、どちらも全く同じである。既存の圧電素子を持ってきて並べたんだと思う。値段も1万円くらい。ついでにNEDOのJR東京駅での実験結果[6}も並べてみる。

御力発電[3][5]
・発電量:約2mW(注)
・0.1 ~ 0.3W((注)の条件における、1m 秒程度の瞬間最大値)
(注 体重約60kgの人により、1秒間に2歩ずつ歩行する実験を30秒間行った平均
・外形300mm×300mm×10mm
・動作温度範囲約-25~+80℃

スイッチサイエンス[4]
・発電量 : 平均 2 mW(体重60 kgの人により、1秒間に2歩ずつ足踏みをする際の平均の発電量)
・信頼性 : 100万回以上
・外形 : 300 mm × 300 mm × 10 mm
・概算動作温度範囲 : 約-25~85°C

NEDO
・4.3Ws(改札通過一人当たり)
・改札口1通路(1m3)
・5週間(通過人数約300万人)経過後、発電能力95%

 NEDOの実験については後から評価するとして、先の2つについて。
 30cm×30cmの面積で1秒間に2歩ということだから、立ち止まって足踏み運動をするという状況を想定する。つまり、1秒間に2回60kgの圧力をかけることになる。これで2mWの発電ということになるので、1回の足踏みでは1mWs=1mJということになる。
 60kgの重量を1m持ち上げるのに必要なエネルギーは60kg×9.8m/s2=588J。そのうちの1mJを回収することになる。1m持ち上げるのは極端だけど、エネルギーから比較すると1m×1mJ/588J=1.70μmとなる。1.7ミクロン沈み込んでそのエネルギーを回収するというシステムである。勿論、少なからずエネルギーロスはあるので、1.7μmよりはたくさん沈み込み筈である。
 とにかく、1回の足踏みにつき1mJである。それで、この装置の信頼性は100万回とあるので、1mJ×100万回=1kJの発電能力が保証されている。
 それで、どの程度の電気代を回収できるかというと、東京電力-従量電灯B-電力量料金だと300kWh以上で30.57円/kWhとなっている[7]。1kJ = 1000Ws = 1000/3600Wh = 0.278Whであるので、値段にして、0.278Wh×30.57円/kWh = 0.00849円である。
 10000円払って回収できる電力が0.00849円分! 少しでも環境に負荷の掛からないエネルギーが得られるのだから良いと言うなかれ。これを製造するためにそれ以上の電力を使っていては意味がないのだ。これを0.00849円の電力で作れるかどうかを考えたら良い。

 さて、上記2品目は購入する価値がないと分かったと思う。一方NEDOの方はというと、この実験に使った圧電体のお値段が書いておらず評価が難しいので、それ以外のところを見てみようと思う。
 改札を通過するのに要する時間が書いていないのでちょっとやりづらいのだけど、一人当たり4.3Ws=J、5週間で300万人という辺りで計算してみようと思う。
 4.3J×300万人 = 12.9MJ = 12.9MWs / 3600 = 3.58kWh ということになる。
 3.58kWh×30.57円/kWh = 109.9円
 なんと110円ほどの効果が見込めることになる。ただし、1m3と広い範囲に圧電素子を置いているので、上記2品目と面積と比較するには、10000cm3÷900cm3 = 11.1倍の差があるものとして評価しなければならない。すると、109.9円/11.1 = 9.9円となる。大分良くなるけどまだまだな感じである。
 取り敢えず、自動改札1機に付き110円ほどの電気代の節約になることが分かったが、コストの比較が出来ないので、どうもイマイチな感じである。
 ちなみに、理論的にはこの発電床を無数に積層させることによってより大きな発電が可能となる。100枚並べたら10,100円だ。これくらいでは発電時の沈み込みを感じる事もないだろうから歩行者も抵抗を感じ事すらないのではないかと。勿論、発電によって製造原価が還元できるとしての皮算用である。結局、この装置の寿命次第だと思う。5週間・300万人で能力は5%減少ということなので、1年も使えば60%くらいまで能力は落ちる計算となる。矢張り、まだ実用には遠いのではないかと思える。あるいは、NEDOのこの実験以降に劇的な改善があるのかもしれない。とにかく、コストを還元できるかどうかは耐久力次第である。

