日韓交渉報告 請求権関係部会

 少し前から日韓基本条約の交渉で慰安婦に関して言及がされているという文書が出回っていて、何だろうなと思って調べてみた。

 日韓基本条約の交渉で慰安婦問題が討議されたことはないなんて信じている人(魚拓)も世の中にはいるみたいだけど、この通りちゃんと慰安婦にも言及している。まあ、2005年時点では韓国政府でさえ「慰安婦、サハリン残留韓国人、韓国人原爆被害者」は請求権交渉の対象に含まれなかったと主張してるくらいだからその下請け連中の認識も同様でしょう。
 この文書では慰安婦に対する未払いの給与についての交渉だけど、日弁連(魚拓)を始め反日パヨクの方々が言うように日本軍が朝鮮の少女を強制連行して性奴隷にしたのであれば、当然未払いの給与などよりも優先順位を上に持ってくるはずである。ましてや、この交渉は李承晩の日本領海侵略で拉致した多数の日本人を人質として圧倒的に有利な交渉ができる状況である。そんなネタがあれば必ず請求項に含めるのに、それをしないというのは事実がどうであったかは容易に想像できる。
 さて、この文書の発信元だけど、日韓会談文書・全面公開を求める会(魚拓)というところらしい。このサイトのコンテンツをいくらか読んでみると、日本は未来永劫韓国に対して賠償をし続けなければならないみたいな内容で、またいつものあいつらかという感想しかでてこない。連絡先の東京都新宿区四谷3-3 エスパスコンセール4F J&K法律寺務所というのを調べると在籍弁護士は梁文洙、張界満という二名である。

◇梁 文洙 やん むんす 第二東京弁護士会
日本で生まれ育った在日韓国人三世。1990年4月に韓国の延世大学語学堂に1年間留学し,韓国語及び韓国事情を学ぶ。 帰国後,ウリ法律事務所(金敬得弁護士)にて勤務
在日コリアン弁護士協会
日本弁護士連合会人権擁護委員
NPO法人同胞法律相談センター相談員
在日本大韓民国みんだん生活相談センター相談員
◇張界満 弁護士 神戸大学法学部卒 2000年弁護士登録

 張界満の方は検索してもあんまりヒットしないのだけど、朝鮮のために働いているのと死刑反対の活動をしている。名前や活動履歴から朝鮮人と見て間違いがないけど、こういうのが日本人のふりをして政治活動をしているというのは、この会「日韓会談文書・全面公開を求める会」の頭に「日韓市民で作る」と付いていることからも分かる。
 それはそうと件の文書は第6次開示決定文書 2008年11月16日というページで発見した。1081-693という項目である。日本に永遠の賠償を求めるための活動の一環でありながら、恐喝のネタを逸するという皮肉な結果となっている。認知バイアスで日本を悪者にしなければ生きていけない種族だから仕方がない。
 ここでダウンロードしたファイルは.xdwという見たこともない拡張子のファイルであり、調べたらFuji Xeroxの文書を管理するようなファイルらしい。ゼロックスScanSnapみたいにスキャンしたデータを管理するのに使うのだろう。DocuWorks Viewer Lightというソフトで開くことができる。
 態々これを見るために他に使う予定もないソフトをインストールするのも躊躇われるという人は多いと思うので、PDFに変換したものを置いておく。
 日韓交渉報告(請求権関係部会) 2006-00588-0693-01-01-IMG.pdf

 ファイルは紙の報告書をスキャンしただけのもので読みにくいのでテキストで書き出した。何かに役立てる機会があれば良いと思う。誤字とかあると思うけど、適当に改めてもらいたい。

日韓交渉報告(六)
 請求権関係部会第一回会議状況 久保田参与 28,5,11
一、本件会議は五月十一日午前十時十分から約四十分間、外務省で開催された。
二、久保田代表から、請求権問題は客年の日韓階段中絶の原因となつた問題であるが、今回の交渉においても、これについて基本的な法理論の闘技を繰り返すとなれば際限のない議論となるおそれがあるので、今回は根本的な議論は暫く棚上げして、より実際的な話合をすべきではないかと思う旨の挨拶があり、
 これに答えて、韓国側張代表は要旨別添の如き挨拶を述べたが、その中で(イ)韓国側が、従来の法律論の段階は終わつたとして、実務的、実際的解決を希望し伸縮性に富んでいる気配の看取されたこと(ロ)しかしながら、その前提として、日本に請求権なしとする昨年四月の米国国務省の梁大使あて書簡を提示したことが注目された。
三、ついで、議事手続きについて決定したが、超代表は特に、会議は、場合によりもつとくだけた非公式かつ小範囲の折衝により勧めたい旨を述べ、久保田代表はこれを了承した。
四、次回会議は、五月十九日(火)午後三時から外務省において開くことに決定し一応閉会し席を改めた後、石田理財局長から、次回の議題に関して、とりあえず本日韓国側提示の米国務省所管について討議方申出たに対し、先方はそれでは前回の繰り返しになると回避したので、双方の実情を話し合つて現状を検討してみることとし、最初から結論や法理論を振りかざすことは避けたいと改めて提議し、これに対し、張代表から、問題を事務的、継続的に話合つてその中から解決の可能性を発見しようとする方式には依存なく、幹事もしくはワーキング・グループにより早急に進めたく、次回は具体的な話合をなし得るよう準備する旨を答えた。
別添
 請求権関係部会第一回会議における張代表挨拶要旨
「請求権問題に関しては、韓国側においても、原則と法理論の段階は既に終わつていると考えている。この問題は一見複雑なように見えるが、実は簡単な事務処理の問題にすぎないもので、このことはやがて話合における本代表の議題と内容を通じて実証されるであろう。請求権問題は過去の好しからぬ両国間の経済関係を清算する問題であつて、そのためには最小限度不愉快な過去のことを持ち出さなければならぬが、暫く忍耐し努力して、できるだけ早く両国間の正常な経済関係の樹立に務めることとしたい。先日、他の部会において日本側代表の一人が日本側の新らしい立場を云々あsれたが、じぶんとしてはこのような自体の変更があつたればこそ、本問題の如き過去の生産の問題は迅速に決定したい。今後の会議において韓国側は率直感銘、事務的に発言したいので予め了解を得たい。なお、同じ討論の繰り返しによつて昨年の失敗を反復しないために、この問題に関する米国務省責任当局の書簡(別添)を本挨拶の付属として提示したい。」


