台湾の国籍法

 昨年の10月頃に民進党の総裁選に際して蓮舫二重国籍疑惑が話題になっていた。蓮舫民進党の党首になって、どういうわけか何も説明もせずに収束した。
 最近になって、この話題が再燃しているようだ。聞けば民進党の内部から戸籍謄本を示して説明するべきとの意見が出てるから[1]、そのためかもしれない。それにしても、総裁選前に疑惑ははっきりしており、その上で当選させたというのに支持率が落ちてきたら疑惑を晴らすべきとか、随分勝手だなと思う。
 それはともかくとして、台湾では国籍離脱の手続きの際に有効なパスポートを示さなければならないという噂があった[2]ので調べてみた。

 まずは台湾の國籍法を読んでみた。
 國籍法の条文中にパスポートを意味する「護照」という語は出てこないので、國籍法にパスポートを示さなければならないということは書いていない。
 それで、國籍法の周辺規則にあるのかと調べてみたところ、國籍法施行細則国籍喪失の申請をする際にパスポートが必要な場合がある、というようなことが書いてある。
 第11条と第12条が一緒になっているのでまとめて引用する。

第 11 條 外國人申請歸化,未能依本法第九條第一項規定於期限內提出喪失原有國 籍證明者,至遲應於屆期三十日前檢附已向原屬國申請喪失原有國籍之相 關證明文件申請展延。
第 12 條 依本法第十一條規定申請喪失國籍者,應填具申請書,並檢附下列文件:
一、具有我國國籍之證明。
二、無欠繳稅捐及租稅罰鍰之證明。
三、未成年人附繳其法定代理人同意證明。
四、受輔助宣告者附繳其輔助人同意證明。
五、役齡男子附繳退伍、除役、退役或免服兵役證明。
六、其他相關身分證明文件。
戶政事務所於受理前項申請案時,應同時查明申請喪失國籍者之刑事案件 紀錄及戶籍資料。但未滿十四歲或未曾於國內設有戶籍者,免查刑事案件 紀錄。
第一項第一款所定證明,指下列各款文件之一:
一、戶籍資料。
二、國民身分證。
三、護照。
四、國籍證明書。
五、華僑登記證。
六、華僑身分證明書。但不包括檢附華裔證明文件向僑務委員會申請核發者。
七、父母一方具有我國國籍證明及本人出生證明。
八、歸化國籍許可證書。
九、其他經內政部認定之證明文件。
第一項第六款所定證明文件,指下列各款文件之一:
一、未能檢附戶籍資料者,檢附結婚、認領、收養、監護、輔助宣告或未成年子女權利義務行使負擔之證明文件。
二、依本法第十二條第一款但書規定之僑居國外國民,應另檢附僑居國外身分證明文件。其入出國日期紀錄及遷出國外戶籍資料由內政部代查。

 だいたい次のようなことが書いてある。

 国籍喪失の申請に際して次の書類を同封して提出しなければならない。
1. 中華民国国籍の証明書。
2. 税金を納めている証明。
3. 法定代理人からの同意書。
4. 後見人からの同意書。
5. 兵役に関する証明書。
6. その他の身分証明書。
 戸政事務所はこの申請を受けた時に申請者の犯罪歴を確認しなければならないが、14歳未満は免除される。
 第1項第1款の証明書とは、以下のどれかを示す。
1. 戸籍登録記録。
2. 国民身分証明書。
3. パスポート。
4. 国籍証明書。
5. 華僑登記証。
6. 華僑身分証明書。ただし、華僑総務委員会発行の証明書は含まれない。
7. どちらかの親の中華民国の国籍証明、及び、本人の出生証明。
8. 帰化国籍許可証明書。
9. その他内政部の認める証明書。
 第1項第6款の証明書とは、以下のどれかを示す。
1. 世帯登録謄本を提出することができない者は、婚姻、養子縁組、後見などについての証明書。
2. 第12条第1項の規定にある外国籍の国民のために、出入国証明書、海外移住証明書、海外移住者身分証明書等の身分証明書。

 こんな感じなんだけど、問題となるパスポートは第1項第1款の証明書の1~9の中の3番目にある。1~9の中のどれかかを提出しなければならないということだから、パスポートである必要はないということになる。
 また、この条文には「護照」と書いてあるだけで、「現在有効な」という語は見当たらない。パスポートと言ったら当然有効なものを示すということならそれでよいのだけど、どうなんだろう。
 ともかく、以上の通りパスポートが絶対に必要というわけではないようなので、蓮舫を攻めるための論拠がいくらか崩れるんじゃないかなと思う。
 蓮舫はすでに二重国籍を認めたし、国籍離脱の手続きも済ませたと言ってるので今更という感じがしないでもない。

参考文献
[1]蓮舫氏、戸籍謄本の公開を表明 二重国籍問題, 時事ドットコム
[2]台湾の国籍喪失には「現在有効な」中華民国パスポートが必要(魚拓), 帰化申請ブログ