 Coinhive事件を見ていたら、発電床みたいに歩行者の歩行エネルギーを横領するシステムも同様に検挙されるのかなあって思って、本エントリーを書いてみた。

参考文献
 [1]チタン酸ジルコン酸鉛, Wikipedia
 [2]「床発電システム」の実証実験について(InternetArchive), JR東日本研究開発センター フロンティアサービス研究所
 [3]エネルギーハーベスティング-振動力発電, 御力発電
 [4]発電床, スイッチサイエンス
 [5]発電床?ユニット  EVBS-01, amazon
 [6]成果報告書詳細(InternetArchive), NEDO
 [7]1kWh(キロワットアワー)あたりの電気料金はいくら?(InternetArchive), Selectra

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 20080115 圧電体

白亜ノ森 楽譜

 SQ3より、白亜ノ森。以前録音したけど、楽譜はまだだったのでアップした。
 音取りしながら同時にアレンジをしていくスタイルなので、結構修正しながら進めて、音を取り終わってもやっぱりここが気に入らんとか色々あって、あちこちに修正した部分が飛んでいたりするため、スキャンしたものをそのまま出すわけには行かず、読みやすいように順番に配置し直したものを作ることになった。そのため、見てもらえば分かるがツギハギになっている。
 自分でアレンジした曲なので解説とかしたくないのだけど、1箇所だけ、6ページ目の最後の段、最初の小節。

 グリッサンドについて。普通、グリッサンドは最初の音と最後の音を指定しておいて、その2音を線で繋いでグリッサンドと表記する[註1]。また、鍵盤の上で指を滑らせる奏法である以上は全て白鍵か黒鍵で構成されなければならない。
 ここでは開始の音を指定していないし、変ホ長調の調合(フラット3つ)が付いている。これは主旋律を構成する音階としてのグリッサンドではなく、ただの装飾音に過ぎないということで音楽としてあまり重要な音ではないことをまず念頭に入れておいてもらいたい。だからこそ目立たないようにピアニシモを指定している。そして、グリッサンドの最後の音がBとなれさえすれば、開始の音はどれでも良い。旋律を構成する音ではないので、いっそ全てなくしても構わないくらいの重要性である。そして、最後のBだけど、左手のアルペジオの最後のBを右手で取るように指定しているが、このBがグリッサンドの後に続けて弾くBとする。だから、より正確に表記し直すと次のようになる。

 変ホ長調であることに付いては、このグリッサンドに限って調性は無視してハ長調として弾く。音楽にうるさい人の中には、「変ホ長調の中でハ長調を混ぜるなんて!」とご立腹の方もいるかも知れないが、そういう方はグリッサンドは止めて、適当な速度の下降スケールにしたらいいと思う。開始音を指定していないし、そんなに速く演奏するよう想定していないので普通に弾けないこともない筈である。少なくとも5ページ2段目に出てくるパッセージくらいの速度が出せるなら行けるなじゃないかな。
 最後の音として指定しているBだが、これはグリッサンドでは弾かない。グリッサンドに指定しておきながらグリッサンドで弾かないのだから無茶苦茶である。実は、当初はテキトーに下降グリッサンドを弾いて、最後にこのBに飛び付くという想定で書いたのである。自分でわかれば良いという程度の書き方である。だから、グリッサンドの最後の音はHにしてその後にグリッサンドとは違う音として伴奏最後のBを右手取りするように表記している。

註1 グリッサンドの表記について
 グリッサンドの表記は上で書いたように最初と最後の音を線で結ぶのが基本的な表記だけど、そうと限ったわけではなく全部の音を書いてしてグリッサンドと表記する記譜法もよく使われる。例えばベトソナ21番[1]