April 29, 1952

Excellency:
I have the honor to acknowledge the receipt of your note of March 25, 1952 in which you request an official United States interpretation of the effect of Article 4of the Treaty with Japan, and the relevant directives of the United States Military Government with respect to the property of Japan and Japanese nationals in Korea.
The United States is of hte opinion that by virtue of Article 4(b) of the Treaty of Peace with Japan and the relevant directives and acts of the United States Military Government in Korea all right, title and interest of Japan and of Japanese nationals in property within the jurisdiction of the Republic of Korea have been divested. Accordingly, in the opinion of the United States, valid claim to such assets or to an interest therein cannot be asserted by Japan. The disposition of such assets, which Japan has recognized as valid in Article 4(b) of the Treaty, is relevant, however, in the opinion of the United States, inthe consideration of the arrengements contemplates by Article 4(a) of the Treaty.
Accept, Excellency, the renewed assurance of my highest consideration.
For the Secretary of State

His Excellency
Dr. You Chan Yang
Ambassador of Korea, Washington, D.C.
 財産請求権関係部会第一回会議における久保田代表挨拶
  昭和28,2,11
 まず、今回会議のためわざわざご来日せられた諸代表に対し、衷心歓迎の意を表します。
 われわれのグループの課題である財産請求権の問題は、昨年の会議のまとまらなかつた要因となつた問題でありますが、今回もまた基本的な理論的展開をくりかえすとしますれば、このグループは全く際限のないディベィティング・ソサイアティとなるかと思われます。
 そこでわれわれとしましては、できることなら、理論は理論としてしばらく棚上げとし、現実的な角度から問題に取り組むことが可能なりや否やを検討し、そのために必要な作業にお互いに協力するといつた行き方をしてはいかがかと考えるのでありますが、いかがなものでありましようか。
 開会にあたり、一言歓迎の言葉を述べ、ご挨拶をいたした次第であります。
  第1回請求権関係部会における張基栄代表の挨拶(訳文)
    アジア第二課
    28,5,11
 韓日会談財産権文科委員会開会における韓国側代表の挨拶の言葉
 前回の会談が中断されるようになつた直接原因たりし財産及び請求権問題を処理するため、本日よりこのように貴国側代表と実務の会合をまたもつようになつたことを、韓日国交調整は勿論のこと、進んで韓日間の経済提携促進のために多幸なことと考えると同時に、将来この文科実務会議をして有終の実を挙げしめることにつき責任の一端を感ずるものであります。
 本代表は財産及び請求権の主張に関する原則と法理論の段階は終わつたとの見解をもつているものでありまして、本来財産及び請求権問題は、昨年二月二十日第一次文科委員会で韓国側林松本代表が提言したように、一見非常に複雑なもののごとくであるが、実は至極分明簡単な事務処理にすぎないものであります。かかる私の見解は、今後本実務会議を重ねるに従い、本代表が提示する議題内容と方法によつて実証されるものと信ずるところであります。
 要するに、不名誉なりし過去の両地域間の財政、経済関係を清算する問題は、最小限過去の記憶を新たにさせる点でも、お互に決して愉快なことではありません。しかし、かかる不快な過去を早く忘れてしまい、まさしく衡平の精神による韓日間の国交の調和と、特に両国の将来の利益のための正常なる経済関係の協調発展のためには、われわれはこの問題の迅速、妥当なる処理にあたつて、暫く忍耐と努力と反省を用意しなければならないのであります。
 数日前他の文科実務会議で帰国側代表のお一人が、昨年の会議のときに比して帰国の事態の変更があること、再現すれば、昨年四月二十八日以後の貴国の新しい立場を含蓄をもつて強調されたのを承りましたが、本代表の意見としては、そのような事態の変更があればこそ、財産及び請求権問題の如きものは、過去を精算し、新しい事態の発展に即応するために、このような所謂静的な過去の問題の集結を迅速果敢に決定し、お互いの国際間の信頼を向上させ、民主友邦の期待に背くことのないようにすべきものと考えるところでありまして、今後本会議の進行において、韓国の主張は常に率直簡明に、事務的に表示いたしたく、予め貴方の了解を求めておきたいと思う所以であります。
 最後に、双方で同じ討論による昨年の失敗を反復しないために、所謂在韓財産の帰属処理に関する米国務省責任当局の交信の写を本日の挨拶の言葉とともに提示いたしますから、査覧あることを願います。以上本代表の期待と希望を開陳して挨拶にかえるものであります。
日韓交渉会議議事要録(六)
 第一回請求関係部会
  アジア曲第二課
  昭和28,5,11
一、日時及び場所 1953年5月11日午前10時
 10分-同50分 外務省4319号室において
二、出席者
 日本側 久保田代表
      石田大蔵省理財局長
      吉田大蔵省理財局総務課長
      上田〃   〃   外債課長
      重光外務省条約局第三課長
      (広田アジア局第二課長は欠席)
 韓国側
      張基栄 外交委員会委員
      洪璡基 法務部法務局長
      林松本 殖産銀行頭取
      (李相徳韓国銀行外国為替部長が未着のため、客年の請求権委員会の代表委員であつた林松本がオブザーバーとして出席した)
三、挨拶
 まず、久保田代表より、日本側部会メムバーを紹介した後、財産、請求権の問題は、隔年の日韓会談全般を中絶に導いたが、本部会においても法理論を討議していては際限がないので、日本側としては、根本的な対立を暫く棚上げにしておいて、最も実際的なやり方で討議して行き相互の理解を深めていくことを考えておる旨を述べた。
 それに対し、張委員は準備してきた別紙一の挨拶を披露した。

