白亜ノ森 楽譜

 SQ3より、白亜ノ森。以前録音したけど、楽譜はまだだったのでアップした。
 音取りしながら同時にアレンジをしていくスタイルなので、結構修正しながら進めて、音を取り終わってもやっぱりここが気に入らんとか色々あって、あちこちに修正した部分が飛んでいたりするため、スキャンしたものをそのまま出すわけには行かず、読みやすいように順番に配置し直したものを作ることになった。そのため、見てもらえば分かるがツギハギになっている。
 自分でアレンジした曲なので解説とかしたくないのだけど、1箇所だけ、6ページ目の最後の段、最初の小節。

 グリッサンドについて。普通、グリッサンドは最初の音と最後の音を指定しておいて、その2音を線で繋いでグリッサンドと表記する[註1]。また、鍵盤の上で指を滑らせる奏法である以上は全て白鍵か黒鍵で構成されなければならない。
 ここでは開始の音を指定していないし、変ホ長調の調合(フラット3つ)が付いている。これは主旋律を構成する音階としてのグリッサンドではなく、ただの装飾音に過ぎないということで音楽としてあまり重要な音ではないことをまず念頭に入れておいてもらいたい。だからこそ目立たないようにピアニシモを指定している。そして、グリッサンドの最後の音がBとなれさえすれば、開始の音はどれでも良い。旋律を構成する音ではないので、いっそ全てなくしても構わないくらいの重要性である。そして、最後のBだけど、左手のアルペジオの最後のBを右手で取るように指定しているが、このBがグリッサンドの後に続けて弾くBとする。だから、より正確に表記し直すと次のようになる。

 変ホ長調であることに付いては、このグリッサンドに限って調性は無視してハ長調として弾く。音楽にうるさい人の中には、「変ホ長調の中でハ長調を混ぜるなんて!」とご立腹の方もいるかも知れないが、そういう方はグリッサンドは止めて、適当な速度の下降スケールにしたらいいと思う。開始音を指定していないし、そんなに速く演奏するよう想定していないので普通に弾けないこともない筈である。少なくとも5ページ2段目に出てくるパッセージくらいの速度が出せるなら行けるなじゃないかな。
 最後の音として指定しているBだが、これはグリッサンドでは弾かない。グリッサンドに指定しておきながらグリッサンドで弾かないのだから無茶苦茶である。実は、当初はテキトーに下降グリッサンドを弾いて、最後にこのBに飛び付くという想定で書いたのである。自分でわかれば良いという程度の書き方である。だから、グリッサンドの最後の音はHにしてその後にグリッサンドとは違う音として伴奏最後のBを右手取りするように表記している。

註1 グリッサンドの表記について
 グリッサンドの表記は上で書いたように最初と最後の音を線で結ぶのが基本的な表記だけど、そうと限ったわけではなく全部の音を書いてしてグリッサンドと表記する記譜法もよく使われる。例えばベトソナ21番[1]

あるいは、半音階のクロマティックグリッサンドであれば、それと分かるように表記する[2]

 グリッサンドという語もglissando及びgliss.という省略語の他、glisade, glissato, glissicando, glissicatoといろんな書き方がある[3]
 色々と書き方はあるけど、演奏者にその意図が伝わればどう書いたっていいとうこと。逆に言えば、意図が伝わらない表記は意味がないということになる。
 結局、重要なのは陳腐ではあるが楽譜を書く側は読む人のことを考えて読みやすいように、楽譜を読む側は作曲者が何を表現しようとしたのか考えることである。つまり、白亜ノ森では読む人というのはすなわち自分であるから、何も気を使うことなく書いたわけである。

参考文献
 [1]ハロルド・クラクストン, ベートーヴェンピアノソナタ集 (2巻)p239 , 全音楽譜出版社(1972)
 [2]菊池有恒, 楽典 音楽家を志す人のためにp169, 音楽之友社(1988)
 [3]遠藤三郎, 独・仏・伊・英による音楽用語辞典 【改訂版】p86, シンコー・ミュージック(1991)

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