あるいは、半音階のクロマティックグリッサンドであれば、それと分かるように表記する[2]

 グリッサンドという語もglissando及びgliss.という省略語の他、glisade, glissato, glissicando, glissicatoといろんな書き方がある[3]
 色々と書き方はあるけど、演奏者にその意図が伝わればどう書いたっていいとうこと。逆に言えば、意図が伝わらない表記は意味がないということになる。
 結局、重要なのは陳腐ではあるが楽譜を書く側は読む人のことを考えて読みやすいように、楽譜を読む側は作曲者が何を表現しようとしたのか考えることである。つまり、白亜ノ森では読む人というのはすなわち自分であるから、何も気を使うことなく書いたわけである。

参考文献
 [1]ハロルド・クラクストン, ベートーヴェンピアノソナタ集 (2巻)p239 , 全音楽譜出版社(1972)
 [2]菊池有恒, 楽典 音楽家を志す人のためにp169, 音楽之友社(1988)
 [3]遠藤三郎, 独・仏・伊・英による音楽用語辞典 【改訂版】p86, シンコー・ミュージック(1991)

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 20170826 世界樹の迷宮III 白亜の森

BLOGOSのこと

 LINE株式会社が運営するBLOGOSというニュースサイトがある。コメント欄があり、読者が議論に参加できるシステムなのだが、1月31日13時をもってサービスを終了した。サービス終了というか、コメントするにはFacebookでのログインを要するようになり、コメントの匿名性を排除したということになる。まあ、Facebookが匿名でのアカウント取得が全く不可能かというとそういうわけでもないので、そういう手段で書き込み自体は出来るが、これまでのユーザーがみんなそんなことをするわけもないので、事実上の終了と言える。結構長い間見てきたのでサービス終了というのは感慨深いものがある。
 このブログでニュース関係の記事が昔より少なくなっていたのはBLOGOSで愚痴垂れてるから敢えて書く必要がないという部分もあったので、今後はニュースについて言及することが増えるかもしれない。
 BLOGOSがサービスを開始したのは2009年10月だが[1]、議論できる環境が整ったのは2011年12月頃である。この頃からライブドアニュースで記事をリンクされるようになり、僕の目に付いた。当時、ライブドアニュースのコメ欄をよく読んでいたので、そのつながりで興味を持って閲覧するようになり、半年のROMの後に参加する運びとなった。ライブドアニュースからは間もなくコメ欄が消えてしまったので見なくなったので、テレビも新聞も見ない僕にとっては数少ない情報源であったし、基本的にコメ欄を読むために閲覧していたので、テレビ新聞などによる偏向報道とは違い、おかしな記事に対してはコメ欄で容赦なくぶった切られるため相当な勉強になった。
 LINEポータブルグループの春名氏によると建設的な議論が行われ、“提言”が生まれる場を目指すとあり[2]、いろいろな問題がないわけではないが、その思惑叶ってユーザー間での活発な議論や罵倒、茶番が繰り広げられた。日本最大の提言型ニュースサイトと呼ばれることさえもあった[3]。ユーザーが記事に対してコメントを付ける形式のニュースサイトはBLOGOS以外にも、Yahoo!ニュースとかNEWS PICSとかスラドとかハフィントンポストとかあるけど、BLOGOSほど広範で自由度のあるサイトは存在しない。鳴り物入りで始まったハフィントンポストなど、検閲の所為で人が寄り付かず閑古鳥が鳴いている。現在、ブロゴス民有志でBLOGOSに代わるサイトを新たに立ち上げようと議論しているようである[4]。期待はしているがどうなるかまだ分からない。
 民間の営利企業であるLINEがどういった理由でどう見ても収益性の見込めないBLOGOSを運営していたのか謎である。それも韓国系の企業がである。韓国に都合の悪い言説が主流となるのは目に見えているのに。
 本エントリーでは、別にBLOGOSに対して文句を言いたいわけではない。寧ろ、これまで運営して頂いたことに感謝を述べて、一つの思い出として残しておきたかった。