四、議事概録
 議事手続きに関して次のような討議と合意が行われた。
(1)用語及び記録
 用語は、日、韓、英三国語とし、発言は随時自由に行う。合意議事録は作製しないこととするも、韓国側においては、本日の正式挨拶の如き重要な文書については特にコッピーを提示する旨を訳した。
(2)本部会で問題となつた点(一致、不一致とも)については、随時双方合意の上で本会議に上程する。
(3)新聞発表に関して、張代表から、他の部会においては発表しないことになつておるに拘わらず、会議の記事が出ていると指摘し、久保田代表より、新聞は大体検討をつけて報道しているのであると答えたところ、会議の報道を正確ならしめる意味から、必要に応じて合意の上なら発表しては如何と提案し合意の上なら差し支えないと意見の一致をみた。
(4)会議の方法に関し、張代表は、この文科委員会の討議がフリー・トーキングであるにせよ場合により、もつと範囲を狭めくずした形(非公式会談)で話を進めていきたい希望である旨述べ、久保田代表これを了承した。
五、会議終了後の懇談において、次回の議題に関して協議したが、石田局長より、取敢えず本日韓国側が提示した米国国務省の書簡について討議方申出たのに対し、韓国側は、前回の繰越しになるから避けたいと答えたので、同局長はさらに、相手国の財産処理等の実情がわからなければ話の仕様もないので双方とも実情を話合つて現状を討論したら如何、最初から法理論を振りかざし、結論を急ぐことは避けたいと述べた。これに対し、張代表は、問題を事務手にかつ継続的に討議していき、その間に解決の可能性を見出すというやり方については異存がない、幹事もしくははワーキング・グループによつて早速始めたい。韓国側においても次回は具体的な話合をなし得るよう準備すると応じた。
日韓交渉報告
 請求権関係部会第二回会議状況 久保田参与 28,5,19
一、本部回は、5月19日午後三時十分から約一時間にわたり外務省で開かれた。次回会議は6月2日午後三時から同じく外務省で開かれる。
二、前会議において韓国側から提示された梁大使あて米国務省書簡に関し、久保田参与から、わが方の純法律的見解は昨年会議の時と何ら変更されているわけでないが、いまはこれにふれることなく具体的な事実に基づいて問題は解明していくことが懸命であると思われる旨を述べたところ韓国側張委員もこれに賛意を表し、法理論は後回しとして実際的な問題から話し合い、それによつて法理論の差をなくするようにしたいと答えた。
三、本部会の今後の運営方法について、わが法より、小分科会を設けて形式張らずに話合つては如何と提議したところ、韓国側はこれに積極的に賛意を表し、毎日でも良いから形式張らないで継続的に話合いたく、本部会においては主たる項目につき説明し史料を提示し合て共同研究を行いたいと述べた。
四、なお、韓国側から主として左の項目について簡単な説明があり日本側との間に事実問題に関する質疑応答が行われた。
 (一)朝鮮の地図原版類、国宝文化財等(いずれも別途史料提出済)
 (二)旧日本軍に属した韓人、徴用労務者に対する未払金(史料別途提出済)
 (三)在朝鮮日銀券および引揚韓人預託金
 (四)南方占領地域慰安婦の預金、残置財産
 (五)在鮮有価証券、預金の処理
 (六)パシフィック・ビル及び朝鮮奨学会財産
日韓交渉会議議事要録(12)
 第二回請求権関係部会
  アジア局第二課
  昭和29,5,19
一、日時及び場所、1953年5月19日午后3時10分-4時、外務省419号室において
二、出席者
 日本側 久保田代表
      石田大蔵省理財局長
      吉田〃   〃   総務課長
      上田〃   〃   外債課長
      広田アジア局第二課長
      (重光外務省条約局第三課長は欠席)
 韓国側
      張基栄 外交委員会委員
      洪璡基 法務部法務局長
      韓奎永駐日代表部三等書記官
      林松本外交委員会委員、(殖産銀行頭取)
三、議事概要
 (一)冒頭、久保田代表から、前会長代表の挨拶に引用された米国国務省発梁大使あて書簡に関し、日本側の回答を申し上げるとして、我方においては同署間の内容についてはつとに承知していたものであり、法律問題に対する日本側見解は従来と変わりがない、然し本部会の討議において法律論に拘つていては議事が進まないのでファクト・ファインディングを行って問題を解決していくことにしたいと述べた。また石田局長から今後の議事運営に関し、細かい問題は小分科会に譲つて余り形式張らずに迅速に議事を進めていく方法に賛同されたいと補足した。
 これに対し、張代表から、久保田代表が指摘された書簡については、前回会議に出るに当たつて首席代表からも法律問題は後廻しにして実際問題からアプローチして行けという話もあつたし、自分も法律論に触れないでやつて行くということには同感であるので、実際問題から話合つて行き法律論の差を少くするようにしたい、又形式張つた会議を一週に一回位やつてもらつて常設的かつ継続的に話合うこととしたい、自分は本問題が専門であるのでできれば毎日でも問題を討論して行きたいと考えている、先日、国宝、非徴用者の未払い給料に関する資料を差し上げておいたが、本日も請求権問題と云うより、未清算の諸項目を出すから実態を洗うという含みでフリー・トーキングをして研究していきたい、必要な資料は引きつづき差し上げる、と述べ我方の賛成を求めた。

