ブルクミュラー25の練習曲 17おしゃべりさん

 ブルクミュラー25の練習曲より17番おしゃべりさん。
 楽譜は例によって全音を使う。
 同音連打の練習曲。同音連打というと、チェルニー30番26で散々練習した。演奏法の説明を転載しておく。

同音連打の演奏法
 同音連打の演奏法はピアノ演奏の脱力についてというエントリーで説明したのだけど、キーを手前側に引っ掻くようにして打鍵する演奏方を勧める。離鍵した時にキーの戻る速度が速いほど次にキーを押す準備が速くできるので同音連打も速くなる。従って、打鍵後速やかにキーの上から指をどける、手前に引っ掻く奏法が有効である。できるだけ早く離鍵するために、可能な限りキーの手前の方で打鍵する。キーの端、ヘリのギリギリのところに指先がかすめるように指を振り抜くのが良い。キーのアップリフトとかを感じている余裕はない。
 また、指先側にあるDIP関節、PIP関節の2つの関節を真っすぐ伸ばして固定し、指の付け根であるMP関節だけを曲げて弾くと安定する。
 指がキーに対して平行になっていないと引っ掻いて指を曲げたときに隣のキーに引っ掛けてしまう。

 この演奏法は右手の部分では使えるけど、この曲の左手では運指の都合上使えない。

 左手は指使いを見て分かる通り、12121となっており、手前に引っ掻く動きは適さない。手前に引っ掻く奏法は離鍵速度が速いが、その指で打鍵するために準備するのに時間がかかるというデメリットがあるので、ここでは使えない。結局、指をキーからまっすぐ上げて離鍵することになる。
 12121以外の運指も不可能ではないが、色々試した結果この指使いが最も弾きやすかった。

2325小節

 この部分の同音連打だけスタッカートがついている。
 初版譜を見ると、仏初版はスタッカートがあり、独初版はスタッカートがない。出版順は仏→独なので、仏版を見て修正する形で独初版を出版したとするとスタッカートは不要となる。とはいえ、この速度で同音連打するならスタッカートで弾かざるを得ないので、ペダルを使ったりしなければ記譜上の表現がどうであれスタッカートと見做す他はない。

同音連打の後の跳躍

 この曲で同音連打の後の跳躍は3度~6度の距離がある。手元を見ずに弾くためにはこの距離を体で覚えなければならない。
 普通に鍵盤に手を置くとき、普通は各指を隣り合ったキーの上に置くので1-5指の距離が5度となる。ここまで来た人は多分5度までの距離は身に付いているものと思う。そこから1音分広げたのが6度である。5度から1音広げるという手順を踏まなくても6度をぱっと押せるようにしておきたい。また、楽譜を見て瞬時に音符間の距離が把握できない場合は、楽譜に直接距離を書き込んでしまうとよい。

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屋上から見える海

 世界ノ全テというエロゲのアレンジCDpf ピアノフォルテに入ってた曲。タイトルの通り、ピアノを中心として、バイオリン、チェロのアンサンブルとなっている。このCDは名曲揃いなので、オススメ。CDのブックレットに全曲の楽譜が載っているのでとても助かる。
 ゲームだと学校の校舎の中で流れてた曲だったと思う。ゲーム内で使われた曲よりかなりテンポを遅くしてある。
 テンポの遅い曲なので余裕のある演奏ができるかと思ったけど、和音の規則性がイマイチ見いだせなくて楽譜から目が離せず苦労した。

ブルグミュラー25の練習曲 16.ちょっとした悲しみ

 ブルクミュラー25の練習曲より16番ちょっとした悲しみ。
 DTMやってた頃に、この曲をちょっとアレンジしたものをMIDIで公開しているけど、かなり好きな曲。声部が綺麗に別れていてアレンジしやすい。当時は、こどものブルグミュラーという楽譜を使っていて、「かわいい嘆き」というタイトルだったと思う。
 1ページだけの曲がここから4曲続く。短いので譜読みが楽で良い。
 楽譜は例によって全音を使う。

速度について
 Allegro moderatoで結構速い。4分音符で84~90bpmとなっているが、ドイツ語初版では126bpmなので元はもっと速かったらしい。
 16小節の繰り返しアリなので、合計32小節になる。4/4拍子なので、4分音符128個の長さ。126個/分で割ると128/126*60=60.95秒の長さとなる。僕の録音が59秒なので、大体オリジナルの速度になってたらしい。全然意識してなかった。

 1小節目のdolenteというのは「悲しげに」という意味。ブルクミュラーはあまり見ない指示が多く、調べないと分からないことがよくある。
 全体を通して難所というような部分もないが、とにかくトレモロを軽やかに弾かなければならない。この部分は何故か全く苦労せずに弾けてしまったので、よくわからないものである。チェルニー30番を真面目にクリアした成果だろうか。順番が間違ってるなあ。
 結構細かく強弱の指示がある。ごく自然な強弱の流れなので、特に逆らうことなく弾くだけで効果的である。

79小節

 8小節目1回目の"dimin. e poco riten."が2回目にはない。1回目は音量とテンポを緩めて1小節目に戻るが、2回目は7小節末尾のデクレッシェンドのまま8小節入り、9小節でいきなりpになる。