参考文献
 [1]BLOGOS, Wikipedia
 [2] 「建設的な議論が行われるコミュニティを立ち上げる」BLOGOSリニューアルの挑戦(魚拓), LINE Corporation ディレクターブログ
 [3]門田隆将, 「吉田調書」を読み解く 朝日誤報事件と現場の真実p53-54, PHP研究所(2014)
 [4]BLOGOS民 避難所(仮)

ダブルクロス 目標値と成功確率

 ダブルクロスは判定方法が独特なので、遊ぶ度に色々と計算してやろうっていう気になる。
 以前、ダブルクロスの判定の期待値について計算したことがある。このときは、ダイスを1個しか振らないという極めて限定的な場合で検討した。今回は、期待値ではなく目標値に対する成功確率、それもクリティカル値、ダイス数も含めてを求めてみた。
 判定の際にクリティカル値を下げるか、ダイスを増やすかの選択で役に立つかもしれない。今回は期待値は求めないが、後述のようにそれに近い値は一応出している。もしかしたら、ここから期待値に発展させることもできるかもしれないけど、取り敢えず今回は期待値は検討しない。

 判定は以下の通り[1]

1. 複数個の10面ダイスを振る。
2. クリティカル値以上の出目のダイスがなかった場合は最も高い値を達成値として採用。クリティカル値以上のダイスは達成値を10として再度振り足す。
3. 2で振り足したダイスがクリティカル値以上の場合は達成地にさらに10を足して振り足す。すべてクリティカル値未満だった場合は最も高い値を達成値として採用。
4. クリティカル値以上の目がでなくなるまで繰り返す。

 説明が分かりにくいかもしれないけど、ダブルクロスを遊んだことのない人がこんなエントリーを読みに来るとも思えないので、テキトーなままにしておく。説明が理解できないけど、どうしても知りたいという方はルールブックを読むとかセッションに参加するとかしてもらうとよいと思う。

 まず、ダブルクロスの判定の際、達成値を求めるためにダイスの出目に技能レベルと修正を足す。この部分を考慮すると無意味に煩雑になるので、前提として技能レベルや修正はないものとする。これらを加味したい場合は目標値をその分引いてやれば良いので、敢えて複雑にする必要はないということである。
 目標値、クリティカル値、ダイスの数と確率を求めるための前提となる変数が3つあるので結構複雑になるのは目に見えている。最後には割と単純な式で表されるのでその点は安心してもらってよい。しかし、最終結果として4つの値を一つのグラフで表すのは無理があるので複数のグラフを表示することになる。この部分は、最後に上げるエクセルファイルを落としてもらって好きなように値を変更したら欲しいグラフが表示されるようになっているので、好きにしてもらったら良いと思う。
 計算する上で複雑になる要因としてダイスの数がある。前回は1Dという条件に限定したのはこの部分が原因である。この点をクリアするに当たって、ダイスを1つずつ振っていくという考察をした。確率の基本は(成功する場合の数/起こりうる場合の総数)を考える[2]。期待値を考える場合は無限級数をクリアしないといけないが、確率だけであれば、成功するか失敗するかの2択となるので幾分楽である。
 ダイスを1個を振ったときの確率であれば、何回のクリティカルが必要でその後いくつの目を出せばよいのかはっきりしているので簡単に求められる。例えば、目標値35でクリティカル10だとすれば、3回クリティカルを出した後に5以上を出せば良いので、{ \frac{1}{10} \cdot \frac{1}{10} \cdot \frac{1}{10} \cdot \frac{10-4}{10} = \frac{6}{10000} }と簡単に求められる。勿論この判定を成功させるのは簡単ではない。
 ここで、ダイスを増やすとどうなるかという話になる。複数のダイスを振る場合は普通はすべてのダイスを手のひらに乗せて振る。1個ずつ振ると後から振ったダイスが既に振ったダイスに当たって出目を変えてしまうことがあるから。これを敢えてやるとパワーダイスと呼ばれるイカサマになる。しかし、数学の計算上では先に振ったダイスの目など記録しておけば良いことだし、そもそも紙の上で計算するだけであって実際にダイスを振るわけではない。そんなわけで、確率を求める考え方として、1個目のダイスで成功したら良し、成功しなかったら次のダイスを振るという考え方をした。
 計算の手続きとしては、1Dのときの成功確率を求めて、失敗した場合は失敗した確率に1Dの成功確率を掛けた値を足すという手続きで降るダイスの数を増やすようにした。
 例えば、目標値8として考えると1Dでは{ \frac{3}{10} }、2Dでは{ \frac{3}{10} + \frac{7}{10} \cdot \frac{3}{10} }、3Dでは{ \frac{3}{10} + \frac{7}{10} \cdot \frac{3}{10} + \frac{7}{10} \cdot \frac{7}{10} \cdot \frac{3}{10} }となる。面倒なんで計算はしない。図に描くと次のようにサイコロを増やすと全事象から成功領域が増えていくということになる。