(二)久保田代表から意義のない旨を答えたところ張代表は以下の四項目について説明を行つた。
 (1)先ず日本側の意見を承りたいのは、日本では昨年聖戦傷病者戦没者遺家族援護法が出て援護をやつておわれるが、韓国でも、この太平洋戦争中の戦死傷者の問題で苦しい立場にある。少し古い統計ではあるが、確認された戦死病者は4800人で行方不明者は七万人位ある。この人たちに対して日本側が援護法をつくつた時にこうりょされたかどうか、この会議の席でもいいし、非公開でもよいからお話を承りたい。
 (2)上田課長に話しておいたとおり、非徴用者の未払い給与その他の問題はSCAP時代から進捗していた。韓国でも軍政下にあつて全国的な申告を求め、46年9月30日現在の調査によると徴用されたものは10万5千名でその中1万6千名の死亡が確認されており、約7千名が傷病した。これには詳しい統計がある。日本側におけるSCAPからの引継がどうなつているか、如何に処理される心算か、公式でなくてもいいから方針を伺いたい。
 (石田局長の質問に対し、張は調査は申告を主とし、申告のあつた死亡者が四千八百名で、非徴用者のうち一万六千名のみ帰国者がありその中には死亡者もいると考えられると述べた。)
 (3)次に在韓日銀券問題に言及し、戦後朝鮮銀行が日銀券と鮮銀券の交換を命ぜられまた一部には帰還者に両替してやつたものもある。この日銀券は米側の命令で■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■立会で償却されたが日本銀行の当然の通過債務であり、自分としてはこの会議とは関係なしにでも生産されるべきものであると考えている。
 (4)日銀券問題と似せたものに日本あるいはその占領地から引揚げた韓国人の預託金の問題がある。これは日銀券持ち出し制限で預けたまま帰国したものであり、本人から申告をとつたことがある。その数字は一億以上になつており、これを担保にするから金を貸してくれというものもある。
 また、韓国女子で戦時中に海軍が管轄していたシンガポール等南方に慰安婦として赴き、金や財産を残して帰国してきたものがある。軍発行の受領書を示してなんとかしてくれといつて来るので社会政策的に受取を担保にして金を貸したこともある。
 以上述べた四項目については、後から貴方の資料で実態を堅めて行きたい。

(三)張代表は次で国宝の問題に移つたので、広田課長より韓国側が提示されたリストに基づいて各方面につき実情調査中であるが膨大なものであるから、相当の時日を要する旨を述べたのに対し、張から国宝については戦争直後よく調べたことがあり、さらに昨年韓国の在日学生が研究調査したもので、その内容は正確と思う、また徳富氏著書及び韓国学者の調査にもよつた。韓国の博物館は殆ど型をなしていない。戦争時一番大切なものは移転したが、戦火で大きな被害を受けている。国宝については日本側で政治的に考慮される余地が十分あると思う。学者は勿論李大統領も国宝について大きな関心を示していると述べた。
(四)張代表は、次で有価証券の問題に移り、韓国では1947年に法人、個人を通じて有価証券の調査が行われた。鮮銀関係のものについては清算問題の核心をなすものであるから別に説明を願うとして、日本における一般の取扱について伺いたいと説明を求め、上田課長及び吉田課長から交々、預金の封鎖は行われたが国債については何ら措置を取らなかつたこと、並びに企業再建整備法で旧株券が半額位になつたこと、特別措置法によつて企業預金が第二封鎖で切り捨てられたものもあることを説明した。
 鮮銀券について、石田局長から、連合国が占領した地域においていかに措置されているか不明であり、この問題では日本人の間でも補償問題に関連して喧しく論議されていると答えた。
 張代表は、日銀券について日本銀行の負担となる額は15億円くらいで、その他に約三百万円くらいの日銀券を保管しておりその入手経路はすべてはつきりしたものである、スキャップ時代にこの日銀券は清算できたものを、どうして今まで持ち越されたかわからないと述べていた。
 上田課長から、先日韓国側から提示された日徴用者の未払給料に関する往復文書につき、CPCの数字には誤りがある旨を指摘し、外に補足的資料の有無を質した。

