セシウムさんの内部被爆と人体が元から持っている放射能

 日本中で絶賛大流行中の放射能について。
 放射能こわいお、というような話をそこらじゅう(といってもネットだけど)で聞く。一方、人体にも元から放射性物質が含まれている。カリウムの0.0117%とカルシウムの0.187%がそれ。放射脳に汚染されている方々はどういうワケか自然放射能、人工放射能と分けて自然は安全、人工は危険とどこかで聞いたような物言いをしたりする。勿論、自然放射能が人工放射能よりも安全だという根拠はない。
 今回調べるのは元々人体に含まれているカリウムに対して取り込んだセシウムがどの程度危険かということ。
 この観点から説明する話をニュースとかで見たことがなかったので、自分で調べて発表しようかと思ったけど、ググったらちゃんと発表している人がいたので殆ど調べる必要がなくなった。

東葛ホットスポットで放射能と戦う父親のブログ

 もはやコイツを読んでしまえば僕からいうこともないかな、とか思ったが、体内のカルシウムについての記述がないなぁ、ということでカルシウムについて補足しようと調べてみた。化学便覧5版(丸善)によると次のように書いてある。

元素存在割合半減期変壊形式主な放射線のエネルギーと強度*
40K0.0117% 1.277×109yβ- 89.28, EC+β+ 10.72β- 133; γ 1.461 
48Ca0.187% 2.0×1016y  
134Cs 2.062yβ- 99.9997, EC 3×10-4β- 0.658(70)ほか; γ0.605(98), 0.796(85)ほか
137Cs 30yβ-β- 0.514(94); γ0.6617(85.0)(137mBa)

*放射線のエネルギー
 MeV単位で示した(1MeV = 1.602189×10-13J)。アルファ線ガンマ線の場合は固有のエネルギー値を示すが、β-、β+壊変に伴うβ-、β+線のエネルギーについては最大エネルギーを示す。( )内の数値は壊変当たりの当該放射線が放出される割合(絶対強度)を、[ ]内の数値は相対強度を、それぞれ%単位で表したものである。実用上とくに重要な核種以外では、最も放出割合の大きなもの1種だけを示し、“ほか”をつけたものは、ほかのエネルギーの放射線も放出されることを示す。また、当該核種の核異性体や質量数が1大きい核種で核種欄に記載されていない放射性核種はこの欄に記し、その半減期を( )内に示した。


 48Caについては変壊形式とかは書いてなかったのだけど、検索をかけてみると、β崩壊するらしい。半減期が二千兆年とかいう時点でかなりどうでもよさげではある。取り敢えず48Caが1モルあったときの放射能を計算してみよう。放射能は1秒に放出する放射線の数できまる。一方、時間tが経過した際に壊変していない原子の割合は0.5t/半減期なので、時間当たりに崩壊する原子核の割合は、1-0.5t/半減期であらわされる。取り敢えず、t=1秒として計算する。
 このとき、半減期も秒換算する必要があるので、2.0×1016年×365.2425日/年×24時間/日×3600秒/時間 = 6.156×1023
 というわけで、1秒当たりに当たりに崩壊する原子核の割合は1-0.5^{1/(6.156×1023)} =?
 電卓に入れたらゼロと言われました。小さすぎたみたい。試しにアボガドロ数6.02×1023を掛けてみたけど0でした。手計算すれば正確に出てくるでしょうけど、カルシウム48は0ベクレルということでいいんじゃあないかと。
 というわけで、カルシウムに関しては特筆することもなくなりました。

 上記ブログでは「放射能でもバナナに入ってるカリウム原発からのセシウムが、同じベクレルなら同じ、には全くならないのも、その放射能の強さが全く違うからです。濃度も強さも全然違います。」というコメント、というかツイッターが回っている。濃度も強さも違うらしい・・・・。濃度って何のことを言っているのか不可解なんだけど、強さが違うのは間違いない。
 上の表にある通り、カリウム40からは133MeVのβ線と1.461MeVのγ線が放出される。一方セシウム134からは0.658MeVのβ線、0.605MeV, 0.796MeVのγ線セシウム137からは0.514MeVのβ線、0.6617MeVのγ線を出します。
 カリウムの133MeVは1.33の間違いじゃあないかと疑ってしまうのだけど、そう書いてあるのだから仕方がない。ちなみにWikipedia情報では1.31107MeVとなっている。そんなわけで、放射線の強さを考慮しようとすると放射脳の方に都合の悪い方向へ修正しないといけなくなるけどいいのかな。

 体内のセシウムの蓄積量をシミュレートしているサイトがある。
たまに汚染食品を食べても大丈夫か?
 次の条件で定期的にセシウムさんを食べるとどれくらい身体に溜まるかという考察。
・生物学的半減期を110日
・体重70kg
・1回に食べるセシウムは100Bq/kgを200g、つまり20Bq

 このグラフいいなぁ、僕も作りたいや。
 というわけで作ってみたのでファイルを上げておく。好きに加工して使ってください。
http://www.mediafire.com/?8px6sug9o9ygv31
 作ったのはいいけどなんか違うぞ。

 元データの人よりも低くなったぞ。どういう事だ? 大して違わないから良しとしよう。計算間違い探すのめんどいし、元データの人が計算間違いしてたらどうにもならないから。ちなみにセシウム134は半減期が2年なので、この表のスケールだとこの分も考慮するべきなんだけど、計算が面倒になるので除外している。時間があったらそれぞれの半減期も考慮に入れて再度計算しようと思う。時間がないのであまり期待しないで欲しい。
 そんなわけで、半減期110日だと2ヵ月くらいで平衡に達する。体重70kgの人が1日1回100Bq/kgの食品を200g食べるとMax45Bq/kg強になる。3日に1回だと15Bq/kg強。週1回だと6.4Bq/kg。
 これがどの程度の放射能かっていうのは人間が持っている放射能と比較してみれば参考になるかと思う。
 人体は平均0.2wt%のカリウムを含んでいるということで、体重60kgのカリウム40は何ベクレルかという質問がYahoo知恵袋に上がっているのでコピペする。

60000g×0.2/100=120g
120g×0.012/100=0.0144g
0.0144/40=0.00036mol
0.00036×6×10^23=2.16×10^20
N0原子核のうち1秒間に崩壊する数がxN0だった時
時刻tにおける原子核数Nとするときt+dtにおける原子核数は
dN=-xNdt
lnN=-xt+C
N=N0e^(-xt)
これが半分N0/2になる時間Tは
N0e^(-xt)=N0/2
-xT=-ln2
x=ln2/T=0.693/(4.04×10^16)=1.72×10^(-17)
よって、1秒間に崩壊する原子核数は

xN=2.16×10^20×1.72×10^(-17)=3700Bq

 というわけで体重60kgの人が持つ放射能が3700Bqなので、1kgあたり61.7Bqとなる。
 毎日食べても45Bq/kgなので、普段から体内に持っているカリウム40よりだいぶ低いという計算になった。なんか、まだまだ余裕がありそうだ。人体が通常の何倍の放射能を持っていて無事かというのはよく分からないけど、仮に3倍まで行けるとすると、体重70kgの人だと1日500g食べても大丈夫ということになる。
 こういうデータを出すと政府が調子に乗って暫定基準値上げようとするかな。
 取り敢えずそんな感じで。食事は自己責任でお願いします。

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