 それはそうと、端っこから例示して帰納していこう。


 以下の意味で記号を使う。
C:クリティカル値, 2以上の値を取る。ただし、11以上の場合は11とする。
T:目標値
d:ダイスの数
Pd:d個のダイスを振ったときの成功確率
P:ダイス1個のときの確率, P = P1
n:適当な整数

クリティカル値10のとき(C=10)
・目標値T=1~10
{ \displaystyle  P = \frac{11-T}{10} }
・目標値T=11~20
{ \displaystyle  P = \frac{1}{10} \cdot \frac{21-T}{10} }
・目標値T=21~30
{ \displaystyle  P = \left( \frac{1}{10} \right)^2 \cdot \frac{31-T}{10} }

・目標値T=10n+1~10n+10
{ \displaystyle  P = \left( \frac{1}{10} \right)^n \cdot \frac{10n+11-T}{10} }

クリティカル値9のとき(C=9)
・目標値T=1~8
{ \displaystyle  P = \frac{11-T}{10} }
・目標値T=9~10
{ \displaystyle  P = \frac{2}{10} }
・目標値T=11~18
{ \displaystyle  P = \frac{2}{10} \cdot \frac{21-T}{10} }
・目標値T=19~20
{ \displaystyle  P = \left( \frac{2}{10} \right)^2 }
・目標値T=21~28
{ \displaystyle  P = \left( \frac{2}{10} \right)^2 \cdot \frac{31-T}{10} }
・目標値T=29~30
{ \displaystyle  P = \left( \frac{2}{10} \right)^3 }

・目標値T=10n+1~10n+8
{ \displaystyle  P = \left( \frac{2}{10} \right)^n \cdot \frac{10n+11-T}{10} }
・目標値T=10n+9~10n+10
{ \displaystyle  P = \left( \frac{2}{10} \right)^{n+1} }

クリティカル値Cのとき
・目標値T=1~C
{ \displaystyle  P = \frac{11-T}{10} }
・目標値T=C+1~10
{ \displaystyle  P = \frac{11-C}{10} }
・目標値T=11~10+C
{ \displaystyle  P = \frac{11-C}{10} \cdot \frac{21-T}{10} }
・目標値T=11+C~20
{ \displaystyle  P = \left( \frac{11-C}{10} \right)^{2} }
・目標値T=21~20+C
{ \displaystyle  P = \left( \frac{11-C}{10} \right)^{2} \cdot \frac{31-T}{10} }
・目標値T=21+C~30
{ \displaystyle  P = \left( \frac{11-C}{10} \right)^{3} }

・目標値T=10n+1~10n+C
{ \displaystyle  P = \left( \frac{11-C}{10} \right)^{n} \cdot \frac{10n+11-T}{10} }
・目標値T=10n+1+C~10n+10
{ \displaystyle  P = \left( \frac{11-C}{10} \right)^{n+1} }