(五)次で張代表から、旧朝鮮総督府東京出張所及び朝鮮奨学会の建物について質問があり、前者についての真の所有者は朝鮮交通共済組合であり、CPCのが干与して処分してしまつたと聞いておるがその結果を承知したく、実情については書き物で後から上田課長に差し上げる、また奨学会建物について現状を承知したいと述べた。
(六)久保田代表から、今後の請求権問題討議の運営方法を諮つたところ、張から石田局長と連絡をしてやつて行くことにすると述べたが同局長から、広田課長を経由したほうが都合がよい大蔵省でもわからぬことが多いから、外務省で仕分けしてもらつて関係省からの出席を求めることが必要と思う、外務省からも一人立ち会つてほしい、大蔵省では連絡に主として上田課長が当る旨を述べた。
 右に対し張から日本側に提出する資料は二部作製し、一部は外務省に渡すから外は関係者に渡されたい、また韓国側においては連絡は韓書記官に当たらしめることとすると述べた。

四、最后に久保田代表から新聞発表に関し、最近の読売の記事を引用し、新聞が想像記事をのせているのでこの辺で少し簡単な発表をしたらどうかと提案したのに対し、張も最近のAP電に触れて本国でも会談敬意について知りたがつているから発表には賛成で、その内容は希望を抱かせるものにしたいと、双方は発表に合意し、日本側で制作した発表案を持ち帰つた(同案は韓国側において若干訂正の上別紙のように発表された。)
五、次回会議は準備の都合もあり暫く余裕をおくこととし外務省において6月2日(火)三時開催されることに予定した。
新聞発表案
 注、括弧内は韓国側の希望によつて挿入したものである。

