コロイド分散液の濃度と密度 追記

 1年くらい前にコロイド分散液の濃度と密度の関係について説明した。
コロイド分散液の濃度と密度
 分散液の密度をd、溶媒(分散媒)の密度をDL(g/cm3)、粒子の密度をDs(g/cm3)、粒子の濃度をC(wt%)とすると、
 { \displaystyle d = \frac{100 \cdot D_L \cdot D_s}{C ( D_L - D_s ) + 100 D_s} }
となる。というものである。
 今回は、温度によって溶媒の密度が変わるという点を式に組み込んでみることにした。ただ、前回ほど簡便なものではなくはっきり言って蛇足に近いし、DLに求めたい温度のときの密度を入れるだけで済む問題である。それでも、一応こういうのはちゃんと出しておかないといけないと思うので説明する。期待の状態方程式なんかを正確に表現しようとすると複雑化していくようなものだと思ってもらうといいかもしれない。

以下の条件を追加する。
・溶媒は仮に水とする
 説明本文を読んでもらえば水以外でも出来ることは理解いただけると思う。
・粒子の密度は温度で変化しない
 これも別に変化してもいいんだけど、その場合はDsの代わりに複雑な式が入ってくるだけなので。

 実際にやることはDLに温度と密度の関係式を嵌め込むだけなので、見た目が複雑になるだけで、難しいことはしない。
 ここでやらなければならないのは温度と密度の関係式を作ることである。そんな都合の良い式があるわけではないので、便覧とかからデータを引っ張ってこないといけない。
 とはいっても、ネットで探せばすぐに出てくる。流体工業株式会社の技術資料 液体編6.  水の密度 、粘度 、音速(魚拓)というのが見つかったので、これを使う。なお、この表だと4℃以下がないので、こちらの水の密度表(魚拓)を使った。
 これをグラフにプロットして、近似曲線を求める。これが温度と密度の式となる。

 ここから近似式を求める。最小二乗法の説明とかしても仕方ないので、エクセルが出力する近似曲線をそのまま使う。近似は4次方程式で行った。

 この近似式は書いてある通り。
y = -1.41270E-10x4 + 4.36996E-08x3 - 7.63960E-06x2 + 5.29364E-05x + 9.99898E-01
 こいつのせいで面倒くさいことになっている。
 そのまま式に組み込むのは邪魔すぎるので桁数を下げたい。そこで、桁数を下げたグラフを描いてどこまで精度を下げても使えるかを調べる。

 1本の線に見えるけど、小数点以下を1~5桁まで四捨五入して求めたグラフである。よく見ると完全には重なっていない。
 なんと、小数点以下一桁まで下げても問題なさそうである。
 そんな訳で、水の温度と密度の関係式は以下のものとして扱う。
y = -1.4E-10x4 + 4.4E-08x3 - 7.6E-06x2 + 5.3E-05x + 10.0E-01
 以上より、温度をt(℃)とすると、濃度、密度、温度の関係以下のように示すことができる。
{ \displaystyle d = \frac{100 \cdot D_L \cdot D_s}{C ( D_L - D_s ) + 100 D_s} }
ただし、{ D_L = -1.4 \times 10^{-10} t^4 +4.4 \times 10^{-9} t^3 - 7.6 \times 10^{-6} t^2 + 5.3 \times 10^{-5} t +1 }

 前回みたいに、チタニア粒子について3パラメーターを変動させたのを計算して立体グラフにしてやろうかと思ったのだけど、温度と密度の関係の変動が最大で5%弱の減少しかしない地味なものであり、視覚的に劇的な効果とか全く期待できないのでやらないでおく。

関連エントリー
 20170429 コロイド分散液の濃度と密度