以上より、Pの一般項は
・目標値T=10n+1~10n+Cの場合、
{ \displaystyle  P = \left( \frac{11-C}{10} \right)^{n} \cdot \frac{10n+11-T}{10} }
・目標値T=10n+1+C~10n+10の場合
{ \displaystyle  P = \left( \frac{11-C}{10} \right)^{n+1} }
となる。
 なお、クリティカル値11の場合を省いたけど、T=1~10の部分はC=10と同じだし、T>10では全て0になるのでこれでよい。
 ルールの構造上どうしてもクリティカル値前後で扱いが変わってしまうので場合分けせずには表記できない。場合分けしたが、目標値がCのところではどちらの式を使っても同じになる。

 引き続き、今度はダイスを増やしていく。
 上で説明したことを式にすると、Pn+1 = Pn + (1-Pn)Pという漸化式になる。
 基本的に、この数列を解くことになる。

ダイス2つのとき(d=2)
{ \displaystyle P_2 = P + (1-P)P \\ \hspace{ 15pt }= 2P - P^2 }
ダイス3つのとき(d=3)
{ \displaystyle P_3 = 2P - P^2 + {1-(2P-P^2)}P \\ \hspace{ 15pt }= 3P - 3P^2 + P^3 }
ダイス4つのとき(d=4)
{ \displaystyle P_4 = 3P - 3P^2 + P^3+(1- 3P + 3P^2 - P^3)P \\ \hspace{ 15pt }= 4P - 6P^2 + 3P^3 - P^4 }
ここまで書き出してみると、パスカルの三角形の一番左の項がないものであることに気付く。
 パスカルの三角形では、次の段は同じ段を一つ横にずらしたものを足すと次の段となる構造をしている。上で示した漸化式Pd+1 = Pd + P -Pd・Pをみると、元のPdが元の段を表しており、-Pd・Pが一つ横にずらしたものに当たる。Pを掛けているので次数が一つ増えるのである。そして、P1の項は+Pによって1ずつ増える。こうして、左端の抜けたパスカルの三角形が現れる。

 本当はちゃんと証明しないといけないけど、論文を書いてるわけではないのでこれで済ます。
 さて、パスカルの三角形が現れたということは二項定理で示せるはずである。次の公式が二項定理である。
{ \displaystyle \left( a + b \right) ^n = \sum_{ k = 0 }^{ n } {}_n C_k a^{n-k} b^k }
 これを使ってPdの一般項を表す。一番左の項がないということはk=0となるP0の項が消えるということで、k=1から総和を始めれば良い。
{ \displaystyle P_d = {}_{d} C_1 P - {}_{d} C_2 P^2 + {}_{d} C_3 P^3 + \cdots + (-1)^{d} {}_{d} C_{d} P^{d} \\ \displaystyle \hspace{ 15pt } = \sum_{ k = 1 }^{ d } (-1)^{k+1} {}_{d} C_{k} P^k }
 以上で、成功確率の一般項を示すことができる。

ダブルクロスにおいて判定の成功確率は次のようになる。
{ \displaystyle P_d = \sum_{ k = 1 }^{ d } (-1)^{k+1} {}_{d} C_{k} P^k }
 Pについて
・目標値T=10n+1~10n+Cの場合、
{ \displaystyle  P = \left( \frac{11-C}{10} \right)^{n} \cdot \frac{10n+11-T}{10} }
・目標値T=10n+1+C~10n+10の場合
{ \displaystyle  P = \left( \frac{11-C}{10} \right)^{n+1} }