 5月19日、請求権関係部会第二回会議においては、双方協力し、財産、請求権の実態を具体的に明らかにすることに意見の一致をみ、(韓国側より一部資料についての説明あり、)今後随時連絡しつつ作業を進めることにした。
AIDE-MEMOIRE on talking of the '14th May, 1953
一、韓国々宝、歴史的記念物(美術工芸品、古書籍その他)
 返還請求に関し目録提示打ち合わせの件
二、韓国地図原版、実測地図及び海図返還請求に関し目録提示打合せの件
三、韓国人(法人も含む)所有の日本有価証券(公債、社債、株式その他証券)償還その他取扱方法に関する日本側意見照会の件
四、韓国人被徴用労務者に対する諸未払金供託分に対する資料打ち合わせの件
AIDE-MEMOIRE on talking of the 23rd May, 1953
一、1945年9月30日付SCAPIN74号による特定在韓活動閉鎖期間(朝鮮銀行、朝鮮殖産銀行、朝鮮信託株式会社、朝鮮金融組合連合)の在日財産の実態並びにその管理条項紹介の件
二、1945年9月22日付SCAPIN45号及び1948年11月17日付SCAPIN1965号に関連する在韓会社349社の在日財産管理、清算状況及び同署所有有価証券再発行状況紹介の件
三、太平洋戦争中の韓国人戦傷病者、戦歿者74800名(未確定概数、追て名簿提出可能)に対する弔慰金等措置に関する日本側対策または意見
四、太平洋戦争中韓国人被徴用労務者(1946年9月30日現在、申告者数105,151名内徴用中死亡者12,603名、同負傷者7,000名但し、以上は未確定数なるも、追て名簿提出可能)に対する諸未払い金の予備弔慰金等措置に関す売る日本側対策または意見
五、韓国内において交換回収しSCAP要員並びに日本銀行員立会の下に焼却せる日本銀行券及び日本政府紙幣代り金清算方法並びに時期に対する日本側意見
六、韓国人が日本および日本占領地域より帰国の時、当該地日本官憲に強制的に保管帰宅せる日本銀行券、日本軍票、日本政府紙幣等保管状況及び同代り金清算方法並びに時期に対する日本側専門意見
七、戦争終結直後朝鮮銀行が建て替え支払いたる日本政府一般会計オ出国庫金742,859,002円及び日本銀行に対する貸越金158,889,842円清算方法及び時期に対する日本側専門的意見
八、朝鮮銀行件発行準備在日分還元方法及び時期に対する日本側意見
九、旧朝鮮総督府東京出張所資産(朝鮮総督府鉄道局局員共済組合財産)管理状況紹介の件
十、朝鮮奨学会維持財団在日財産現況に関する照会の件
AIDE-MEMOIRE on talking of the 28th May, 1953
一、旧李王家財産韓国国有化に関する件通知
二、朝鮮漁業組合連合会中央会在日資産等返還方法に関する日本側意見照会の件
三、諸未払金項目別概算金額提示並びに日本側資料と照合依頼の件
 Aの部
  ■■■■■■■■■注文代金前渡金 6,187,067円
  ■■■■■■■■■   〃       2,207,088〃
  ■■■■■■■■■   〃        801016〃
  ■■■■■■■■■   〃        132,603〃
  ■■■■■■■■■   〃        282,806〃
  ■■■■■■■■■■■         841,745〃
 Bの部
  在外日本軍部機関の供託金等      1,944,194〃
  麻薬代金未収金(日本厚生省外)     12,985,723円
  交通部運賃乗車券第その他未収金   31,980,386〃
  林産物供出代金未収金           5,965,627〃
  ■■■■■■未収金            53,995,432〃
  ■■■■■■■関係未収金          88,910〃
  ■■■■■■工事前渡金           255,542〃
 Cの部
  韓国人加入者に対する日本十九生命保険会社の生命保険責任準備金
                          400,000,000円
  同未経過保険料概算           50,000,000〃
  十三損害保険会社の未払保険金    7,305,468.33
  同十三会社に対する朝鮮火災会場保険会社の再保険回収金
10,030,690.83
  日本側在韓支店銀行の預金並びに為替組戻しその他雑費大払金
227,638,722.25
  日本内銀行に対する個人預金      6236,638.76
  日本内銀行の発行せる送金為替にして受け取らざる分
796,859.67
 Dの部
  郵便為替貯金韓国側受け取り勘定
                      1,475,967,080円
  貸借決済基準の日後における韓国側受取勘定
                       173,846,433〃
  簡易生命保険関係受取金    391,352,964〃
   工品代金未収金           3,563,321〃
  放送局注文品代金前渡金       115,604〃
  専売局関係未収金          5,140,174〃
 以上ABCD各部の内容明細については韓国代表部韓奎永書記官経由にて随時御照会被下度
 Dの部(保留事項)
正式提示を保留する請求権項目及び概算金額
一、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■に関する件
二、第三国所在の韓国人(法人をも含む)財産回収または保証方法に関する件
三、a、日本法人に対する韓国内金融機関の滞り賃金
509,461,246.00
  b、日本人に対する韓国内金融機関の滞り賃金
211,241,763.00
  c、日本法人並びに日本人に対する仮払金
1,165,626.00
  d、日本法人並びに日本人の未納税金        
162,210,215.00
  e、貿易保証金             117,616,200.00
  f、貿易保留金             102,577,550,00
  g、軍事行動に因る被害       232,398,883.00
  h、強制撤去並びに疎開に因る被害
11,055,612,536.00
  i、1945年8月9日以降日本官吏の越権行為に因る被害
231,585,225.00
  j、強制供出に因る被害      1,848,880,437.00
  k、公共団体の破壊並びに企業整備に因る被害
38,010,686.00
照会事項(日本側)  28,5,28