1516小節

 最後、テンポも強弱も変化なくあっさり終わる。こういう部分がタイトルの「ちょっとした悲しみ」の意味に繋がる。

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エリーゼのために

 以前、とある駅のストリートピアノで何曲か弾いた時、僕の演奏に足を止めていただいた老夫婦に「エリーゼのために」を聞きたいとリクエストを頂いたのだけど、あまりに長いこと弾いていなかったので、こんな感じだったかなあと手探りで音を探しながらで全然弾けなかった。コレはいけないということで、改めてちゃんと練習していつリクエストが来ても対応できるようにした。当然ながら、それ以来リクエストを貰ったことはない。
 よく言われる、エリーゼって誰だ?って話は、僕は興味ないのでWikipediaでも見てもらったらいいと思う。

 楽譜は全音ピアノ名曲100選を使う。
 この曲の難しいところは何と言ってもリズムを取りにくいところ。16部音符の連桁が小節をまたいでおり、その後に主題に戻るという箇所である。しかもアウフタクトで始まるし、(DisE)の繰り返し回数がマチマチなので、どこで小節が区切れているのか全く感じ取れない。楽譜を見ながら弾けば何も問題はないのだけど、外で弾くときは大体暗譜になるので、テキトーになる。大丈夫、弾いてても分かんないんだから、聞いてる人も殆どは分かんないよ。
 ちゃんと見ていくと次のようになっている。
1小節①

1315小節②

3638小節③

5052小節④

8182小節⑤

9496小節⑥

 6箇所。これら以外にもそれぞれに付随する繰り返しがあるが、全て同じ形なので割愛した。
 この全てで右手に戻ったタイミングでppになる。
 ①⑤前の小節で右手と左手で交互に(EDis)を弾くことのないのが182。この2箇所だけは他と違うので分かりやすい。1は超有名なあのメロディーだから間違える人はいないと思う。82は半音階下降から真っ直ぐ露骨に繋がるので分かりやすい。また、この2箇所は直前にディミヌエンドがない。1は当然にしても、82はppからクレッシェンドした後の再度のppなのでディミヌエンドがあっても良さそうなのだけで記載がない。でも、半音階の下降で音を弱くしていくべきだと思う。
 ②④⑥次に最もスタンダードな3箇所。Eのオクターブで手を変えて上昇した後に左(DisE)右(DisE)左(DisE)右(DisEDis)となる部分。これが131550529496  ③最後の1つは3638。例によって左(DisE)右(DisE)左(DisE)ときた後Disだけで主題に戻る。
 これだけコロコロ変わるのを見ると尺稼ぎのために適当に穴埋めしてるのかと疑わずにはいられない。ベートーベンがそんな雑な仕事するとも思えないけど、遺作だしちゃん完成させたわけではない可能性もある。ちなみに、手を変えて左(DisE)右(DisE)左(DisE)とするのは回数を間違えなくするための工夫だと思う。間違いなく弾けるなら全部右手でもいいと思う。
 上記に加えて、速度の変化の指示もある。速度の変化については、楽譜を見て覚えるよりも曲を聞いて練習して体で覚えたほうが捗る。人によると思うけど。

速度について
 "Poco moto"という指示がある。"moto"というのはあまり聞かないけど、「動き」というような意味、英語のmotionに対応すると思う。"poco"は「ちょっとだけ」なので、合わせて「ちょっとだけ動きを伴って」という感じになる。速度じゃないやんってツッコミを受けそうだけど、速度の指示なんてそんなもんで、演奏者が勝手に解釈したら良いというものが多い。定量的な速度を指定したかったらメトロノームで示すからこれでよい。

3034小節

 32分音符のパッセージで、メカニカル的にはここが最も難しくなる。とはいっても、せいぜい音が崩れやすいってくらいですごく速く弾こうって思わなければ特に苦労はないと思う。この部分を弾く速度で全体の速度を決めたら良いと思う。

5974小節

 長いので譜例は59小節だけ。
 クライマックスに向けて盛り上げる部分。
 左手に指番号の指示がある。この指使いにしなければならないわけではないが、ちゃんと指を交代して演奏しないと拍感がおかしくなる。
 この区間は強弱の指示があるが、どこまで強く弾くかは指定がない。人によってmf~ffくらいの違いはあると思うが、自分が良いと思う強さまで盛り上げたら良い。また75小節でいきなりpに、76小節でppになる。ここのところはデクレッシェンドがないことを間違えないように。

7782小節

 ここがクライマックスとなる。
 ここでもクレッシェンドした先の強さが書いてない。矢張り好きに弾いたら良い。分散和音でクレッシェンドと共に上昇したあとに半音階で下降する部分にデクレッシェンドが書いてないけど、上昇:クレッシェンド、下降:デクレッシェンドの原則を考えるとこの下降部分は音を弱くするべきじゃないかと思う。いきなりppにするのは不自然だけど、どういうことだろ。
 音域が広く演奏者にとっては見せ場となる。見せ場だからといって調子に乗って速度を上げないように。

ブルクミュラー25の練習曲 15.バラード

 ブルクミュラー25の練習曲より15番バラード。
 25番「乗馬」と並ぶ人気曲。中学の頃、この曲が好きで毎日弾いてた。手に馴染みすぎていて、ここが注意とかいう箇所が見えなくなってる。
 楽譜は全音を使う。
 バラードというのは物語性のある曲という意味で、日常的に聞く単語とはちょっと異なった意味なのかもしれない。
 曲の構造はABAコーダというよくあるやつ。c:Iの和音を多用しており、とても覚えやすい。
 冒頭のmisteriosoは「神秘的に」という意味。

テンポについて
 付点四分音符で68~76bpm。それなりに速いけど、チェルニー30番みたいに全力で速度を出す必要はない。速度よりも16分音符を正確なタイミングで演奏することに注力するべき。
 また、あまり速くすると中間部3146小節のdolceが全然柔らかくなくなってしまう。

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