 ファンブルがカウントされてないけど、目標値1のときにしか影響がないので、無視した。下記に示すエクセルではファンブルもカウントしてるので安心してほしい。

 実際のところ、この計算は手続きが極めて簡便で判定の最中に咄嗟の判断に供せられるかというと、相当な計算能力が備わっていないと難しいんじゃないかと思う。プロペラオペラのクロトみたいな計算が得意な連中には役立つかもしれない。
 こういうときに役立つのがグラフである。結果を全部図示してしまえば大体この辺りであると目測がつく。
 ところで変数が4つあるので1枚のグラフで表すのは簡単ではない。やって出来ないことはないだろうけど、実際にそういうグラフを作ったところで見る人が理解できなければ意味がない。そこで、クリティカル値ごとに別のグラフを作ることにした。
 横軸を目標値、縦軸を成功確率とし、1~10, 15, 20, 30, 40, 50個のダイスを振ったときの結果をそれぞれ並べた。クリティカル値については別のセルで入力するようにした。目標値については、実はダブルクロスがどれくらいまで設定するゲームなのかよく知らないので、500くらいまであればいいかなと思って設定した。この所為でファイルサイズがちょっと大きくなった。
DX確率.xlsx
 次に示す感じのグラフとなっている。代表的なクリティカル値として10, 7, 5, 2を上げる。





期待値について
 このグラフからは期待値は分からない。期待値が分かると判定前に選択するオプションの見立てが出来て便利である。期待値はないが、50%の確率で成功する目標値というのは分かる。ここでは50%成功率と表記する。中央値と近い概念だけど、中央値とも異なるので50%成功率と呼ぶ。
 正規分布となるものであれば期待値は50%成功率と一致するはずだけど、こういう不連続なグラフでは期待できない。とはいえ、それほど大きく違ってくるとも思えないので、期待値の代わりに使うのも悪くないと思う。次のようになる。


 一応、縦軸を100までとしたものと450までとしたものを上げておく。

参考文献
 [1]矢野俊作 F.E.A.R., ダブルクロス THE 3RD EDITION ルールブック1, 富士見書房(2009)
 [2]確率の定義(魚拓), KIT数学ナビゲーション

関連エントリー
 20181123 ダブルクロス 判定の期待値

金婚式 演奏解説

 金婚式はガブリエル・マリーの代表作だけど、この曲以外は全く知られていない。まあ、調べれば他にも何曲か見つかる[1]けど、これ以外の曲を聞いたことはない。
 ぱっと見弾きやすそうにも見えるのだけど、白鍵、跳躍、スタッカートを多用することで見た目よりも弾き辛かったりする。全音の難易度表示によるとB(初級上)となってる[2]。まあ、そんなもんかなあとも思うけど、その割に練習には意外と手間取った。
 楽譜は改訂版 全音ピアノ名曲100選 初級編を使う。

テンポ
 4分音符=88bpmのAndantinoとなっている。速くもなく遅くもないが、テンポは結構自由に弄ってもそれほどおかしくなることもないけど、遅いテンポを取ってペダルを少なめにすると音が薄くなって間が持たない感じになるので、その辺りは気を付けたほうがいいかもしれない。

ペダルとスタッカート

 ペダルとスタッカートが重なっており、そのまま弾くとスタッカートが意味をなさなくなってる箇所が随所にある。ペダルを弱めるか、極力使わなくするかしなければスタッカートを活かすことが出来ない。
 指定の通りにペダルを踏むと結構落ち着いた感じだが、スタッカートを重視してペダルを制限すると結婚60年とも思えない元気よく跳ね回る印象になる。個人的には後者の演奏のほうが好きなので、ペダルは出来るだけ使わないことにした。

跳躍
 左手は基本的に四分音符ごとに跳躍するためノーミスで弾くのはなかなか難しい。距離のある跳躍はどうしてもまっすぐ横に手を移動して弾きたくなるものだが、ピアノのキーは上から押すものである。キーの上まで手を移動させてから真っ直ぐ下に手を下ろすようにして弾くべき。
 和音の一番上の音が抜けることが多いので、一番上の音を意識して弾くこと。
 スタッカートの演奏法にはキーを押した指をまっすぐ上に上げて離鍵する方法と、キーを押し下げた勢いのまま指を手前に引っ掻くようにして離鍵する方法がある。後者の方が綺麗な音になりやすいけど、打鍵のタイミングが難しいのとポジション的に難しい場面があるので、前者の奏法も必要となる。