第一 米占領軍の進駐後、日本及日本人の財産状況に関し
 一、日本人が所有しまたは支配していた企業または事業の管理はどのようになされたか。
  A韓国に本店または主たる事務所を有したもの
   (一)官吏の方法-管理人を任命して管理したか又は、例えば法人の場合は日本人所有株式、出資、持分等を売却し新たな権利関係に基づき役員の改選等を行つて運営する方法によつたか。
   (二)それらの法人格はそのまま継続するものとされたか、又は一応清算の上新しい法人に改組されたか。この場合その資産及び負債は、いかに処理されたか。
   (三)役員又は従業員に対する未払い給与又は未払い退職金等の処理はどうなついるか。
  B企業又は事業で、その本店が日本にあるものの管理はどのように行われたか。
  C企業又は事業の財産で米占領地域外に所在しているものの整理はどうなつているか。
 二、日本人(日本人が主たる持分を有していた法人を含む)が所有していた先財産はどのように管理されたか。(但し、前記一、において説明されたものを除く。)
  1土地、建物その他の工作物
  2船舶
  3株式、出資、持分、社債
  4日銀券、鮮銀券、台銀券等の通貨
  5預金又は貸付金等の債権
  6鉱業権、漁業権等の権利
  7特許権著作権、商標権、実用新案権等の無体財産権
  8借入金等の債務
 三、朝鮮総督府(その下部機構を含む)の貸付金、出資金等の債権はどうなつているか。
 四、国有財産のうち鉄道、港湾、通信施設等の企業用財産の管理はどのようになつているか。
第二 前記第一、の各項の財産等は、米占領軍から韓国政府にどのようにして引き継がれたか。
第三 韓国はその後これらの財産等についてどのような措置をとつたか。
第四 これらの財産は1950年6月以降の動乱により如何なる影響を受けたか。
第五 これらの財産は現在どうなつているか。
第六 以上各項についての関係法令及び関係計数。
日韓交渉報告(二十二)
  請求権関係部会第三回会議状況  久保田参与 28,6,11
一、本件会議は、六月十一日午後十時十五分から約三十分間にわたり外務省で開催された。なお、韓国側李相徳氏(韓国銀行外国為替部長)は、本日の会議から出席することとなった。
二、先に韓国側より照会のあつた、旧陸海軍に属した韓人及び被徴用労務者に対する未払金の取扱状況並びに韓国関係文化財に関する調査の現況については、わが方から簡単な説明を行い、これに対して韓国側は、自分の方にも資料を集めているので双方担任者を定めて資料照合を行うこととしたいと提議し、わが方もこれに同意した。
三、本部会の今後の運営方法に関し、韓国側から、事実問題の究明のためには、非公式の会合のほうがより能率的であるので、今後は主として問題別に専門の担当者間の非公式会合によつて議事進行をはかることとし、公式の部会は本会議に対する共同報告を作成する等の時に開くことにしたいとの提議があり、わが方もこれに同意した。
 本日の会議において専門担当者間の資料照合を行うことについて合意の成立したのは左の三項目である。
(一)陸海軍に属した韓人、被徴用労務者に対する未払金関係
(二)在鮮会社の在日財産管理生産状況予備有価証券再発行状況
(三)韓国関係文化財調査
 右のうち、(一)及び(二)については近日中に韓国側から申し入れがあるものと思われる。(三)については、わが方から資料整備後韓国側に連絡することとなつた。
日韓交渉会議議事要録(22)
 第三回請求権関係部会
  アジア局第二課
  昭和28,6,11
一、日時及び場所 1953年6月11日午後10時20分-同45分まで外務省417号室において
二、出席者
 日本側 久保田代表
      吉田大蔵省理財局長
      上田〃   〃   総務課長
      広田外務省アジア局第二課長
      (重光外務省条約局第三課長は欠席)
 韓国側
      張基栄 外交委員会委員
      洪璡基 法務部法務局長
      李相徳 韓国銀行外国為替部長
      韓奎永駐日代表部三等書記官
三、議事概要
 (1)張代表から、今般本件交渉参加のため来日した李相徳韓国銀行外国為替部長の紹介後、久保田代表より議事進行について諮つたところ、張代表から、先般来申上げてあるとおり、本請求権問題の議事運営に関しては、非公式な会議を頻繁に開催して、ファクト・ファインディングを行いたい、本日のような正式の会議の席でファクト・ファインディングをやるのは非能率的と考えるので、今後は非公式のウォーキング・グループ会談を主として行きたい。従つて次回会議の日取り等についても非公式会談をやつた後に決定することにしては如何と提案し、上田課長から、趣旨は賛成であるが韓国側からこの非公式会談に誰が出席するかとの質問に対して張自信と李相徳が専門委員として出席する旨を答えた。
 (2)上田課長から、韓国側提示のエド・メモアールの諸項目については広範囲であるので全体を報告する段階に入つてはいないがと前置きして、旧陸海軍における韓国出身軍人、軍属の未払給与等、昭和25年政令第22号により韓人非居住者の供託状況につき概要次のような説明があつた。
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 供託済みのものについては、それぞれ名簿があるので38度線の有無に関係なく出身地が判明する。また給与の基礎は日本人と平等である。但し、韓国人は終戦後が位置から日本人とは別個に復員したので、22年6月までに全て復員したものと推定して給与を計算してある。これについては詳細な法律があるが必要とあらば説明することとする。計算の基礎は22年当時のベースであるから金額としては少なく、これを今後どうするかについては今のところ考えていない。未復員者の扶養手当については、内地に家族が在住すれば韓国人も日本人と平等に支給されることになつている。
 遺骨の件については、陸軍と海軍とでは少し事情が異なり、先般貴方からお話のあつた釜山、済州島にある遺骨は海軍関係のもので、陸軍では還送したことはなく1,444件を保管している。海軍関係は終戦後7,422件を還送し、現在保管中のものは2,672件である。
 なお、上田課長から、先般の非公式会談の際、問題となつたCPC覚書■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■対し、張代表から、私はCPC覚書は一般徴用者の分のみを計上しておるものと了解していた述べ、また貴方から名簿を出してくれれば照合に都合よく、又労務者がどこで働いていたかも承知したい趣を述べた。