18小節

 8小節までがこの曲の主題であり、繰り返し登場する。5, 6小節に対応する部分でスタッカートとかスラーとかアクセントとかの違いを注意して認識して置かなければならない。比較しやすいように下に並べてみる。

 一応、65小節からは再現部なので1小節からと似てるとか、98小節からはコーダなので、出だし部分と同じようになるので102103小節は56小節と似るとかいう感じで、分析はできる。とは言っても、元から同じ音のところ微妙な表現の違いを捕まえて似てるとかいう類の違いなので明確に理解するのは難しい。結局楽譜を見ながら弾くか、テキトーにうろ覚えで弾き飛ばすかとなってくると思う。

11, 35, 75小節

 ☆左手1拍目。一連の流れでここだけベースがオクターブになる。下の音を弾いている手の形に慣れてしまっていると咄嗟に手を開いても上の音を押すポジションにはならず、タイミングのずれたオクターブになってしまう。結構右に手を傾けないといけない。

18小節

 ※右手4指をしっかりと上げないと直後の同じ音がちゃんと取れない

21小節

 ◎17小節では次の小節で和音を掴む関係上ポジション移動しないが、こちらはFを中心として弾きやすい位置に移動することができる。また、指先を少し内側に向けたほうが弾きやすい。

3132小節

 左手。譜例のように、指ペダルでベース音の保持をしたらいいと思う。
 49小節, 53小節も同様。

41小節

 *右手後半。白鍵だけなので鍵盤手前側で弾く。ポジション移動を面倒がって鍵盤奥の方で弾こうとすると、4指が黒鍵に触ってしまう。
45, 47小節

 右手上声部がスタッカートで中西部はレガートとなっている。つまり、異なるタイミングで離鍵しなければならない。1指を保持しながら上声部はすぐに指を上げて離鍵する。コンパス弾きでも良さそうに見えるが、親指主導の尺側偏位となり[4]、手を痛める原因になるので勧められない。

53小節

 ※左手4拍目Fis-Aisは1-3のほうが取りやす言うのだが、次の54小節最初のHが取りにくくなる。1-2だと次のHが取りやすくなるのでこちらを採用。

5456小節
 この曲全体を通してパッセージと呼べるのはこの部分くらい。8部音符なのでとりわけ早いというわけではないが、2音ごとにスタッカートが挟まるのでちゃんと表現しようとすると結構むずい。黒鍵と白鍵が入り混じっており、手前に引っ掛ける奏法は適さないので、キーを押した指をまっすぐ上に上げないといけない。手の位置を低くするグールドスタイルだと少し弾き易くなる。グールドのノンレガート奏法は極端に低い椅子に猫背になって座るあの独特の姿勢が利いているのかと思う。本人は「やる方にとってはあれでなかなか大変なんだよ」と言ってる[3]。グールドが大変だと言うくらいに難しいのである。

55小節
✡右手最後のHAのところ。Hの2指をすぐに離鍵しないと56小節最初のGisの打鍵タイミングに間に合わずにもつれてしまう。

63小節

 右手3拍目。ちょっと気が向いたのでトリルを入れてみた。15小節とか見たら、トリルがあったほうが自然な気がしてきたので。

64小節
 ☆右手Cis-E-Aを1-2-5でとろうとすうると黒鍵の隙間ばかりで凄く弾きにくい。2-3-5で取ると少しマシになるが、4指が下がってきてFisを押してしまわないように注意しなければならない。いっそ手を交差して左手で取ってもよい。その際は、下の音を右手で取ることになるけど、音の強さに注意すること。

65小節~
 ここから再現部であり、1小節からとほぼ同じになる。中間部で速度がフラフラした結果、元の速度を忘れてしまうということがないように。

参考文献
[1]Marie, Gabriel Prosper, IMSLP
[2]改訂版 全音ピアノ名曲100選 初級編, 全音楽譜出版社(2005)
[3]アンドルー・カズディン, グレン・グールド アットワークp239, 音楽之友社(1993)
[4]トーマス・マーク, ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のことp98, 春秋社(2006)