 (3)以上の説明に対し、張代表から、今般の帰国にあたつて、戦死傷病者に関する資料を取りまとめて来たが、予想外に集まつた、この資料が絶対に正確なものとは思わないが、軍人及び徴用関係については貴方の資料と付合わせていきたい、現在の段階では双方から担当者を出して付合わせるということとで進めたい、韓国側でも、担当者を一人きめることとする。要は一日でも早く支払つてもらうという方向に進めることであり、有価証券について同様である。これに対し上田課長から資料の付合わせに関し、異存がない旨を答えた。
 (4)張は次いで国宝関係調査の進捗状況に関し質問し、広田課長から、古書籍の関係では担当者の参集を求め調査を依頼してあるが何分尨大な数量でもあるし一冊毎に当たつてゆくことは予算とか人での関係で現状では到底不可能だという話で調査は概括的になるということであつた、取敢えず概括的に調査することを依頼してあるが、近い中に回答があるはずであると答えたところ、張から文化財については特別の関心があるのでグループを作つて是非地図と一緒にご説明をお願いしたい、また戦死傷病者および労務者関係は付合わせの段階に入つたのでその他のものもそおいう段階に入りたい。有価証券についても資料が整備されてきたら成可く早く清算という段階に入りたい、大蔵省側には戦死傷病者と有価証券のにグループを事務的に推進することをお願いしたいと述べた。
 (5)かくて(1)従軍韓人軍人、軍属に対する未払い給与等(2)在鮮本店会社の在日財産の整理状況及び有価証券の再発行並びに(3)韓国関係文化財及び地図原版の調査の三件に関しグループ別専門担当者による資料照合について合意が成立した。
 (6)次で、張代表は本部会会議の開催については、各項目の作業進行状況をにらみ合せ、本会議に出すレポート作成等必要の際随時に開催することとしたいと提案し、再び旧陸海軍関係戦死傷病者問題に戻り、この問題は特に早く解決を図りたい、この関係では以前、社会部が管掌していたが現在は内務部の手に移り、受給権利者は問題解決の促進方を督促しており、また日本在住の権利者も本件解決に駐日大使館が怠慢だといつて本国政府に訴えているというつた状況であると述べたので上田課長は、貴方から名簿を提出されればいつでも付合わせに応ずる旨答えた。
 会談以上で終わつたが久保田代表から張に対し韓国に戻られて何かおみやげ話はないかと述べたのに対し、張はいずれ非公式にでもお話をすることとすると答えた。
 請求権関係専門家協議会議事要録
  アジア局第二課
  28,6,18
一、日時及び場所 2953年6月18日(午前)大蔵省において
二、出席者
 日本側 吉田大蔵省理財局総務課長
      上田〃   〃   外債課長
      荒巻〃   〃   外債課事務官
      林 外務省条約局第三課事務官
 韓国側
      張基栄 外交委員会委員
      李相徳 韓国銀行外国為替部長
三、議事概要
 (1)会談の内容については、先ず張基栄より在日韓人で今次戦争の結果による傷痍者の救護について、日本側は如何ようにされているかについて、質問あり、上田課長より一般日本人についても確か三年間くらいの療養救護は行つたが、その後は特に救済措置を講じていない旨答弁した。
 次に韓人たる戦犯者(巣鴨に拘禁中の27人)の留守家族等に対する援護はどうなつているかについて、従来特別未帰還者給与法によつて支給されていた韓国人家族援護金は、今国会提出予定の「未帰還者留守家族等援護法」(附則第26項)によつても、当分の間、従前どおり支給されることになつている旨解答した。
 (2)旧軍人、軍属未払給与について韓国側のリストは、今回持参したので、必要とあれば、その照会のため、日本側に貸与してもよいと、張基栄より発言があつた、しかしこれは現在所別となり、これも変更があるやも知れず、アルファベット順もしくは軍帰属隊別になつていないから、日本側のものと如何ように照合するかについて復員局と協議する必要があるから、とも角一二冊借用したいと上田課長から申出た。
 (3)韓国内において交換回収せる日銀券焼却処分及び登録国債等についても日銀とも別途個別的に話し合いたい。その他終戦直後朝鮮銀行が立替支払いした国庫金は、在線日本軍事司令官または米軍等の要請により在線日本軍の需要もしくは韓国より日本への引き上げの際必要とされた経費であるから、これについても専門的考慮を払われたい胸長き栄より発言があつた。
 (4)朝鮮奨学会について、張よりの要望により上田課長より次のような解答を行つた。
 朝鮮奨学会は日本において登記した財団法人で、教育財団及び維持財団も京城で登記はしてあるが、民事例による日本民法の規定に基づく日本法人で教育財団は新宿にある建物を奨学会へ無償貸与し維持財団は奨学会へ所要の経費を供給している財団法人である。三者は別個の法人であるが、奨学会の運営のためには三財団とも不可分である。その事業は終戦後といえども依然として在日朝鮮人学生の就職斡旋、学資金の給与、宿舎の提供等を行い、新宿の建物は事務所及び学生の宿舎として使用している旨答えた。
 以上に対して、張基栄は、韓国にも同名の財団が存在しているから、かかる在日財産は韓国側の管轄下にあるべきではないかとの問に対し、小生よりそれは韓国法令に基づく新法人であつて日本法に基づく前記法人とは別個である、その間の承継関係も別問題である旨、釈明した。
 張基栄は、さらに現理事の人容、寄附行為の内容を知りたいと述べ、且張に入つた情報によれば、奨学会の現理事は、韓国ミッションにも未だ接近したこともなく、北線系の者より資金を調達しているとの事実もあることから、北鮮系学生を培養しているのではないかと思われるから善処を請う旨述べた
 (5)張基栄は、さらにこういうようなファクト・ファインディング大体6月末で切上げ7月からは上層部の方と外交交渉に入りたい旨述べたところ、大蔵省上田課長は病気治療のため二週間位休養するがその間、大蔵省としては、吉田総務課長と荒牧事務官が代行する旨答えた。その際、吉田総務課長は、かかる専門的打合会は6月末までと言われるのは韓国側の都合でせうが、日本側の帰国に対する質問事項は、やはりその間にお答え願えるかとの質問に対し、張は、その点については昨日(17日)久保田参与にお話してあるから、久保田さん世にお尋ねを請うと、その回答を避けた。
  (注)久保田代表は17,18日の二回張基栄代表と会談したがその際張代表は右について何ら触れなかつた。
 (6)張代表の申し出により請求権の非公式階段を開催し、朝鮮総督府交通局共済組合の在日財産については、現在大蔵省主計局給与課が所管されることとされているが実際の清算事務は旧賠償庁にて行い林事務官が嘗つて担当していたので、特に出席し、必要があれば説明する予定であつたが当日の会談に置いては本件については論及されなかつた。


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